まんせいへいそくせいはいしっかん
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
気管支や肺胞が炎症で変化し、正常な呼吸ができなくなっている状態。喫煙が原因で起こることがほとんどである
21人の医師がチェック 143回の改訂 最終更新: 2018.08.01

肺気腫・COPDに対する安定期の治療は?禁煙、吸入薬、HOTなど

COPDの治療のうえでは禁煙が最も重要です。禁煙できてもなおCOPDは生命に関わる恐れがあるのでいろいろな治療法が用いられるることがあります。ここではCOPDに対する長期的な治療方針を解説していきます。 

COPDは喫煙に良って悪影響を受けるため、禁煙することが非常に重要です。

COPDと喫煙は強く関係しています。禁煙は肺の機能が悪化していくことを防ぐ効果がありますし、死亡率も低くなることが証明されています。受動喫煙を含めて、タバコの煙から可能な限り逃れることがCOPDの治療としても予防としても最も重要です。
では、タバコをやめればCOPDの治療は不要かというと、残念ながらそうではありません。喫煙によってゆっくりと破壊されてしまった肺は元に戻りません。残っている肺の機能を少しでも維持していくために、急性増悪を起こさないように、その他のトラブルを起こさないように、禁煙と並行してCOPDに対する治療を考えていく必要があります。

参照:Ann Intern Med 2005; 142: 233-9.

COPDの治療として禁煙は最重要です。COPDの治療薬を使いながらついついタバコも吸ってしまう、という人も実際にはいるのですが、喫煙している限りCOPDは進行していきます。
「禁煙が一番大事」ということは患者自身も理解はしているケースがほとんどです。それでもタバコをやめられないのは、喫煙習慣の本質はニコチン依存症だからです。自分の強い意志で禁煙できる人は素晴らしいですが、タバコを吸ってしまうということは薬物依存症という病気のひとつと考えることも大切です。医療機関を受診して、医療者と一緒に禁煙を目指しましょう。

自分の肺機能が悪いこと、胸部CT検査で肺がスカスカ(気腫化が進んでいる)であること、などにショックを受けて禁煙を決意する人もいます。吐いた息に含まれる一酸化炭素濃度を測定することで、禁煙の効果が速やかに目に見えることによりモチベーションを維持できる人もいます。ニコチンガムやニコチンパッチ、バレニクリン(チャンピックス®)などの薬物療法のおかげであまり苦労せずに禁煙できる方もいます。
どんな治療が効果的かは個人差がありますが、禁煙外来は禁煙の大きな手助けになってくれるでしょう。

COPDの治療として禁煙が最重要なのは異論の無いところと思います。COPDに対しては薬物療法もあります。薬物療法は気管支を拡張する薬が中心になります。
COPDは「慢性閉塞性肺疾患」を略した病名です。空気の通り道である細い気管支が「閉塞」してしまっていることが根本的な問題です。そこで治療薬の中心となるのは、閉塞してしまいそうな気管支を「拡張」する気管支拡張薬となります。

COPD安定期の治療で最もよく使われる気管支拡張薬は吸入薬です。薬というと飲み薬のイメージが強いかと思いますが、COPDや喘息といった肺の病気に対しては、薬を吸い込むことによって肺の隅々に届ける吸入薬が使われます。肺の隅々に届いて効果を発揮する一方で、血液中に取り込まれる量は少ないので全身の副作用が起こりにくく、効果と副作用のバランスが良いのです。
ただし、吸入薬はうまく吸い込めないと薬の成分が口の中に残ってしまうことなどがあり、飲み薬よりも取り扱いが難しいので、高齢の方や肺活量がとても少ない方などでは使えないこともあります。

