2020.11.10 | コラム

子どもの「風邪症状」にどう対応する?インフルエンザや新型コロナ感染症との違い&適切な予防法とは

咳、鼻水、のどの痛みなどの風邪症状があるとき受診の目安と、押さえておきたい感染予防のポイント

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withコロナ時代において、もし子どもに風邪症状が出たらどのように対応すれば良いのでしょうか?
これに答えるために、まず最初に、「風邪」を定義しておきましょう。僕が認識している「風邪」と読者の方の「風邪」が食い違っていては、僕がお伝えしたいことが正確に伝わらないためです。

まず、一つ一つ解説していきましょう。

1. 「風邪」の定義

小児感染症の教科書には「ウイルスによる急性上気道感染症で、時に下気道に感染を起こすこともあるが、基本的には自然軽快する疾患」と記載されています。ここで重要なのは、原因が「ウイルス」であること、そして基本的には「自然に治る」ということです。ウイルス感染症ですので、抗菌薬は効きません。しかし自然に治りますので、「時間が薬」であり、過度な心配は不要ということになります。

 

さて一口に「風邪」といっても、症状はさまざまです。ここでは、小児の「風邪」を大雑把に下記のように分類します。

 

1)鼻型の「風邪」〜鼻汁が目立つタイプ
2)咳嗽型の「風邪」〜咳が目立つタイプ
3)咽頭炎型の「風邪」〜のどを痛そうにしているタイプ
4)鼻汁、咳、のどの痛みが等しく認められるタイプ~典型的な風邪

 

上記の症状がなく、「熱」だけとか、嘔吐や下痢をしている場合は、通常風邪とは呼びません。小児科医としては、熱だけの子ども、嘔吐、下痢をしている子どもについて特有の注意事項がありますが、ここでは、上の3つの症状、つまり鼻汁、咳、咽頭痛(のどの痛み)を呈している場合に限定します。

 

上記の4つはいずれも「風邪」と考えてもらって構いませんが、それぞれ子どもの経過をみる上でのポイントがあります。一つ一つ解説していきましょう。

 

2. 風邪の自然経過を知る

風邪では多少の症状の強弱はありますが、鼻汁、咳、のどの痛みが主な症状です。これらの症状は風邪では必ず自然に治癒しますが、風邪をこじらせて肺炎になると言われるように、時に合併症を起こすことがあります。合併症が起きているかどうかを判断するためには、典型的な風邪の経過を知ることが重要です。典型的な経過であれば、小児科を受診する必要はありませんが、その経過から外れた場合は、小児科を受診するべきタイミングといえます。

風邪はウイルスが原因であり、自然に治癒する病気です。その自然経過は基本的には下の図のようになります。

 

●図1 風邪(ウイルス感染症)の自然経過

 

 

発症して2-3日経過した頃が症状のピークとなり、4-5日目には改善に向かいます。これが典型的な風邪の経過です。この経過から外れた時には、何らかの合併症をきたしている可能性があるため、小児科外来を受診することをお勧めします。

 

では、それぞれの風邪のタイプと合併症についてみていきましょう。

 

1)鼻型の「風邪」〜鼻汁が目立つタイプ

鼻汁が目立つタイプの「風邪」では、微生物による炎症が主に鼻粘膜で起きています。したがって、症状の主体は鼻汁・鼻閉(鼻づまり)です。咳が見られることがありますが、これは気管支に炎症があって咳をしているのではなく、ほとんどの場合で後鼻漏(こうびろう)によるものです。

鼻の中で過剰に分泌された鼻汁は、通常は鼻の穴からでてきます。これがいわゆる「鼻水が出る」という状態です。しかしこの鼻汁が鼻の穴から出ずに、後ろ側、つまり喉の奥のほうに垂れていくことがあります。これが後鼻漏です。後鼻漏は乳幼児でよく見られ、不眠の原因となります。仰向けになると鼻汁がどんどん喉のほうに垂れ込んでいくため、咳をしてしまい、眠れなくなるのです。このように後鼻漏による咳では、寝ているときに増える、という特徴があります。

