はいえん
肺炎
細菌やウイルスの感染、薬剤、アレルギーの影響などが原因となって、肺の炎症により息切れなどを起こす。子どもや高齢者では入院になりやすい。
17人の医師がチェック 190回の改訂 最終更新: 2018.08.09

子供に多いマイコプラズマ肺炎とは?治療期間は抗生剤で1-2週間が目安

マイコプラズマ肺炎は子供に多く、熱が出た数日後に咳が出て数週間続くのが典型的です。周りの子供にも大人にもうつるので手洗い・うがい・マスクで対策してください。普通は抗生物質を1週間から2週間飲めば治ります。

1. マイコプラズマだと思ったらチェック!診察が必要な5つのポイント

子供のマイコプラズマ肺炎が心配になったら次の5点をチェックしてください。

  • 生後3か月未満の赤ちゃん
  • 38度を超える熱が3日以上下がらない
  • 顔色が悪い
  • ぐったりして声をかけても反応が弱い
  • 明らかに風邪ではなさそうな症状がある(皮膚の発疹、しこり・できものなど)

どれかひとつでも当てはまれば、病院で診てもらったほうがいいでしょう。

チェックリストでわかること

病院に行く前にチェックするべきなのは、放っておくと悪化するかどうかです。

原因を正確に突き止める必要はありません。原因がマイコプラズマでも、肺炎球菌でも、インフルエンザ桿菌でも、病院に行って薬をもらうのは同じです。

上のリストに当てはまるものがなければ、もう1日様子を見てもいいでしょう。症状に変化がないかよく観察してください。

大人のマイコプラズマ肺炎はどうチェックする?

大人が肺炎かもしれないと思ったら、重症度を示す次のポイントをチェックしてください。

  • 男性70歳以上、女性75歳以上
  • 脱水(皮膚や口の中が乾燥している)
  • 呼吸が苦しい(検査値ではSpO2が90%以下)
  • 意識がもうろうとする、ぼーっとする
  • 収縮期血圧上の血圧)が90mmHg以下

咳や発熱などの症状があって、上のリストのどれかひとつでも当てはまれば、急いで病院に行ってください。

この基準は実際に病院でも使われています(A-DROPと言います)。診察や検査をしたうえ、上の1項目以上に当てはまれば入院になる場合があります。

もっと軽くても抗生物質などの治療をしたほうがいい場合はあるので、症状がつらくて楽にしたいとき、特に心配な症状があるときなどは病院で相談してください。

2. マイコプラズマ肺炎の初期症状は?

マイコプラズマ肺炎の主な症状を、出てくる順にまとめます。

  • 初期症状になりやすいもの
    • 発熱(38度以上の高熱)
    • 頭痛
    • だるい、倦怠感、疲れ、疲労
  • 遅れて出る症状
  • その他の症状
    • 息切れ、息苦しい、呼吸困難
    • 胸の痛み
    • 喉(のど)の痛み
    • 声が枯れる、声が出ない
    • 耳の痛み
    • 吐き気
    • 下痢
    • 皮疹、発疹、皮膚にブツブツが出る
    • 関節の痛み
    • 鼻水、痰(たん)
      • 小さい子供で出るが大人では出にくい
    • 喘鳴喘息のように息がヒューヒュー、ゼーゼー鳴る)
      • 小さい子供で出るが大人では出にくい
    • 錯乱などの意識障害
      • めったに現れない

マイコプラズマ肺炎の咳の特徴

マイコプラズマ肺炎による咳は次の特徴があります。

  • 熱が出て3日から5日経って咳が出る
  • 咳はだんだん強くなる
  • 熱が下がってからも咳が続く
  • 咳は4週間ほど続く
  • 咳が出ても痰は少ない

3. マイコプラズマ肺炎はうつるのか?

マイコプラズマ肺炎はうつります。原因はマイコプラズマという細菌です。

感染経路は接触感染飛沫感染です。飛沫核感染空気感染)はしません。

感染している人と同じ場所で長時間過ごすなど、「濃厚接触」と呼ばれる状況でうつります。学校などでの流行は多くはありません。

健康な若い人にうつることも多いです。マイコプラズマ肺炎と診断された人や、その周りの人は、手洗いマスクなどで予防してください。

家族や友人がマイコプラズマ肺炎にかかったあと、自分も咳が出るようになったら、うつっているかもしれません。病院・クリニックで診察を受けてください。

マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は?

