かんしつせいはいえん
間質性肺炎
肺の中の空気の通り道ではなく、肺の支持組織(間質)に炎症が起きた状態
17人の医師がチェック 210回の改訂 最終更新: 2018.08.01

間質性肺炎の診断のために行う検査は?血液検査、画像検査、気管支鏡検査など

間質性肺炎が疑われた場合、どのようなタイプの間質性肺炎で現在どれくらい進行しているのかという点が、今後の治療を考える上でも、経過を予想する上でも重要です。そのために必要な各種検査に関してここでは解説していきます。

1. 血液検査

血液検査は残念ながら決して万能な検査ではないので、血液検査のみで間質性肺炎を診断することはできません。もともとあると分かっている間質性肺炎が良くなったあるいは悪くなったと診断することもできません。ただし、診断の補助になったり、病状を判断する参考になったりすることも多いので、血液検査はしばしば行われています。以下では代表的な血液検査に関して解説していきます。

KL-6とは?

KL-6はシアル化糖鎖抗原と呼ばれる物質の一種です。名前はKrebs von den Lungen-6の略で、Krebs von den Lungenとはドイツ語で肺癌を指します。名前から分かるように、もともとは肺癌の診療で役に立つ「腫瘍マーカー」としての役割を期待されていた検査ですが、後に間質性肺炎でしばしば高い値を示すことが分かってきました。

KL-6が高くならないタイプの間質性肺炎もあるので決して万能の検査ではありませんが、もともと間質性肺炎の診断がついている方のKL-6が上がってきたら間質性肺炎が悪くなっている可能性が高そう、逆に下がってきたら間質性肺炎の病勢が落ち着いている可能性が高そう、というような使い方が出来ます。ただし、上に述べた通りもともとは腫瘍マーカーとして開発されたものであり、肺癌膵癌乳癌などの悪性腫瘍でも高い値になることには注意が必要です。

やや特殊な検査なので、クリニックや病院で採血したあと外部の検査機関に提出することも多く、採血してすぐに結果は出ないことも多いですが、大きい病院ではKL-6は院内で検査が出来て当日中に結果が分かることもあります。

SP-D、SP-Aとは?

SP-D、SP-Aは肺サーファクタント蛋白と呼ばれる物質の一種で、英語での名称であるpulmonary Surfactant Protein-D, Aを略してそれぞれSP-D、SP-Aと書かれます。肺サーファクタント蛋白とは肺の中で分泌されている潤滑剤のようなものなのですが、肺が間質性肺炎などで壊されると血管の中に入ってきて、採血した時のSP-DやSP-Aが正常よりも高い値になると考えられています。

SP-D、SP-Aは細菌性肺炎、喫煙者、心不全患者などでも上昇することがあるとされており解釈には注意が必要ですが、KL-6と同様に間質性肺炎の病勢を評価する参考として有用な検査です。

やや特殊な検査なので、クリニックや病院で採血した後に外部の機関で検査されることが一般的であり、早くても数日は結果が出るまでにかかることが多いです。

動脈血液ガス分析とは?

血液は酸素と二酸化炭素を運ぶ役割があります。肺で血液は酸素を受け取り二酸化炭素を放出します。血液は肺を通ったあと心臓から全身に送り出され、全身の隅々に酸素を送り届けます。そして不要なガスである二酸化炭素を受け取ってまた全身から肺へと戻っていきます。

心臓から全身に血液が送り出される時に通る血管が動脈、全身から肺へと還っていく血管が静脈です。普通の採血は肘の静脈から行いますが、間質性肺炎の状態を評価するために動脈から採血を行うことがあります。動脈から採血したほうが、肺でどれくらい酸素を取り込めているか、二酸化炭素を放出できているかが分かるからです。動脈採血は手首の脈打っている血管(橈骨動脈)あるいは足の付け根の脈打っている血管(大腿動脈)から医師が行うのが原則です。動脈は静脈よりも血圧が高く、血が止まりにくいので、採血後はしっかり押さえておく必要があります。

