2015.05.23 | ニュース

骨粗しょう症の薬が肺気腫にも効く

マウスでの実験で効果あり

from Nature communications

骨粗しょう症の薬が肺気腫にも効くの写真

ビスホスホネート製剤は、骨を吸収する破骨細胞の機能を抑えることで骨を増やす作用を持ち、骨粗しょう症の改善薬として広く用いられています。今回著者らはマウスにおいて、この薬剤の一つアレンドロネートが、長期間の喫煙習慣などによって肺の組織が壊れていく「肺気腫」という病気の治療にも有効である可能性を示しました。

◆アレンドロネートが肺気腫を改善させる

著者らは、実験のため肺気腫を起こさせたマウスにアレンドロネートの吸入剤を与え、肺の組織に起こる変化を観察しました。

マウスのエラスターゼ誘導性肺気腫を、窒素含有ビスホスホネートであるアレンドロネートのエアロゾル吸入が抑えた。


その際のアレンドロネートの効果として、肺の組織では次のように、肺気腫で起こる変化が抑えられていました。

吸入アレンドロネートは、エラスターゼ注入後に起こる気腔拡大の阻害、カスパーゼ3とメバロン酸経路を介した気管支肺胞液内でのマクロファージ細胞死の誘導を起こした[...]。

 

◆アレンドロネートは肺胞マクロファージの活動を抑える

またアレンドロネートは、肺気腫に関わる「マクロファージ」という細胞に取込まれ、「細胞移動や貪食活性を阻害し、NFκB経路を阻害して肺胞マクロファージの炎症応答を弱める」作用があることが観察されました。

マクロファージは白血球の一種で、炎症反応の一部として、血液から周りの組織の中に移動したり、異物を細胞の中に取り込んだりする働きがありますが、肺気腫ではマクロファージの働きが肺の組織の破壊と関係していると考えられています。アレンドロネートはマクロファージのこのような活動を抑えていました。

著者らはこれらの結果から、「アレンドロネート吸入は循環及び定着している肺胞マクロファージの細胞死を効果的に誘導するため、この方法が肺気腫の治療法になる可能性がある」と述べています。

骨の薬が肺にも効くとは奇妙に聞こえるかも知れませんが、このマクロファージは破骨細胞の元になる細胞でもあり、アレンドロネートは破骨細胞にも細胞死を誘導します。似た細胞には似た作用があるはず、という発想からこの研究がなされているようです。

そのためアレンドロネートは肺のマクロファージでも破骨細胞と同じ蛋白質に効いていると推測できます。マクロファージは様々な組織で働いているので、同じようにアレンドロネートが効果を示す組織が、他にあるかも知れません。肺気腫はもちろん、さまざまな病気の有効な治療につながるかどうか、この先が楽しみな研究です。

執筆者

高田

参考文献

Alendronate inhalation ameliorates elastase-induced pulmonary emphysema in mice by induction of apoptosis of alveolar macrophages.

Nat Commun. 2015 Mar 10

[PMID: 25757189] http://www.nature.com/ncomms/2015/150310/ncomms7332/full/ncomms7332.html

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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