長時間作用性抗コリン薬は、COPDに対して最もよく使われるタイプの気管支拡張吸入薬です。英語でのLong-Acting Muscarinic Antagonistを略してLAMA(ラマ)と呼ばれます。毎日使用することによって、COPDによる諸症状の改善、急性増悪の予防効果などが示されています。吸入して使用すると体内への吸収率は低く、全身的な副作用が大きな問題になることはほとんどありませんが、閉塞隅角緑内障というタイプの緑内障を持っている患者さんでは使用してはならないので、緑内障と言われたことがある患者さんはLAMAを使用して良いかどうか眼科に相談するようにしてください。
また、前立腺肥大症がある患者さんでは、尿が出にくい症状がLAMAで悪化することがあります。その際は吸入を中止すれば尿が出にくい症状は速やかに改善すると言われています。前立腺肥大症と言われたことがある場合は、LAMAの吸入を開始する際に注意が必要です。その他の副作用としては口が渇く症状が時折みられます。

実際に治療薬として使われている長時間作用性抗コリン薬(LAMA)としては以下のようなものがあります。

  • チオトロピウム(スピリーバ®)
  • グリコピロニウム(シーブリ®)
  • ウメクリジニウム(エンクラッセ®)
  • アクリジニウム(エクリラ®)

これらの薬の効果の差や、今まで蓄積されているデータの差に関しては、専門の呼吸器内科医は気にすることもあるのですが、かなり込み入った話題になるので割愛します。それよりも患者さんとして気になるのは、うまく吸入できるかどうか、1日に何回吸わないといけないのか、どれくらいの費用がかかるのか、といったところかと思います。

まず、それぞれの薬には対応した吸入器(デバイス)があります。スピリーバ®であればレスピマット®やハンディヘラー®、シーブリ®であればブリーズヘラー®、エンクラッセ®であればエリプタ®、エクリラ®であればジェヌエア®という専用の吸入器を使用するようになっています。それぞれの吸入器の使用方法に関しては、薬局で薬を受け取る際に初回は薬剤師からの説明があります。また、動画サイトで検索すればこれらの吸入器の使い方を示したビデオがあります。家に帰って吸い方が分からなくなったときには参考になるものがあるかもしれません。

吸入の回数としてはスピリーバ®、シーブリ®、エンクラッセ®は1日1回、エクリラ®は1日2回の吸入が基本的な使用方法となります。薬の値段にあたる薬価は、保険が効かない状態で言うと、いずれの薬も標準的な使い方をすれば1ヶ月あたり4,000-7,000円程度です。3割負担であれば、患者さんの薬に対する支払いはこの3割になります。吸いやすさと効果、吸入回数、薬価などを考えて吸入薬は決めていきますが、もし、いま吸っている吸入薬に不満があれば担当医に相談してみれば代替案もあるかもしれません。

長時間作用性β2刺激薬は、COPDに対して、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)に次いで頻用されるタイプの気管支拡張薬です。英語でのLong-Acting Beta2 Agonistを略してLABA(ラバ)と呼ばれます。毎日使用することによって、COPDによる諸症状の改善、急性増悪の予防効果などが示されています。LAMAとは違ってLABAには貼付薬もあり、吸入薬よりは効果は劣るもののうまく吸入できない患者さんなどでは重宝します。

参照:Pulm Pharmacol Ther 2008; 21: 160-5.

吸入薬や貼付薬で全身的な副作用が大きな問題になることは少ないですが、脈が速くなる、動悸がする、手が震える、などの問題が起きることはあります。また、貼付薬では貼った部位の皮膚がかぶれたりかゆみが出ることがあります。

実際に治療薬として使われている長時間作用性β2刺激薬(LABA)としては以下のようなものがあります。

  • サルメテロール(セレベント®)
  • インダカテロール(オンブレス®)
  • ホルモテロール(オーキシス®)
  • ツロブテロール(ホクナリン®テープ) 貼付剤

これらの薬の効果の差や、今まで蓄積されているデータの差に関しては、専門の呼吸器内科医は気にすることもあるのですが、かなり込み入った話題になるので割愛します。それよりも患者さんとして気になるのはうまく吸入できるかどうか、1日に何回吸わないといけないのか、どれくらいの費用がかかるのか、といったところかと思います。

