違う病因の間質性肺疾患に対する運動の効果
オーストラリアの研究班が、違う原因による間質性肺疾患の患者142人を対象に、運動の効果を調べる研究を行い、専門誌『Thorax』に報告しました。
対象となった142人は、以下のように違う種類の間質性肺疾患を持っていました。
- 特発性肺線維症:61人
- 石綿症:22人
- 結合組織疾患関連間質性肺疾患:23人
- その他:36人
特発性肺線維症は原因不明ですが、一般に病気の進行が早いことで知られています。石綿症は、石綿(アスベスト)を長年吸い込むことで発生します。
強皮症やシェーグレン症候群などの膠原病(こうげんびょう)に分類される病気が間質性肺疾患をともなう場合は、結合組織疾患関連間質性肺疾患と呼ばれます。
この研究は、違う種類の間質性肺疾患に対して運動が効果を示すかを調べています。
対象者はランダムに2グループに分けられ、8週間の運動訓練を受けるグループ、通常のケアを受けるグループとされました。
全体として効果あり、石綿症・特発性肺線維症で有効
訓練後に次の結果が得られました。
運動訓練は、間質性肺疾患の患者で6分間歩行距離(25m、95%信頼区間2-47m)、健康関連QOL(CRDQおよびSGRQ-I)を有意に増加させた。結合組織疾患関連間質性肺疾患に比べて、石綿症および特発性肺線維症においてより大きな改善が、6分間歩行距離、CRDQ、SGRQ-Iおよび呼吸困難において見られた。
運動訓練をしたグループでは、全体として6分間に歩ける距離が平均25m長くなっていました。また、生活の質(QOL)も改善していました。
間質性肺疾患の種類ごとに比べると、石綿症と特発性肺線維症の人で改善が大きく現れていました。
研究班は「運動訓練は間質性肺疾患患者の全体に有効であり、石綿症および特発性肺線維症に対して臨床的に意味のある利益が得られた」と結論しています。
間質性肺疾患に運動は有効?
間質性肺疾患の種類を問わない全体として運動の効果が見られたという結果を紹介しました。
間質性肺炎の治療としては、効果を示した薬剤もあるものの、肺を発症前の状態に戻すほどの効果は期待できません。長年病気と付き合うことになる人も多く、日常生活のケアなども重視されます。運動をうまく取り込むことで生活を維持する役に立つかもしれません。
一方、息切れなどの症状があるときは過労など負担の強いことを避けるという考え方もあります。上に紹介した研究結果から、全体として運動は有効と予想することが支持されますが、効果を見込んで運動訓練を頑張ろうと思えるかどうかは、個人の感じ方や価値観にもよります。
病気の種類によって、石綿症・特発性肺線維症の人とそうでない人で判断を変えるべきかどうかは、今後の研究課題となるかもしれません。
執筆者
The evidence of benefits of exercise training in interstitial lung disease: a randomised controlled trial.
Thorax. 2017 Feb 17. [Epub ahead of print]
[PMID: 28213592]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。