2019.07.05 | コラム

長引く息切れや咳、痰の原因はCOPDかも:どんな検査でわかる?

喫煙歴が長い人は要注意です

長引く息切れや咳、痰の原因はCOPDかも:どんな検査でわかる?の写真

年齢を重ね、「少し動いただけでも息切れするようになった」「咳や痰が出やすくなった」と感じている人もいるのではないでしょうか?これらの症状は年のせいと放置されてしまうことも多いのですが、実はCOPDという呼吸器の病気によって引き起こされているケースもあります。

今回はCOPDとはどんな病気なのか、どのような検査でわかるのかについて説明します。

 

 

 

1. COPDとはどんな病気?

COPDはタバコの煙を主とする有害物質を長期的に吸入することで引き起こされる病気です。肺や気管支に炎症が起こり、その結果空気の通り道が狭くなったり、肺の奥にある肺胞という袋が破壊されたりして酸素の取り込みが難しくなります。

2017年の厚生労働省の患者調査では、COPDの患者数は22万人と発表されています。しかし、日本での大規模な調査では40歳以上でCOPDにかかっている人の割合が8.6%と見積もられたことから、約530万人の患者がいると推定されています。女性に比べ、男性の患者数が約2.3倍と多く、日本人男性の死亡原因の第8位となっています(2017年)。

 

どんな人がCOPDにかかりやすい?

COPDの最大の危険因子は喫煙です。長年の喫煙習慣のある人がかかりやすいということが分かっており、喫煙者の15-20%がCOPDを発症するといわれています。自分自身がタバコを吸わない場合でも、家庭や職場に喫煙者がいると日常的な受動喫煙によってCOPDの発症リスクが高まります。

 

COPDにかかった場合の症状は?

身体を動かしたときに起こる息切れや、長引く咳、痰がCOPDの特徴的な症状です。呼吸をしたときにゼィゼィと音がしたり、発作的に呼吸困難になったりする人もいます。重症化すると少し動いただけで息切れがする、常に酸素吸入が必要になるなど、日常生活を送るのも辛くなります。

 

2. COPDはどのような検査でわかる?

ここまで読んで自分がCOPDにかかっているかもしれないと不安をいだいた人は、医療機関を受診し、COPDになっていないか調べてもらうことをおすすめします。

診察時にはまずは問診で、お医者さんから喫煙歴や特徴的な症状が現れているかどうか質問されます。これらがある人はCOPDが疑われ、検査を受けることになります。

 

COPDが疑われる人が受ける呼吸機能検査とは

COPDの診断には呼吸機能検査が重要です。肺活量を調べる検査をイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。呼吸機能検査では鼻をふさいだ状態で、口にマウスピースをくわえて大きく呼吸します。マウスピースと口の間に隙間ができると、息が漏れてしまい正しく検査ができなくなるので注意が必要です。

 

呼吸機能検査では2種類の測定を行います。

 

  • 1つ目の測定:肺に入る空気の容量(肺活量)を調べます
    医療者の合図に合わせて可能な限り大きく息を吐いたり吸ったりしてください
  • 2つ目の測定:1秒間で吐き出せる息の量(1秒量)を調べます
    思いっきり息を吸った後、可能な限り息を強く速く吐ききってください

 

1つ目の測定では少しゆったりとしたペースでも構いませんが、2つ目の測定検査ではできるだけ強く速く吐ききるのがポイントです。

めいっぱい吸ったり吐いたりするので検査時に多少の疲れを感じる人がいますが、痛みはなく、放射線被曝の心配もありません。上手に吸ったり吐いたりできているかは、そばにいる医療者が患者さんの様子を観察したり、呼吸機能検査の機械で感知した空気の流れを調べたりして判断してくれます。

患者さんがもう少し頑張れそうな様子にみえたり、呼吸するのに気をとられて口元が緩んでしまったりした場合は検査のやり直しになります。

 

COPDの人は息を吐き出しにくい

健康な人では1つ目の測定で調べた肺活量のうち、70%以上を1秒間で吐ききることができます。一方、COPDの人は空気の通り道である気管支が狭まっているため、1秒間であまり多くの息を吐きだすことができません。

まずはこの2つの測定検査で、1秒間で70%以上を吐ききれるかどうかを調べます。

 

気管支拡張薬を使用した再検査でCOPDと確定

空気の通り道の気管支が狭くなる病気はCOPDだけではありません。呼吸器の病気としてよく知られている気管支喘息や慢性気管支炎なども気管支が狭くなり、1秒間で吐ける息の量が少なくなる病気です。

適切な治療のためにはCOPDとその他の病気のどちらにかかっているか見分ける必要があります。そのために行われるのが気管支拡張薬を使用しての再検査です。

気管支拡張薬はその名の通り気管支を広げる薬です。気管支喘息の人がこの薬を使用すると1秒間で吐ける息の量が大きく増加します。一方、COPDの人の狭くなった気管支は、気管支拡張薬を使用してもあまり広がらないため、1秒間に吐ける息の量もあまり増えません。

気管支拡張薬を使用する前と後の呼吸機能検査の結果を比較することでCOPDかどうかが診断されます。

 

3. まとめ

COPDは喫煙が主な原因で発症する呼吸器の病気です。長年の喫煙習慣がある人、また、喫煙者と同じ空間で過ごす時間が長い人で、もし息切れや咳、痰などの症状に心当たりがあったらCOPDになりかけているのかもしれません。一度、医療機関で検査を受けることをおすすめします。

受診する診療科は呼吸器内科が最も良いですが、近くにない場合はかかりつけの内科に相談し、適切な医療機関を紹介してもらうこともできます。

このコラムを読んで、早期に適切な治療を受けられる人が増えることを願っています。

 

 

執筆者

nobi-non

参考文献

・「人間ドック検診の実際」(日本人間ドック学会/監)、文光堂、2017

・「臨床検査法提要」(金井正光/監)、金原出版、2015年

・日本呼吸器学会「慢性閉塞性肺疾患(COPD)

・厚生労働省「平成 29 年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況

・厚生労働省「主な傷病の総患者数

・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌「呼吸リハ呼吸リハビリテーションに関するステートメント

・日本呼吸器学会「受動喫煙の害

・日本呼吸器学会「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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