まず、それぞれの薬には対応した吸入器(デバイス)があります。セレベント®であればロタディスク®やディスカス®、オンブレス®であればブリーズヘラー®、オーキシス®であればタービュヘイラー®、という専用の吸入器を使用するようになっています。それぞれの吸入器の使用方法に関しては、薬局で薬を受け取る際に初回は薬剤師からの説明があります。また、動画サイトで検索すればこれらの吸入器の使い方を示したビデオがあります。家に帰って吸い方が分からなくなったときには参考になるものがあるかもしれません。

吸入の回数としてはオンブレス®は1日1回、セレベント®、オーキシス®は1日2回の吸入が基本的な使用方法となります。ホクナリン®テープは1日1回貼り替えます。薬の値段としては、保険が効かない状態として考えて、いずれの薬も標準的な使い方をすれば1ヶ月あたり1,500-4,000円前後です。3割負担であれば、患者さんの薬に対する支払いはこの3割になります。吸いやすさと効果、吸入回数、薬価などを考えて吸入薬は決めていきますが、もしいま吸っている吸入薬に不満があれば担当医に相談してみれば代替案もあるかもしれません。

吸入ステロイド薬は基本的には気管支喘息の治療薬ですが、ある程度進行してしまったCOPDの患者さんでも自覚症状や呼吸機能、急性増悪の頻度を減らす効果があると言われています。

参照:N Engl J Med 2007; 356: 775-89.
Chest 2003; 124: 1350-6.
Eur Respir J 2003; 21: 68-73.

しかし、COPDと気管支喘息は明確に区別して診断するのは難しいこともしばしばある病気であり、COPD患者さんの20-40%が同時に喘息も持っているというデータもあるので、純粋なCOPDそのものに対して吸入ステロイドがどれくらい効くのか、吸入ステロイドを使用するべきかどうかというのは議論の余地があるところです。少なくともCOPDそのものに対しては、長時間作用性抗コリン薬や長時間作用性β2刺激薬のほうが優先して使用されるべきでしょう。

参照:Arch Bronconeumol 2012; 48: 86-98. 

ステロイドと聞くと副作用を心配する患者さんも多いかと思いますが、吸入ステロイドの場合には内服のステロイドと違って、全身的な副作用が大きな問題となるケースはまれです。ただし、口の中にカビが生えたり(口腔内カンジダ症)、声が枯れたり、皮膚に炎症を起こしたり、肺炎の頻度が増えたりする可能性は指摘されており、その点では多少の注意が必要といえます。なお、口腔内カンジダ症に関しては吸入薬の使用後にしっかりうがいをすることで予防できることが多いですし、仮にかかっても塗り薬や飲み薬で治療できます。

参照:N Engl J Med 1999; 340: 1948-53.
N Engl J Med 1999; 340: 1948-53.
BMJ 2000; 320: 1297-303.
JAMA 2008; 300: 2407-16. 
Arch Intern Med 2009; 169: 219-29.

実際に治療で使用されている吸入ステロイド薬としては以下のようなものがあります。

  • フルチカゾン プロピオン酸エステル(フルタイド®)
  • フルチカゾン フランカルボン酸エステル(アニュイティ®)
  • ブデゾニド(パルミコート®)
  • ベクロメタゾン(キュバール®)
  • シクレソニド(オルベスコ®)
  • モメタゾン(アズマネックス®)

これらの薬の効果の差や、今まで蓄積されているデータの差に関しては、専門の呼吸器内科医は気にして使い分けていることも多いですが、かなり込み入った話題になるので割愛します。長時間作用性抗コリン薬や長時間作用性β2刺激薬と同様に様々な吸入器(デバイス)があるので、それぞれの患者さんに合ったものを選びます。吸入ステロイドはかなり多段階で吸入量を調節するので薬価の計算は難しいのですが、保険が効かない状態として考えて1ヶ月あたり1,500-5,000円になることが多いです。3割負担であれば、患者さんの薬に対する支払いはこの3割になります。

