2016.07.23 | コラム

クラリスロマイシン(クラリス®、クラリシッド®)が効かない?効果や副作用を考える

その抗生物質は本当に必要?クラリスロマイシンばかり出す医者に要注意
クラリスロマイシン(クラリス®、クラリシッド®)が効かない?効果や副作用を考えるの写真
(C) Miyuki Satake - Fotolia.com

この記事のポイント

クラリスロマイシン(クラリス®、クラリシッド®)は必要とされる場面の多い抗生物質です。呼吸器内科そして感染症内科医として勤務してきた医師の経験から、クラリスロマイシンの効果や副作用、注意点を説明します。

クラリスロマイシンはどんな特徴のある抗生物質か?

クラリスロマイシンは多くの感染症に対して使われています。

マクロライド系抗生物質と呼ばれるグループの抗生物質で、非常に多くの感染症に対して有効とされています。

また、マクロライド系抗生物質には、抗菌作用(細菌を殺す作用)以外にも多くの力があると言われています。このことに関しては、クラリスロマイシンの優れている点の章で詳しく説明します。

 

クラリスロマイシンが効果を発揮する病気

抗生物質には適応症というものがあります。抗生物質ごとに決まった適応症であれば、抗生物質はよく効くことになります。

ではクラリスロマイシンにはどんな適応症が決められているのでしょうか?

ここに挙げられた感染症は、皮膚から耳の感染まで非常に多岐にわたっています。また、非結核性抗酸菌やヘリコバクターピロリ菌といった特殊な菌による感染症に対しても効果を発揮します。

 

クラリスロマイシンの優れている点

クラリスロマイシンは重要な抗生物質で、多くの優れた点があります。詳しく説明していきます。

 

◎様々な菌に対して抗菌作用がある

クラリスロマイシンは非常に幅広い細菌に対して有効です。溶血性連鎖球菌、肺炎球菌黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌や一部のグラム陰性桿菌に有効です。

またそれ以外でも、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、抗酸菌といった菌による感染症に対しても有効です。これらの菌に使える抗菌薬は限られているため、クラリスロマイシンは非常に貴重な抗生物質になります。

 

◎炎症を抑える作用がある

抗生物質は菌を殺すあるいは増殖させない作用があります。

しかし、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質には、この作用以外にも良い作用があります。それは、体内に起こっている炎症を抑える作用です。

感染症になると、感染した部位で炎症が起こります。この炎症によって発熱したり、身体がしんどくなったりします。クラリスロマイシンは炎症を抑えることで、全身の症状を楽にする力があります。

 

◎痰(たん)が減ったり痰を出しやすくする作用がある

クラリスロマイシンを飲むと、痰の症状が改善します。これにはいくつかの作用が考えられていますが、重要な作用は以下のものです。

  • 痰の原因となる物質や水分を作りにくくする。
  • 空気の通り道(気道)にある小さな毛(繊毛)の動きを活発にすることで、痰を出しやすくする。

これらの効果によって、クラリスロマイシンを飲むと痰が作られにくくなったり、痰を身体の外に出しやすくなったりなります。特に、痰が多くて悩まされている人にとっては、クラリスロマイシンはありがたい効果の見られる薬になります。

こんなにも良い効果の多いクラリスロマイシンを使う場面はどうしても多くなりますが、もちろん万能の薬ではないことは覚えておかなくてはなりません。それはどうしたことでしょうか?考えていきましょう。

 

クラリスロマイシンを飲むとどんな副作用が出るのか?

どんな薬にも必ず副作用があります。これはクラリスロマイシンも例外ではありません。クラリスロマイシンには副作用は特に吐き気・嘔吐、下痢・腹痛が多いです。

その他の主な副作用は以下のとおりです。

  • 不整脈動悸頻脈(脈拍100/分以上)、徐脈(50/分以下)、胸苦しさ、めまい、立ちくらみ、気が遠くなる
  • 肝臓の障害:食欲不振、だるさ、皮膚が黄色くなる、眼が黄色くなる
  • 皮膚の障害:発赤、水ぶくれ、皮がむける、痛み、かゆみ、唇や口の中のただれ

これ以外にも色々な副作用があります。クラリスロマイシンを飲みだしてから調子が悪くなった人は、処方したお医者さんに相談して下さい。

また、クラリスロマイシンには特有の問題点もあります。それらがどういったものか次の章で説明していきます。

 

クラリスロマイシン特有の困った点

クラリスロマイシンは多くの場面で使われている抗生物質ですが、クラリスロマイシン特有の困った問題もあります。以下に説明していきましょう。

 

◎耐性菌が増えている

クラリスロマイシンは非常に多くの場面で使われています。

しかし、抗生物質は使われれば使われるほど効果が落ちる(耐性菌が増える)ことが分かっています。そのため、クラリスロマイシンの効かない耐性菌が徐々に増えてきています。

例えば、肺炎の原因菌となる肺炎球菌の8割ほどが、マイコプラズマの9割ほどがクラリスロマイシンに耐性であると報告されています。これは非常に由々しき事態です。

 

◎吸収率が悪い

クラリスロマイシンは飲んだ分が全て吸収されるわけではありません。

吸収率はおよそ5−6割と言われており、逆に考えると飲んだうちの半分弱は腸の中に残ってしまいします。これは単に効率が良くないという問題だけでなく、腸の中の常在菌を殺していしまうという問題もあります。どういうことなのか簡単に説明します。

