はいえん
肺炎
細菌やウイルスの感染、薬剤、アレルギーなどが原因となって、肺の炎症により息切れなどを起こす病気
17人の医師がチェック 201回の改訂 最終更新: 2023.05.24

肺炎の基礎知識

POINT 肺炎とは

肺炎は様々な原因で起こります。細菌感染でもウイルス感染でもアレルギーでも肺炎は起こります。中でも最も頻度の高いものが細菌性肺炎です。肺炎の主な症状は、発熱・咳・痰・息切れなどです。これらの症状が急に出現した人は医療機関にかかる必要があります。 肺炎の有無、程度や原因を調べるために、胸部レントゲン(X線)検査などの画像検査・血液検査・細菌検査などが行われます。治療は原因に即したものを行うことになりますが、多くの人は抗菌薬・抗ウイルス薬・ステロイド薬のいずれかを用いて治療することになります。肺炎が心配な人や肺炎を治療したい人は呼吸器内科・感染症内科にかかるようにして下さい。

肺炎について

  • 肺に炎症が起こっている状態
  • 細菌ウイルスなどの病原体が肺に感染して炎症を起こす場合が多い
  • 高齢者や子ども、免疫力の落ちている人が起こしやすい
  • がん、心臓病、脳卒中に続いて(あるいは同程度に)死亡数の多い病気
  • 肺炎は感染を起こした環境や原因の病原体によって、いくつかのタイプに分けられる(詳細はそれぞれの病気を参照)
  • 病原体による分類
  • 細菌によって成り立った肺炎の背景による分類
    • 市中肺炎:病院の外で感染して起こった肺炎
    • 院内肺炎:病院に入院している人が感染して起こった肺炎(重症になりやすい)
      • 黄色ブドウ球菌、緑膿菌が問題になりやすい
      • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)など、特定の抗生物質が効かない細菌が増えている
  • その他の分類
    • 誤嚥性肺炎:飲み込みの機能が低下することで、口の中の細菌や食べ物などが気管や肺に入っていくことで生じる
    • 新生児肺炎:新生児期に発症し、ウイルスや真菌が原因となることがある
    • 間質性肺炎:肺の間質という支持組織に起こる肺炎で、一般的な肺炎とは治療方針が大きく異なる
  • 肺炎球菌、インフルエンザ菌b型(Hib、ヒブ)、インフルエンザウイルスの感染はワクチンである程度予防できる
    • 肺炎球菌ワクチン(プレベナー®、ニューモバックス®)、インフルエンザ菌b型ワクチン(ヒブワクチン:アクトヒブ®)ともに満2か月から5歳未満で定期接種されている
    • 肺炎球菌ワクチン(プレベナー®)は小児の定期接種として4回接種される
      • 1回目と2回目の間、2回目と3回目の間は27日以上の間隔を置く
      • 3回目と4回目の間は60日以上の間隔を置き、かつ1歳から1歳3か月で接種する
      • 肺炎球菌ワクチンを打ってからほかのワクチンを打つまでに6日以上の間隔を置く
      • 肺炎球菌ワクチンとほかのワクチンの同時接種はできる
      • 65歳以上の人や肺炎球菌感染症にかかりやすいと判断される人に対してはプレベナーも選択肢となる
    • 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)は65歳以上の人に対して定期接種とされている
      • 5年ごとに再接種する
    • ヒブワクチンは4回接種
      • 1回目と2回目の間、2回目と3回目の間は27-56日の間隔を置く
      • 3回目と4回目の間は7-13か月の間隔を置く
      • ヒブワクチンを打ったあとほかのワクチンを打つまでに6日以上の間隔を置く
      • ヒブワクチンとほかのワクチンの同時接種はできる
    • インフルエンザウイルスのワクチンは任意接種で毎年打つ
      • 特にCOPD結核後遺症、肺がんなどの肺慢性疾患のある方は欠かさず打つべきである
      • 自分だけでなく周りの人にうつさないようにするためにも予防接種は有効である
  • 肺炎は原因にもよるが、うつることがある
    • 感染経路は主に飛沫感染接触感染
    • 咳やくしゃみなどで飛び散った唾を吸い込んでうつる(飛沫感染)
    • 飛び散った病原体が手につき、口に入ってうつる(接触感染)
    • 飛沫感染予防にはマスクをつけ、咳エチケット(口をティッシュで覆うなど)を守る
    • 接触感染予防には手洗い・うがいをする
    • 空気感染はしない(患者に近づいただけではうつらない)
    • 近づいて話すなどすることで飛沫感染する場合はある
    • 潜伏期間は短い病原体で数日、長い病原体で数週間ほど
    • 潜伏期間には症状がないが、周りにうつす可能性がある
    • 治療で症状が止まったあともしばらくは周りにうつす可能性がある
    • 流行中であろうとなかろうと予防のために行うべきことに大きな差はない(いつどこでうつるかわからない)
    • どこからうつったか特定できない場合がほとんどである
    • ニューモシスチス肺炎サイトメガロウイルス肺炎は免疫が正常に働いている人にはうつらない
    • 過敏性肺炎好酸球性肺炎は免疫の異常が原因なのでうつらない
    • レジオネラ肺炎は温泉など不潔な水がある環境で集団発生する
    • オウム病は鳥からうつる
詳細な情報を見る

