[医師監修・作成]子供(小児)の心不全の治療はどういったアプローチをするべきか | MEDLEY(メドレー)
しんふぜん
心不全
心臓の機能が低下して血液を十分に送り出せない状態。さまざまな心臓の病気が原因となり起こる
18人の医師がチェック 127回の改訂 最終更新: 2022.08.15

子供(小児)の心不全の治療はどういったアプローチをするべきか

子どもの心不全は生まれつきの心臓の病気が原因になることが多いです。病状によっては生まれたときから息苦しさなどの症状が出てしまうので、早期に診断して適切な治療を行うこと大切です。

このページでは子どもの心不全を起こしやすい病気を中心に説明します。

1. 先天性心疾患が原因となっている小児の心不全:ファロー四徴症

ファロー四徴症(しちょうしょう)は生まれつき心臓や肺動脈大動脈に異常がある病気です。先天性心疾患は100人に1人の割合で起こると言われていますが、ファロー四徴症に限るとおよそ10,000人に5人程度の確率で起こる病気と言われています。

ファロー四徴症の特徴は次の4つです。

  • 心室中隔欠損:右心室左心室との間にある壁(心室中隔)に穴が開いている
  • 肺動脈狭窄・漏斗部狭窄:右心室から肺へ血液を送る肺動脈が狭くなる
  • 右室肥大:右心室の圧力が高くなり、右心室の壁が分厚くなる
  • 大動脈騎乗:本来左心室から全身へ血液を送る大動脈が、左心室だけでなく右心室にもまたがっている

図:ファロー四徴症。心室中隔欠損・肺動脈狭窄(漏斗部狭窄)・右室肥大・大動脈騎乗を特徴とする。

ファロー四徴症があると全身に酸素がうまく運べなくなります。どうしてうまく酸素が運べないのかについて段階的に説明します。

  1. 肺動脈狭窄があるため、肺動脈に血液がうまく流れない
  2. うまく流れなかった酸素含有量の少ない血液が、心室中隔にある穴を通って左心室に流れ込む
  3. 左心室から大動脈に酸素の少ない血液が流れ込む
  4. 動脈血液中の酸素含有量が低下する

動脈血液中の酸素が少ないと低酸素血症になるため、全身に影響が出てさまざまな症状が出現します。

ファロー四徴症の症状

ファロー四徴症の子どもは次のような症状が見られることがあります。

  • チアノーゼ

ファロー四徴症によって血液中の酸素が少なくなるとチアノーゼになります。チアノーゼは血液中に酸素が少ないことによって酸素と結合していないヘモグロビン(還元型ヘモグロビン)が増えることで起こります。還元型ヘモグロビンは暗い紫色なので、唇や皮膚、爪などが青紫色になります。

乳児や幼児のくちびるが紫色になって気付かれることが多いです。はじめは泣いたり身体を動かしたりするとチアノーゼが見られますが、病状が進むと安静にしていてもチアノーゼが見られるようになります。

  • 疲れやすい

全身で酸素が足りなくなるため、疲労感を覚えやすくなります。しばしば見られるのが、しゃがみ込むような仕草です。座っているほうが立っているよりも心臓に戻ってくる血流が減少するため、息苦しさが軽くなることから、ちょうど剣道の際の蹲踞(そんきょ)のようにしゃがみこんでしまうことがあります。

  • ばち指

ばち指と呼ばれる特徴的な指の形になることがあります。これは爪の根元(爪床)が盛り上がって、指が太鼓のバチのようになることを指します。慢性的に酸素が低下するような病気(COPD間質性肺炎、心不全など)で多く見られます。

  • 成長不良

ファロー四徴症の病状が強くて高度な低酸素状態が続くと成長不良になることがあります。

  • 血栓症

血液中の酸素が低下すると少しでも効率よく酸素を運搬するために赤血球数が増加することがあります。赤血球数が非常に多くなると血液の粘稠度(粘り気)が増すため、血栓ができやすくなります。血栓ができて血管が詰まると、脳梗塞によるしびれや肺塞栓による胸痛などが起こることがあります。

ファロー四徴症の子どもがこうした症状を新たに訴えた場合や症状が強くなっている場合には、病状の把握が必要です。必ず主治医の診察を受けるようにして下さい。

ファロー四徴症の検査

ファロー四徴症の多くは、心臓を聴診した際の雑音あるいはチアノーゼの出現で見つかります。ファロー四徴症に対して行われる検査は次のとおりです。

  • 身体診察
    • 心雑音の有無
    • チアノーゼの有無
  • 心臓エコー検査超音波検査
    • 心臓の形や動き、血流の乱れの有無
    • 「肺動脈の狭窄の程度」「心室中隔にある穴を通る血流の動き」「右心室の大きさ」「大動脈の位置異常の程度」などの把握
  • 心電図検査
    • 右心室に対する負荷を認める所見(右軸偏位、右室肥大パターン)の有無
    • 不整脈の有無
  • 胸部X線検査
    • 木靴型と呼ばれる特徴的な心陰影(左第2弓の陥凹と心尖部の挙上)の有無
    • 右大動脈弓の有無
  • 胸部CT検査
    • 気管や肺動脈、心室/心房の形態異常の有無
  • 心臓カテーテル検査
    • 肺動脈圧や右心室圧などの測定
    • 造影効果の異常の有無
    • 肺動脈指数(PA index:左右肺動脈の断面積の和/体表面積)の確認

これらの検査の結果を踏まえてファロー四徴症を診断します。

ファロー四徴症の治療

ファロー四徴症は心臓の形に問題があるため、根治するためには手術を行わなければなりません。手術をしない場合では、平均で1年生存率は75%、3年生存率は60%、10年生存率は30%と言われています。一方で、手術を行えば30年生存率は98%という良好なデータですので、手術が可能であれば手術を受けるほうが望ましいです。

しかし、生まれたての子どもがいきなり手術を受けることは簡単ではありません。病状や手術を行う施設によって異なりますが、生後数ヶ月から1年くらい経過したタイミングで手術を行うことが一般的です。

  • 手術以外の治療(内科的治療)

手術を行うまでの期間や手術ができない場合には薬物治療を行います。動脈管が閉じておらず、動脈管によって酸素が保たれている場合にはプロスタグランジンE1製剤(プロスタンディン®など)を使用します。

詳しく知りたい人は「その他の薬:カルペリチド(商品名:ハンプ®)、プロスタグランジンE1製剤、漢方薬など」を参考にして下さい。

全身の酸素バランスの状況次第で、酸素投与や鉄剤の投与を行う場合があります。また、心不全の状況次第で、β遮断薬などを使用する場合もあります。

  • 手術:心内修復術

心内修復術はファロー四徴症を根治するための手術です。この手術によってチアノーゼや心不全の症状が解消されます。手術では右心室から肺動脈へつながる血管の修復と心室中隔にある穴の修復を行います。

この手術によって心機能は回復しますが、心臓が未熟であると手術を受けても回復しないことがあります。そのため、心臓が未熟の場合には成熟するまで手術を行わないことが多いです。低酸素の症状が強い場合には次に述べる手術を行って状態を立て直すことになります。

  • 心内修復術が行えない場合の手術(姑息術)