動脈血液ガス分析では、動脈から採った血液中の酸素濃度(PaO2)や二酸化炭素濃度(PaCO2)を調べます。単位はTorr(トル)といいますが、mmHgと同じ意味です。PaO2は正常では70Torr以上くらいが目安になります。PaO2が60Torr未満の状況が1ヶ月以上持続する場合には、慢性呼吸不全の状態ということになります。また、呼吸不全のうち二酸化炭素濃度が高くない場合(PaCO2が45Torr以下)をI型呼吸不全といいます。二酸化炭素濃度が高い場合(PaCO2が45Torrより大きい)をII型呼吸不全といいます。

単純に比較するのは難しい場合もありますが、余分なガスである二酸化炭素が貯留しているぶん、II型呼吸不全はI型呼吸不全よりも良くない状態ということになります。

間質性肺炎の病状が進行してくるとまずは酸素の取り込みが不十分になりI型呼吸不全になることが多いですが、病状がより進行してくるとII型呼吸不全になることもあります。

2. パルスオキシメータ、サチュレーションモニター、SpO2

動脈血液ガス分析をすれば血液中の酸素濃度を調べることができますが、動脈からの採血を頻繁に行うのは大変なので、痛くなくて簡単に酸素濃度を測定出来るようにという目的で開発されたのがパルスオキシメータです。

パルスオキシメータは皮膚を通じて血液中の酸素濃度を測る装置です。指先に装着することが多いですが、耳たぶや額などにつけて測ることもあります。動脈血での酸素濃度はPaO2(単位はTorr)と言うのに対して、パルスオキシメータでの酸素濃度はSpO2(単位は%)あるいはサチュレーションと言います。細かくは様々な条件によるのですが、おおむねPaO2が60TorrならばSpO2は90%程度、PaO2が70TorrならばSpO2は93%程度が対応していると考えることができます。

パルスオキシメータは指につけながら運動もできるので、歩いたりシャワーを浴びたりして体を動かしている時に酸欠になっていないかどうかチェックできるというのも大きなメリットです。ただし酸素濃度は連続的に測れますが二酸化炭素濃度は分からないので、動脈血液ガス分析も必要に応じて行います。

パルスオキシメータは手軽に扱えるのが特長です。重症な間質性肺炎の患者さんはご自身で購入してお持ちの方も多いです。手頃なものは数千円〜数万円程度で売っています。

SpO2の正常値は94%以上くらいとすることが一般的です。ただしSpO2が94%以上あるからと言って、肺に病気が無いとは決して言いきれません。また、II型呼吸不全と呼ばれる状態になるほどの重症な間質性肺炎の場合にはSpO2が高すぎない方がむしろ良い場合もありますので、酸素を吸わないといけないような重症の間質性肺炎の場合には主治医の注意をよく聞いて、酸素の量を間違えないようにしてください。具体的には、酸素を吸うべき量を主治医から指示されますので、それを超えてむやみに多くの酸素を吸わないようにするべきです。

写真:パルスオキシメータ

3. 6分間歩行試験

間質性肺炎の患者さんでは、動いているときの息切れは代表的な症状です。安静にしている時に行う検査だけではなく、動きながら検査をすることも重要になります。

運動しながらの検査ということで、自転車を漕いでもらう等の方法もありますが、最も簡便で広く行われているのが6分間歩行試験です。

6分間歩行試験は名前の通り、パルスオキシメータを装着しながら6分間歩いてもらう検査です。患者さんには6分間で出来る限り長い距離を歩くことを目標としてもらいます。そして、歩行距離、息切れの程度、心拍数、SpO2の推移などを見て、患者さんがどの程度運動に耐えられるのかをチェックします。息切れの程度はBorg Scale(ボルグスケール)という指標により0-10の範囲で自覚症状を評価します。

6分間歩行試験は歩くだけという地味な検査ではあります。しかし安静時にはSpO2が問題なく、動くとSpO2が低下するという患者さんは非常に多いので、間質性肺炎の診断に必須では無いものの非常に重要な検査と言えるでしょう。

4. 画像検査

レントゲン検査(X線写真)