肺炎の症状

  • 主な症状
    • 発熱
    • 激しい咳
    • 息切れ、息苦しい、呼吸困難
  • 出ることがある症状
    • だるい、倦怠感、疲れ、疲労
    • 胸の痛み
    • 喉(のど)の痛み
    • 声が枯れる、声が出ない
    • 耳の痛み
    • 吐き気
    • 下痢
    • 皮疹発疹、皮膚にブツブツが出る
    • 関節の痛み
    • 鼻水、痰(たん)
    • 喘鳴喘息のように息がヒューヒュー、ゼーゼー鳴る)
    • 意識がもうろうとする、ぼーっとする、錯乱などの意識障害
  • 特に細菌性肺炎では黄色や緑色の痰が出ることがある
  • 重症の場合は水分がとれず脱水になったり、呼吸が十分にできず酸素吸入が必要になることもある
  • 子供や高齢者では、高熱やぐったりする以外に症状がない場合もある
    • 咳がないこともある
  • 子供の症状
    • 発熱
    • 息苦しさ
    • 子供の肺炎は症状だけでは気管支炎などとの区別が難しいことも多い
    • マイコプラズマ肺炎で鼻水や痰が出ることは大人には少ないが、子供では比較的多い
    • 子供は肺炎をきっかけに喘息になることがある
    • ぐったりして元気がなければ、肺炎かどうかにかかわらず医師に見せたほうがよい
  • 5歳未満の子供ではウイルス性肺炎が最も多い
  • 子供で特に注意するべき症状
    • ぐったりしている
    • 息が荒い
    • 息が苦しそう
    • 痰が多い
    • 意識がもうろうとしている
    • 喘鳴
症状の詳細

肺炎の検査・診断

  • 画像検査:肺の炎症の有無、炎症を起こしている場所などを調べる
    • 胸部レントゲン写真(X線検査
    • 胸部CT検査
      • 陰影の広がり方で原因微生物を推測することができる
  • 血液検査
    • 全身炎症の程度を調べる
    • 腎機能への影響の有無を調べる
    • 血液中の酸素や二酸化炭素の量を調べる
  • 細菌検査
    • 痰や血液中の細菌の有無や種類を調べる
    • 培養して生えた細菌を用いて抗菌薬の有効性を調べることができる(培養検査
  • レントゲン写真に特徴的な白い影が写るが、例外も多い
    • レントゲンだけで肺炎でないとは言えない
  • 自然に治ることを期待できるような場合、肺炎と風邪などを見分ける必要は乏しい
    • 自然に治りそうなら検査も治療も必要ない
    • 症状が強い場合は、症状を緩和する治療は重要になる
  • 痰などから原因の細菌そのものが発見されることが最も確実な証拠になる
検査・診断の詳細