COPDの患者さんは長時間作用性抗コリン薬(LAMA)や長時間作用性β2刺激薬(LABA)を吸入することが多く、人によっては吸入ステロイド薬を加えた3種類の吸入薬を吸入することになります。何回も吸うのは大変ということで近年は合剤の開発が進んでいます。合剤とは複数の薬剤を一緒にした製品のことです。ここではCOPD患者さんがよく使っている長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の合剤を紹介します。

  • グリコピロニウム+インダカテロール(ウルティブロ®)
  • ウメクリジニウム+ビランテロール(アノーロ®)
  • チオトロピウム+オロダテロール(スピオルト®)

これらの薬の効果の差や、今まで蓄積されているデータの差に関しては、専門の呼吸器内科医は気にすることもあるのですが、かなり込み入った話題になるので割愛します。それよりも患者さんとして気になるのはうまく吸入できるかどうか、1日に何回吸わないといけないのか、どれくらいの費用がかかるのか、といったところかと思います。

まずそれぞれの薬には対応した吸入器(デバイス)があります。ウルティブロ®であればブリーズヘラー®、アノーロ®であればエリプタ®、スピオルト®であればレスピマット®、という専用の吸入器を使用するようになっています。それぞれの吸入器の使用方法に関しては、薬局で薬を受け取る際に初回は薬剤師からの説明があります。また、動画サイトで検索すればこれらの吸入器の使い方を示したビデオがあります。家に帰って吸い方が分からなくなったときには参考になるものがあるかもしれません。

吸入の回数としてはウルティブロ®、アノーロ®、スピオルト®とも1日1回の吸入となります。便利で良いですね。薬の値段としては、保険が効かない状態として考えて、いずれの薬も標準的な使い方をすれば1ヶ月あたり8,000円前後です。3割負担であれば、患者さんの薬に対する支払いはこの3割になります。吸いやすさと効果などを考えて吸入薬は決めていきますが、もしいま吸っている吸入薬に不満があれば担当医に相談してみれば代替案もあるかもしれません。

テオフィリン製剤は気管支を広げる作用などにより呼吸機能を改善する飲み薬です。
COPDは「慢性閉塞性肺疾患」を略した病名です。空気の通り道である細い気管支が「閉塞」してしまっていることが根本的な問題です。そこで治療薬の中心となるのは、閉塞してしまいそうな気管支を「拡張」する気管支拡張薬となります。気管支拡張薬としては長時間作用性抗コリン薬や長時間作用性β2刺激薬などの吸入薬が中心的な役割を果たしますが、それらで不十分と考えられる場合には内服薬であるテオフィリン製剤を追加で用いることがあります。テオフィリン製剤による呼吸機能の改善効果は、吸入薬よりも乏しいですが、気管支を広げる作用や、急性増悪の頻度を減らす作用が報告されています。
副作用として吐き気や不整脈が見られることがあり、効きすぎが疑われる時には血液中のテオフィリン濃度を測定することもあります。よく使われるテオフィリン製剤としてはテオドール®、テオロング®、ユニフィル®、アプネカット®、などがあります。

参照:Respirology 2006; 11: 603-10.

COPDの治療の基本は気管支拡張薬ですが、痰が多い患者さんでは呼吸機能が悪くなりやすいことが分かっており、痰の量を減らしたり、サラサラにして出しやすくしたりする治療も重要と言われています。
カルボシステイン(ムコダイン®)、アンブロキソール(ムコソルバン®)などはCOPDが急性増悪する頻度を減らすことが示されており、痰の多い患者さんや重症の患者さんではしばしば使われます。そのほかにブロムヘキシン(ビソルボン®)、フドステイン(スペリア®、クリアナール®など)、アセチルシステイン(ムコフィリン®など)の吸入なども行われることがあります。

参照:Eur Respir Rev 2010; 19: 134-140. 
Lancet 2008; 371: 2013-8. 
Pulm Pharmacol Ther 2004; 17: 27-34.

