乳がんの症状に気付いていたのに診断が遅れた女性の4つの特徴
乳がんは早い段階で発見できれば治療後10年以上の生存もかなり期待できます。しかし、気になる症状があっても我慢してしまう人もいます。症状に気付いてから診断までが長かった人の特徴が調査されました。
乳がん患者505人の特徴を調査
イランの研究班が、乳がんと診断された患者の調査の結果を医学誌『Medicine』に報告しました。
この研究では、イラン南部で2013年11月から2015年5月のあいだに新しく乳がんと診断された患者が対象とされました。対象者のインタビューと診療録から情報を集め、特徴を集計しました。
患者が
教育、居住地、結婚、がんの種類
統計解析により次の結果が得られました。
結果によると、非識字患者は大学の学位を持っている患者に比べて診断が平均87.42日遅く(95%信頼区間29.68-145.16、P=0.003)、田舎に住んでいる患者は都会に住んでいる患者に比べて診断が平均72.48日遅かった(95%信頼区間35.94-109.03、P=0.001)。独身女性は既婚女性に比べて平均65.99日診断が遅かった(95%信頼区間7.37-124.61、P=0.02)。葉状腫瘍または髄様
癌 は乳管癌に比べて65.99日診断が遅かった(95%信頼区間7.37-124.61、P=0.04)。
次の特徴に当てはまる女性では、症状に気付いてから診断までが長い傾向がありました。
- 最終学歴が中等教育以下
- 田舎に住んでいる
- 独身
がん の種類が葉状腫瘍または髄様がん
症状に気付いてから医療機関で受診するまでの期間を比べると次の結果でした。
一方、乳房の自己触診ができる患者は、そうでない患者に比べて49.07日早く診断されていた(95%信頼区間18.69-79.45、P=0.002)。最初の症状として腫瘤を感じた患者は、腫瘤・分泌物・
疼痛 以外の症状を感じた患者よりも62.01日早く[ママ]診断されていた。
自己触診ができる患者と、最初に気付いた症状が乳房のしこり・分泌物・痛み以外だった患者は、症状に気付いてから受診までが短い傾向がありましたが、症状に気付いてから最終的な診断までは統計的に差がありませんでした。
受診してから診断までの期間について次の結果が得られました。
医師による診断の遅れと関連した唯一の要因は居住地であり、都会に住む患者に比べて田舎に住む患者は平均87.42日遅く診断されていた(95%信頼区間53.82-121.92、P=0.001)。
田舎に住む患者では、受診してから診断されるまでが長い傾向がありました。
乳がんに気付ける症状とは?
教育水準、居住地、結婚、がんの種類によって、症状に気付いてから診断までの長さに違いがあったという報告でした。
この調査はイランで行われているので、教育や医療の格差について日本とは違った状況が反映されている可能性もあります。また、4つの要因はどれも自分ではコントロールしにくいものです。
ただ、自己触診と症状の特徴については気を付けられることがあります。この報告では最終的な診断までの期間に差がないという結果でしたが、医療環境が違う日本では、早く受診することが早い診断につながることも考えられます。
気が付いた症状を医師にしっかり説明したうえ、乳がんが心配だと伝えれば、その時点で適切な検査が受けられます。
乳がんで現れやすい症状に以下のものがあります。
- しこり(硬いかたまり)
- 乳がんの半分近くは乳房の上外側(脇の近く)にできる
- 皮膚がえくぼのように凹む、引きつれる
- 左右の乳房で見た目に差がある
- 乳頭や乳輪の皮膚が荒れる、ただれる
- 乳頭から血の混じった分泌物が出る
- 乳房の
炎症 - 赤み・熱さ・痛み
- 乳房の
むくみ 、腫れ - 脇の下の腫れ・しこり(
リンパ節転移 ) - 腕のむくみ(リンパ節転移による)
- 腕・手のしびれ(リンパ節転移による)
また、この研究のテーマではありませんが、定期的に
乳がんの正しい知識をつけて、何かに気が付いたときに素早く動けるようにしてください。
執筆者
Impact of social and clinical factors on diagnostic delay of breast cancer: A Cross-sectional Study.
Medicine (Baltimore). 2016 Sep.
[PMID: 27661018]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。