肺炎の治療法

  • 次のすべてに当てはまる場合は自然に治りやすい
    • 65歳未満
    • もともと症状が軽い
    • 症状が軽くなってきている
    • 動いても息苦しさがない
  • 子供や高齢者では入院して治療が行われることも多い
  • 治療は大きく2つに分けられる
  • 病原体を倒す治療(抗菌薬治療)
    • 有効な抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は病原体ごとに異なる(原因微生物ごとの肺炎の解説を参照)
    • 病原体に合った抗生物質を選ばなければ効かない
    • 特定の抗生物質が効かない細菌耐性菌)が年々増えている
    • ウイルスに抗生物質は効かない
    • 若い人の細菌性肺炎は、適切な抗生物質が使われれば3日程度で効果が現れる
  • 症状を軽くするための治療(対症療法
    • 咳止め、痰切り薬
    • 必要であれば濃度の高い酸素を吸う
  • 50歳未満では重症の肺炎になっても死亡率は低い
    • 50歳未満の死因のうち肺炎は1%程度
    • 子供の肺炎では死亡率は非常に低い
  • 高齢になるほど肺炎が主要な死因になる
治療法の詳細

肺炎に関連する治療薬

鎮咳薬(非麻薬性)

  • 咳を引き起こす咳中枢の抑制作用や気道を広げる作用などにより咳などの呼吸器症状を緩和する薬
    • 咳はウイルスなどの異物や痰を体外へ排出しやすくする生体内防御反応だが、体力の消耗や元々の呼吸器疾患の悪化などを引き起こす場合もある
    • 咳は延髄の咳中枢からの指令によりおこるが、気管支炎症などにより気道が狭くなると咳がおきやすくなる
    • 本剤は咳中枢を抑えたり、気管支を拡張させるなどの作用をあらわす
鎮咳薬(非麻薬性)についてもっと詳しく

アミノグリコシド系抗菌薬

  • 細菌のタンパク質合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
    • タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
    • 本剤は細菌のリボソームにおけるタンパク質合成を阻害して抗菌作用をあらわす
  • 薬剤によって抗菌作用の範囲に違いがあり、淋菌(淋菌感染症の原因菌)やMRSA(MRSA感染症の原因菌)などに抗菌作用をあらわす薬剤もある
アミノグリコシド系抗菌薬についてもっと詳しく

ST合剤

  • 細菌などが行う葉酸合成と葉酸の活性化を阻害し増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌などの増殖には遺伝情報を含むDNAの複製が必要でDNAの複製には葉酸が必要となる
    • 細菌などは自ら葉酸を作り、活性化させることでDNAの複製に使用する
    • 本剤は葉酸合成阻害作用をもつ薬剤と葉酸の活性化を阻害する薬剤の配合剤
  • 真菌が原因でおこるニューモシスチス肺炎に使用する場合もある
ST合剤についてもっと詳しく

肺炎の経過と病院探しのポイント

肺炎が心配な方

肺炎と一口言っても中身は様々で、若い人がなりやすい肺炎マイコプラズマ肺炎など)や、抗生物質の効かないウイルス性の肺炎もあります。また細菌やウイルスではなく、アレルギーが原因の肺炎もあります。このように「菌やアレルギーなど様々な原因で肺に炎症が起きている状態」を肺炎と呼びます。具体的な検査や治療は肺炎の原因によって異なりますので、それぞれのページもご参考になさってください。

肺炎は、2014年日本人の死亡原因として3番目に多く、また亡くならない人も含めるととても患者数の多い病気です。ご高齢の方で咳や痰、熱が出てくるというのが典型的な経過です。それに加えて、呼吸の変化が肺炎の特徴の一つです。具体的には、1分間の呼吸数が20回を上回ったり、胸だけの浅い呼吸ではなく、肩も含めた上半身全体が動くような深い呼吸になるといった変化が出ます。

若い方の発熱はいわゆる風邪が多いのに対し、ご高齢の方の発熱では、肺炎などその他の病気の割合が高くなってきます。熱があるからと言ってすぐに肺炎だというわけではもちろんありませんが、上記のような呼吸の変化や咳、痰といった症状が伴っていれば、まずお近くの内科クリニック、もしくは病院を受診することをお勧めします。内科の中で特にどこかということであれば呼吸器内科になりますが、肺炎は患者数が多い病気であるため、一般内科であっても十分に対応可能です。

若い方では肺炎になっても大半は自然に治ってしまいます。マイコプラズマ肺炎は少なくない病気ですが、「長引く風邪だな」と思っているうちに治ってしまい、結局肺炎だと認識されないままになっているケースも少なくないでしょう。治ってしまえば問題ありませんが、呼吸の変化や息苦しい感じが出てきたら一度受診を検討することをお勧めします。

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