COPDの治療を考えるうえで、急性増悪をいかに減らすかということは非常に重要な問題です。肺炎などの細菌感染はしばしばCOPD急性増悪の引き金となるので、予防的に抗菌薬抗生物質、抗生剤)を普段から飲んでおけばいいのではないかと思えるかもしれません。
しかし、抗菌薬の乱用は耐性菌(薬が効きにくい細菌)の出現を招きます。耐性菌とは特定の抗菌薬が効かなくなった細菌のことです。抗菌薬を使い続けると、使っていた薬が効かない耐性菌が生まれる場合があります。抗菌薬を乱用していると耐性菌が現れる確率も上がってしまいます。するとここぞというところで抗菌薬が効かず命取りになりかねません。抗菌薬そのものによる副作用も無視できません。一般論で言えば明確な目的なしに抗菌薬を長期使用することは避けるべきです。


ただし月単位・年単位にわたって抗菌薬を飲み続ける特殊な用法もあります。クラリスロマイシン(クラリス®、クラリシッド®など)、エリスロマイシン(エリスロシン®など)、アジスロマイシン(ジスロマック®など)などのマクロライド系抗菌薬と呼ばれるグループの薬を長期使用することにより、急性増悪の頻度、痰の量、COPDに伴う症状などを改善することが示されています。マクロライド系抗菌薬には単に菌の増殖を抑えるだけではなく、気管支で起きている炎症を抑える作用などもあると想定されています。しかし、長期に内服することで当然マクロライド系抗菌薬に対する耐性菌は増えてくるので、何度も急性増悪を繰り返してしまうような人に対して切り札として使われるべき薬と言えるでしょう。

参照:Eur Respir J 2012; 40: 485-94.
N Engl J Med 2011; 365: 689-98.

COPDも重症になってくると吸入薬に喀痰調整薬、人によってはテオフィリン製剤やマクロライド系抗菌薬も加わって、飲み薬が増えてきがちです。そこで、西洋薬にあまり頼りたくない、身体に優しいイメージがある、ということで西洋薬の代わりに漢方薬を希望する人も多いと思います。実際に、COPDに伴って栄養障害がある方が補中益気湯(ホチュウエッキトウ)を使うと体重が増えて風邪を引く回数も減った、COPDに伴う咳で困っていた方が麦門冬湯(バクモンドウトウ)を使うと咳が軽くなった、痰がひどくて困っていた方が清肺湯(セイハイトウ)を使うと良くなった、などの報告はあります。
ただし、他に挙げた治療薬と比較すると漢方薬は大規模なデータが乏しいことや現行のガイドラインに記載が無いこともあり、実際に治療として使われるかどうかは患者さんと担当医の好みによるところが大きいのが現状でしょう。少なくとも、現時点で西洋薬の代わりに用いて十分な効果がある、というデータは乏しいです。

COPDが進行してしまって肺が十分な酸素を取り込めなくなると、身体に必要な酸素濃度を維持するために酸素療法が必要となります。家で出来る酸素療法のことを在宅酸素療法といい、英語でのHome Oxygen Therapyの頭文字をとってHOT(ホット)などと呼ばれます。どんな患者さんがHOTを行うべきか、というのは実はまだ十分なデータがある状況では無いのですが、動脈血液ガス分析でPaO2が55Torr以下、あるいはSpO2が88%以下程度が現行のガイドラインでは一つの目安とされています。
家に酸素の機械を持って帰るというのはそれなりに負担のある治療になるので、気管支拡張薬や呼吸リハビリテーションなど、COPDに対してできる他の治療を一通りした上で低酸素状態の改善が無い場合、というのが前提になります。また、動いた時にだけ低酸素になる患者さんの場合には、それに応じて動くときだけHOTが必要になります。

近年は多くの呼吸器内科医が注目していたLOTT試験という臨床試験が発表されました。この試験では安静にしているときにSpO2が88%を超えている患者さんがHOTを使用しても生存期間や呼吸機能、症状の改善は見られなかったという結果でした。しかしもっと重症の患者さんでは生存期間がよくなったというデータはあり、そして何より低酸素で苦しい患者さんにとっては酸素を吸うことで症状が多少は改善しますので、今後もHOTは大事な治療であり続けるでしょう。

参照:N Engl J Med 2016; 375: 1617-1627.
Ann Intern Med 1980; 93: 391-8.

