あるふぁわんあんちとりぷしんけつぼうしょう
α1-アンチトリプシン欠乏症
α1-アンチトリプシンという物質が体内で不足することにより、COPD(肺気腫)などを引き起こす。日本人では極めてまれ
1人の医師がチェック 1回の改訂 最終更新: 2021.02.20

α1-アンチトリプシン欠乏症の基礎知識

POINT α1-アンチトリプシン欠乏症とは

体内にはタンパク質を分解する「プロテアーゼ」という酵素が存在します。プロテアーゼは人間にとって必要なものですが、過剰に働くと肺を分解してしまうなどの問題が生じます。そこで、プロテアーゼの働きを抑える「アンチプロテアーゼ」という酵素もあります。α1アンチトリプシンは、肝臓で作られるアンチプロテアーゼの一種です。したがって、α1アンチトリプシンが欠乏するとCOPD(肺気腫)などの病気を発症します。α1アンチトリプシン欠乏症の主な症状はCOPDによる症状であり、息切れ、咳、痰などです。45歳以下でCOPDを発症している人や、タバコを吸わないのにCOPDになってしまった人でα1アンチトリプシン欠乏症の可能性が考慮されます。呼吸機能検査や胸部CT検査でCOPDについての検査をしたうえで、血液中のα1アンチトリプシン濃度を測定したり遺伝子検査をすることで確定診断に至ります。治療は禁煙を中心として、COPDの治療に準じます。α1アンチトリプシンを点滴で補充する治療も行われています。この病気が気になる人は呼吸器内科で相談してください。

α1-アンチトリプシン欠乏症について

  • α1アンチトリプシンの欠乏により、以下のような状態を引き起こす
  • 遺伝性の病気である
    • 常染色体劣性遺伝というタイプの遺伝をする
    • 親が発症していても、必ずしも子が発症するとは限らない
    • 欧米では5,000人に1人がかかる病気だが、日本人では500万人に1人というとても珍しい病気である
    • SERPINA1遺伝子の異常などが知られている
  • もともとはα1-アンチトリプシン欠損症と呼ばれていた
  • 厚生労働省の指定難病である(疾病番号231番)
    • 呼吸器内科が専門とする病気だが、日本人ではとても珍しいため、診療経験のない医師がほとんどである

α1-アンチトリプシン欠乏症の症状

  • α1アンチトリプシン欠乏症そのものは症状を引き起こさない
  • COPD発症すると以下のような症状が見られる
    • 息切れ
    • 痰 など

α1-アンチトリプシン欠乏症の検査・診断

  • 45歳以下でCOPD発症した人、タバコなど有害物質の吸入歴がないのにCOPDを発症した人などで、この病気の可能性が考慮される
    • その他、原因不明の肝臓病や蜂窩織炎を起こす人でも考慮されることがある
  • COPDに対する検査として以下が行われる
    • 胸部X線レントゲン)検査
    • 呼吸機能検査スパイロメトリー
    • 胸部CT検査:タバコによるCOPDでは肺の上の方、α1アンチトリプシン欠乏症では肺の下の方に肺気腫が起こるのが典型的
  • α1アンチトリプシン欠乏症に対する検査として以下が行われる
    • 血清α1-アンチトリプシン濃度測定
    • 遺伝子検査
  • 血清α1-アンチトリプシン濃度は90mg/dl以上で正常、50-90mg/dlで軽度欠乏、50mg/dl未満で重度欠乏と判定される
  • ほとんどの医師は診療経験がない病気なので、疑われた時点で専門の医療機関を紹介してもらうことが一般的

α1-アンチトリプシン欠乏症の治療法

  • まずはタバコをはじめとした有害物質を吸入しないことが重要
    • 喫煙しなければ無症状のこともよくある
  • 既にCOPD発症している人は、COPDに準じた治療を行う
    • 重症の人では在宅酸素療法、肺移植なども考慮される
  • α1-アンチトリプシンを週に1回点滴で補充する治療もある
    • 日本では2021年から使えるようになった
  • 厚生労働省の指定難病であり、治療費の補助を受けられることがある

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