さて鼻型の風邪においても、症状のピークは発症して2-3日であり、鼻汁症状は基本的には1週間も経過すれば改善に向かいます。このような経過であれば、何も心配はいりません。安心して自宅で経過を見ていただいて構いませんが、注意するべき合併症が2つあります。それが「急性細菌性鼻副鼻腔炎」と「肺炎」の合併です。

 

◎注意してほしい合併症の症状①:急性細菌性鼻副鼻腔炎

まず急性細菌性鼻副鼻腔炎ですが、症状は鼻型の風邪と何も変わりません。異なる点は以下の3つです。急性細菌性鼻副鼻腔炎は生命予後に直結するような重症の病気ではないですが、ウイルスに加えて細菌も感染した状態です(細菌二次感染)。抗菌薬を使用するべき疾患の一つですので、以下に該当する可能性があれば、小児科を受診することをお勧めします。

 

  • 鼻汁や後鼻漏、咳などの症状が「改善がないまま」10日間以上持続している。咳は夜間に増悪することが多い(持続性副鼻腔炎)。
  • 39度以上の発熱と鼻汁が少なくとも3日以上持続し、重症感がある(重症副鼻腔炎)。
  • 最初は一般的な風邪の症状があり、治癒しかけた第4、5日目以降に、再び38℃以上の発熱がみられたり、咳や鼻汁などの呼吸器症状が増悪する(悪化する副鼻腔炎)

 

◎注意してほしい合併症の症状②:肺炎

もう一つの合併症が肺炎であり、これは後鼻漏が原因になります。鼻汁が喉の奥を経て、気管へ垂れ込んでしまうことによって起こります。飲水出来ていたのにできなくなったり、おもちゃで遊んでいたのに遊ばなくなる、などの全身状態の悪化や息遣いが荒くなったりしたときは受診するべきでしょう。子どもの重症度のみかたについては、こちらのコラム(子どもが熱を出したらどうしたら良い?受診のタイミングと家庭での対応方法)でも紹介しておりますので、参考にしてみてください。

 

2)咳嗽型の「風邪」〜咳が目立つタイプ

咳が症状の主体の場合、多くは気管に炎症が起きています(急性気管支炎)。急性気管支炎も基本的にはウイルス感染症ですので、自然に治癒することがほとんどです。

 

【咳嗽型の「風邪」の典型的な経過】

  • 最初の1-2日は発熱と鼻汁、咽頭痛などの上気道症状
  • 感染部位が徐々に気管支へ拡大して、咳が主体の時期が4-5日続く
  • 回復期に入り、感染後咳嗽が1-2週間続く

*感染後咳嗽:風邪の後にしばらく残る咳のこと

 

この病態においても、症状のピークは発症してから2-3日目になります。

この病態は小児科医としても最もマネジメントに悩む病態です。鼻型の「風邪」に細菌による二次感染(=肺炎)を合併しているのか、それとも純粋なウイルス性の気管支炎なのか、あるいは最初から肺炎を起こしているのか。これらの病態は多分にオーバーラップしているので、明確な区別はできません。小児科医の多くは、図1で示したように、あるポイントから急速に悪化傾向を示しているような場合や、より重症度の高い場合に、抗菌薬が必要な(自然治癒の望めない)細菌感染症と判断しています。

逆に言うと、熱が持続していたり、咳が続いていたりしても、図1のウイルス感染症の経過のように悪化のスピードが特に変化がなければ、ウイルス感染症として経過をみても構いません。ただしこのタイプは小児科医でも判断が難しい場合がありますので、咳が目立つなと思った場合には、早めに小児科を受診しておくほうがよいでしょう。

 

3)咽頭炎型の「風邪」〜のどの痛みが目立つタイプ

咽頭炎型の「風邪」は鼻汁や咳などがほとんどなく、咽頭"だけ"に炎症が認められるので、保護者からはわかりにくい感染症です。特に乳幼児の場合、保護者がこのタイプの風邪であるかどうかを判断するのは難しいでしょう。ある程度年長になってくれば、「のどが痛い」、あるいは「飲み込みにくい」という訴えがあり、鼻汁や咳が目立たなければ咽頭炎と考えられます。この場合もほとんどがウイルス感染症であり、自然治癒が期待できる場合が多いです。しかし、注意が必要なものもあります。

