Beta 慢性閉塞性肺疾患(COPD)のQ&A
- 禁煙:喫煙が最大の原因であり、禁煙が最も大切な治療になります。
- 薬物療法:気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬・テオフィリン薬)が治療薬の中心となります。効果や副作用の面から吸入薬が推奨されており、主に長時間作用する吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬が使用されています。重症の場合や喘息の要素がある場合には、吸入ステロイド薬が併用されることもあります。吸入薬の配合剤もあり、それらがしばしば用いられています。
- 非薬物療法:呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心となります。
- 酸素療法・人工呼吸器:血液中の酸素濃度が維持できない場合、在宅酸素療法を行います。体内に不要なガスである二酸化炭素が過剰になってしまう場合には、マスク型の在宅人工呼吸器(非侵襲的陽圧換気)を使用して体外に排出する場合もあります。
- 手術:それほどよく行われることではありませんが、スカスカになりきって殆ど機能していない肺を部分的に切除する外科手術(肺容量減少術)が検討されることもあります。
慢性閉塞性肺疾患の原因、メカニズムについて教えて下さい。
肺はブドウの房のように連なった肺胞という袋が集まってできた臓器で、それらが集まって気管支でつながれています。肺胞で酸素と二酸化炭素を交換し呼吸を行っていますが、肺胞の数が多ければ多いほど呼吸の効率が良く、正常の呼吸が保てます。しかし、主に喫煙によってその肺胞が壊れ、効率が悪くなります。この状態を「肺気腫」といいます。また、喫煙による慢性の気管支炎によって痰などの分泌物が増え、気管支が細くなり息苦しくなる場合があります。この「肺気腫」と「慢性気管支炎」の2つを合わせて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といいます。また、一度壊れた肺胞は治ることはありません。
慢性閉塞性肺疾患は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
厚生労働省の統計によると2014年の死亡者数は16,184人で、全体としては増加傾向です。20年以上の喫煙によって発症リスクが増加しますが、症状が軽度であれば医療機関を受診していない方も多いため、正確な頻度は不明です。しかし、国内の喫煙率は依然として高く、今後さらに患者数が増加することが懸念されています。喫煙率は女性に比べ男性のほうが高く、慢性閉塞性肺疾患の発症率も男性のほうが高い傾向にあります。
慢性閉塞性肺疾患と気管支喘息の違いについて教えて下さい。
両者は共に、気管支の炎症が存在し、気管支自体が細くなり呼吸困難をきたす点で似ており治療方法もよく似ています。しかし、肺自体は正常である気管支喘息に対し、慢性閉塞性肺疾患では肺胞が壊れて肺気腫になっているため、呼吸効率が悪く治療を行っても完全には肺の機能が回復しません。近年の研究では、両者が併存したケースもかなり多く認められています。
慢性閉塞性肺疾患が発症しやすくなる、または慢性閉塞性肺疾患の人が他に注意すべき病気はありますか?
最大の原因は喫煙であり、ほぼ全例喫煙歴があります。特に20年以上の喫煙歴がある方は注意が必要ですが、個人差も強く、それより喫煙歴が短くても発症する可能性があります。慢性閉塞性肺疾患の方は、風邪や肺炎などの感染を契機に急激に咳や痰が増加し、息苦しさが出現することがあります。これを急性増悪といい、感染症に注意することが大切です。予防のために肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種することが推奨されています。
慢性閉塞性肺疾患は、遺伝する病気ですか?
慢性閉塞性肺疾患自体は喫煙の影響がほとんどですが、肺気腫になるα1-アンチトリプシン欠損症という稀な遺伝病が存在します。また近年、慢性閉塞性肺疾患になりやすい遺伝子配列が解明されていますが、喫煙などの環境因子が大きく関与しており、遺伝性はほぼないと考えられます。
慢性閉塞性肺疾患は、どんな症状で発症するのですか?
歩いている時や階段の上り下りなどの、身体を動かした時に息切れを感じる労作時の呼吸困難、慢性の咳や痰が特徴的な症状です。喘息のような喘鳴をきたすこともあります。
慢性閉塞性肺疾患が重症化すると、どのような症状が起こりますか?
はじめは労作時に血液中の酸素濃度が保てなくなり、強い息切れと呼吸困難を感じ酸素吸入が必要になります。さらに進行すると安静時でも酸素濃度が保てず、常時酸素を吸入しなければならない状態になります。また、体内の二酸化炭素を排出する機能が落ちてしまいます。二酸化炭素が貯まることで意識消失をおこし、最悪の場合呼吸が停止し死に至ります。
慢性閉塞性肺疾患は、どのように診断するのですか?
まずは喫煙歴や運動時の息苦しさなどの詳細な問診によっておおむね診断が可能です。正式に診断するためには呼吸機能検査が必須となります。ここまででCOPDの診断はつくことが多いですが、COPD以外の病気が隠れていないか調べるために胸部レントゲン検査や胸部CT検査などもしばしば行われます。また、気管支喘息との区別が問題になることも多く、その場合には気管支喘息に関連した検査が追加になることもあります。
肺気腫/慢性閉塞性肺疾患の治療法について教えて下さい。
肺気腫/慢性閉塞性肺疾患のその他の治療法について教えて下さい。
慢性閉塞性肺疾患の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?
残念ながらCOPDは治ることがなく、吸入薬や内服薬を生涯使用するケースもしばしばあります。ただし、初期であれば禁煙のみで症状が改善され、日常生活に支障がない状態に戻ることもあります。
慢性閉塞性肺疾患では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?
安定していれば特に入院は必要ありませんが、感染などをきっかけに急激に症状が悪化した場合や、二酸化炭素が体内に貯まってしまった場合には入院治療が必要になります。通院は、在宅酸素や人工呼吸器を使用する場合、最低でも月1回の通院が必要になりますが、それ以外は特に制限はありません。外来では1-2ヶ月に1回通院されている方が多いです。
慢性閉塞性肺疾患に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
禁煙と感染予防、および薬や在宅酸素療法の適切な使用が重要です。低酸素状態は慣れてしまうとあまり苦しくない場合が多く、治療を自己中断されるケースも多々あります。しかし、低酸素状態を持続するため体への負担が強く、脳・心臓疾患の発症頻度が増加することが認められており、医療機関への定期的な通院が必要です。