どうみゃくかんかいぞんしょう
動脈管開存症
生まれた後も動脈管(肺動脈と大動脈をつなぐ血管)が開いたまま残ってしまうこと
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最終更新: 2019.10.03
動脈管開存症の基礎知識
POINT 動脈管開存症とは
動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ血管のことで、産まれた後には不要になるため閉鎖しますが、産まれた後も動脈管の閉鎖が起こらない病気を動脈管開存症といいます。動脈管が細い人は症状がほとんどありません。一方で、動脈管が太い人は、産まれた直後から呼吸回数が多い、哺乳が進まない、体重が増えないといった症状が現れます。自然に治ることがあるので、症状がない人は経過観察をすることがあります。症状の程度が重い人は薬による治療や手術が行われます。動脈管開存症は小児科や循環器内科、心臓血管外科などで検査や治療が行われます。
動脈管開存症について
- 生まれた後も
動脈管 (肺動脈 と大動脈 をつなぐ血管)が開いたまま残ってしまうこと - 大部分は新生児期に問題になるが、症状がないまま成人期に偶然発見されることもある
- 動脈管は胎児期にのみ必要な血管であり、通常は生まれて24-48時間以内に機能しなくなる程度に閉じる
- 胎児は肺を使って呼吸していないため、肺に血液を送る必要がない
- 動脈管が肺動脈(肺に血液を送る血管)から大動脈(体に血液を送る血管)への血流の抜け道になっている
- 生後2,3週ほどで完全に閉じる
- 病気のメカニズム
- 下半身へ流れる血流が減少するため、腸管や腎臓の障害が出ることもある
- 生まれてから一度も閉じないままのパターンと一度閉じた動脈管が何らかの刺激で再度開いてしまうパターンがある
- 血流がなくなったあとも生後数週間は血管の構造が残るため、少しの刺激で再度血流が生じることがある
早産 児は血管の機能が未熟な状態で生まれてくるため、動脈管開存症の頻度が高い- 特に新生児呼吸窮迫症候群を
合併 した児で多い
- 特に新生児呼吸窮迫症候群を
- 感染や低酸素にさらされることも原因となる
- 先天性心疾患の5-10%を占め、男女比は1:3で女性に多い
- 他の先天性心疾患を合併しやすく、
合併症 がある場合には症状や治療法が大きく異なる
動脈管開存症の症状
動脈管開存症の検査・診断
- 心雑音や症状から疑い、診断の確定には
心臓超音波検査 が重要 聴診 :症状が出る前から雑音は聞こえることが多い- 主な検査
- 画像検査:心臓の大きさや形などを調べる
- 心臓超音波検査
動脈管 開存の確定診断や心機能の評価のために重要である- 何度も繰り返し行い、動脈管の太さや流れなどを確認する
胸部X線 (レントゲン )写真:心臓や肺に負担がかかっていないか調べる
- 心臓超音波検査
心電図 :心臓を動かす電気信号に異常がないかを調べる
- 画像検査:心臓の大きさや形などを調べる
- 場合によって必要となる検査
- 心臓血管カテ-テル:手術に先駆けて心臓の機能を詳しく調べる際に行う
動脈管開存症の治療法
- 自然に閉鎖することがあるので、症状がなければ必ずしも治療は必要ない
超音波検査 を定期的に行い、動脈管 が閉じる傾向にあるか、心機能の悪化はないかなどこまめに確認する- 将来的に感染性心内膜炎や動脈瘤形成の危険性が上がるため、治療が望ましい
- 画像で肺
うっ血 や心不全が疑われる場合、症状がある場合、動脈管が太く自然閉鎖が望めない場合には治療が必要になる - 内科的治療
- 感染が関与している場合には
感染症 の治療を行う- 正期産児で感染による開存の場合には、感染がコントロールできれば自然に閉じることもある
- カテーテルを使用した閉鎖法
- コイル
塞栓 術と動脈管閉鎖栓(スポンジ、金属など)を使用した治療法がある - 体重10kg以上がカテーテル治療可能かどうかの目安となる
- 動脈管の大きさや形などによってはカテーテル治療の適応とならない場合もある
- コイル
- 手術による治療
- 大きく動脈管離断術と動脈管
結紮術 に分けられる - 一般的には左開胸手術で行われるが、
胸腔鏡 で行う施設もある
- 大きく動脈管離断術と動脈管
- アイゼンメンジャー症候群に至ってしまうと手術はできないため、そうなる前に治療することが重要
動脈管開存症に関連する治療薬
動脈管開存症治療薬(プロスタグランジン阻害薬)
- 体内物質プロスタグランジンE(PGE)の産生を抑えることで、主に未熟児動脈管開存症を治療する薬
- 動脈管開存症は本来閉じるはずの動脈管が閉じずに開いたままの状態となり、心不全などの症状があらわれる場合もある
- 体内物質プロスタグランジン(PG)のうち、PGEは動脈管の拡張などに関わる物質とされる
- 本剤はPGEの産生を抑えることで、動脈管を閉じる作用(動脈管閉鎖作用)をあらわす
- 本剤の成分はインドメタシンやイブプロフェンといった一般的にはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類される薬剤成分
- 上記の成分によるプロスタグランジン合成酵素阻害作用によって動脈管閉鎖作用をあらわすとされる
動脈管開存症が含まれる病気
動脈管開存症のタグ
動脈管開存症に関わるからだの部位