新生児期や乳児期にチアノーゼが強い場合やプロスタグランジンを使用する必要がある場合には姑息術を行うことがあります。

鎖骨下動脈と肺動脈との間に新たな交通路(シャント)を人工血管で作成するブラロック・トーシック術や大動脈と肺動脈との間にシャントを作成するセントラルシャント術が代表的なものになります。これらは肺血流を増加させることを目的に行われる手術で、血液中酸素量の低下が改善されます。また、これらの手術は肺動脈や心室を成熟させることが期待でき、心内整復術を受ける準備としての役割もあります。

2. 先天性心疾患が原因となっている小児の心不全:心室中隔欠損症

右心室と左心室の間にある壁(心室中隔)に穴が開いている病気を心室中隔欠損症と言います。先天性心疾患の中でもっとも多いのが心室中隔欠損症で、治療が必要な先天性心疾患のおよそ20%ほどと考えられています。

図:心室中隔欠損症。右心室と左心室の間にある壁(心室中隔)に穴が開いている。

心室中隔欠損症では、心室中隔の穴を通って左心室から右心室へ血液が流れ込んでしまうため、右心室の穴が大きいと右心室にある血液の量が増えてしまいます。結果的に肺への血液量が増えることで心臓や肺に負担がかかるため、状態次第では手術を行う必要が出てきます。一方で、心室中隔の穴が小さい場合では自然に塞がることがあるため、定期的に外来を受診しながらしばらく様子を見ることもあります。

心室中隔欠損症の大事なポイントは肺高血圧症になりやすいことです。肺高血圧症が重症化して右心室圧の方が左心室圧よりも高くなった場合(アイゼンメンゲル症候群)には一般的に手術を受けることができません。病状を把握しながら手術を受けるタイミングを逸しないことは大切です。

心室中隔欠損症でよく見られる症状

心室中隔欠損症が軽症の場合には特に症状が見られないことが多いです。病状が進行すると症状が見られるようになります。主な症状は以下になります。

  • 呼吸が荒い
  • 呼吸の数が多い
  • 息苦しそうである
  • 体重が増えない
  • ミルクを飲む量が少ない
  • 汗をかきやすい
  • 元気がない

これらの症状が見られた場合は心室中隔欠損症によって心不全に至った可能性があります。小児科を専門に診ている医療機関にかかるようにしてください。

心室中隔欠損症が疑われたときに行われる検査

心室中隔欠損症が疑われた場合には、次の検査を行います。

  • 問診
  • 身体検査(聴診など)
  • 胸部レントゲン写真
  • 心電図
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓エコー検査

特に心臓エコー検査が診断に有効です。心臓エコー検査では血液の流れのみならず弁膜症の有無を見ることができるため、病状の把握や手術の可否の際に重要な判断材料になります。

また、心室中隔欠損症が見つかっていない場合では、新生児健診や乳児健診で心臓の雑音が見られることで疑われることが多いです。

(検査についてもっと詳しく知りたい人は「心不全が疑われたらどんな検査が行われるのか」を参考にして下さい。)

心室中隔欠損症に対して行われる治療

心室中隔欠損症の手術では、あて布(パッチ)を使って心室中隔にある穴を塞ぎます。この手術で左心室から右心室へ血液が流れなくなるため、心臓や肺の負担がなくなります。重症の場合には1歳までに手術を行います。重症ではないが手術が必要と判断された場合には、2-4歳に手術を行うことが一般的です。

以下の場合には手術を行うかどうかが検討されます。

  • 肺の血流量が全身の血流量の1.5倍以上のまま改善しない子どもで、左心室の拡大もある場合
  • 肺の血流量が全身の血流量の2倍以上の場合
  • 肺高血圧症による症状が見られた場合
  • 心内膜炎が再発した場合

手術後には利尿薬(ラシックス®、アルダクトン®など)が使用されます。心室中隔欠損症に対して手術を行った場合には、その後の経過(予後)は良好です。

海外には心室中隔欠損症に対するカテーテル治療が行われている施設があります。しかし、2017年12月現在では国内でカテーテル治療は行われていません。治療が必要な段階であれば、手術で根治することになります。

3. 先天性心疾患が原因となっている小児の心不全:心房中隔欠損症

心房中隔欠損症右心房左心房の間の壁(心房中隔)に生まれつき穴が開いている病気です。先天性心疾患の7-10%ほどにみられます。母親のお腹の中にいるとき、胎児の心臓には右心房と左心房をつなぐ穴(卵円孔)があります。出生とともに肺呼吸が開始されるとこの穴は閉じるのですが、何らかの影響で出生後も心房中隔に穴が見られた場合に心房中隔欠損症になります。

心房中隔欠損症で見られる症状

心房中隔欠損症は病状が進行しない限り症状を感じることはありません。症状から早期発見することは難しいため、たいていの場合は健診で心臓の雑音を指摘されたり心電図の異常を指摘されたりすることで見つかります。

症状がないうちは特に健康に問題があるようには見えませんが、病状が進行するとだんだんと症状が出てきます。

  • 脈の乱れ
  • 動悸
  • 息切れ
  • 動くと苦しくて動けない

子どもの時期にこうした症状が起こることは珍しいです。また自然治癒することもあるので、症状を感じないうちには本当に病気があるのかすら忘れてしまいがちです。しかし、症状が進行すると手術の必要が出てくるので、心房中隔欠損症と診断されたら必ず小児科の先生の指示に従って下さい。

心房中隔欠損症が疑われたときに行われる検査

心房中隔欠損症が疑われた場合には、次の検査を行います。

  • 問診
  • 身体検査(聴診など)
  • 胸部レントゲン写真
  • 心電図
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓エコー検査

これらの検査の中でも心臓エコー検査が診断に重要です。心臓エコー検査では血液の流れのみならず弁膜症の有無を見ることができるため、病状の把握や手術の要否の際に重要な判断材料になります。

(検査についてもっと詳しく知りたい人は「心不全が疑われたらどんな検査が行われるのか」を参考にして下さい。)

心房中隔欠損症の治療

心房中隔に大きな穴がある場合に、自然に穴が塞がらなければ手術が検討されます。具体的には、肺の血流量が全身の血流量の1.5倍以上になった場合や肺高血圧症の症状が出たような場合です。手術の方法は2種類あります。

一つめは、カテーテル治療と呼ばれるものです。手首や足の付け根の血管に細い管(カテーテル)を入れて心臓に到達させます。挿入したカテーテルを用いて穴を閉じる方法です。この方法では金属のメッシュを留置して穴を閉じます。

もう一つは、胸を切って行う手術です。穴の大きさや位置次第で、縫って閉じたりパッチを用いて閉じたりします。複雑な状況(肺高血圧や心不全を伴う状況)でなければ、手術危険率はほぼ0%です。子どものときに直ぐに手術を行わなければならないことはあまりなく、小学校に上がる前の4-6歳で手術することが多いです。また、最近では胸の切開を小さくして負担を減らす手術(MICS)が行われることが多くなっています。

手術後には利尿薬や血をサラサラにする薬(抗血小板薬抗凝固薬)をしばらく飲むことになります。一般的にはこれらの薬は永久的に飲むわけではなく、状況が落ち着いてきたら飲むのをやめることができます。

4. 先天性心疾患が原因となっている小児の心不全:完全大血管転位

完全大血管転位は生まれつき心臓とそれにつながる血管に異常がある病気です。右心房と右心室のつながりと左心房と左心室のつながりは正常です。一方で、右心室と大動脈がつながり左心室と肺動脈がつながっています。そのため、肺を介する血流(肺循環)と全身の血流(体循環)が別々に回路を形成してしまいます。