間質性肺炎を診るうえで最も重要な検査は、胸部レントゲン検査やCT検査などの画像検査といえるでしょう。レントゲンには手軽に撮影できるメリットがあり、1枚の写真で肺全体が見えるという点でも優れています。間質性肺炎は肺に異常な影が全体的に出現して、その後に肺が固くなって潰れていってしまう病気なので、レントゲンで肺全体が見えると全体的に肺が小さくなってしまっているかどうかが分かりやすいです。ただし、間質性肺炎で出てくる異常な影が軽微なうちは、レントゲンで影を見つけることは難しく、レントゲンだけで間質性肺炎の早期診断をするのはとても難しいと言わざるをえません。

CT検査

間質性肺炎による異常を検出するためにはレントゲンよりもCTの方が精密な検査です。CTでは肺を輪切りにして観察できるので、肺に出てきている異常な影がどのような見た目でどのような分布になっているかを把握できます。したがって間質性肺炎の有無を診ることはもちろん、どのような原因で間質性肺炎が起きているか推測するのにも役立ちます。初めて間質性肺炎の診断をされる際や、節目節目ではレントゲンだけではなくCTも撮影されることになるでしょう。間質性肺炎の患者さんでは、そうでない患者さんよりも肺癌などその他の呼吸器疾患にかかるリスクも高いので、間質性肺炎以外の病気を見つける目的でもCTは有効な検査となります。

間質性肺炎の患者さんでは一般に胸に放射線治療を行うと、放射線性肺臓炎、間質性肺炎急性増悪を起こす可能性があり危険なのですが、CT検査のように検査で使われる程度の放射線量であれば問題ないと考えられていますので、安心してCT検査を受けてください。写真:CT検査

蜂巣肺(蜂窩肺)ってなんのこと?

間質性肺炎の病状がかなり進んでくると、硬くなった肺に3mmから10mmくらいのサイズの穴が背中側の下の方にポコポコと空いてくることがあります。こうした穴が集まってくるとハチの巣のように見えるということで蜂巣肺(ほうそうはい)と呼んでいます。英語でhoneycomb lung(ハニカム・ラング)というのでハニカムなどと専門家は呼んだりもします。ひとつひとつの穴は1mmから3mmほどの厚みであり、それぞれの穴はその壁を共有していることが典型的です。

蜂巣肺の見た目は特発性肺線維症(IPF)という最も代表的な間質性肺炎でよく見られるとされており、診断の際にも重要視されます。

しかし、蜂巣肺があることを画像から診断するのは難しいことがあります。なぜならば、間質性肺炎で肺が縮むことで、空気の通り道である気管支が周囲から引っ張られることで広がってしまい(牽引性気管支拡張)、これが蜂巣肺に似た見た目になることがしばしばあるからです。また、肺気腫というタバコなどの影響による肺のダメージでも肺に穴が空いてくることはあり、やはり蜂巣肺との区別が難しい場合があります。

蜂巣肺であるかどうか、というのは専門家でもしばしば意見の分かれるところだということを、患者さんには知っておいて頂けると良いかと思います。

核医学検査(シンチグラフィ、PET検査など)

特殊な放射線検査としてガリウムシンチグラフィ、PET(ペット)検査、肺血流スキャン、換気スキャンなどの核医学検査と呼ばれるものがあります。しかし、これらが間質性肺炎に対する検査としてどれくらい役に立つのかという評価は定まっておらず、どのような状況で行われるべきかはハッキリしないのが現状です。

例として1つ挙げると、PET検査は肺の中で炎症を起こしている部分が画像上光って見えるという検査なのですが、その光り具合を見ることで間質性肺炎による炎症がどれくらい激しいものであるか推定できるかもしれないと言われています。また、特に強く光っている部分があれば、そこに肺癌が隠れているのを見つけることも出来るかもしれません。便利な検査ではありますが弱点もあり、例えば肺の一部が光っていても、その原因が間質性肺炎による炎症なのか肺癌なのかというところまでは分かりません。また、糖尿病の方や著しい肥満の方などでは光り方が変わってしまい、有意義な検査になりません。さらに間質性肺炎そのものに対するPET検査は保険が適用されず10万円前後の検査費用がかかることが一般的です。既に、早期胃癌以外の何らかのの診断をされている患者さんの場合にはPET検査は保険適用となります(2018年3月現在)。