HOTは家に設置されていきなり使えるようなものでは無いので、使い始める場合には入院して、適切な流量を入院中に決めてもらい、患者さん自身も使い方をマスターしていく、というふうにすることが多いです。
HOTを導入するとなると、費用が気になる方も多いかもしれません。基本的には3割負担であれば1ヶ月あたり2万円から2万5千円くらい、1割負担であれば1ヶ月あたり7千円から8千円くらいになりますが、HOTを導入するくらいの重症COPDの方であれば身体障害者手帳でHOTの費用が公費負担になることもあります。また、COPDは肺以外にも全身に様々な影響を及ぼします。HOTを使うほどの重症COPDであれば高額な治療薬が必要になるケースもあります。そういった場合には患者さんの収入にもよりますが、高額療養費制度が利用できることもあります。
このように、HOTを導入するくらいの複雑な状況になってくると医療費の計算は容易でないので、結論としては医療機関で個別に尋ねるのが正確でしょう。

街角で酸素ボンベを引きながら、あるいは背負いながら歩く患者さんを多くの方は見たことがあると思います。やはり病人に見えてしまうので、HOTを始めるとなると拒否感が強い方もいらっしゃいますが、息苦しくて外出を控えてしまう生活よりは、しっかり酸素を吸いながら活動的に暮らせる生活の方が良い、とプラス思考で考えることもできます。
HOTをしながら旅行もできます。事前の申請は必要ですが飛行機や船に乗ることもできますし、酸素ボンベを宿泊先まで届けてくれるサービスなどもあります。液体酸素を持ち運ぶことで、大きな酸素ボンベを持ち運ばないで済むような使い方も患者さんによっては可能です。国内であればほとんどの地域で心配なく旅行できますし、海外でもサポートが得られる地域もあります。
ただし、HOTでは酸素に引火してしまうと非常に危険です。自宅でも出先でも火気には十分注意してください。また、外出に際しては酸素ボンベの残量には十分注意が必要です。

HOTを使い始めると酸素を無制限に使えるようになるので、体に良いものと思ってどんどん無制限に酸素を吸ってしまう患者さんがいます。これは大変危険です。
普段から体の中に不要なガスである二酸化炭素が貯まっている患者さんでは、体の中の酸素濃度が低いという刺激によって頑張って呼吸をするように反応しています。この状態で安易に高濃度の酸素が投与されてしまうと、体が頑張って呼吸をしなくなってしまい、呼吸数が減り、不要なガスである二酸化炭素を排出できなくなってしまいます。そうすると体には不要なガスである二酸化炭素が一気に貯まってしまいます。こうなると意識が朦朧としてきて、まともな受け答えができなくなってきます。これをCO2ナルコーシスといいます。CO2ナルコーシスは命にかかわる非常に危険な状態です。なおCO2ナルコーシスになる要因としては以上の説明のほかにも複数の説があります。
CO2ナルコーシスの恐れもあるので、酸素は吸えば吸うほど良いというものではありません。決められた酸素量を、決められた時間だけ使用してください。また、診療する際や看護の際の注意点でもあるのですが、初めて受診する医療機関ではCOPDでHOTをしていることをしっかり伝えてください。事前情報があることで、医療従事者は安易に高濃度の酸素を使わないよう十分に注意することができます。