図:完全大血管転位。本来の位置関係とは逆に、左心室から肺動脈が、右心室から大動脈が出ている。

完全大血管転位は4つのパターンに分類されます。

  • Ⅰ型:心室中隔欠損がない
  • Ⅱ型:心室中隔欠損がある
  • Ⅲ型:心室中隔欠損に加えて、肺動脈狭窄がある
  • Ⅳ型:心室中隔欠損がない上に、肺動脈弁ないし弁下狭窄がある

この病気は酸素濃度の低い血液が全身に回るので、生まれてから間もないころからチアノーゼが見られます。心室中隔に穴(心室中隔欠損)がある場合(Ⅱ型とⅢ型)には、肺で酸素を受け取った血液の一部が中隔を通って全身に回るので、比較的軽い症状で済みます。しかし、心室中隔欠損がない型では肺で酸素をもらった血液が全身に配られないため、心房中隔欠損や動脈管などの短絡路(シャント)がないと生きていられません。現在は心臓手術と動脈管を開いたままにする薬の使用を適切に行うことで、救命率は90%以上と高い数字になっています。

完全大血管転位で見られる症状

心室中隔欠損が見られないタイプ(Ⅰ型、Ⅳ型)では、生まれた直後から全身の酸素が足りなくなるためチアノ-ゼが出現します。また、心室中隔欠損があるタイプ(Ⅱ型、Ⅲ型)では、生まれた直後はチアノ-ゼが軽いですが、泣いたりするとチアノーゼが悪化します。どちらも治療を行わないと段々と症状が進行し、生後3-6週間ほどが経過すると心不全による症状(息が荒い、ミルクを飲めない、尿量が減るなど)が明らかになってきます。

完全大血管転位が疑われたときに行われる検査

完全大血管転位の際に行われる検査は次のものが主になります。

  • 問診
  • 身体検査(聴診など)
  • 胸部レントゲン写真
  • 心電図
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓エコー検査

心臓エコー検査が診断にとても重要です。心臓の構造や血管の配置をエコー検査で確認することができ、心室中隔欠損や肺動脈狭窄の存在の有無を確認することもできます。また、心臓カテーテル検査もとても重要です。心臓カテーテル検査では血液中の酸素濃度を場所別に詳しく調べることができ、冠動脈の形を調べることもできます。

これらの検査の結果から総合的に手術の方法や可否を含めたタイミングが決まります。

(検査についてもっと詳しく知りたい人は「心不全が疑われたらどんな検査が行われるのか」を参考にして下さい。)

完全大血管転位の治療

完全大血管転位の治療法は基本的に根治手術です。しかし、手術まで時間がある場合や手術ができない場合には内科的治療を行います。

内科的治療では、動脈管を開存させるプロスタグランジンE1の薬剤(プロスタンディン®)を用います。動脈管を開存させることによって、肺血流を増やし心室間あるいは心房間の血液の行き来を増やします。また、心不全に対して利尿薬(ラシックス®やアルダクトン®など)やホスホジエステラーゼⅢ阻害薬(ミルリノン®など)などを使用して治療します。

詳しいことを知りたい人は「心不全に対して行う治療にはどんなものがあるか:薬物を用いた治療」を参考にして下さい。

一方で、手術にはいくつかの方法があります。大血管(大動脈と肺動脈)を元の形に入れ替える手術(ジャテン手術)が肺動脈狭窄がないタイプの大血管転位に対して行われます。この際に心臓に栄養を送る血管(冠動脈)も一緒に入れ替えることで、心臓に栄養と酸素が行くようにします。

また、肺動脈に狭窄があるタイプでは、動脈血を心室内導管を介して大動脈に流し、静脈血を心外導管を介して肺動脈に流す手術(ラステリ手術)を行います。この手術を行う前には、肺の血流を増やす目的でブラロック・トーシック術(人工血管を用いて鎖骨下動脈と肺動脈との間に新たな交通路を作る手術)を行うことがあります。

卵円孔が狭く身体の酸素不足が強い場合には、カテーテルを用いて心房中隔裂開(BAS:balloon atrioseptostomy)を行い酸素状態の改善を図ることがあります。

手術後は利尿薬や強心薬を用いて状態の改善を図ります。これらの薬は状態が改善した場合には中止できますが、手術後に心機能の低下や大動脈弁閉鎖不全症、冠動脈狭窄などが起こることがあるため定期的な外来が必要になります。

5. 先天性心疾患が原因となっている小児の心不全:動脈管開存症

お母さんのお腹にいる胎児には肺動脈と大動脈をつなげる動脈管という特殊な管があります。生まれた後に肺呼吸を開始するとこの管は閉じるのが普通なのですが、動脈管開存症は動脈管が閉じずに残ったままの病気です。

動脈管が残って肺動脈と大動脈がつながったままだと、大動脈から肺動脈に血液が流れ込むようになります。肺動脈の血液量が増えると、左心房や左心室に戻ってくる血液量も増えるため、心臓は本来よりもたくさんの血液を送り出す必要性が出てきます。

また動脈管が開存していると感染性心内膜炎という病気になりやすくなります。この病気は心臓内で細菌感染が起こり、重症になると心臓の組織(特に逆流防止弁)が破壊されるため、治療が必要になります。

動脈管開存症で見られる症状

動脈管が細い場合には特に症状が出ません。動脈管が太くなればなるほど心臓への負担が大きくなるため、症状が出るようになります。動脈管開存症でよく見られる症状は次が主になります。

  • 息が切れる
  • 呼吸が荒い
  • 呼吸数が多い
  • 脈が速い
  • 汗が多い
  • 疲れやすい
  • 機嫌が悪い
  • ミルクをあまり飲まない
  • 体重があまり増えない

これらの症状が見られた場合には動脈管開存症があるというわけではありませんが、なにか病気が隠れている可能性が高いです。そのため小児科の専門的な医師の診察を受けるのが望ましいです。

動脈管開存症が疑われたときに行われる検査

動脈管開存症が疑われた場合に行われる検査は次のものが主になります。

  • 問診
  • 身体検査(聴診など)
  • 胸部レントゲン写真
  • 心電図
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓エコー検査

これらの検査の中でも心臓エコー検査で動脈管の存在を見つけることで診断できます。また、心臓カテーテル検査を行って心臓と動脈管の状況を把握することで、治療方法を決定します。

動脈管開存症の治療

動脈管開存症の治療方法は大きく3つあります。薬物治療と手術とカテーテル治療です。

薬物治療では動脈管が閉じるのを促す作用のあるプロスタグランジン合成阻害薬(インドメタシン)を用います。これを用いても改善がない場合には手術やカテーテル治療を行います。

カテーテル治療は血管に細い管を入れて行う治療で、実際に胸を切ることはありません。そのため身体への負担が軽いことが大きなメリットになります。非常に細い動脈管に対してはコイルを詰めて穴を塞ぐ方法(コイル塞栓術)が行われます。一方で、コイル塞栓術が行えないくらいの動脈管の太さの場合には、アンプラッツァー閉鎖栓という器具を用いて穴を塞ぎます。