なお、間質性肺炎の患者さんでは一般に胸に放射線治療を行うと、放射線性肺臓炎、間質性肺炎急性増悪を起こす可能性があり危険なのですが、核医学検査のように検査で使われる程度の放射線量であれば問題ないと考えられていますので、安心して検査を受けてください。

5. 呼吸機能検査(スパイロメトリー、スパイログラム)

呼吸機能検査では何が分かる?

まずは呼吸機能検査とは何かという点から説明します。肺機能検査だとか、スパイロメトリースパイログラムなどとも呼びます。この検査は患者さんには「肺活量の検査」というと一番イメージしやすいと思います。マウスピースをくわえて口呼吸をし、「吸って」「吐いて」「思いっきり吸って」「勢い良く吐いて」などの指示に従って呼吸をすることで、空気を吸う能力、吐く能力、酸素の取り込み能力などをチェックする検査です。

間質性肺炎は基本的には肺が硬くなって次第に小さくなっていってしまう病気なので、肺活量が減少していくことが特徴です。間質性肺炎が進行しているかどうかは胸部CTでも分かりますし、間質性肺炎の早期発見には胸部CTの方が有用です。しかし、呼吸機能検査では例えば半年間で肺活量が3.55リットルから3.20リットルに0.35リットル減ってしまった、というように数字で病気の勢いを評価できるところに利点があります。胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査と組み合わせて呼吸機能検査を行うことで、より詳細に間質性肺炎の病状、病勢を把握することができると言えます。

拘束性障害とは?

拘束性障害(こうそくせいしょうがい)は呼吸機能検査における異常のひとつです。拘束性換気障害ともいいます。簡単に言うと、肺活量が低下している状態を指します。

ゆっくり息を吐き出したときに吐き出せる空気の最大量を肺活量(VC: vital capacity)と呼びます。仮に肺が健康とした場合に性別・年齢・身長から予想される肺活量に対して、実際に何%の肺活量があるかという値を%VCと呼びます。%VCが80%未満になる状態を拘束性障害といいます。

拘束性障害を呈する肺の病気として間質性肺炎は代表的なものです。ただし、間質性肺炎も軽症あるいは初期であれば拘束性障害を認めないケースが多々あります。他に拘束性障害を呈するケースとしては、肺結核の後遺症や、手術で肺の一部を切除した後の場合などが主です。

閉塞性障害とは?

閉塞性障害(へいそくせいしょうがい)は呼吸機能検査における異常のひとつです。閉塞性換気障害ともいいます。簡単に言うと、勢い良く息を吐けない状態を指します。勢い良く息を吐き出したときに吐ける空気の最大量を努力性肺活量(FVC: forced vital capacity)、勢い良く息を吐き出した時に最初の1秒間で吐ける空気の量を1秒量(FEV1: forced expiratory volume in 1 second)と呼びます。FEV1÷FVCに100をかけたものを1秒率(FEV1%)といいます。つまりFEV1%は、吐き出せる最大量のうち何%を最初の1秒間で吐き出せるかという指標になります。

正常ではFEV1%は70%以上あるはずなのですが、空気の通り道が何らかの理由で狭くなっている場合には、最初の1秒間では努力性肺活量のうち70%未満しか吐き出せません。つまりFEV1%は70%未満になります。この状態を閉塞性障害といいます。

閉塞性障害を呈する肺の病気としては肺気腫慢性閉塞性肺疾患COPD)、気管支喘息などが有名です。間質性肺炎だけでは閉塞性障害にはならないはずなので、間質性肺炎の方で閉塞性障害が見られる場合には、間質性肺炎以外の病気の合併を考慮して検査を進めていく必要があります。

なお、拘束性障害と閉塞性障害の両方がある場合を混合性障害、あるいは混合性換気障害と呼びます。

肺胞拡散能(DLco)とは?

