はいえん
肺炎
細菌やウイルスの感染、薬剤、アレルギーの影響などが原因となって、肺の炎症により息切れなどを起こす。子どもや高齢者では入院になりやすい。
17人の医師がチェック 190回の改訂 最終更新: 2018.08.09

肺炎の治療はどうするの?抗生物質は?自然治癒することはあるの?

 

肺炎の治療は簡単ではありません。

肺炎の原因となる細菌によって治療に使うべき抗生物質が変わってきます。

しかし、原因となっている微生物がなになのかを判別することは簡単ではありません。

ここでは、肺炎の治療を行う上で重要な点を考えていきます。

 

1. 肺炎を治療するためのポイント

 

肺炎を的確に治療するためには以下のことを考える必要があります。

 

  • 肺炎は重症なのか
  • どんな微生物が原因となっているのか

 

この2つを考えれば肺炎の治療がやりやすくなります。

 

肺炎は重症なのかどうか

肺炎が重症なのかを考えることは非常に重要です。重症であった場合は、医療機関にかかる必要があります。また、多くの場合は入院が必要になるでしょう。

どういった状況になったら重症なのでしょうか。以下の症状が出たら重症の可能性が高いので医療機関にかかって下さい。

 

【肺炎が重症になるかを判断する5つの項目】

  • 意識もうろうとする
  • 動かなくても息苦しい
  • 高熱が5日くらい続く
  • 65歳以上の人
  • もともと喘息肺気腫COPD)や肺がんなどの病気が肺に存在する

 

このチェックポイントに引っかかることがあれば、今肺炎が軽症であってもこれから重症になる可能性もあるので、お医者さんにみてもらって下さい。

 

肺炎の原因となっている微生物は何なのか?

 

肺炎の微生物によって使うべき抗生物質が変わります。つまり、敵を見定めることが非常に重要になってきます。

どうやったら敵を見定められるのでしょうか?

 

  • 尿を用いた簡易検査

肺炎球菌やレジオネラによる肺炎は尿を調べることで分かります。

肺炎球菌とレジオネラには簡易検査キットが存在するので、これを用いれば15-30分程度で判明できます。 

しかし、この検査は精度が高いわけではなく、間違った結果が出ることがあります。症状や経過から総合的に判断することもになる場合も多いです。

 

  • たんの培養検査

たんの中にいる細菌を培養して増やす検査です。増やした細菌がどんな種類のものなのかを調べていきます。

培養はすぐにはできないため、少なくとも翌日以降まで結果が出ません。

しかし、この検査を行うとどんな抗菌薬が細菌に効果があるのか実際のところを調べることができるので、細菌による感染症の治療を行うときには、基本的にこの検査は必須になります。

 

  • 血液の培養検査

血液の中に菌が侵入していないかを調べるために、血液の培養検査を行うことがあります。この検査を行うことで、たんの培養検査では分からなかった原因菌を見つけられ場合があります。

また、血液の中に細菌が入り込む状況は、菌血症という非常に危険な感染症になります。超重症の状態にないのか調べる意味でも重要になります。

 

  • 血液検査

 

抗体というものを血液検査で見ることがあります。人間の免疫は感染が起こると抗体という免疫力を強化するタンパク質を作ります。

血液検査でこの抗体の量を見れば感染が起こったかどうかを推測できます。しかし、この検査の弱点は昔に起こった感染でも抗体は上昇していしまうことです。そのため、どうしても検査の精度が落ちてしまいます。

 

この原因となっている微生物を判別する検査は、医療機関でないとで行えません。そのため、自宅では自分が重症なのかどうかを判断することが大切です。

この章にある「肺炎が重症なのかを判断する5つの項目」をチェックしてみて下さい。

 

ここでもう一つ注意すべきポイントが有ります。実は肺炎の原因微生物がわからないことが多いということです。

 

原因となる微生物のわからない肺炎は多い

肺炎の原因微生物がわからない場合は適切な抗生物質が分かりません。特に治療を開始するときに原因微生物がわかっていることがほとんどありません。

その場合も治療しなくてはならないのですが、どうしたら良いのでしょうか。

このときに効果を発揮するのが、経験的治療という方法になります。

 

原因微生物がわからないときは抗生剤の経験的治療を行う

経験的治療とは経験に従ってなんとなく抗菌薬を決めるということではありません。

 

  • 年齢
  • 症状
  • 背景(持病、周囲の流行状況など)

 

上の3つから肺炎の原因となっている微生物を推測します。想定される複数の微生物に対していずれにも効果のある抗菌薬を選択することになります。最近は耐性菌が増えている背景がありますので、この状況も考慮した抗生物質の選択が必要になります。もし、処方された抗菌薬を飲んでいるのに治りが悪かったりしたら、医療機関を受診してもよいかもいしれません。

具体的な抗菌薬の種類・投与量・投与期間に関しては次のページを参考にして下さい。

 

適切な抗生物質を使うと肺炎は早く治ります。肺炎の治療には抗生剤以外にも症状を和らげる薬もあります。次にどういった薬を使うと症状が和らぐのかを説明します。

 