手術は胸を切り開くあるいは数カ所に穴を開けて胸腔鏡を用いて行います。肺動脈と大動脈の間にある動脈管をクリップで挟んで遮断します。

いずれの治療を選択するかは身体の状況と動脈管の太さで決まります。動脈管開存症は治療によって動脈管を閉鎖できれば、基本的に問題がなくなります。動脈管開存症の治療法について悩んでいる人は、治療後にどういった注意点があるのかなどを含めて、主治医としっかりと相談するようにしてください。

◎インドメタシン(商品名:インダシン®)

プロスタグランジンEといって動脈管の開存を促す物質の合成を抑える作用をあらわす薬です。

インドメタシンはNSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる薬に分類され、一般的には内服薬(飲み薬)や外用薬などが「痛み止め」として使われています。NSAIDsに分類される薬は主にシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することで体内で疼痛、炎症、発熱などを引き起こす体内物質プロスタグランジンの産生を抑え解熱鎮痛作用などをあらわします。このプロスタグランジンにはいくつかのタイプがあり、そのひとつがプロスタグランジンEになります。

早産児ではプロスタグランジン産生過多などによってしばしば未熟児動脈管開存症発症するため、プロスタグランジンの産生抑制作用をあらわすインドメタシンの投与により動脈管を閉じる効果(閉鎖)が期待できます。

以前は経口剤や坐剤の剤形によって治療が行われていましたが、より確実な投与及び効果が期待できる注射剤の開発が行われ、インドメタシンの静注用製剤(インダシン®静注用)が未熟児動脈管開存症に対する治療薬として承認され使われています。投与に関しては通常、有用性や副作用などを十分考慮した上で行われますが、消化管、腎臓、血小板などで恒常的に発現しているプロスタグランジン産生を抑えてしまうことで、腸炎などの消化器症状、腎障害、頭蓋内出血などに対して注意が必要になります。

6. 川崎病

川崎病は子どもの手足の指先から皮膚がむける症状が見られたことから、以前は急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)と呼ばれていました。子どもに多い病気で、2017年現在でも年間1万人以上がかかっています。

原因は明らかになっていませんが、発病には免疫の作用が関係していると考えられています。また、心臓(特に冠動脈)に後遺症を残すことがあり、心臓のチェックは必ず行わなければなりません。

川崎病で見られる症状

川崎病では特徴的な症状が出現します。どういった症状が出るかは個人によって異なりますが、主に以下の症状が出現します。

  • 5日以上続く発熱
    • 治療が奏効して5日以内に熱が下がった場合も含む
  • 発疹
    • いろいろな形の発疹が見られる
    • 全身に広がるが、下着やズボンのゴムで圧迫されている部分に多くみられる
  • 眼の充血
    • 眼の白い部分が真っ赤になる
  • 唇や舌が赤く腫れる
    • 赤くなった舌の表面にぶつぶつがみられ「いちご舌」と呼ばれる
    • 赤く腫れた唇は乾燥して亀裂・出血・かさぶたを伴うこともある
  • 首のリンパ節が腫れる
    • 痛みを伴う
    • 左右両方のことも片方だけのこともある
  • 手足の先の特有の症状
    • 手足がテカテカする
    • 手足がぱんぱんに腫れる
    • 手のひらや足の裏が赤くなる
    • 回復期に手足の指先の皮がむける(膜様落屑)

上記の6つの症状のうち5つがあてはまる場合4つあてはまった人に冠動脈瘤が見られる場合川崎病と診断されます。この他にもBCG接種部位が赤くなったり、関節が痛んだり、下痢が出現したりします。

川崎病と似た症状が出る病気はいくつかあります。これらは小児科の専門的な医者ですら見分けるのが難しいことがあります。

また、もう一つ川崎病で気をつけなければならない状態があります。川崎病によって心臓に酸素や栄養を送る冠動脈に瘤(りゅう、こぶ)ができることがあります。冠動脈瘤ができると、血栓ができて血管が詰まったり、血管の壁が厚くなることで血管が狭くなったりします。すると心臓に酸素と栄養が足りなくなってしまいます。この病気を冠動脈疾患(心筋梗塞狭心症)と言います。冠動脈疾患については「心不全の原因」で詳しく説明していますので参考にして下さい。

川崎病が疑われたときに行われる検査

川崎病が疑われた場合に行われる検査は次のものが主になります。

  • 問診
  • 身体診察
  • 胸部レントゲン写真
  • 血液検査
  • 心電図
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓エコー検査

川崎病は身体に出現している症状(発熱、目の充血、発疹など)から診断することができます。そのため、身体診察は非常に大事になります。また、それ以外にも全身の状態を把握するために上記の検査を行います。冠動脈の状態を把握するために、特に心臓エコー検査を行うことは重要です。

川崎病の治療

川崎病の治療にはいろいろな薬が用いられます。

  • アスピリン
  • 免疫グロブリン
  • ステロイド薬
  • 免疫抑制剤
  • 生物学的製剤

これらについてもう少し詳しく説明します。

◎アスピリンなどの抗血小板薬

川崎病の治療では抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)と呼ばれる薬が使われることがあります。抗血小板薬はその名の通り血小板の働きを抑えることで一般的には血液を固まりにくくする薬として使われています。その中でもアスピリンは川崎病に対して特に有用とされ長年臨床で使われている薬になっています。

アスピリン(アセチルサリチル酸)はシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害する作用をあらわす薬です。

解熱鎮痛薬や抗炎症薬として医療用医薬品(処方薬)だけでなくバファリンAなどの一般用医薬品(市販薬)の成分にも使われていますが、COXを阻害しトロンボキサンA2(TXA2)という体内物質の合成を阻害することで血小板凝集を抑制し血流を改善する作用もあらわします。

医療用医薬品としてのアスピリンは狭心症心筋梗塞、脳血管障害などによる血栓及び塞栓の形成を抑える目的で広く使われていますが、川崎病の治療薬としても有用になっています。比較的重度な川崎病における急性期治療において免疫グロブリンとの併用療法が冠動脈病変などを抑える治療法として優先して行われています。

川崎病に用いるアスピリンの用量は体重などに合わせて一般的に急性期では抗炎症効果などを考慮し中(〜高)用量を投与し、その後は低用量に減量して投与していきます。治療対象の多くが乳幼児となるため、服用や嚥下などを考慮しアスピリンの散剤やアスピリンの錠剤(バイアスピリンなど)を散剤化したものを投与するのが一般的です。

注意すべき副作用としては出血、消化器症状、腎障害、呼吸器症状などがあります。これらの多くはCOX阻害作用に関連する症状と考えられます。また肝機能障害にも注意が必要で特に長期に渡り投与する際は定期的に肝機能検査を行うなど経過観察することも大切です。

一般的にインフルエンザウイルスに感染した際、アスピリンを服用した場合にライ症候群などのリスクが高くなると考えられています。急性期を除けば川崎病で使われるアスピリン量は解熱鎮痛薬として使われる量よりも通常は低用量ですが、実際に感染した時のリスクなどを考慮しインフルエンザワクチンを接種し予防することなどが考慮されます。

他の抗血小板薬ではフルルビプロフェン(主な商品名:フロベン®)、ジピリダモール(主な商品名:ペルサンチン®)、クロピドグレル(主な商品名:プラビックス®)などの薬剤が病態などによっては考慮される場合も考えられます。

◎免疫グロブリン

静注用の免疫グロブリン(IVIG)を早期かつ大量に投与する治療法は川崎病に対する抗炎症療法の中で現在、最も信頼できる治療法とされています。一般的に急性冠動脈病変を合併する可能性がある急性期の川崎病に対して優先して使われ、主に免疫調節作用によって改善効果をあらわすと考えられています。