上記で肺機能検査における拘束性障害と閉塞性障害に関して説明しました。拘束性障害も閉塞性障害も無いとすれば、肺活量もあるし、勢い良く吐き出す力もある、つまり肺の換気能力としては万全ということになります。

では、換気能力が万全ならば肺の機能も万全と言えるでしょうか? 実はほかの機能も大切です。肺には肺胞から酸素を血液の中に取り込むという重要な役割もあります。いくらしっかり換気ができて肺にフレッシュな空気を取り込めても、肺から体内に酸素が取り込めなければ良い肺機能とは言えません。

肺における酸素取り込み能力の指標がDLcoです。間質性肺炎で肺がダメージを受けるとDLcoも低下してくるのが一般的です。肺活量が低下するよりも先にDLcoが低下してくるケースもよくあります。肺活量や1秒量などとは異なり、呼吸機能検査において必ず測定される項目ではありませんが、DLcoも間質性肺炎の病状を考える上で非常に参考になる検査と言えるでしょう。

6. 心臓関連の検査

心電図検査はなぜ必要?

心電図検査は特に病気がない方の健康診断でも毎年行われることがあるように、手軽に出来る重要な検査です。なので、間質性肺炎の方でも心臓という重要な臓器の異常を手軽に調べられるという意味で価値のある検査です。

これに加えて間質性肺炎の方で心電図検査を行う意義として、「肺高血圧症」の有無や程度をチェックする目的があります。肺高血圧症とは、心臓から肺に送り出す血管(肺動脈)において高血圧になってしまう状態を指します。間質性肺炎そのものの影響でも肺高血圧症は起こりえます。ほかに膠原病(こうげんびょう)といって自分の免疫反応が自分自身を攻撃してしまうなどして全身の関節や皮膚、血管、筋肉など多臓器にダメージを与えるような病気の影響で間質性肺炎と肺高血圧がそれぞれ関連しあって起きていることもあります。

肺高血圧症は進行してくると呼吸と血液の循環がうまくいかなくなるので、間質性肺炎とはまた別の話として息切れが出るようになってきます。したがって、肺高血圧症の有無や程度をチェックしつつ、必要があれば適宜治療を行っていきます。

心電図検査は手軽な検査ではありますが、肺高血圧症の有無や程度を調べる検査の精度としてはあまり高くはありません。そのため、肺高血圧症に関してより詳しく調べる必要がある場合にはまずは心臓超音波心エコー)検査が行われることが多いです。

心臓超音波(心エコー)検査はなぜ必要?

間質性肺炎の方で心臓超音波(心エコー)検査を行う意義として、心臓全体の動きが十分かどうかを見ることに加えて、「肺高血圧症」の有無や程度をチェックする目的があります。肺高血圧症とは、心臓から肺に送り出す血管(肺動脈)において高血圧になってしまう状態を指します。間質性肺炎そのものの影響でも肺高血圧症は起こりえます。ほかに膠原病(こうげんびょう)といって自分の免疫反応が自分自身を攻撃してしまうなどして全身の関節や皮膚、血管、筋肉など多臓器にダメージを与えるような病気の影響で間質性肺炎と肺高血圧がそれぞれ関連しあって起きていることもあります。

肺高血圧症は進行してくると呼吸と血液の循環がうまくいかなくなるので、間質性肺炎とはまた別の話として息切れが出るようになってきます。したがって、肺高血圧症の有無や程度をチェックしつつ、必要があれば適宜治療を行っていく必要があります。

肺高血圧症の有無や程度を推測する上で、体に負担が少ない検査としては心臓超音波検査は最も有用な検査と言えるでしょう。肺動脈付近に流れる血液の流速を見ることで、肺動脈の血圧を推測することが出来るためです。

心臓カテーテル検査はなぜ必要?