常在菌は、実は免疫の重要な役割を果たしています。

  1. 腸の中には多くの常在菌が、腸に流れていきた食べ物の一部を食べてエネルギーを得ている
  2. 腸の中にはときどき感染の原因となる細菌が入ってくる
  3. 侵入した細菌は常在菌にとってはよそ者であるので、常在菌は自分のエサを取られまいと侵入者を攻撃してくれる

実際にこうしたことが起こって、免疫力に貢献しています。

その常在菌をクラリスロマイシンを飲むことで殺してしまうと、自分の思った以上に免疫力が下がってしまいます

 

◎薬の相互作用を起こしやすい

クラリスロマイシンは薬の飲み合わせに注意しなくてはならない薬です。

多くの薬と相互作用が確認されています。

以下に一緒に飲んではいけない薬を記します。

  • ピモジド(オーラップ®)
  • スボレキサント(ベルソムラ®)
  • タダラフィル(アドシルカ®)
  • エルゴタミン(クリアミン®、ジヒデルゴット®)
  • アスナプレビル(スンベプラ®)
  • バニプレビル(バニヘップ®)

これらの薬をクラリスロマイシンと一緒に飲むと強い副作用が出る可能性があるため、よほどのことがない限り避けなくてはなりません。

また、その他にもクラリスロマイシンと一緒に飲む場合は要注意な薬が多数あります。主なものを以下に記します。

  • ジゴキシン(ジギタリス®)
  • アトルバスタチン(リピトール®)
  • シンバスタチン(リポバス®)
  • カルバマゼピン(テグレトール®)
  • テオフィリン(テオドール®)
  • シクロスポリン(ネオラール®)
  • ベンゾジアゼピン系薬剤
  • 非定型抗精神病薬
  • カルシウム拮抗剤
  • ワルファリンカリウム(ワーファリン®)
  • アピキサバン(エリキュース®)
  • リバーロキサバン(イグザレルト®)

多くの薬が並んでいますが、これだけでもクラリスロマイシンが安易に飲んでいい薬ではないことがわかります。

また、これらの薬以外にも注意しなくてはならないものはあります。クラリスロマイシンを飲む場合は、処方したお医者さんや薬剤師に薬の飲み合わせは大丈夫なのか尋ねるようにして下さい。

 

◎単独で使ってはいけない感染症がある

非結核性抗酸菌症という病気があります。読んで字のごとく、結核と同じ抗酸菌の感染症ではあるが、結核とは関係のないものです。この非結核性抗酸菌症の治療で最も効果を発揮するのがクラリスロマイシンです。

しかし、この感染症の治療でクラリスロマイシンだけを用いて治療すると高確率でクラリスロマイシンが効かなくなる(耐性菌になる)ことが分かっています。そのため、治療には3つ以上の薬を用いることが通常です。

治療に最も有効であるクラリスロマイシンを無効にしないためにも、クラリスロマイシンだけを用いて抗酸菌の治療を行うことは避ける必要があります。

 

クラリスロマイシンを使うならこんなことに注意しよう

クラリスロマイシンを使うにあたって、知っておくべきことが何点かあります。

それらを説明していきます。

◎クラリスロマイシンは妊娠中に飲んで良いのか?

クラリスロマイシンは、動物実験レベルでは胎児に影響を与えることがあります。

しかし、通常の量を飲むくらいであれば、人間の赤ちゃんに影響が出るのかはわかっていません。

クラリスロマイシンと同じマクロライド系抗菌薬の中には、アジスロマイシンやエリスロマイシンといった抗生物質があり、これらは妊娠中にも使いやすい薬です。

ですので、もし妊娠中にクラリスロマイシンを飲む必要がある場合は、アジスロマイシンやエリスロマイシンに変えたほうが良いかもしれません。

もちろんクラリスロマイシンから変更できない病気もあるので、その場合は症状を見ながら薬をやめるべきなのかどうかをお医者さんと相談しましょう。

 

◎クラリスロマイシンの上手な飲み方

クラリスロマイシンには錠剤ではなくドライシロップの形態のものがあります。

特に子どもでは錠剤を飲むことが難しいことも多いので、このドライシロップを使うことで飲めるようになる場合も多いです。

また、クラリスロマイシンを乳酸飲料や柑橘系ジュースやイオン系飲料で飲むのは、苦味が増すのでやめましょう。牛乳や豆乳、アイスクリームなどを使って飲むと苦味が薄れて飲みやすくなります。

 

◎本当に使う必要があるのかをきちんと考える

クラリスロマイシンは幅広い感染症に使用されており、非常に重要な抗生物質の1つです。

しかし、使用される頻度が高くなることで、クラリスロマイシンの耐性菌が増えてしまっています。

最も肺炎を起こす頻度の高い肺炎球菌がそうであるように、もはやほとんどがクラリスロマイシンに耐性化していることも多いです。

これを防ぐためには、「有用な抗生物質だから有効であればどんな感染症に対してでも使う」という考え方から、「抗生物質は本当に必要のあるときだけ使う」という考え方に変わっていく必要があります。

そうすると耐性菌が減るので、クラリスロマイシンの力はもっと発揮できる状況に変わっていきます。

このページのクラリスロマイシンについての情報を使って、みなさんも「今の自分にクラリスロマイシンは本当に必要なのか?」をお医者さんと相談してみてください。

目の前の医者が善い医者であれば、そういった重要な相談にきちんと答えてくれますので患者さんが遠慮する必要はありません。

執筆者

園田 唯

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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