免疫グロブリンは多様な作用をあらわしますが、例として冠動脈障害を抑える作用を少し詳しくみていくと冠動脈の内皮細胞変化、中膜の変性浮腫性膨化、外膜の浮腫を抑えたり、心筋や乳頭筋における筋線維変性、炎症細胞の浸潤などを抑える効果が期待できると考えられています。

川崎病の急性期治療における免疫グロブリン治療の多くは単回投与によって行われますが、単回投与で使う量の半量を1日または2日連続で投与する方法や3-5日間に分けて投与する分割投与などが考慮される場合もあります。

川崎病における免疫グロブリンによる治療は副作用などへの懸念がかなり少なく一般的に安全性が高いとされていますが、ショック(血圧低下など)、蕁麻疹じんましん)などの皮膚症状、肝障害、腎障害、ふるえ、悪寒などには注意が必要とされています。

通常、投与を開始した後もアナフィラキシーなどの有無について経過観察を行ったり薬剤の投与速度が速くなり過ぎないようにするなど、副作用に対して注意や配慮などがされた上で治療が行われます。

◎ステロイド(副腎皮質ホルモン製剤)

一般的に「ステロイド」と呼ばれる薬剤の一つで免疫抑制作用や抗炎症作用などをあらわし、自己免疫疾患アレルギー疾患など多くの病気や症状などの治療に使われています。

プレドニゾロン(主な商品名:プレドニン®、プレドニゾロン)やメチルプレドニゾロン(主な商品名:ソル・メドロール®、メドロール®)はステロイド薬の代表的な製剤です。

プレドニゾロンなどの治療薬としてのステロイドは体内の副腎から分泌されるコルチゾール(糖質コルチコイド)というホルモンとほぼ同じもので、コルチゾール自体は糖の代謝、タンパク質の代謝、脂質代謝など生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。

川崎病においては免疫グロブリンによる治療効果が不十分であることが予測される場合などにおいて使用が考慮されます。より迅速で強い作用を目的として行われるのが多くの量のステロイドを短期間、注射(静脈注射)によって投与するステロイドパルス療法で、この治療には電解質コルチコイド作用への懸念が少ないメチルプレドニゾロンの使用が考慮されます。このステロイドパルス療法は初期治療において免疫グロブリンと併用される場合や免疫グロブリン投与後に症状が再発した場合などの選択肢となっています。

プレドニゾロンも初期治療において免疫グロブリンとの併用で使われる場合があります。またメチルプレドニゾロンによるパルス療法後に使われる場合などもあります。

高い有用性を持つ一方でステロイドはその副作用に注意が必要となります。(ステロイド(内服薬)の副作用に関してはメドレーコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています)

一般的にステロイドは投与量、投与期間なども含めて副作用に関して十分配慮された上で使われます。例えば川崎病におけるメチルプレドニゾロンのパルス療法では徐脈、高血圧、高血糖、低体温などへの懸念があり、一般的に心電図による経過観察や血圧測定などが行われます。ステロイドの使用中は免疫抑制作用により易感染性(いかんせんせい)といって細菌やウイルスなどによる感染症にかかりやすい状態になるため日頃からの注意も大切です。患者の多くを幼小児が占める川崎病では一般的に容体が安定するまでは入院して治療するためこれらの懸念は比較的少ないとも考えられます。それでも顔などのむくみや急な体重増加など、なんらかの体調の変化がみられる場合は放置せず、医師や薬剤師などに相談するなど適切に対処することが大切です。

◎インフリキシマブ

インフリキシマブ(主な商品名:レミケード®)はTNF(TNFα)という炎症反応などに関する体内物質の働きを抑える薬で遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジー技術によって造られた経緯もあり生物学的製剤とも呼ばれます。

TNFα(Tumor Necrosis Factor‐α:腫瘍壊死因子α)は腫瘍細胞の壊死を誘導する因子として発見されたサイトカインと呼ばれる生体内物質の一つです。TNFαはその後の研究で炎症の悪化や組織の障害などの因子となることがわかり、特に炎症反応に関しては炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)などの産生やILが作用するIL受容体の発現を誘導することから深く関わる物質とされています。

インフリキシマブは元々、TNFαが病態に深く関わる関節リウマチの治療薬として開発されその後、ベーチェット病乾癬クローン病などのTNFαが関わる自己免疫疾患の治療薬としても承認されました。

川崎病では血液中のTNFαが一般的に高い値を示し冠動脈病変の合併症例では非合併症例に比べて高いとの報告もありその有用性などが考慮され、2015年にインフリキシマブが川崎病の急性期治療薬としても承認されています。川崎病の治療においてインフリキシマブは免疫グロブリンなどによる治療で効果不十分な場合などにおける選択肢のひとつになっています。

インフリキシマブはTNFαとの結合部がマウス由来のキメラ型でその他(IgG1定常領域)はヒト由来のタンパク質によって造られている特徴(キメラ型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体)があります。この製剤的な特徴から特にアナフィラキシーショックに対して注意が必要です。また免疫抑制作用による感染症にも注意が必要で中でも肺炎ニューモシスチス肺炎細菌性肺炎など)や結核といった肺の病気にはより注意が必要となります。

川崎病の治療におけるインフリキシマブは通常、単回投与となるため関節リウマチなどの治療で使う場合に比べればこれら副作用の懸念は少ないとされてますが、川崎病が好発する年齢が1歳前後と感染症の好発する時期でもあるため通常、その有用性とリスクなどに対して十分な考慮が行われた上で選択されています。

◎ウリナスタチン

ウリナスタチン(商品名:ミラクリッド®)は種々の酵素に対して阻害活性をあらわす糖タンパク質を製剤化したものです。元々は膵臓の酵素を阻害することにより膵炎の急性期治療薬としてその効果が確認されました。またショック時の循環動態などを改善する効果が期待でき、急性循環不全の治療薬としても承認されています。

TNFα(Tumor Necrosis Factor‐α:腫瘍壊死因子α)やインターロイキン(IL)などの体内で炎症などに深く関わるサイトカインと呼ばれる物質を抑える作用や心筋の抑制因子の遊離阻害作用などをあらわし、タンパク分解、浮腫、出血などによる炎症性の血管病変を軽減する効果が期待できるとされています。

川崎病の治療では免疫グロブリンによる治療効果が不十分な場合の選択肢となったり初期治療において免疫グロブリンと併用して使われることなどが考えられます。

注意すべき副作用として頻度は稀とされていますがアナフィラキシーショックがあります。また肝機能値の異常、白血球減少などの血液症状、過敏症などにも注意が必要です。

◎免疫抑制薬

免疫細胞など体内の免疫反応に深く関わる因子を抑えることで免疫抑制作用をあらわす薬です。原因がはっきりとは解明されていない川崎病ですが、炎症反応などを引き起こすインターロイキン(IL)などのサイトカインの関わりが考えられていて、免疫反応を抑えることでサイトカインの産生などを抑え症状の改善が期待できるとされてます。