間質性肺炎の方では、心臓から肺に送り出す血管(肺動脈)において高血圧になってしまうという肺高血圧症を合併することがしばしばあります。肺高血圧症の有無や程度は心臓超音波(心エコー)検査である程度推測できるのですが、あくまで推測に過ぎず、正確に診断をして治療に繋げていくためには実際に肺動脈内の血圧を測定してくる必要があります。

そのために行われる検査が心臓カテーテル検査です。カテーテルというのは細い管です。足の付け根や首から血管の中にカテーテルを入れて、心臓を経由して肺動脈内の圧を直接測定します。検査入院が必要になるケースも多いですが、日帰りでの検査を行っている施設もあります。

心臓超音波(心エコー)検査とは異なり、やや苦痛を伴う大掛かりな検査にはなりますのでそれほど気軽には行えませんが、肺高血圧症の診断と程度をハッキリとさせて治療していくためには重要な検査となります。

7. 気管支鏡検査

胃カメラ大腸カメラのイメージは湧いても、「肺カメラ」である気管支鏡検査は聞き慣れない方が多いかと思います。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)では鼻や口からカメラを入れて、飲食物の通り道である食道を通って胃の方へとカメラを進めていきます。「肺カメラ」(気管支鏡検査)では基本的には口からカメラを入れて、空気の通り道である気管・気管支の方へとカメラを進めます。そこで気管支の中を観察して、間質性肺炎においては気管支肺胞洗浄(BAL: bronchoalveolar lavage)、経気管支肺生検(TBLB: transbronchial lung biopsy)などの検査を施行していきます。間質性肺炎があることが分かったとき、採血や胸部CTでもどんなタイプの間質性肺炎なのかを調べる検査はある程度できますが、やはり直接的に肺の中を調べて、どのような間質性肺炎なのか調べることが必要になるケースはしばしばあります。また、肺の中から特殊なウイルスや菌が検出されてこないかどうかなどを調べることで、間質性肺炎以外の肺疾患を検出することもできます。ただし、気管支鏡検査まで行っても確定診断が必ずつけられるわけではありません。どのような原因で間質性肺炎が起きているかを診断するのは非常に難しいことなのです。以下では、気管支肺胞洗浄(BAL)と経気管支肺生検(TBLB)について簡単に解説します。

気管支肺胞洗浄検査(BAL)

気管支肺胞洗浄(BAL)は、一般的には150mlほどの食塩水を肺の中に流し込んだ後にその液を回収することによって、カメラが届かない肺の隅々にある細胞や微生物を調べる検査です。細胞の種類によってどのような間質性肺炎であるか見当がつくこともありますし、微生物の種類によっては特殊な感染症を診断することも出来ます。BALは肺の一部をいったん水浸しにしてしまい、流し込んだ食塩水も150mlのうち100mlくらいまでしか回収出来ないので、肺の一部は水浸しのままになってしまいます。この食塩水は自然に吸収されるので通常は問題になりませんが、もともと呼吸の状態が悪い場合にはこの検査でさらに呼吸の状態が悪くなり危険な場合があります。また、原因のよくわからない間質性肺炎、すなわち特発性間質性肺炎に対してBALを施行したところ2.4%の患者さんで急激に間質性肺炎の病状が悪くなってしまった(急性増悪した)という報告があります。

つまり、間質性肺炎に対してBALを行うことは、命の危険を引き起こす場合があるのです。したがって、医師は間質性肺炎の患者さんに対して安易にBALは施行しません。危険を冒してでも、今後の治療のために是非必要であると判断したうえで患者さんに提案します。BALを行う場合には、検査が必要な理由だけではなく危険性に関しても、検査前に把握しておくべきでしょう。検査によって病状が悪化する可能性をどうしても心情的に受け入れがたい場合には、担当医にその旨を相談してみましょう。BALを施行しない範囲内で最善の治療代替案を提案してくれるはずです。

参考文献:Tohoku J Exp Med 1994 ; 174 : 379-386.

