メロンやパイナップルで喉がイガイガ? アレルギーと酵素反応の違いとは

「メロンを食べたら喉がイガイガした」
「パイナップルで舌がピリピリした」
「いつも違和感が出るけれども、これってアレルギー?」
夏のフルーツを楽しみにしていたのに、あれ?と不安に感じたことがある人もいるのではないでしょうか。
こうした症状についてインターネットで検索すると、アレルギーについて解説した記事が多く見つかります。実際に、メロンやパイナップルに対するアレルギーがあると思って食べるのを控える人もいます。
しかし、その違和感、実はアレルギーと無関係のことも少なくないと考えられます。原因として知られているのが、果物に含まれる「タンパク質分解酵素」の影響です。このコラムでは、違和感の原因や、アレルギーによる症状との見分け方を解説します。
1. 犯人は「ククミシン」や「ブロメライン」?
メロンには「ククミシン」、パイナップルには「ブロメライン」という
ところが、これらの酵素は人間の口や喉の粘膜のタンパク質にも作用します。障害が出るほどではありませんが、
ククミシンはメロンの種の周りで合成され、果汁中に蓄積されています。また、熟して柔らかくなると、果肉に果汁が染み込んでいくため、食べた時にククミシンの影響が強く出やすくなります[4]。
ブロメラインはパイナップルの芯や皮に近い部分に多く含まれ、メロンとは違って未熟なパイナップルでブロメラインの影響が強く出ます。なお、ブロメラインは80度以上で調理すると熱で
2. アレルギーの可能性は?
上記のように、よく熟れたメロンや、未熟な生パイナップルを食べると、酵素の影響で一時的な違和感を覚える人もいます。
では、メロンやパイナップルのアレルギーなんて存在しないのか、というとそうではなく、食物アレルギーの原因にもなります。メロンやスイカなどウリ科植物に対するアレルギーはイネ科(カモガヤやオオアワガエリなどの植物)花粉に対するアレルギーと同時に起きやすく、イネ科花粉に反応する人はメロンアレルギーに注意が必要です[5]。
酵素反応による症状と、アレルギー症状を自分で見分けるのは容易ではありませんが、参考として以下のような特徴があります。
酵素反応による症状 | アレルギー症状 | |
症状の出る部位 | 喉や舌などに限局 | 唇や顔、全身に広がることも |
症状の性質 | イガイガ・ヒリヒリ | かゆみ・腫れ・赤くなる |
持続時間 | 数分〜10分程度 | 数十分以上 |
メカニズム | 酵素の化学的な反応 | 過剰な |
加熱調理されたパイナップルでも症状が出る人は、酵素反応による症状よりもアレルギーによる症状の可能性が高い、ということも参考になります。
3. 対策は?
何度も食べていて、上記のアレルギー症状に当てはまるようなものが全くない人は、従来通りメロンやパイナップルを食べても大丈夫な可能性が高いです。もし酵素反応による症状が不快であれば、熟れすぎたメロンを避けたり、パイナップルは加熱されたものを食べるようにするとよいと思われます。
一方で、重度の花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎などがあってアレルギー体質の人や、上記のアレルギーを疑う症状が出ている人は、メロンやパイナップルでアレルギーが出ることもあります。広い範囲のじんましんや吐き気、腹痛、めまい、呼吸困難などが出現して危険な状態になることもありえます。また、アレルギーであれば、繰り返し摂取するうちに次第に症状が強くなることも多く、以前に軽症であった人も安心はできません。
こういったアレルギーが心配な人は、アレルギー科、内科、耳鼻咽喉科などを受診してください。詳しく
全ての内科や耳鼻咽喉科で検査・対応が可能な症状ではないので、事前に電話などで問い合わせてから受診するとよいです。アレルギー専門医を標榜しているお医者さんに診てもらうと、より詳しく相談にのってもらえる可能性が高くなります。
なお、メロンやパイナップルによる口や喉の違和感を自覚する人のうち、どれくらいの割合で本当にアレルギーがあるのか、という科学的なデータはありません。ただ、日々アレルギー診療をしている筆者の経験で述べると、メロンやパイナップルによる症状で受診する患者さんは時々いますがほとんどは酵素反応によるもので、真のアレルギーは決して多くありません。
実際に、オレンジ、キウイ、バナナ、もも、りんご、といったフルーツは食品表示基準で表示してアレルギーに配慮するよう推奨されている一方で、メロンやパイナップルは表示推奨対象ではありません[6]。口や喉のイガイガ・ヒリヒリといった違和感を心配しすぎるのは杞憂かもしれません。
4. さいごに
食べた時に違和感を引き起こしやすいメロンやパイナップルについて酵素反応やアレルギー症状を解説しました。
自分自身の身体で起きていることを正しく知って、季節の果物を楽しみたいものです。このコラムが美味しく安全にフルーツを楽しむ一助になれば幸いです。
執筆者
- Maurer HR. Bromelain: biochemistry, pharmacology and medical use. Cell Mol Life Sci. 2001 Aug;58(9):1234-45.
- Harrach T, Eckert K, Maurer HR, et al. Isolation and characterization of two forms of an acidic bromelain stem proteinase. J Protein Chem. 1998 May;17(4):351-61.
- Nakagawa M, Ueyama M, Tsuruta H, et al. Functional analysis of the cucumisin propeptide as a potent inhibitor of its mature enzyme. J Biol Chem. 2010 Sep 24;285(39):29797-807.
- 一般社団法人 日本植物生理学会「みんなのひろば」Q&Aククミシンについて(2025/5/10 閲覧)
- Wensing M, Akkerdaas JH, van Leeuwen WA, et al. IgE to Bet v 1 and profilin: cross-reactivity patterns and clinical relevance. J Allergy Clin Immunol. 2002 Sep;110(3):435-42.
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加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック, 消費者庁令和5年3月作成(令和6年3月一部改訂、2025/5/10 閲覧)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。