シクロスポリンは免疫反応の中心的な役割を果たしているリンパ球T細胞の活性化に関わるカルシニューリンという酵素を阻害することで免疫抑制作用をあらわす薬です。

一般的には腎臓などの臓器移植後の拒絶反応を抑える目的やベーチェット病乾癬などの自己免疫疾患の治療薬として使われています。シクロスポリン製剤にはいくつかの剤形がありますが、川崎病を発症する人の多くは幼小児になるので注射剤を除けば液剤(ネオーラル®内用液)が主に使われる製剤になります。

その他の免疫抑制薬ではメトトレキサート(MTX)などの薬の使用が考慮される場合があります。これらの免疫抑制薬は主に免疫グロブリンによる治療効果が不十分な場合などの選択肢となっています。

これらの治療薬を用いても川崎病の全身症状が改善しない場合に、血漿交換(けっしょうこうかん)と呼ばれる治療を行うことがあります。川崎病の子どもの血液中には炎症に関与する物質や自己抗体という異常な物質が出現することがあります。これらの物質が川崎病に関与している可能性があるため、血液浄化法の一つである血漿交換を行って治療します。血液浄化装置を使って原因物質を含んでいるであろう血漿(血液中の液体成分)を除去したのちに、正常な血漿を体内に戻します。

また、冠動脈疾患をきたしてしまった場合には、心臓カテーテル治療を行うことがあります。心臓カテーテル治療では、手首や足の動脈から細い管を入れて、狭くなったり詰まってしまったりした冠動脈を拡げます。

大きな冠動脈瘤が残った場合には血をサラサラにする薬(主に抗血小板薬)を飲み続ける場合が多いです。アスピリンを飲んでいる状態では、転倒と感染に注意が必要です。血が止まりにくくなるので転倒が大事故につながります。また、インフルエンザ水ぼうそうなどのウイルス感染でReye症候群という重症な状態になることがあります。そのため手洗い・うがいや予防接種などで感染の予防をしっかりと行わなければなりません。

川崎病についてもっと詳しく知りたい人は「川崎病の基礎情報」を参考にして下さい。)

7. 心筋炎

心臓は筋肉でできた臓器です。心臓の筋肉で炎症が起こる病気を心筋炎といいます。改善しないと心機能が低下したり不整脈を起こしたりして心不全になります。原因にはさまざまなものが考えられ、ウイルス感染(コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど)、細菌感染、自己免疫疾患(関節リウマチ全身性エリテマトーデスなど)、薬の副作用などが挙げられます。

子どもの心筋炎ではウイルス感染によるものが多いです。原因となるウイルスはかぜ急性上気道炎)や急性胃腸炎を起こすものと同じです。そのため、風邪にかかってから数日後に心筋炎の症状が出てくることが多いです。

心筋炎で見られる症状

心筋炎かぜや胃腸炎の症状(発熱、咳、喉の痛み、腹痛、吐き気、下痢、筋肉痛、倦怠感など)が最初に見られることが多いです。それから数日ほど経ってから次のような症状が出現します。

  • 胸が痛い
  • 胸に違和感がある
  • 動悸がする
  • 脈が乱れる
  • 息が切れる
  • 手足が浮腫む
  • 手足が冷たくなる
  • 意識状態が悪くなる

かぜかな?」「胃腸炎かな?」と思ったのちに、上記のような症状が出てきた場合には一度医療機関で調べてもらうようにして下さい。

心筋炎が疑われたときに行われる検査

心筋炎が疑われたときには次のような検査を行います。

  • 問診
  • 身体診察
  • 胸部レントゲン写真
  • 胸部MRI検査
  • 核医学検査(ガリウムシンチ、テクネシウムシンチ)
  • 血液検査
  • 心電図検査
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓エコー検査
  • 心筋生検

心臓の組織を採ってきて顕微鏡で調べる心筋生検は診断の決定打になります。しかし、心臓の組織を採ってくること自体が身体に対する負担が大きいです。心筋炎から心不全に至っている状態で負担の大きい検査を行うことは難しいため、これらの中から行える検査を行って総合的な判断を行います。

心筋炎の治療

心筋炎は劇症化すると亡くなる人も少なくない病気です。心筋炎の治療の目的は、「心不全や不整脈によって亡くなる人を減らす」ことと「低下した心機能をできるだけ元の状態に戻す」ことになります。

心筋炎の原因を治療できる場合にはこれを行います。また、心不全に対しては薬物療法(カテコラミン、PDEⅢ阻害薬など)を用いて治療し、場合によってはIABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助)、人工呼吸器管理も行います。

心筋炎や心不全の治療に用いる治療方法について詳しく知りたい人は「心不全に対して行う治療にはどんなものがあるか:薬物以外の治療」を参考にして下さい。

8. 感染性心内膜炎

感染性心内膜炎は血液中に侵入した細菌が心臓の内膜に感染を起こす病気です。心臓の中に細菌の巣(疣贅:ゆうぜい)ができるため、適切な治療を行わなければ治ることはありません。それどころか、疣贅ができると急性の弁膜症や感染性動脈瘤を引き起こすことがあり、この状態は致死的になるのでできるだけ早い治療が望まれます。

本来心臓の内膜は物が付着しにくくできているため、仮に細菌が侵入してきてもそこで定着することはありません。しかし、心臓の構造に何らかの問題がある場合は細菌が定着しやすくなることが分かっています。

これらは感染性心内膜炎になりやすい人の主な例です。これらのどれかに当てはまる人は、感染性心内膜炎を疑う症状が出てきた際に素早く検査を受ける必要があります。

感染性心内膜炎に出やすい症状

感染性心内膜炎は血液に細菌が侵入することで起こる病気ですので、全身にさまざまな症状を起こします。

  • 発熱
  • 悪寒
  • ふるえ(戦慄)
  • 寝汗(盗汗)
  • 倦怠感
  • 体幹の上部・結膜・粘膜・手足の先に出現する点状の染みのような皮下出血
  • 指の先に出現する疼痛を伴う紅斑性の皮下結節(オスラー結節)
  • 手のひらや足の裏に出現する圧痛を伴わない皮下出血斑(Janeway病変)
  • 爪の裏に出現する線状の出血
  • 網膜に出現する中心に白い領域のある円形の出血病変(Roth斑)

これらは感染性心内膜炎の診断で押さえておかなければならない症状です。しかし、後半に挙げた症状はよほど注意しなければ見落としてしまいますし、慣れていない非医療者の人が見つけるのは簡単ではありません。原因に思い当たるふしがないのに、発熱や震え、倦怠感といった症状が続く場合を受診の目安として下さい。

感染性心内膜炎の検査

感染性心内膜炎の診断でとても重要な検査があります。身体診察に加えて、血液培養検査心臓エコー検査です。

身体所見では上で述べた症状が身体に出ていないかをくまなく調べます。また、血液培養検査で血液中に細菌がいないかを確認することも必須です。さらに、心臓エコー検査で心臓内に細菌の塊(疣贅)があるかどうかの確認も大切です。

これらを踏まえて感染性心内膜炎の診断基準が存在します。

【デュークの診断基準修正版:Modified Duke Criteria】

◎臨床的基準

(大項目)