一つは咽頭炎の原因がA群溶連菌であった場合で、これは抗菌薬で治療しておくほうがよいです。もう一つはのどの痛みが激しい場合で、喉の奥に膿がたまる病気(扁桃周囲膿瘍)や気管の入り口が腫れる病気(喉頭蓋炎)などの緊急性の高い病気が一部隠れていることがあります。したがって、のどの痛みが強い場合には、小児科を受診しましょう

 

4)典型的な「風邪」~鼻汁、咳、のどの痛みすべてが認められるタイプ

咳、鼻汁、のどの痛みが同程度に認められるタイプです。このタイプは乳幼児では比較的少なく、学童期以降に多くみられます。これは乳幼児では経験的に鼻汁、発熱などの症状のほうが全面に出やすいことや、のどの痛みに対して訴えができないので、咽頭炎を認知しにくいことが原因です。学童期以降になれば、訴えもしっかりできるようになるため、容易に判断ができるようになると思います。すなわち、せき、はな、のどの症状が同程度にあれば、ウイルスによる風邪と積極的に判断していただいて構いません。自信をもって自宅で様子を見ていただいても良いと思います。

 

3. 新型コロナウイルス時代における風邪の対応方法

現在新型コロナウイルス感染症が日本を含む全世界で流行しています。「もし自分の子どもが感染してしまったら・・・」、と不安になられている方も多くおられることでしょう。下の表は新型コロナウイルス感染症で見られる症状を年齢別に示したものです。9歳以下の小児で認められる症状は、発熱、咳、頭痛、のどの痛みなどであり、上記でお示しした「風邪」と何ら症状は変わりません。症状では新型コロナウイルス感染症といつもの風邪を区別するのは不可能だと思います。

 

●表1 各症状が認められる割合(%、年齢別)(文献1より)

  20歳以上
(N=1,250,785)
9歳以下
(N=20,458)
10-19歳
(N=49,245)
発熱 43.3 46.3 35.0
咳嗽 50.8 36.9 43.2
息切れ 29.2 6.5 16.3
筋肉痛 36.7 10.4 29.5
鼻汁 6.0 6.8 8.1
咽頭痛(のどの痛み) 19.8 12.8 28.6
頭痛 34.4 15.1 41.9
嘔気(吐き気)、嘔吐 11.5 9.8 10.4
腹痛 7.6 6.7 7.7
下痢 19.6 13.6 13.5
味覚、嗅覚障害 8.3 1.3 9.9

 

しかし怖れる必要はありません。米国での新型コロナウイルス感染症の年齢別の入院数、ICU入室数、死亡患者数(人口10万人当たり)を見てみると、高齢者で重症度が高いことが分かりますが(表2)、同じ米国での季節性インフルエンザ感染症のデータ(表3)と比べてみても、小児の重症度が低いことが分かります。もちろん重症化する小児は皆無ではないですが、少なくとも小児においては新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりも軽症であることは間違いありません。

 

●表2 米国における年齢別の人口10万人当たりのCOVID-19入院数、ICU入室数、死亡患者数(文献1より)

年齢 患者数 入院数 ICU入室数 死亡患者数
≦9 51.1 2.1 0.4 0.03
10-19 117.3 2.9 0.5 0.08
20-29 401.6 14.8 1.9 0.6
30-39 491.6 28.8 4.3 1.9
40-49 541.6 47.7 8.2 5.2
50-59 550.5 73.8 14.0 13.2
60-69 478.4 105.4 19.8 31.9
70-79 464.2 158.1 26.2 77.2
≧80 902.0 293.1 32.3 258.6

 

●表3 米国における小児人口10万人当たりの季節性インフルエンザの入院数、死亡患者数(文献2より)

年齢 入院数 死亡患者数
0-4 72.0 0.15
5-17 20.4

 

また新型コロナウイルス感染症の流行の中心は大人であり(図2)、小児への感染経路のほとんどが家庭内感染であること、そして学校での感染のリスクも低いこともわかっています(表4)。

 

●図2 日本におけるCOVID-19患者の年齢別分布(2020年11月4日までの厚生労働省発表のデータによる)

 

 

●表4 2020年6月1日~8月31日までの児童生徒1,166人の感染状況(文献3より)