2. 肺炎の治療には抗菌薬以外も重要である

 

肺炎になると、発熱や身体のだるさ以外にしんどい症状として考えられるのはせきです。せきは出ると息苦しさが増しますし、身体を使うため疲労感が増してしまいます。

 

肺炎による咳を和らげる薬(咳止め、痰を切る薬など)

肺炎の治療の中心は抗生物質になりますが、咳に対して鎮咳薬(ちんがいやく:咳止め)を使うことも多いです。

咳そのものは細菌やウイルスなどの外敵や痰を体外へ出しやすくする体の防御反応の一つです。その一方で、咳によって体力の消耗や不眠が長期的に続くことで体力が落ちていしまい、症状が悪化する場合もあります。
鎮咳薬をつかうと、これを改善することが期待できます。

また細菌の感染などによって痰の量が増えると、気道がつまり咳などを引き起こることもあります。

 

  • 鎮咳薬(ちんがいやく)

鎮咳薬つまり咳止めには様々な種類があります。

難しい話になりますが、咳は延髄にある咳中枢というところからの指令によって引き起こされます。細菌などによる感染や気道の炎症が存在すると、気道が敏感になったり気道が狭くなったりして、咳中枢に刺激が到達しやすくなることで咳が起こりやすくなります。

 

デキストロメトルファン(商品名:メジコン®など)、ジメモルファン(アストミン®など)、クロペラスチン(フスタゾール®)、ベンプロペリン(フラベリック®)などは主に咳中枢に作用し咳を鎮める薬です。

咳中枢に作用する鎮咳薬としてはコデインという薬も使われています。コデインはオピオイドと呼ばれる種類の薬で、中枢神経(脳や脊髄)にあるオピオイド受容体という咳や痛みに深くかかわる物質に作用することで、咳を鎮めてくれる薬です。

コデインはコデインリン酸塩やジヒドロコデインリン酸塩といった成分で使われていて、単独成分の製剤だけでなく、複数の成分を含む配合製剤(例として、ジヒドロコデインリン酸塩に交感神経刺激薬と抗ヒスタミン薬を合わせたフスコデ®配合錠など)もあります。コデインは咳止めとして以外に痛み止めや激しい下痢を抑える薬としても使われている有用な薬の一つです。

 

気道が狭くなることも咳が誘発される要因となるため、気管支を広げる作用をあらわす薬にも咳を鎮める効果が期待できます。交感神経を興奮させる薬は気管支を広げる作用もあらわすため、交感神経興奮薬のエフェドリンやメチルエフェドリンなどは鎮咳薬としても使われます。またジプロフィリンなどのキサンチン類と呼ばれる種類の薬も気管支を広げる作用があり鎮咳薬として使われています。ジプロフィリンとエフェドリンなどを合わせたアストフィリン®配合錠などの配合製剤もあります。

 

他にはβ刺激薬という気管支を広げる作用を持つ薬(製剤例:スピロペント®)、麦門冬湯(バクモンドウトウ)や小青竜湯(ショウセイリュウトウ)といった漢方薬なども鎮咳薬として使われています。

咳は身体に異物を入れない防御反応です。鎮咳薬で咳を抑えることは、異物を体外に排出しにくくなることにもなります。

鎮咳薬を処方された時は、その使い方や使うタイミングなどをしっかりと医師や薬剤師から聞いておくことが大切です。

 

  • 去痰薬(きょたんやく)

去痰薬は、痰をやわらかくして気道のつまりを改善したり、痰と一緒に細菌やウイルスなどを体外に排出しやすくする薬です。また、気道の線毛運動を促すことで痰を排出しやすくする作用もあります。

薬の成分によっても作用が異なるため場合によっては複数の去痰薬を同時に使う場合もあります。

主に痰をやわらかくする作用を持つ薬としてカルボシステイン(商品名:ムコダイン®)、アセチルシステイン(ムコフィリン®)、フドステイン(クリアナール®、スペリア®)などがあり、主に気道の分泌物を促進して線毛運動を促す薬としてアンブロキソール(ムコソルバン®など)、ブロムヘキシン(ビソルボン®など)、生薬のセネガやキョウニンなどが使われています。

 

ところで、カルボシステイン製剤のムコダイン、アンブロキソール製剤のムコソルバン、アセチルシステイン製剤のムコフィリン(液体を機械によって霧状にして吸う吸入剤)といったようによく似た名前の薬があります。

名前は似ていますが、ムコダインは痰の粘り気をとりサラサラにする作用があり、ムコソルバンは肺や気道の分泌液を増やして線毛運動を促すことで痰を排出しやすくする作用があります。これらを一緒に使うことで作用が強まります。

 

特に飲み薬のムコダインとムコソルバンは一緒に使われることも多く、また服用方法も同じであることも多いなど紛らわしいところもありますが、できるだけ処方指示の通りにしっかり飲みましょう。
 

  • 鎮咳去痰薬

咳を鎮め、痰を排出しやすくする薬です。

エプラジノン(商品名:レスプレン®)、チペピジン(アスベリン®)などの薬が使われています。

相乗効果などを期待して、去痰薬のアンブロキソールやカルボシステインなどと一緒に使うことも多い薬です。

 

