まんせいへいそくせいはいしっかん
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
気管支や肺胞が炎症で変化し、正常な呼吸ができなくなっている状態。喫煙が原因で起こることがほとんどである
21人の医師がチェック 143回の改訂 最終更新: 2018.08.01

肺気腫・COPDに対して患者ができることは?

COPDは日本人の死亡原因トップ10に毎年ランクインする重大な病気であり、医療機関ではその予防や治療のために多くの対策を講じています。しかし、最も重要なのは禁煙をはじめとした患者さんによるセルフケアです。ここでは自分でできるCOPD治療および予防を説明していきます。 

COPDの治療において、禁煙することはとても重要です。どの程度重要なのでしょうか。また、どういった心づもりで禁煙に取り組んだらようのでしょうか。

COPDと喫煙は強く関係しています。禁煙は肺の機能が悪化していくことを防ぐ効果がありますし、死亡率も低くなることが証明されています。受動喫煙を含めて、タバコの煙から可能な限り逃れることがCOPDの治療としても予防としても最も重要です。

では、タバコをやめればCOPDの治療は不要かというと、残念ながらそうではありません。喫煙によってゆっくりと破壊されてしまった肺は元に戻りません。残っている肺の機能を少しでも維持していくために、急性増悪を起こさないように、その他のトラブルを起こさないように、禁煙と並行してCOPDに対する治療を考えていく必要があります。

参照:Ann Intern Med 2005; 142: 233-9.

COPDの治療として禁煙は最重要です。COPDの治療薬を使いながらタバコも吸ってしまうという人が実際にはいますが、これはやめるようにして下さい。
禁煙が一番大事、ということは患者さん自身も理解はしているケースがほとんどです。それでもタバコをやめられないのは、喫煙習慣の本質がニコチン依存という薬物依存症だからです。自身の強い意志で禁煙できる人は素晴らしいですが、タバコを吸ってしまうということは薬物依存症という病気のひとつと考えて医療機関を受診して、医療者と一緒に禁煙の方法について考えて下さい。

自分の肺機能が悪いことや胸部CT検査で肺がスカスカ(気腫化が進んでいる)だと知ったこと、などにショックを受けて禁煙を決意する人もいます。吐いた息に含まれる一酸化炭素濃度を測定することで、禁煙の効果を感じることによりモチベーションを維持できる人もいます。ニコチンガムやニコチンパッチ、バレニクリン(チャンピックス®)などの薬物療法のおかげであまり苦労せずに禁煙できる方もいます。
どんな治療が効果的かは個人差がありますが、禁煙外来は禁煙の大きな手助けになってくれるでしょう。

COPDに対しての吸入薬などの治療と並行して、リハビリテーション(リハビリ)が行われます。どんなタイプのリハビリが行われるのでしょうか。

COPD患者さんは息切れのためにあまり動かなくなり、それによって身体能力の低下、うつ状態、社会的な孤立、などを招くことがしばしばあります。するとますます呼吸困難感が増していくという悪循環に陥ってしまいます。

呼吸リハビリテーションプログラムは、この悪循環を断ち切り、呼吸困難感の軽減、運動能力のアップ等に寄与し、入院回数や入院頻度も減らすことができると報告されています。
口すぼめ呼吸は有名な呼吸方法であり、口をすぼめてゆっくりと時間をかけて息を吐くという方法です。口をすぼめる、すなわち空気の出口を狭くしてあげることで、COPDで狭くなってしまった気管支が広がりやすくなり、呼吸困難感を和らげたり、体内への酸素の取り込みを良くする効果があると言われています。頑張らずにリラックスして、ゆったりと息を吐くことが大事です。

口すぼめ呼吸が有名なので、呼吸リハビリというと口すぼめ呼吸を思い浮かべる方も多いかと思いますが、実際には呼吸リハビリの中核となるプログラムは運動療法であり、運動療法により症状がよく改善すると言われています。

参照:Chest 1997; 112: 1363-96.
日呼吸会誌 2002; 40: 536-44.

呼吸リハビリというと、呼吸に必要な筋肉のトレーニングをイメージされる人が多いかと思いますが、実際には全身のコンディショニングや、足など全身の筋力トレーニングを行っていきます。また、痰をうまく吐き出す訓練なども行います。最初はクリニックあるいは病院で専門の理学療法士から正しい呼吸リハビリの方法を教えてもらいましょう。動画サイトでリハビリ方法を紹介しているものもあるので、復習として見てみるのも良いでしょう。

COPDによい食事はあるのでしょうか。また、COPDの人はどう体型管理をしたほうが良いのでしょうか。

標準体重(身長×身長×22 kg)の90%にも体重が満たない患者さんは栄養障害があると考えられます。栄養障害はCOPDを悪くさせるおそれがあるので、COPD患者で標準体重の90%未満の人は、クリニックや病院で栄養士による栄養指導を受けるようにして下さい。

COPDで痩せている人には高タンパク高エネルギーの食事が推奨されます。すぐにお腹が膨れてしまって、なかなか量が摂れない人は、食事回数を増やしてみるとよいでしょう。また、呼吸リハビリの一環として運動療法をしっかりと行うことで、摂取した栄養が吸収されやすくなるので、体重を増やしていくためには食事療法と並行して運動療法も行っていくことが重要です。


参照:Am Rev Respir Dis 1985; 132: 1347-65.
Chest 1997; 112: 1363-96.