児童生徒
(小中高)
感染者数 感染経路判明 感染経路不明
有症状者(*) 家庭内感染 学校内感染 家庭・学校以外の活動・交流等 海外からの帰国
小学校 428 142 33% 323 75% 9 2% 40 9% 3 1% 51 12%
中学校 266 133 50% 180 68% 18 7% 18 7% 2 1% 48 18%
高等学校 463 279 60% 148 32% 153 33% 37 8% 2 0% 123 27%
特別支援学校 9 2 22% 4 44% 0 0% 3 33% 0 0% 2 22%
合計 1166 556 48% 655 56% 180 15% 98 8% 7 1% 224 19%
*うち重症者は0人
注:義務教育及び中等教育学校については、小学校・中学校・高等学校のうち相当する学校段階に振り分けている。

 

子どもたちにとっては新型コロナウイルス感染症は軽症の感染症であり、重症化のリスクは極めて低く、非常に負荷の低い感染症であることをよく理解していただきたいと思います。また新型コロナウイルス感染症の流行の中心はあくまでも大人社会にあり、学校を中心とした子どもの社会での流行のリスクは低いので、大人が感染しないこと、つまり保護者が感染しないことが子どもに感染させない一番の方法になります。

子どもたちに過剰な感染対策を強いることのないよう、そして子どもたちにとっての貴重な「今」という時間を大切にしてあげてください。コロナ対策と銘打って、学校やクラブ活動、修学旅行や運動会などのイベントも安易に自粛することがないようにしてほしいと多くの小児科医が願っていることと思います。

 

4. ワクチンを接種しよう

この冬にインフルエンザも同時に流行するのではないかと心配されている方も多くおられると思います。実際に同時に流行するかどうかについては、冬を迎えてみなければわかりませんが、両方に対してしっかりと備えておくほうがよいという考えに異論の余地はないでしょう。

図3は最近10年間の国内におけるインフルエンザ報告数の推移です。新型コロナウイルス感染症の流行がありましたが、2019年-2020年のシーズンはインフルエンザと診断される人がとても少なかったのです。

 

●図3 過去10年のインフルエンザの流行状況(定点当たり報告数)(文献4より)

*国立感染症研究所:インフルエンザ過去10年間との比較グラフより

 

日本と季節が逆である南半球のオーストラリアでも、この冬のインフルエンザの診断数が極めて低かったことが報告されています5)。オーストラリアのインフルエンザの流行シーズンは7月から10月にかけてです。このころは人の動きがほとんどなかったことも診断数が少なかった要因と考えられます。一方で、これからの日本では海外からの入国も増えると予想されることから、相対的にオーストラリアよりも流行する可能性は高いと思います。

子どもたちにとっては新型コロナウイルス感染症よりもインフルエンザのほうがリスクの高い感染症です。そのため冬の流行に備えて、早めにインフルエンザワクチンを接種しておきましょう。

 

5. 子どもたちが行うべき感染対策

子どもであっても、新型コロナウイルス感染症に対する感染対策は何も変わりません。感染経路を理解し、その経路を遮断することが有効な感染対策となります。新型コロナウイルス感染症は飛沫感染が主体ですが、一部手指や環境を介した接触感染でも伝播することがわかっています。そのため、子どもでもフィジカルディスタンスを保つ、3密を避ける、ユニバーサルマスキング、手指衛生を行うことが基本となります。ただし、飛沫感染対策の基本は距離を十分とることですので、周囲に誰もいないような状況であれば、マスクを着用する必要はありません。1人で散歩しているような場合では、マスクを着用する必要はないのです。

また学校で拡げないための感染対策として、症状のある児童は登校しないこと、そして家庭内感染が多いことから、家族に症状があっても児童が休めるように、オンライン学習を整備しておくこともこれからの時代は重要でしょう。

 

●表5 学校での感染対策の原則

飛沫感染対策
  • 距離の確保(フィジカル・ディスタンスを保つ)
  • ユニバーサルマスキング(症状の有無にかかわらず皆がマスクを着ける)
  • すべての密(密閉、密集、密接)を避ける
接触感染対策
  • 手指衛生
  • 環境の消毒:ただし環境中からの感染リスクは低く、ウイルスは生きた細胞内でしか増殖できないため、毎日の消毒は不要
  • 物品の共有を可能な限り避ける
水際対策
  • 症状のある児童、職員は登校しない