NPPVとは、正式には非侵襲的陽圧換気療法(Non-invasive Positive Pressure Ventilation)の頭文字をとったものです。NIPPVと略すこともあります。字面は難しいですが、ひとことで言うとマスク型の人工呼吸器のことです。マスクは鼻にだけかぶせるもの、口鼻にかぶせるもの、顔面全体にかぶせるものなどがあります。
COPDが進行してくると酸素の取り込みが不十分となることにより在宅酸素療法(HOT)が必要になってくる場合がありますが、酸素の問題とは別の問題として、十分に換気が出来なくなることにより体内に不要なガスである二酸化炭素が溜まってくるという問題があります。二酸化炭素が貯まってくるとCO2ナルコーシスなど命に関わる危険な状態になるので、外部から強制的に息を吸い込ませて、吐かせて、ということをする機械が必要になります。これがNPPVです。どれくらい二酸化炭素が体内に貯まっている患者さんでNPPVを使い始めるべきか、というのは様々な要因が関与するので一概には決められませんが、動脈血液ガス分析で二酸化炭素濃度(PaCO2)が55mmHg以上というのがひとつの目安となります(日本呼吸器学会 NPPVガイドライン 改訂第2版より)。
NPPVを始める際には次のことを考えなければなりません。

  • どのような機種がよいか
  • 毎日何時間くらい装着すべきなのか
  • どれくらいの圧力で機械から空気を送り込んだらよいのか
  • どのようなマスクだと一番うまく機械と同調するか

これらのことは入院しながらを決定することが多いです。また、COPDでNPPVが必要になる患者さんは、酸素の取り込みも悪いことが多いので、HOTとNPPVはしばしば併用されます。

人工呼吸器というと大掛かりなイメージがあるかもしれませんが、在宅用のNPPVは家でも使用しやすいようにコンパクトに作られています。機種によって異なりますが、だいたいは重さ数kgくらい、幅や奥行、高さも10-25cm前後くらいで収まるものが多いです。電源は必要になりますが、多少家が狭い方でも在宅NPPV自体は問題なく使えると思います。

COPDでは入院や手術が必要になることがあります。しかし、COPD患者の全員が入院治療や手術を受けるわけではありません。

COPDは急性増悪や気胸といった急を要する合併症を起こした場合でなければ、基本的にはゆっくりと月単位、年単位で進行する病気なので、緊急で入院を要するようなケースは少ないです。ただし、大掛かりな検査をする場合や、在宅酸素療法(HOT)や換気補助療法(NPPV)を導入する場合などは入院を計画することが必要になるでしょう。

大掛かりな検査の例としては、COPDに合併した肺がんの可能性があるので気管支内視鏡(肺カメラ)検査を行う、COPDに伴った心疾患の精査のために心臓カテーテル検査を行う、などがあります。その他、ひとつひとつの検査は外来でもできるけれども、通院を繰り返すのが大変という場合には、病院の空床状況とも相談して検査入院をすることもあります。

COPDは喫煙などによって肺全体がダメージを受けてしまっている状態なので、手術をしてどこかを切り取ってしまえばスッキリ良くなるような病気ではありません。したがって、結論からいうとCOPDそのものに対する手術が行われるケースは少ないです。試みられている外科的・内視鏡的手術として以下の主に3つがあります。

  1. 肺容量減量手術
  2. 気管支鏡下肺容量減量術
  3. 肺移植

1. の肺容量減量手術は上記の中では最も多く行われてきたものです。COPDに伴う肺のダメージは肺の上のほう(上葉)に偏りやすい、という特徴を利用した手術です。肺気腫がひどくほとんど働いていない上葉を切除してしまうことによって、残った肺が十分に機能するスペースを作ってあげるというイメージです。この手術により運動能力や自覚症状が良くなったという大規模研究はあるのですが(NETT研究など)、やはり手術というのはハードルが高く、現在では行われることは決して多くありません。肺気腫が上葉に著しく偏っていて、運動能力が低い患者さんでは現在でも一応考慮されることはあります。

2. の気管支鏡下肺容量減量術は気管支鏡(肺カメラ)を使って、ⅰ)と同様に働いていない上葉などを潰してしまおうという内視鏡手術です。空気の通り道である気管支に一方向弁やコイル、ステントなどを詰めることで、外科手術をすることなく、働いていない肺に入る空気を減らします。運動能力や呼吸機能を改善させたという報告も出ており(BeLieVeR-HIFi試験、STELVIO試験、IMPACT試験など)、外科手術よりも患者さんの身体的負担が少ないことから近年注目を集めています。日本で気管支鏡下肺容量減量術ができる施設はごくわずかですが、今後普及していくかもしれません。


