2017.08.14 | ニュース

AIが医療を変える? イタリアの研究者が思わぬ結果の可能性を警告

医療における機械学習の3つの懸念

from JAMA

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機械学習は人工知能(AI)における技術のひとつです。機械学習を医療に応用する試みは最近も報告されていますが、実際の役に立てるには大きな課題も残されています。イタリアの研究者らが見解を示しました。

イタリアのミラノ・ビコッカ大学の研究者らが、医学誌『JAMA』に寄稿した意見文で、機械学習を医療に応用するうえで想定できる意図しない結果についての考えを提示しました。

著者らは、機械学習が正確な予測やパターン認識によって医療に何らかの変化をもたらすという予測に言及しつつ、望ましくない結果を引き起こす可能性の例を挙げています。

 

自動化された技術に頼りすぎて医師が本来持っている技術が発揮されない懸念が議論されています。研究報告の例として、マンモグラフィーの画像による診断をコンピュータで補助した研究、心電図による診断がコンピュータによる不正確な注釈で妨げられるかを見た研究が挙げられています。

 

機械学習の中で与えられていない情報が考慮されないことにより、機械学習に基づいた判断が誤解を招くことが論点とされています。

例として、機械学習に基づいた予測モデルの中で、肺炎患者の中では喘息を同時に持っている人のほうが死亡のリスクが低いとした研究報告が挙げられています。ここで使われたデータの中では、喘息のある肺炎患者はより慎重な治療を受ける傾向にありました。

 

参照される情報がもともと不確かさを含むため、機械学習の結果も不確かなものになる点が指摘されています。例として、血液中のがん細胞を自動的に見分けようとした研究で、基礎として与えられる情報が人によってばらつくことにより結果も影響されるとした報告が挙げられています。

 

著者らは結論として「機械学習によって判断を助けるシステムの良し悪しは[...]性能の計測値だけに基づくべきではなく、意味のある評価項目において通常のケアと比べて臨床上重要な改善があったという証拠、加えて患者と臨床医の満足に従属するべきである」と述べています。

 

機械学習について、研究者の立場からの意見を紹介しました。

ここで挙げられた論点は、いずれも機械学習に限ったものではありません。検査と身体診察の関係などでも、「検査に頼って文脈や診察の大切さを忘れてはいけない、性能が高い検査も使いかたが大切」といった論調はしばしば唱えられます。このことは、機械学習がほかの検査などと本質的に共通する部分があることによるとも言えるでしょう。

例として挙げられている個々の研究報告については、技術的に乗り越える未来像も想像できます。むしろ著者らの指摘は抽象的であり、機械学習を利用した技術の進歩を方向づけるのは人間の知能であるという当たり前の前提を思い出させるものと言えるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Unintended Consequences of Machine Learning in Medicine.

JAMA. 2017 Aug 8.

[PMID: 28727867]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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