かんしつせいはいえん
間質性肺炎
肺の中の空気の通り道ではなく、肺の支持組織(間質)に炎症が起きた状態
17人の医師がチェック 237回の改訂 最終更新: 2024.10.25

間質性肺炎の基礎知識

POINT 間質性肺炎とは

間質性肺炎は肺を支える組織である間質に炎症が起こった状態です。炎症が進むにつれて間質が厚く、硬くなり肺の動きが悪くなってしまいます。間質性肺炎の原因は不明であることも多いですが、薬剤・放射線・膠原病などが原因になることも多いです。初期の症状は咳や運動時の呼吸困難などですが、進行するにしたがって安静時にも息が切れるようになります。また、慢性的に体内の酸素が少なくなることからばち指(手の爪の根元が膨らんで太鼓のばちのような形になること)という状態になることがあります。症状と画像検査を用いて間質性肺炎と診断することが多いですが、その原因を調べるに採血検査をしたり、肺の組織を一部採取して顕微鏡で見る必要がある場合があります。そのため、気管支内視鏡や胸腔鏡手術を用いて肺の一部を採取することがあります。間質性肺炎が心配な人や治療したい人は、呼吸器内科を受診して下さい。

間質性肺炎について

  • 肺の間質と呼ばれる部分(空気が通る気管支肺胞ではなく、その周りの壁や肺胞同士の間を埋めて、固定している組織)が炎症を起こした状態
    • 炎症が起こると肺胞の壁が壊れ、修復されるときに壁が硬くなったり厚くなったりする
    • その結果、破壊されて縮んだ肺は十分な空気を吸えず、また吸った空気から酸素を体に十分に取り込めなくなってしまう
  • 間質性肺炎には、原因の明らかなものと明らかでないものがある
    • 原因の明らかでないものを特発性間質性肺炎(IIPs)と言い、CT検査の結果や、肺そのものを顕微鏡で見た結果などを踏まえて治療の方針を決めることになる
    • IIPsはその特徴によって以下のように分類される
      • 特発性肺線維症(IPF)
      • 非特異性間質性肺炎(NSIP)
      • 呼吸細気管支炎―間質性肺疾患(RB-ILD
      • 剥離性間質性肺炎(DIP
      • 急性間質性肺炎(AIP)
      • 特発性器質化肺炎(COP)
    • 稀なIIPsとして特発性リンパ球性間質性肺炎(LIP)や、特発性肺胸膜弾性線維症(PPFE)なども知られている
    • IIPsの発症は喫煙と関わりが深いものが多い
    • IIPsのうちどのタイプに分類されるかは判断が難しいケースも多く、専門家でもしばしば意見が分かれる
    • 原因が分かる間質性肺炎としては、以下のようなものが原因になりやすい(これらは原因が明らかなので、IIPsには含まれない)
  • 間質性肺炎は、何らかのきっかけで炎症が一気に悪化することがあり、命に関わる非常に危険な状態である(急性増悪という)
    • 感染
    • 薬剤
    • 放射線 など
  • 間質性肺炎は、一般的な肺炎よりも治療が難しく、一生病気と付き合っていくことになることが多い
    • 特に特発性肺線維症 (IPF) と呼ばれるタイプは進行が早く、一部のがんよりも経過が悪くなることも多い
    • 肺がん心不全合併して、間質性肺炎よりもそちらで致命的になることも多い
  • 特発性間質性肺炎は難病指定疾患であり、病状が進行すると治療補助を申請することができる
    • 身体障害者福祉手帳
    • 介護保険制度
    • 指定難病患者への医療費助成制度
詳細な情報を見る

間質性肺炎の症状

  • 主な症状
    • 呼吸困難や咳、息切れ
      • 病気になった最初は特に症状がないことが多いが、段々と息切れを自覚するようになる
      • 最初は動いた時に息切れを自覚することから始まり、病気が進行するとともに動かなくても息苦しくなる
    • ばち指(指先がふくらんで、爪のつけ根が盛り上がった状態)
症状の詳細

間質性肺炎の検査・診断

  • 血液検査:間質性肺炎の原因や炎症の程度などを調べる
    • 肺の間質へのダメージを調べる:KL-6、SP-D、SP-A、LDHCRPなど
    • 間質性肺炎以外の病気の有無を調べるのにも役立つ
  • 画像検査:肺の炎症の有無や肺の壁の壊れ具合などを調べる
    • 胸部レントゲンX線写真)検査
    • 胸部CT検査:肺の影の形や濃度や位置で原因を推定し、治療決定の参考にする
  • 呼吸機能検査:肺の働きなどを調べ、どれくらい病気が進行しているのかを判断する
  • 気管支鏡気管支内視鏡検査):肺の一部を採って顕微鏡で見ることで、間質性肺炎の原因を推定する
    • 胃カメラ上部消化管内視鏡検査)のように、気管支鏡というカメラを主に口から入れて行う
    • 胃カメラはカメラの先端が胃に向かうが、気管支鏡ではカメラの先端は肺に向かう
    • カメラの先から鉗子(かんし)と呼ばれる肺の組織を噛み取ってくる機材を出して、肺の組織を採ってくる
      • 肺の組織を噛みとってくるため、一定確率で肺が破綻して気胸や肺出血が起こってしまう
      • しかし、組織を見ることで原因や治療法が見えてくることもあるので、病状次第では気胸や肺出血のリスクが負ってでも行うべき検査である
  • ビデオアシスト下胸部手術(VATS):胸腔鏡を使った手術をして肺の一部を切除して間質性肺炎のタイプなどを調べる
    • 手術をして肺の一部を切り取るほどまでしなければ診断がつかない間質性肺炎は多い
    • 仮にVATSを行っても確定診断までは至らないケースもある
検査・診断の詳細

間質性肺炎の治療法

  • 間質性肺炎の原因がある場合にはそれを避けること
    • 免疫の異常が原因の場合には免疫を抑える薬を使用する
      • ステロイド薬
      • 免疫抑制薬
      • 特発性肺線維症(IPF)というタイプには、肺が硬く(線維化)なっていってしまうのを遅らせる薬(ピルフェニドンやニンテダニブ)を主に使用する。ニンテダニブは近年、様々なタイプの間質性肺炎に使われるようになってきている
    • 酸素が足りなく苦しい時は酸素吸入を行う(在宅酸素療法
    • 間質性肺炎が進行して、酸素の取り込み能力以外に、二酸化炭素の排出能力も低下してきた場合には、人工呼吸器が必要になることがある
    • 呼吸のトレーニングや下半身の筋力強化(呼吸リハビリテーション)を行う
  • 喫煙は肺の病気を進行させるので、禁煙は非常に重要
  • 薬の副作用で起こっている場合もあるので、間質性肺炎が起きた時に使っていた薬やサプリメントをよく調べ、原因となりそうな薬を変更したりやめたりすることも必要な場合がある
  • かぜ急性上気道炎)や肺炎がおこると重症になってしまうことが多いので、風邪を引かないように予防することが非常に重要
    • 手洗い、うがいを徹底する
    • 肺炎球菌ワクチンやインフルエンザウイルスワクチンの接種も非常に重要
  • 若年の患者さんでは肺移植が検討されることもある
治療法の詳細

間質性肺炎のタグ

間質性肺炎に関わるからだの部位