マイコプラズマ肺炎の潜伏期間2週間から3週間ほどです。潜伏期間には症状がありませんが、うつる可能性があります。

また、そもそもマイコプラズマは非常にありふれた細菌です。

咳をしている人に近づいた覚えがなくても、どこかでマイコプラズマに感染していることはよくあります。

マイコプラズマが感染する期間は?

マイコプラズマ肺炎にかかった人は、咳が止まったあとも1週間ほど、体からマイコプラズマを排出しています。

また、もしほかの人にうつっていれば、3週間ほどの潜伏期間を挟んで発症することもあります。

つまり、マイコプラズマ肺炎が治ってから3週間ほどは、周りの人の間でマイコプラズマが感染を続けていることが考えられます。

そこで、周りの誰にも症状がなくなってから3週間ほどは感染予防策をとってください。手洗い・うがいが対策になります。

4. マイコプラズマ肺炎の原因は?

マイコプラズマ肺炎の原因はマイコプラズマという細菌です。

マイコプラズマは普通の環境の中でどこにでもいます。どこでも知らないうちに感染する可能性があります。人から人へ感染して流行することがあります。

周りでマイコプラズマ肺炎にかかった人がいれば、感染予防のため対策をとってください。

  • 症状がある人と必要以上に接触しない
  • 接触したときは手洗いうがいをする
  • 症状がある人はマスクをする
  • 咳が出るときはティッシュなどで鼻と口を押さえ、人から離れ、顔を背ける
  • 使ったティッシュをすぐ捨てられるよう蓋付きのゴミ箱を用意する

マイコプラズマの予防接種はある?

マイコプラズマ肺炎を予防できるワクチン(予防接種)はありません。

5. 大人もマイコプラズマ肺炎にかかる?

マイコプラズマ肺炎は大人もかかります

マイコプラズマ肺炎にかかる人で最も多い年齢は20歳以下の子供です。しかし、大人でもマイコプラズマ肺炎はよくあります。もともと健康な人の肺炎(市中肺炎)の原因として、代表的な病原体は以下です。

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ桿菌
  • モラクセラ・カタラーリス
  • マイコプラズマ
  • クラミドフィラ(クラミジア)
  • レジオネラ
  • インフルエンザウイルス

マイコプラズマ肺炎にかかる人は非常に多いです。赤ちゃんにも感染します。3歳ぐらいの幼児にも、7歳ぐらいの小児にもうつります。

平成天皇と愛子さまがマイコプラズマ肺炎にかかったというニュースを覚えている人も多いでしょう。若い人も、高齢の人もマイコプラズマ肺炎にかかります。

6. マイコプラズマ肺炎の治療は抗生物質?

発熱や咳などの症状があり、マイコプラズマ肺炎が心配になったら、内科などの病院・クリニックで診察を受けてください。主に抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使った治療ができます。

マイコプラズマ肺炎の検査方法は?

マイコプラズマ肺炎を診断するための検査の例を挙げます。

  • 血液検査
    • 炎症の程度、抗体検査など
  • 迅速診断キット
    • 信頼性はあまり高くない
  • 胸部レントゲン
  • 細菌検査
    • 痰などから病原体を見つける
    • マイコプラズマ以外の病原体が原因になっているかどうかを見分ける

症状や経過からマイコプラズマ肺炎が疑われたときに以上のような検査を使って診断します。

マイコプラズマ肺炎は、ウイルス性肺炎や、マイコプラズマ以外の細菌性肺炎と区別しにくいことがあります。複数の病原体に同時に感染(重複感染)することもあります。こうした場合には、以下で説明するマイコプラズマ肺炎の基本的な治療法と少し違う治療がなされます。

マイコプラズマ肺炎の診断基準は?

