アトピー性皮膚炎の基礎知識
POINT アトピー性皮膚炎とは
強いかゆみを伴う発疹(ぶつぶつのできもの)が繰り返して現れる皮膚の病気です。アトピーと呼ばれることも多く、アレルギーを起こしやすい人に見られやすいです。アトピー性皮膚炎の症状は強いかゆみをともなう発疹です。左右対称性に現れ、顔や首、肘、膝に現れ、全身に広がることもあります。皮膚の防御機能が低下しているので、とびひや水いぼなどの感染症にかかりやすいことも知られています。また、目に角結膜炎や白内障、網膜剥離などを起こすこともあります。診断には問診や身体診察、血液検査などを行い、治療にはスキンケアの徹底や塗り薬(ステロイド外用薬など)を用います。アトピー性皮膚炎が心配な人は皮膚科や小児科を受診してください。
アトピー性皮膚炎について
- 良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹
- 皮膚の機能異常(バリア機能の破綻)・アレルギー性
炎症 ・かゆみがアトピー性皮膚炎の発症 に深く関わっている - 国内では人口の約10%にみられるが、うち7-8割は軽症
- 乳児期前半の発症が多い
- 思春期までに改善する場合と成人期以降も治療が必要な場合がある
- アトピー性皮膚炎を起こす、または悪くする原因の代表例
アレルゲン - アレルギー反応を起こす食べ物(鶏卵、牛乳、小麦、大豆など):特に小児期に重要
- 環境(ダニ、ホコリ、ハウスダストなど)
細菌 や真菌 (かび)- 物理的刺激(引っかき傷、洗剤の刺激や洋服、髪の毛の接触など)
- 発汗:汗をかくこと自体に害はないが、かいた汗をそのままにしておくこと
- 寒冷乾燥、高温多湿のように極端な環境
- ストレス
- 過労
- アトピー性皮膚炎に関する
ガイドライン が出ている:アトピー性皮膚炎ガイドライン2021
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の検査・診断
- かゆみを伴う特徴的な
発疹 を繰り返していることで診断される- 乳児は2か月以上、それ以降は6か月以上経過していること
- その他以下の検査を必要に応じて行う
- 血液検査:好酸球・IgE・TARCなど
アレルギー 反応で上昇する値を調べる アレルゲン の検査:アレルギー反応を起こす原因の有無を調べる- 皮膚テスト:アレルゲンのより詳しい検査が必要な場合に行う
- アレルゲンの検査:アレルギー反応を起こす原因を調べる
- 血液検査:好酸球・IgE・TARCなど
アトピー性皮膚炎の治療法
- 治療の原則は以下の3つ:悪循環を断ち切ることで症状を抑える
- スキンケアを徹底し、皮膚の機能を改善させること
- 必要な場所に必要な塗り薬(
ステロイド 外用薬 、タクロリムス)を使うこと - 原因や悪化因子を避けること
- スキンケアは治療開始の時期から再発予防の時期まで長期間最も重要
- 軽い
炎症 であれば、スキンケアのみで落ち着く場合もある - 皮膚を清潔に保つ:刺激の少ない石けんをしっかりと泡立てて、手のひらを使って皮膚のしわの内側まで意識してしっかり洗う・泡は十分に洗い流す
- 入浴時にはかゆみを感じるほどの熱いお湯を使わない
- 入浴剤などは刺激の少ないものを使う
- お風呂の後は十分に保湿する
- 保湿剤の種類は問わないが、使いやすく肌に合うものを使用する
- 肌をこすらない
- 軽い
- 塗り薬により炎症を抑えて、症状を落ち着かせる
- ステロイド外用薬(塗り薬)が基本
- ステロイドは正しく使えば怖い薬ではない
- 一見皮膚がきれいになったように見えても炎症が隠れていることがあるため、十分な量を指定された期間塗り続けることが重要
- ステロイドを適切に使うことで、状態を落ち着かせることが目標
- 使用基準を満たしている場合にはタクロリムスや、デルゴシチニブ(コレクチム®軟膏)、JAK阻害薬(ウパダシチニブ(リンヴォック®)、アブロシチニブ(サイバインコ®)、ネモリズマブ(ミチーガ®))、ジファミラスト(モイゼルト®軟膏)も治療に使うことができる - 場所や症状によりステロイド外用薬と使い分ける
- ステロイド外用薬(塗り薬)が基本