  1. 血液培養陽性
    1. 心臓以外に感染症が見当たらない状態で、別々に採取された血液培養で次に挙げる細菌が生える
      1. Streptococcus viridans
      2. Streptococcus bovis
      3. HACEK group
      4. Staphylococcus aureus
      5. Enterococcus
    2. 持続的に陽性の血液培養
      1. 12時間以上間隔をあけて採取した2セットの血液の両方から同一菌が検出される
      2. 3セットの血液培養が全てで同一菌が検出される(最初の血液採取と最後の血液採取は1時間以上離れている)
      3. 4セット以上の血液培養のほとんどで同一菌が検出される (最初の血液採取と最後の血液採取は1時間以上離れている)
    3. 血液培養でCoxiella burnetiiが検出される、あるいはCoxiella burnetiiの抗IgG抗体価が800倍以上となる
  1. 心内膜病変の所見
    1. 心エコー陽性
      1. 弁や弁の支持組織や逆流ジェット路、人工弁に腫瘤が付着して振動している
      2. 膿瘍が存在する
      3. 新たな人工弁が一部外れている
    2. 新たな弁の逆流症が起こっている(以前から存在した心臓の雑音の悪化や変化のみでは不十分)

(小項目)

  1. 背景:弁膜疾患や先天性心疾患が存在する、あるいは頻繁に薬物を静脈注射する
  2. 発熱:38度以上の発熱がある
  3. 血管病変:動脈塞栓、敗血症性肺塞栓、感染性動脈瘤、頭蓋内出血、眼瞼結膜出血、Janeway病変
  4. 免疫異常:糸球体腎炎、オスラー結節、ロート斑、リウマチ因子
  5. 微生物:血液培養陽性であるが大項目を満たさない場合や感染性心内膜炎を起こしやすい微生物の活動性感染を示す血清学的所見がある場合

◎診断

感染性心内膜炎と診断する:2つの大項目、1つの大項目+3つの小項目、5つの小項目

感染性心内膜炎の可能性が高い:1つの大項目+1つの小項目、3つの小項目

この診断基準を踏まえて感染性心内膜炎は診断されます。

感染性心内膜炎の治療

感染性心内膜炎の治療には長期間の抗菌薬抗生物質)の投与が必要です。原因となっている細菌の種類や人工物(人工弁やペースメーカーなど)の有無によって治療期間は異なります。

また、感染性心内膜炎に対して手術が行われることがあります。もちろん全員に対して手術が行われるわけではありませんが、大まかに言えば次のいずれかに当てはまる場合には手術が検討されます。

  • 弁が破壊されることで心不全が起こっている
  • 弁が破壊されることで肺高血圧症が起こっている
  • 耐性菌真菌(カビ)が原因となっている
  • 適切な抗菌薬を用いているにもかかわらず治療の効果が乏しい
  • 疣贅が大きい(10mm以上)

手術は大きな負担になりますので、病状と身体の状況を鑑みて選択されます。持病がある場合や常用薬がある場合には必ず担当医に伝えるようにして下さい。

9. 重症の心不全に対して行う心臓移植

著しく心機能が損なわれてしまった状態から心機能の改善が見込めない場合には、心臓を移植する治療(心臓移植)で改善が期待できることがあります。非常に大掛かりな治療である上に、心臓を提供できる医学的条件や法的条件は厳しいため、多く行われる治療ではありません。また、倫理的にさまざま課題を抱えているため、治療を受けられるかどうかについては慎重な判断が必要になります。

心臓移植とは?

心臓移植は他人の心臓をもらって自分の心臓と取り替える治療です。心機能が非常に低下しているため、このままだと死んでしまう人にとっては期待できる治療になります。

手術は素早く行わないと移植した心臓の保存がうまくいかないため、4時間以内に手術を終えることが目標になります。また、手術直後は心機能が回復していないことがあります。その場合には、補助人工心臓を用いて心臓の働きをサポートする治療を行います。

心臓を提供したら死んでしまうので、提供される心臓の数には限りがあります。そのため誰にでも行える治療ではありません。どんな人が心臓移植を受けられるかについては基準(適応)が整備されています。

心臓移植はどんな人が適応になるのか

以下に挙げる病気を持つ患者さんで、他の治療が有効ではないときに心臓移植が検討されます。

【子どもの心臓移植が検討できる病気】

また、他にも状況によっては心臓移植が行えない場合があります。

【移植手術が行えない場合】

  • 高度の肺高血圧症がある場合
  • 肺動脈または静脈に低形成がある(組織として成熟していない)場合
  • 高度の肝腎機能障害や神経障害、感染症がある場合
  • 13トリソミー18トリソミー、21トリソミーがある場合

心臓移植後に使われる免疫抑制薬など

心臓移植が成功すると、普段の生活に問題がないレベルの心機能が期待できます。しかし、他人の臓器を体内に入れるため拒絶反応と呼ばれる免疫システムの攻撃が起こります。この拒絶反応で心臓が攻撃されてしまうと、重症な心不全が起こってしまいます。この拒絶反応を抑制するために、免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムスなど)やステロイド薬を使用することになります。

個々の薬剤毎に特徴は異なりますが、いずれも免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:感染症にかかりやすくなる)をはじめとして副作用の懸念が少なからずあります。通常、副作用などへの懸念を最小限に抑え高い効果を得るために複数の免疫抑制薬を併用する方法がとられます。ここでは心臓移植後に使われる免疫抑制薬をいつくか挙げてみていきます。

◎シクロスポリン(主な商品名:ネオーラル®、サンディミュン®)

免疫反応の中心的な役割を果たしているリンパ球T細胞の活性化に関わるカルシニューリンという酵素を阻害することで、免疫抑制作用をあらわす薬です。

免疫抑制薬として心臓や腎臓などの臓器移植後の拒絶反応を抑える目的やベーチェット病乾癬などの自己免疫疾患の治療薬としても使われています。

シクロスポリン製剤の中でもよく使われているのが、マイクロエマルジョンという加工を施した製剤(商品名:ネオーラル®)で、これ以前に開発された製剤に比べ薬剤成分の吸収における胆汁酸や食事の影響を少なくし安定した血中濃度を保ちやすいように工夫されています。

それでも薬の吸収においては個人差が生じる可能性があり、一般的には血液中の薬物濃度を測定し適切な量となっているかを観察していくことが重要です。またシクロスポリンによる治療中にグループフルーツを摂取した場合、体内でのシクロスポリンの代謝が阻害され血液中の濃度が上昇する可能性があります。場合によっては腎障害などの副作用があらわれるケースも考えられるため注意が必要です。同じ柑橘類でもみかん(温州みかん)では相互作用の問題がないとされていますが、八朔(ハッサク)などの柑橘類でグレープフルーツ程ではないにせよ相互作用があらわれる可能性も考えられます。日頃から柑橘類をよく食べる習慣がある場合は、事前に医師や薬剤師に食べても問題がないかなどを確認しておくことも大切です。他にもセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)というハーブを含む食品であったり、抗ウイルス薬などの薬剤との相互作用も比較的多い製剤のため注意が必要です。

◎タクロリムス

タクロリムスは藤沢薬品(現アステラス製薬株式会社)の研究所(茨城県つくば市)の近く、筑波山の土壌に生息する放線菌の代謝産物として発見された免疫抑制作用をあらわす薬剤です。

従来の免疫抑制薬に比べても高い免疫抑制効果をあらわし、臓器や骨髄の移植による拒絶反応を抑える目的で開発され、その後、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療薬としても承認されています。

その作用の仕組みはシクロスポリンに類似していて、主に体内の免疫反応の中心的な役割を果たしているリンパ球T細胞の活性化を阻害することにより免疫抑制効果をあらわします。