基幹定点医療機関でマイコプラズマ肺炎が診断された場合、保健所に届け出る基準が決められています。

  • 症状の特徴からマイコプラズマ肺炎が疑わしい
    • 6歳から12歳の小児に多い
    • 潜伏期間は2週間から3週間
    • 飛沫感染する
    • 胸部レントゲンに特徴がある(異型肺炎像)
    • 頑固な咳嗽(咳)
    • 発熱
    • 中耳炎胸膜炎心筋炎髄膜炎などの合併症が出ることもある
  • 検査でマイコプラズマが原因と確定した
    • 気道からマイコプラズマが分離・同定された
    • 気道からマイコプラズマの抗原が検出された
    • 気道からPCR法でマイコプラズマの遺伝子が検出された
    • 血液からマイコプラズマの抗体が検出された
      • ペア血清による抗体陽転または抗体価の有意の上昇
      • 単一血清で間接血球凝集抗体価320倍以上、補体結合抗体価64倍以上、ゼラチン粒子凝集抗体価320倍以上、IgM抗体の検出(迅速診断キット)のいずれか

(健感発第 0308001号別紙「医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準」をもとに作成)

治療のために行われる診断は必ずしもこの基準のとおりとは限りません。

マイコプラズマ肺炎の治療薬は?

マイコプラズマ肺炎の治療では抗菌薬(抗生物質、抗生剤)の飲み薬が中心になります。

よく使われる治療薬の例を挙げます。

  • マクロライド系抗菌薬
    • 商品名:ジスロマック®、クラリス®、エリスロシン®など
  • ニューキノロン系抗菌薬
    • 商品名:クラビット®、シプロキサン®など
  • テトラサイクリン系抗菌薬
    • 商品名:ミノマイシン®、ビブラマイシン®など

ペニシリン系抗菌薬(商品名:サワシリン®など)やセフェム系抗菌薬(商品名:フロモックス®など)はマイコプラズマ肺炎には効きません。

咳が出て病院に行き、薬を飲んでも治らないと思ったらマイコプラズマ肺炎だった…ということはよくあります。薬が効かないと思ったときはもう一度相談に行くといいでしょう。

抗生物質が効かないマイコプラズマ肺炎とは?

最近はマクロライド系抗菌薬が効かないマイコプラズマが増えています。特定の抗菌薬が効かない細菌を耐性菌と言います。

マクロライド系抗菌薬に耐性マイコプラズマが感染していた場合、ニューキノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬を使って治療することになります。

抗生物質の副作用、飲んではいけない人は?

テトラサイクリン系抗菌薬は6歳未満の子どもが飲むと歯が黄色くなることがあります。

飲んではいけないとされる場合に処方されることは普通はありません。もし気になることがあれば処方した医師に質問してください。

7. マイコプラズマ肺炎にステロイドを使う?

重症の肺炎の治療でステロイド薬を使うことがあります

ステロイドと聞くと「怖い」というイメージがあるかもしれません。しかし、ステロイド薬は高い治療効果があり、子供に対してもさまざまな病気の治療で欠かせない役割を担っています。

副作用にも十分注意したうえで処方されます。

マイコプラズマ肺炎にステロイドの効果はある?

ある研究では、マイコプラズマ肺炎で入院した6歳前後の小児患者にステロイド薬を使ったところ、使わない場合よりも発熱期間が4日ほど短くなり、入院期間が2日ほど短くなったという結果が出ています。

関連記事:マイコプラズマ肺炎の子どもが早く退院できた治療とは?(参照文献:J Trop Pediatr. 2014 Oct.

ステロイドは怖い薬?

ステロイド薬はもともと体内にある副腎皮質ホルモンをもとにした薬です。副腎皮質ホルモンは生命維持のために必要です。

ステロイド薬は体の中で副腎皮質ホルモンと同じように働きます。副腎皮質ホルモンは全身のさまざまな臓器に影響しています。副腎皮質ホルモンの働きを補強することで、ステロイド薬の有益な効果が現れます。炎症や痛みを抑える効果、アレルギーを抑える効果などがあります。

ステロイド薬は喘息の治療にも使われます。子供にも大人にも使えます。喘息で重症の発作が起きたときなど、ステロイド薬の点滴が重要な治療手段になります。

一方で、副腎皮質ホルモンの働きが必要以上になることで副作用が起こります。さまざまな臓器に効果があることの裏返しとして、副作用もさまざまな場所に現れます。

ステロイドに副作用はある?