3. 咳や痰などの症状に効果が期待できる漢方薬

 

細菌性の肺炎に対する治療の中心は抗菌薬(抗生物質)ですが、咳や痰、息切れといった症状に対して漢方薬が有用となることもあります。

漢方医学では患者個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわし、これに合った薬を選択するのが一般的です。(「証」についてはコラム「漢方薬の選択は十人十色!?」で詳しく解説していますので参考にして下さい)

また、咳などの症状が現れてからすぐに適している漢方薬と症状が長引いている時に適する漢方薬があります。

ここでは咳や痰などの症状に効果が期待できる代表的な漢方薬を解説します。

 

  • 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)

咳や痰などの症状があらわれてから初期に、激しい咳、発汗や熱っぽさ、口の渇きなどがあるような時に適するとされます。

口渇や体全体の熱感に効果が期待できる石膏(セッコウ)や去痰薬作用の期待できる杏仁(キョウニン)などの生薬を含み急性の気管支炎喘息などの治療に使われています。

 

  • 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

咳などの症状があらわれてから初期に、咳、くしゃみ、水っぽい鼻水や痰があるような証に適するとされます。

急性の気管支炎喘息アレルギー性鼻炎などの治療に使われ、花粉症の治療薬としても有用です。

 

  • 麦門冬湯(バクモンドウトウ)

顔が赤くなるような激しい咳があり、粘性があって切れにくい痰を伴うような証に適するとされます。

比較的初期の頃から咳や痰が長引く慢性期に渡って効果が期待でき、慢性の気管支炎喘息百日咳、肺炎の解熱後の咳などの治療に使われています。

 

  • 麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

体力は虚弱で悪寒があるような微熱、咳、水っぽい鼻水、手足の冷えや頭痛などを伴うような証に適するとされます。

名前の由来になっている通り、交感神経を興奮させ気管支を広げる作用などをあらわす麻黄(マオウ)、手足の冷えや関節痛などの改善が期待できる附子(ブシ)、熱や痛み、咳などを鎮める作用をあらわす細辛(サイシン)といった3種類の生薬からできている漢方薬です。

 

  • 清肺湯(セイハイトウ)

咳が長引き、粘性があって切れにくい痰が多く出て、時々血の混じった痰を伴うような証に適するとされます。

名前が「肺の熱をさます」ことから由来されているように、呼吸器症状に有用であることをイメージしやすい漢方薬です。慢性的になった気管支炎咽頭炎気管支拡張症喘息、肺炎など多くの呼吸器疾患に対して効果が期待できます。ダスモック®などの名前で市販薬(OTC医薬品)としても販売されています。

 

この他、比較的長引く咳があり精神不安や喘鳴ぜんめい:呼吸するとゼエゼエする)を伴う時に効果が期待できる柴朴湯(サイボクトウ)、慢性的な咳や痰があって不眠や食欲不振などを伴うような証に効果が期待できる竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)などが咳や痰に対する漢方薬として使われています。

 

一般的に漢方薬は安全性が高く、体質や症状に合う薬を使えば有益な効果が期待できます。ただし、副作用が少ないといっても全くないわけではなく、自然由来の生薬成分自体が体質や症状に合わなかったりすることもあります。

例えば、お腹が緩くなりやすい体質の人に大黄(ダイオウ)などの下剤効果がある生薬は適しない場合があります。また頻度は非常に稀ですが、小柴胡湯(ショウサイコトウ)などの漢方薬によって間質性肺炎が引き起こされたという報告もあります。

自身の体質や症状に合った漢方薬を適切に使うことが大切です。

 

さてここまで肺炎の治療薬について述べてきましたが、肺炎は必ず治療する必要があるのかということについて考えてみましょう。肺炎が自然に治るのであれば、薬を使わない方が良い場合があります。

 

4. 肺炎が自然治癒することはあるのか?

 

抗生物質の出てくる前の時代では、肺炎を治療することができませんでした。しかし、肺炎でみな死んでいたわけではありません。つまり、肺炎は自然治癒することはあります。特に非定型肺炎は症状の軽いことも多く、治療しないで自然治癒することは良くあります。「子供に多いマイコプラズマ肺炎とは?治療期間は抗生剤で1~2週間」でも説明しています。

肺炎にとって抗生物質の価値は、治療しないと死にかねない人を救うことと早く身体を楽にすることにあります。

つまり、命にかかわる重症な人症状が強くてしんどい人には抗生物質を投与する必要があります。

それ以外の人は抗生物質がなくてもなんとかなることになりますので、極論で言えば治療をしなくても大丈夫です。しかしそうは言っても、ちょっとでも症状が楽になりたいのが人情だとは思いますので、抗生物質を使わなくても問題ない人を考えてみます。

 

  • 65歳未満の人
  • 動いても息苦しさのない人
  • 症状が軽くなってきている人
  • そもそも症状の軽い人

 

これにあてはまる人は体調の良くないときに静養するだけでよくなることが多いです。