他の免疫抑制薬にもいえることですが、易感染性(いかんせんせい:細菌やウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している用量、体質などによっても感染への危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意も大切です。その他、腎障害、血圧上昇などの循環器症状、ふるえやしびれ、不眠などの精神神経系症状、不整脈などの循環器症状、高血糖、肝機能障害などに注意が必要です。

またタクロリムスによる治療中にグループフルーツを摂取した場合、体内でのタクロリムスの代謝が阻害され血液中の濃度が上昇する可能性があります。場合によっては腎障害などの副作用があらわれるケースも考えられるため注意が必要です。同じ柑橘類でもみかん(温州みかん)では相互作用の問題がないとされていますが、八朔(ハッサク)などの柑橘類でグレープフルーツ程ではないにせよ相互作用があらわれる可能性も考えられます。日頃から柑橘類をよく食べる習慣がある場合は、事前に医師や薬剤師に食べても問題がないかなどを確認しておくことも大切です。他にもセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)というハーブを含む食品であったり、一部の抗菌薬(抗生物質)や抗ウイルス薬などの薬剤との相互作用があらわれることが考えられるため注意が必要です。

◎ミコフェノール酸モフェチル(主な商品名:セルセプト®)

核酸の合成(プリン合成系)を阻害しリンパ球T細胞やB細胞の増殖を抑える作用をあらわす免疫抑制薬です。元々は腎移植における拒絶反応を抑える薬として保険承認されましたが、心移植、肝移植、肺移植、膵移植の拒絶反応を抑える薬としてやループス腎炎の治療薬としても承認されています。

核酸代謝に関わる免疫抑制薬としてはアザチオプリン(商品名:アザニン®、イムラン®)が以前より使われていましたが、本剤が臨床で使われるようになりタクロリムスやステロイドと併用する治療法の有用性などが確認されています。

副作用として感染症、骨髄抑制、下痢や潰瘍などの消化器症状、肝機能障害、腎障害、不整脈などの循環器症状などには注意が必要です。

◎エベロリムス(商品名:サーティカン®)

mTOR(エムトールまたはエムトア:mammalian target of rapamycin)という細胞周期の誘導に深く関わる調節タンパクに結合することで細胞増殖のシグナルを阻害しT細胞、B細胞、血管平滑筋細胞の増殖を抑える作用などをあらわす薬です。

エベロリムス製剤のサーティカン®は日本では2007年に心臓移植後の拒絶反応を抑える薬として承認され、2011年には腎移植後の拒絶反応抑制に対しても承認されています。エベロリムスには移植した心臓の冠動脈病変(CAV)の予防などの効果も期待できるとされています。

副作用として感染症、骨髄抑制、腎障害、脂質異常症などの代謝障害、下痢などの消化器症状、高血糖などに注意が必要です。また血管平滑筋などの増殖抑制作用をあらわすため、創傷の治癒という面で外傷や手術などには注意が必要となります。

◎ステロイド(副腎皮質ホルモン製剤)

一般的に「ステロイド」と呼ばれる薬剤の一つで免疫抑制作用や抗炎症作用などをあらわし、自己免疫疾患、アレルギー疾患など多くの病気や症状などの治療に使われています。

心臓移植にもメチルプレドニゾロン(主な商品名:ソル・メドロール®、メドロール®)やプレドニゾロン(主な商品名:プレドニン®)といったステロイド製剤が使われています。

プレドニゾロンなどの治療薬としてのステロイドは体内の副腎から分泌されるコルチゾール(糖質コルチコイド)というホルモンとほぼ同じもので、コルチゾール自体は糖の代謝、タンパク質の代謝、脂質代謝など生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。

ステロイドの作用の仕組みとしては、免疫に関わる主な細胞であるB細胞、T細胞、単球、マクロファージなどの増殖や活性を抑えることで免疫抑制作用をあらわします。またこれら免疫担当細胞からの炎症性サイトカインの産生を抑える作用などによって抗炎症作用などをあらわします。

高い有用性を持つ一方でステロイドはその副作用に注意が必要となります。(ステロイド(内服薬)の副作用に関してはメドレーコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています)

一般的にステロイドは投与量などを含め副作用に関して十分配慮された上で使われます。例えば、潰瘍などの消化器症状に対しては胃酸を抑える薬(H2受容体拮抗薬プロトンポンプ阻害薬など)、骨がもろくなる対策としてビスホスホネート製剤ビタミンD製剤などの骨粗しょう症を予防する薬・・・といったように副作用を抑えたり軽減させる薬を併用することで多くの場合対処が可能です。また他の免疫抑制薬同様、易感染性(いかんせんせい)に対して手洗い・うがいを行うなど日常生活の中での注意も大切です。

併用薬などによる対策や注意をしていても時として副作用があらわれる可能性も考えられます。例えば、顔などのむくみや体重増加があらわれたり、血圧や血糖値が上がったりした場合など体の状態になんらかの変化が生じた場合は放置せず、医師や薬剤師などに連絡するなど適切に対処することが必要です。

冒頭でも少しふれましたが、一般的に心臓移植後の拒絶反応に対しては複数の免疫抑制薬を用いて対処します。シクロスポリン・アザチオプリン・ステロイドの3剤の併用などによって移植後の生存率がそれ以前に比べ良好となり、その後新しい免疫抑制薬の登場でタクロリムス・ミコフェノール酸モフェチル・ステロイドの3剤併用やミコフェノール酸モフェチルをエベロリムスに切り替える選択肢などが可能となり移植後の生存率などがより改善されてきています。また、例えばサイトメガロウイルス感染症ニューモシスチス肺炎などへの予防薬であったり、ステロイド投与に対する骨粗しょう症治療薬を投与するなど、免疫抑制薬以外の薬も併用することでリスクをより減らす方法が行われます。どの薬がどのような役割や目的のために使われているかなど、医師や薬剤師からしっかりと説明を聞いておくことも大切です。

心臓移植後に気をつけるべきこと

免疫は体外から異物が侵入した際にこれを攻撃し排除するためのシステムです。免疫抑制剤やステロイド薬を使用すると、免疫システムが弱くなるために感染症になりやすくなります。感染症にならないように日頃から気をつけるべきことがあります。

  • 手洗いやうがいを欠かさない
  • マスクを着用する
  • 賞味期限が切れている食品を摂取しない
  • 新鮮でない食品を摂取しない
  • 感染症の流行地域にはいかない

また、日本移植学会は食べない・飲まないようにするべき食品を教えてくれているので紹介します。

  • 生の肉・魚(刺身)・にぎり寿司
  • ドライフルーツ
  • 調理後2時間以上たった食品
  • 発酵食品(生味噌類・納豆)
  • 煮沸していない漢方薬
  • カビを含んでいるチーズ
  • アルファルファ豆他の種の新芽
  • 期限切れの全ての食品
  • 生の木の実
  • 自宅で漬けた漬け物
  • グレープフルーツジュース

これらは健常な人でも胃腸炎などの感染症を起こす可能性がありますが、免疫力の低下している人はさらにその危険性が高まります。十分に気をつけるようにして下さい。かぜや胃腸炎を疑う症状が出現した場合には、必ず医療機関にかかるようにして下さい。

心臓移植後には薬の飲み忘れを避けなければなりません。子どもの場合には家族も一緒に薬を飲んだか確認する必要があります。また、どんなに状態が良くなっても指示された定期的な受診を行うようにして下さい。