ステロイド薬で出る可能性がある副作用を挙げます。

  • 易感染性
    • ステロイド薬は免疫を一時的に弱くします。細菌やウイルスに感染しやすくなる場合があります。重症のマイコプラズマ肺炎のような場合では治療効果が上回ると考えられます。
  • 高血糖
    • 血糖値が上がりやすくなります。長期間使い続けると糖尿病になることもあります。
  • 蛋白異化亢進
    • 体がタンパク質を消費する働きが強くなります。長期間使い続けると、皮膚が薄くなる、傷が治りにくくなる、筋力低下、白内障などが起こる可能性があります。
  • 脂質代謝異常
    • 体が脂質を合成する働きが強くなります。長期間使い続けると、高脂血症動脈硬化などにつながります。
    • 中心性肥満という副作用も知られています。手足の太さは変わらず、胴体や首などが太る症状です。ステロイド薬の副作用により顔が丸く太った様子は満月様顔貌(ムーンフェイス)と呼ばれます。
  • 骨粗鬆症
  • 胃潰瘍十二指腸潰瘍
  • 高血圧
  • 緑内障

詳しくは「ステロイド内服薬の副作用とは」で説明しています。

ステロイド薬の副作用は、点滴などでステロイド薬を長期間使い続ける場合には特に注意が必要です。普通、マイコプラズマ肺炎でステロイド薬を使うのは短期間です。治療が終わったあとから影響が出ることはありません。

また、ステロイド薬は副作用もあらかじめ考えに入れたうえで使われます。胃潰瘍を防ぐため胃薬も同時に使うなど、副作用には対策が可能です。副作用が出る可能性があっても、重症の肺炎による緊急事態を救う目的が勝ると判断されたときにだけ、ステロイド薬が使われます。

病院で「ステロイドを使います」と言われても怖がる必要はありません。副作用が心配なら、納得できるまで医師に質問してください。

8. マイコプラズマ肺炎の治療期間は?

マイコプラズマ肺炎の治療で抗生物質を飲む期間は1週間から2週間が目安です。

正確に治療期間を何日にするのが最適かは一定の見解がありません。

マイコプラズマ肺炎で入院になる?

マイコプラズマ肺炎では入院しなくていい場合が多いです。外来で飲み薬をもらって治せます。

呼吸の苦しさが強いなど、重症の場合に入院が必要になります。入院期間は重症度や全身の状態によってかなり違います。特に体力が落ちている高齢者などでは入院が長引くことがあります。

マイコプラズマ肺炎は自然治癒しない?

マイコプラズマ肺炎は自然治癒することもあります。次のすべてに当てはまる人は抗生物質を使わなくても悪化することは少ないです。

  • 65歳未満
  • 動いても息苦しさがない
  • 症状はすべて我慢できる程度
  • 症状は軽くなってきている

症状がつらくて軽くしたいときは、抗生物質を使えば早く治ります。

マイコプラズマ肺炎の合併症は?

マイコプラズマ肺炎によって引き起こされることがある問題(合併症)に以下のものがあります。

合併症の中には入院が必要なものや致命的なものもあります。

ごくまれに、マイコプラズマ肺炎が原因でギラン・バレー症候群が引き起こされます。万一マイコプラズマ肺炎と診断されたあとに体の力が入らない感覚がおかしいなどの症状が出たら、主治医に相談してください。

マイコプラズマ肺炎は完治する?

マイコプラズマ肺炎は完治します。治ればマイコプラズマは完全に体からいなくなり、治療を終えても症状は出なくなります。

ただし、次に説明するようにもう一度かかることはあります。また、ごくまれに肺にダメージが残る場合もあります。

マイコプラズマ肺炎は再発する?

マイコプラズマに繰り返し感染することで、マイコプラズマ肺炎に2回かかることがあります

マイコプラズマはインフルエンザウイルスのように非常にありふれた病原体なので、また感染することは珍しくありません。

麻疹はしか)のように、免疫ができて一度しかかからない病気もありますが、マイコプラズマ肺炎は違います。

マイコプラズマ肺炎に後遺症はある?

マイコプラズマ肺炎の大部分は完治します。しかしまれに、肺化膿症(肺の炎症が強くて肺の一部が死んでしまう状態)や膿胸(肺の周りにが貯まってしまう状態)といった病状を通じて肺に損傷が残ったり、膨らみにくくなったり、肺の機能面で影響を残すことがあります。