3. の肺移植は、COPDに対して日本で行われることは極めてまれです。臓器提供者が海外に比べて少ないことも要因の一つでしょう。COPDで肺全体がダメージを受けるのであれば、肺全体を取り替えてしまおうという発想の治療ですが、ドナーが必要であるという問題、移植後の激しい拒絶反応の問題、拒絶反応を抑える薬による副作用の問題など、課題は非常に多く決して夢のような治療ではありません。現状では日本でCOPDに対する肺移植という選択肢は極めてまれです。

病気の一部には治療費の補助が受けられるものがあります。COPDも進行すると補助を受けられる場合があります。

ある程度進行したCOPDの患者さんでは身体障害者福祉手帳(身障者手帳)が給付されることがあります。認定される等級によってもサービスは異なりますが、身障者手帳があれば保険医療費の免除、医療機器の貸与、障害者基礎年金・障害者厚生年金・障害手当などの給付、免税や減税、交通費の割引、NHK放送受信料の減免、市町村障害者生活支援事業・身体障害者ホームヘルプサービス事業を受けられる、公営住宅の優先入居、など様々なサービスが受けられます。

適切なサポートを受けるためにも、認定されそうなCOPD患者さんにはぜひ身障者手帳の給付申請をお勧めします。ご自身が認定されそうかどうか、かかりつけ医に一度聞いてみるとよいでしょう。認定されそうならば、役所の障害者福祉担当窓口で「身体障害者診断書・意見書」の用紙を入手して、かかりつけ医療機関に提出して指定医師に記載してもらいます。
ここでのポイントとして、指定医師でなければこの診断書・意見書は書けません。医師ならば誰でも書けるわけではないことに注意してください。かかりつけの医師が指定医師でない場合には、その病院で診断書を出してもらえる医師に書いてもらうか、障害福祉担当窓口で書いてくれる医師を教えてもらうことができます。

ちなみにCOPDなどの呼吸器疾患による身障者認定の級数は1級、3級、4級の3種類があります。どの級数になるかは総合的な判断になるので難しいところではありますが、客観的な評価として以下のような目安が重視されています。

  • 1級:スパイロメトリーでの%FEV1が20%以下、または動脈血液ガス分析でPaO2が50Torr以下。
  • 3級:スパイロメトリーでの%FEV1が20%を超えるが30%以下、または動脈血液ガス分析でPaO2が50Torrを超えるが60Torr以下。
  • 4級:スパイロメトリーでの%FEV1が30%を超えるが40%以下、または動脈血液ガス分析でPaO2が60Torrを超えるが70Torr以下。

したがって、COPDのため身障者手帳の交付を申請する場合には、基本的にスパイロメトリー(肺機能検査)と動脈血液ガス検査が必要になります。上記の基準はなかなか厳しいものです。ご自身でスタスタと歩いて病院に通って来られるような患者さんでは基本的に4級の目安に当てはまることも少ないでしょう。元気なCOPD患者さんでは必ずしもスパイロメトリーや動脈血液ガス検査は定期的に行われないのが実情です。

COPDは国が定める、介護保険における特定疾病に該当するため、40歳以上のCOPD患者さんは介護保険の申請をすることができます。
申請をすると、主治医意見書と訪問調査の結果をもとに介護認定審査会で審査判定が行われます。判定により介護保険の非該当、要支援1から2、要介護1から5に分類されます。介護度に応じて、指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設への入所や、在宅として、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、通所介護、ショートステイ、福祉用具給付・貸与などのサービスや費用の援助を受けることができます。

介護保険はCOPD自体の重症度ではなく、あくまでも日常生活でどのくらい介護に手間がかかるかで判断されるので、介助なしで生活ができるような方では、重度のCOPDであったとしても軽度の介護度になる傾向があります。
身体障害者福祉手帳と合わせて、ご自身にあった社会的サポートを受けられるよう、制度をうまく利用してください。分からないことがあったら、医療関係者に聞いてみると良いです。