はいきしゅ
肺気腫
主にタバコの影響で肺がスカスカになっている状態
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最終更新: 2023.03.11
肺気腫の基礎知識
POINT 肺気腫とは
長年にわたってたばこの煙や大気汚染の影響を受けて肺に慢性的な炎症が起こることが原因で、気管支(肺内の空気の通り道)が狭くなり、肺そのものもスカスカになる病気です。空気の通り道が狭くなることで空気を体外に吐き出しにくくなり、貯まった空気で肺胞は大きく拡張します。逆にダメージを受けてスカスカになった肺は細い気管支を開通している状態に支えておくことが出来ず、空気の通り道は狭くなります。 主な症状は歩行など運動時の息切れ・咳・痰ですが、進行するとじっとしていても息が苦しくなったり体重が減ったりします。症状と生活環境(主に喫煙歴)と画像検査から肺気腫が疑われ、呼吸機能検査(肺活量の検査のようなもの)を行い診断が確定します。治療には空気の通り道を拡げる薬や痰を出しやすくする薬などが用いられます。また、同時に呼吸器リハビリテーションを行うことも大切です。肺気腫が心配な人や治療したい人は、呼吸器内科を受診して下さい。
肺気腫について
- タバコなどの影響で肺に長期間の
炎症 が及ぶことで、肺胞 が拡大して肺の働きが低下した状態 - 90%以上は喫煙が原因で起こる
- その他の原因
- 受動喫煙
- 大気汚染
- 職業的な塵埃
- 化学物質
- その他の疾患など
- 若年性肺気腫症
- リンパ脈管筋腫症
- α1-アンチトリプシン欠乏症などの遺伝によるもの
- その他の原因
- 日本においては医療機関を受診したCOPD患者数が26万人ほどとされているが、隠れ患者も含めると実際には530万人の患者がいるだろうと報告されている
肺気腫の症状
- 特に病気の初期には、肺の変化が始まっていても症状が出ない時期がある
- 主な症状
- しつこい咳や痰
- 労作時(歩行などの運動時)の息苦しさ、病状が進むと安静時の息切れ
- COPDの場合は、普段から肺に
炎症 起きている状態になりエネルギーの消費量が増えたり、吸ったり吐いたりがしづらくなることで呼吸にエネルギーがいつも以上に必要になる- 進行期すると体重減少(痩せ)の原因となる
肺気腫の検査・診断
胸部レントゲン (X線 写真)検査:肺がどの程度大きくなっているかを調べる、特に横隔膜の位置に注目する胸部CT検査 :レントゲン でわかりづらい変化や肺気腫の程度をチェックする- 他の病気が隠れていないかもチェックしやすい
呼吸機能検査 (スパイロメトリー ):肺の機能がどれほど障害されているのかを調べる
肺気腫の治療法
- 肺気腫を根本的に治し、もとの健康的な肺に戻す治療法は存在しない
- 禁煙
- 肺気腫をそれ以上進行させないために禁煙することが非常に重要
- 薬物療法
気管支 拡張薬:気管支を広げて呼吸をしやすくする。吸い込む薬(吸入薬)が基本- 喀痰調整薬:痰を減らしたり、キレを良くして、症状の悪化と悪化期間を減少させる
抗菌薬 :感染が起こった時に投与すると悪化を抑制し生活の質(QOL )を上げるステロイド薬 :呼吸の状態が急に悪くなった場合などに用いる
- 呼吸リハビリテーション
- 呼吸する力をトレーニングすることで、息苦しさを和らげたり運動機能が下がるのを防ぐ
在宅酸素療法 - 酸素を吸いながら生活することで息苦しさが和らぐ
- 呼吸が十分ではなく、二酸化炭素が十分に吐けない場合は、在宅人工呼吸療法を行うこともある
- 口と鼻の周りに密着するマスクを付けて、機械に呼吸を助けてもらう
- 肺のダメージがひどいところがあれば、悪い部分を取り除くための手術(
胸腔鏡 下手術)を行うことがある - 肺気腫では、肺炎を
合併 すると呼吸困難、咳、痰などの症状が短期間で急激に悪化することがある - ワクチンを接種して感染を予防することが重要
インフルエンザウイルス ワクチン肺炎球菌 ワクチン- 新型
コロナウイルス ワクチン など
- 手洗とうがいを徹底する
肺気腫に関連する治療薬
テオフィリン製剤
- 気管支の拡張や呼吸中枢の刺激作用などにより喘息や気管支炎などの咳や息苦しさなどを改善する薬
- 喘息では気管支などの炎症により気道が狭くなっており咳の発作などの呼吸症状があらわれる
- 気管支を広げる作用をもつ体内物質にcAMPがあり、PDEという酵素により別の物質に変換されてしまう
- 本剤はPDEを阻害することでcAMPの濃度を高め気管支を広げる作用をあらわす
- 本剤は抗炎症作用や中枢神経刺激作用など多くの作用をもつとされる
β2刺激薬(内服薬・外用貼付薬)
- 気管支のβ2受容体を刺激し気管支を拡張させることで喘息などによる咳や息苦しさなどを改善する薬
- 喘息では気管支の炎症により気道が狭くなっていて、咳の発作や息苦しさなどがあらわれる
- 気管支にあるβ2受容体というものを刺激すると気管支が広がる
- 本剤はβ2刺激作用により気管支を広げる作用をあらわす
- 薬剤によっては慢性気管支炎などに使われるものもある
- 薬の効果持続時間の違いによる分類
- 一般的に、効果持続時間によって内服薬は長時間型、中時間型(長時間型と短時間型の中間)、短時間型に分けられる
短時間作用型β2刺激薬(SABA)(吸入薬)
- 気管支をすばやく広げ、呼吸を楽にして咳や喘息発作などを和らげる薬
- 喘息では気管支の炎症により気道が狭くなっていて、咳の発作や息苦しさなどがあらわれる
- 気管支の交感神経β2受容体を刺激すると気管支が広がる
- 本剤はβ2刺激作用により、すばやく気管支を広げる作用をあらわす
- 過剰使用などにより頻脈や動悸などがあらわれる場合があるため、本剤は規定量・規定回数などを守った使用が必要となる
- 薬剤によって剤形がエアゾール剤、吸入液など異なる場合があり、適切な吸入指導や使用方法の理解などが必要となる