経気管支肺生検(TBLB)

経気管支肺生検(TBLB)は、肺の縁の方から肺の一部分を気管支鏡経由で採取してくる検査です。先端に小さな洗濯ばさみのような装置のついたワイヤーを気管支鏡から出して、肺の一部分を摘んでちぎりとってきます。TBLBにより数mm大の肺が採取できるので、これを顕微鏡でよく観察(病理検査)することで、どのような間質性肺炎であるかを診断できる場合があります。ただし数mm大の小さい検体しか取れないので、これだけでどのような間質性肺炎であるかを確定できるケースは多くありません。

TBLBによって引き起こされる問題(合併症)としては、肺の縁の方をちぎり取ってくるので、そこから空気漏れを起こして肺がしぼんでしまう「気胸」が最も有名です。多少の空気漏れであれば安静にして様子を見ているだけで治りますが、程度によっては漏れた空気を逃がすために胸腔ドレーンというチューブを体表から刺しこんだり、穴を閉じるための手術が必要になることもゼロではありません。また、手術が出来ないほど状態の悪い患者さんでは、急性増悪を合併するなどしてそのまま亡くなってしまうこともやはりゼロではありません。それほどの重大な合併症になることはめったにありませんが、それでも考えられる危険は見越して計画を立てる必要があります。そこで、危険を冒してTBLBを行う価値のある状況なのかどうか医師は慎重に判断しますし、検査に際しても細心の注意を払っています。

重大な合併症になってしまうことは決して多くありませんが、一定の確率で起こりうるものとして、TBLBを受けられる患者さんは事前に検査の必要性とリスクを知っておく必要があるでしょう。気胸以外の合併症としては、麻酔薬に対するアレルギー反応や、肺を取ってきた部分からの出血などがあります。したがって血液が固まりにくくなる薬を飲んでいる患者さんは、基本的にはいったん休薬して、薬の効果がなくなるのを待ってからTBLBを行います。

8. 外科的肺生検

胸腔鏡下肺生検(VATS)

気管支鏡検査による経気管支肺生検(TBLB)で採取できる肺組織は数mm大であり、間質性肺炎の種類を診断するには小さすぎることが多いです。そこで、手術をして数cm大ほど、ちょっと大きめに肺をとってきてしっかり診断をつけようという方法が外科的肺生検です。多くは胸腔鏡下肺生検(VATS: video-assisted thoracoscopic surgery、バッツ)という方法が使われます。VATSは胸に小さな穴を開けて胸腔鏡というカメラを入れる方法です。胸腔鏡補助下での手術が難しい場合には開胸肺生検という方法がとられることもあります。開胸とは肋骨(ろっこつ)等の骨を切って肺を大きく露出する手術のことです。

がんの手術のように悪いものを取ってくるような手術は患者さんも目的が理解しやすいのですが、診断のために肺を一部分とってくる手術をするというのは患者さんにとって納得し難い場合もあるかと思います。確かに手術はそれなりに体の負担もありますし、手術によって病状が一気に悪化してしまうケースも残念ながらあります。また、手術まで行ったのに「分類不能の特発性間質性肺炎」という診断になって、何のために手術をしたのか患者さんには理解しがたいケースもしばしばあります。それでも、間質性肺炎という難病に今後一生かけて立ち向かっていくために、いま手術をして診断を少しでも突き詰めておくほうがメリットが大きいと判断して担当医は外科的肺生検を勧めているはずです。外科的肺生検を提案された場合には悩まれる場合も多いかと思いますが、担当医と検査の必要性や危険性について十分相談したうえで検討してみてください。

9. 病理検査

気管支鏡検査や外科的肺生検で、肺の中にいる細胞や肺そのものを取ってきた際に、それらを顕微鏡でみて診断する専門の検査技師や医師がいるのをご存知でしょうか?患者さんが直接会うことは滅多に無いのでイメージが湧きづらいかと思いますが、病院には細胞検査士という検査技師、病理医という医師がいて、臨床医が採取してきた細胞や組織の診断をつけています。医療機関によっては院内ではなく、院外に検査の依頼をしていることもあります。間質性肺炎がどのような原因で起きているか、という診断は非常に難しく、専門家によって意見が分かれることも非常に多いので、「多分野合議(MDD: multidisciplinary discussion)」といって、実際に患者さんを診る呼吸器内科医、CTなど画像を専門に診る放射線科医、採られてきた肺を顕微鏡などで診る病理医の意見を総合して診断をつけることが推奨されています。

写真:病理検査のイメージ