 

まず子どもで最も重要なのはマスクではなく、手指衛生です。成人で最も重要なのはマスクの着用ですが、小児、特に小学校低学年くらいまでは適切にマスクを着用することは難しいと思います。WHOとUNICEFも表6のような見解を発表しており、マスクの着用を義務付けるべきではないとしています。

また国内の研究でも、子どもがマスクをすることでかえって感染リスクが高まるという報告もあります6)。この研究では、インフルエンザの予防に寄与したのはワクチン接種とこまめな手洗いであり、マスク着用によってむしろインフルエンザ感染のリスクが1.2-1.5倍高くなると報告されています。マスクの着用が子どもでは難しいこと、マスクにウイルスが付着した場合、マスク表面を子どもが触ることによってむしろリスクが上がること、などがその理由としてあるでしょう。

これらの見解を踏まえれば、乳幼児ではマスクはむしろしない方がよい可能性すらあり、小児でのマスク着用が必須ではないことがお分かりいただけると思います。頻回に手を洗うことで予防するほうが、デメリットが少なく、より効果的だと考えられるのです。マスクは小学生以上で、状況に応じて検討していただくこと、そして手指衛生を優先していただくことが重要だと思います。

 

●表6 小児におけるマスク着用に関するWHOとUNICEFの見解

  • 5歳以下:マスクの着用を義務づけるべきではない

  • 6~11歳:マスクを使用するべきかどうかは、以下を考慮して決めるべきである

    • 子どもが住んでいる地域で感染拡大があるか

    • 子どもが安全かつ適切にマスクを使用できるか

    • 学校や保育園、幼稚園などで、マスクを容易に入手でき、かつ、また交換・洗濯は可能か

      ※汚染した場合にすぐに交換できることを想定
    • 大人がマスクの安全な着脱方法について十分に指導できるか

    • 学習や心理社会的発達に与える影響について、教師、両親、保護者、医療従事者と相談しているか

    • 子どもが、高齢者やその他基礎疾患がある人など、重症化しやすいリスクのある人達とかかわりが強いか

  • 12歳以上は成人と同様にマスク着用を推奨

*文献7:WHO「Coronavirus disease (COVID-19): Children and masks」より著者翻訳

 

一方で環境の消毒については、それほど重要ではありません。もちろん環境中でもウイルスは一定の時間生存し、若干の感染力を持ちます。実験によって、ウイルスが生存する時間が報告されています(表7)。しかし、ウイルスは細菌のように感染者の体外では増えることができず、時間とともに感染性がなくなります。表7をみると、ウイルスが完全に消えるのに1-2日程度必要であるかのように見えますが、感染者の咳でウイルスが1万個飛んだと仮定しても、ほとんどが空気の流れに乗って散らばります。換気をよくしていれば、環境表面にウイルス自体が付着する可能性はほとんどありません。万が一ごくわずかにウイルスがついたとしても、その少量のウイルスは2-3時間以内に半減します。半減期が2-3時間ということは、2-3時間でウイルスの量が半分になるのです。つまり、環境から感染する可能性は限りなく「ゼロ」に近いのです。

 

●表7 環境中のウイルスの安定性(文献8,9より)

環境 半減期(中央値、2.5-97.5%)(時間) 感染性
エアロゾル 1.09(0.6-2.64) 3時間で残存
  3時間で消失
0.774(0.427-1.19) 4時間で消失
段ボール 3.46(2.34-5) 24時間で消失
木、布   48時間で消失
ステンレス 5.63(4.59-6.86) 48時間で消失
プラスチック 6.81(5.62-8.17) 72時間で消失
ガラス、紙幣   96時間で消失

 

最後に重要なのは、風邪症状があれば児童も教師も学校へ行かないことです。ちょっと鼻水がでている、ちょっと咳が出ている程度だと学校へ行けてしまうでしょう。その場合にきっちりと休むことが重要です。そのためにはオンライン学習を整備し、休みやすい環境を整備することが今後は大切になってくると思います。皆勤賞も廃止し、欠席しても成績や内申に反映させないような学校の対応が必要だと思います。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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