発症 ・悪化因子を取り除く(スキンケアという観点でも重要)- 食物アレルギーがある場合には必要に応じて除去などをする(不必要な除去はしない)
- 室内を清潔にする
- 寝具や肌着は清潔なもの、肌への刺激が少ないものを使用する
- 爪を短くしてひっかかないようにする
- 汗をかいたらすぐに洗い流す
- 乳幼児ではよだれなども悪化の原因となるので、こまめに洗い流す
- 上記の治療に加えて、かゆみの強い場合は抗
ヒスタミン 薬を飲む- かくことで皮膚の状態が悪化することを防ぐ
- 重症例では免疫抑制薬(ネオーラル)や生物学的製剤(デュピルマブ)などを使用することもある
アトピー性皮膚炎に関連する治療薬
ビタミンB6製剤
- ビタミンB6を補い、口内炎や湿疹、貧血、手足のしびれなどを改善する薬
- ビタミンB6は水溶性(水に溶けやすい性質)ビタミンでタンパク質からアミノ酸への分解などを助ける働きがある
- ビタミンB6が不足すると皮膚、粘膜、神経の炎症や貧血などがおこりやすくなる
- ビタミンB6が不足すると中枢神経の異常興奮により痙攣などがおきやすくなる
- イソニアジド(主な商品名:イスコチン)の投与によるビタミンB6欠乏症に使用する場合もある
- 薬剤によってはてんかんの治療などに使用する場合もある
抗ヒスタミン薬(内服薬・注射剤・貼付剤)
- 神経伝達物質ヒスタミンの働きを抑えることでアレルギー反応を抑え蕁麻疹、花粉症、喘息などによる、皮膚の腫れや痒み、鼻炎(くしゃみや鼻みずなど)、咳などの症状を改善する薬
- 蕁麻疹、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息などでは何らかの原因によって体内でアレルギー反応が起こり症状があらわれる
- 神経伝達物質のヒスタミンはアレルギー反応を引き起こす体内物質のひとつ
- 本剤はヒスタミンの働きを抑える作用(抗ヒスタミン作用)をあらわす
- 抗ヒスタミン作用に加え、ほかの作用によってもアレルギー反応を抑える薬剤もある
免疫抑制薬(アトピー性皮膚炎用外用塗布剤)
- 免疫抑制作用により、アレルギー反応を抑え皮膚の痒みや赤みなどを改善する薬
- アトピー性皮膚炎はアレルギー反応などにより強い痒みなどを伴う湿疹がおこる
- アレルギー反応は免疫反応によってアレルギー反応を引き起こす物質が放出されることにより起こる
- 本剤は免疫反応を抑えることでアレルギーなどを引き起こす体内物質の放出抑制作用などをあらわす
アトピー性皮膚炎の経過と病院探しのポイント
アトピー性皮膚炎が心配な方
アトピー性皮膚炎とは、慢性的に(定義では子どもで2か月、成人で6か月以上)、左右対称に広範囲に、典型的な部位に(顔、首、肘や膝の裏など)湿疹が出る病気です。湿疹とは皮膚の表面がガサガサし、赤く炎症を起こし、強いかゆみがある状態です。アトピー性皮膚炎以外にも湿疹を起こす病気はたくさんあります。
ご自身がアトピー性皮膚炎でないかと心配になった時、皮膚科のクリニックが適しています。アトピー性皮膚炎は子供が多くかかる病気であり、治療の期間も長く、また医師によって治療に対する考え方、薬の使い方に違いがありますので、相性が合う医師、クリニック、病院で治療を受けるのが望ましいです。
アトピー性皮膚炎の診断は問診と診察、血液検査で行われます。先述の通り、アトピー性皮膚炎は特徴的な湿疹を繰り返していることで診断されます。またアトピー性皮膚炎を起こす原因として、アレルゲンの検査を行います。
アトピー性皮膚炎でお困りの方
アトピー性皮膚炎の基本的な治療は3つあります。原因となるアレルゲン、刺激(湿疹の部位を手で掻くなど)を避けること、保湿を主体としたスキンケアをすること、必要な場合にステロイド外用剤を使うことです。ステロイド以外の塗り薬としては免疫抑制薬が使われます。飲み薬として免疫抑制薬や、かゆみに対して抗ヒスタミン薬を使うことがあります。
医師によって、塗り薬・飲み薬の使い方が異なります。治療をしていても症状が治まらない場合は、他のクリニックや病院を受診してみるのも良いでしょう。治療の期間も長く、繰り返すことも多い病気なので、医師との相性も大切です。
アトピー性皮膚炎が含まれる病気
アトピー性皮膚炎のタグ
アトピー性皮膚炎に関わるからだの部位