COPDの患者は通常よりも呼吸にエネルギーを使うことや、体内で炎症が起きていることなどにより必要なエネルギーが多くなっており、安静にしているときでも健康な人よりも20-40%ほど多くのエネルギーを必要とするとされています。また、COPD患者さんでは食事摂取量も減ってしまいがちで、重症のCOPDであるほど痩せが目立ち、ステージIIIのCOPD患者の約40%が、ステージIVのCOPD患者の約60%が医学的に痩せとみなされます。痩せているCOPD患者さんは、COPDの症状も強く出やすく、急性増悪や入院のリスクも高く、死亡リスクも高いと考えられています。

参照:UK, Maney Pub 2003. 厚生労働省 呼吸不全調査研究班報告書 2009、pp.247-51.
Am J Respir Crit Care Med 1999; 160: 1856-61.
Eur Respir J 1997; 10: 1576-80.

このようにCOPDにおいては痩せていることは危険なことであると考えられています。もちろん太りすぎは健康によくありませんが、COPDの患者さんでは特に痩せに注意しましょう。標準体重(身長×身長×22 kg、身長はメートルで計算します。)をひとつの目安とするとよいでしょう。

感染症を予防するためにワクチンがあります。COPDの人は肺や気管支の感染症になると急性増悪しやすいことが分かっています。COPDの人にとってワクチンはどのくらい重要なのでしょうか。

COPDは一般的な風邪肺炎などをきっかけとして急性増悪を起こすことも多く、ワクチンを接種しておくことがとても重要です。COPDがあってもインフルエンザの予防接種は年に1回で良いので、11月頃を目安に毎年ぜひ予防接種を受けてください。インフルエンザワクチンを打っても、インフルエンザにかかることを100%予防できるわけではありませんが、インフルエンザ肺炎による死亡率を50%減らすことができるとされています。また、COPD患者にうつらないようにするためにも、家族や医療者も積極的にインフルエンザワクチンを接種するようにして下さい。
参照:N Engl J Med 2007; 357: 1373-81.

インフルエンザワクチンと同様に、COPD患者が肺炎球菌ワクチンを接種することが推奨されています。肺炎や急性増悪の頻度を減らすことが分かっているからです。インフルエンザワクチンとの併用で、より有効であることも分かっています。
まだ肺炎球菌ワクチンを接種していないCOPD患者さんはぜひ予防接種を受けて下さい。プレベナーというタイプのワクチンは一度接種していればその効果が長期的に持続しますが、ニューモバックスというタイプのワクチンは5年ごとに再接種が必要な点にも注意が必要です。ちなみに高齢者で公費負担されているものはニューモバックスです。
参照:Cochrane Database Syst Rev. 2017 Issue 1. Art. No.: CD001390. 
Vaccine 2008; 26: 4284-9.

持病がある人は地震などの災害が起こると治療に困ることが多いです。COPDに関しても同様で、状態悪化や治療の継続困難予測されるため、日頃から災害に備えておく必要があります。

地震などの災害時には住宅の損壊、停電、居住区域の孤立、物資や水道の途絶などさまざまな厳しい状況が想定されます。家具を固定しておく、高所にある物品は落下防止処置を行う、備蓄食料や避難用具を準備しておく、などの一般的な災害対策はもちろん必要ですが、COPD患者は災害時でも薬が切れないように準備しておく、在宅酸素(HOT)を使っている患者は緊急時の業者・医療機関連絡先を確認しておく、パニックにならないように心構えをシミュレーションしておく、などを心づもりしておいて下さい。スムーズに行動・避難できるように普段から運動療法、呼吸トレーニングなどリハビリをしっかり行っておくことも当然大事です。

実際に災害が起きた際、もちろん大変な状況であることには変わりませんが、普段からよく準備ができている軽症のCOPD患者であれば、その困難は他の被災者と大差ないかもしれません。しかし、在宅酸素療法(HOT)や人工呼吸器(NPPV)を使用しているような重症COPD患者さんでは大きな困難に直面することになります。東日本大震災の時には、多くのHOT患者さんが近隣の病院や市役所に酸素を求めて避難する様子が見られました。これに対して、基幹病院(地域を支える大きな病院)が酸素業者と速やかに連携して「HOTセンター」を用意して対応しました。

この教訓を踏まえて、今後は地域のHOTやNPPVを使用する患者を把握しておき、災害時に患者さんに医療機器の使用を提供できるような拠点の整備を進めようとする動きがあります。現状では整備不十分な地域も多いと言わざるを得ませんが、HOTやNPPVを使用する患者は、災害が起きたら、一般的な対応に加えて、これらの機器の使用をできる拠点を速やかに探す必要があります。