がんと診断されたら考えて欲しい5つのこと
もし自分ががんと診断されたら、もし家族や親しい友人ががんと診断されたら—。
そんな場面を想像してみてください。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は約2人に1人と言われています。がんは、私たちが思っている以上に身近な病気なのです。いざがんと診断されたら、最初は驚き、落ち込み、不安、怒りなど、さまざまな感情が出てきて当然ですが、それでも自分にとって最適な治療方針を探さなければなりません。がんと診断されたときでも、治療をはじめるときでも、治療の途中段階でも、このコラムががんとの向き合い方を考える助けになればと思います。
1. 自分は情報をどこまで知りたいのか考える
自分の中で整理していく中で、まず考えてみていただきたいのは、大きく分けて「病気や治療についての情報」と「今後の見通し」の2つです。前者は治療の目的や方法、治療の効果や起こりうる副作用などが当てはまります。これらは知っておいて損はない情報なので、基本的には医師からよく聞いておくとよいでしょう。一方で、今後の見通しについてはどこまで知りたいかが人によって異なります。そのため、患者さん自身が情報をどこまで知りたいのかを、医師側も把握したいと考えています。
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医師と話す場面になると緊張してうまく伝えられない、という人は、あらかじめメモ用紙に書いておくのもおすすめです。書くことは、自分の考えをまとめる役にも立ちます。
患者と家族で意見が食い違う場合
なお、この希望は患者さん本人と家族の間で異なる場合があります。実は本人はすべての情報を知りたがっているのに、家族から本人には特定の情報は伝えないでほしいと依頼されるケースがよくあるのです。もちろん患者さんが病気を理解し、納得して治療を進めていくためにも、基本的には患者さんの希望を尊重したいとわたしは考えています。しかし、家族もさまざまな思いを抱えて患者さんに寄り添っているので、なぜ伝えてほしくないのか、伝えたらどうなるのか、伝えなかったらどうなるのか、家族と医師の間でもよく話し合ったうえで本人への伝え方を決めていくのが理想です。
AIやインターネットとの付き合い方
また、今は情報源は病院だけではありません。インターネットや生成AIからも多くの情報を知ることができます。ただし、この場合は注意が必要で、情報の真偽、入手した情報が自分の病状が一致しているかどうかなど、自分で見極める必要があります。さらに、情報過多の世界においては、画面をスクロールしているだけで知りたくなかった情報まで目にしてしまう可能性があることにも注意が必要です。
自分がどこまで情報を知りたいのか把握したうえでインターネットやAIで検索をするのが良いのではないでしょうか。検索をかけてわからなかったこと、より深く知りたいと思ったことがあれば、医療者に質問していただきたいと思います。
2. 自分の立ち位置と治療の目的を理解する
次に、治療を始めることになったとします。がんの治療は、おおまかに手術、
根治を目指せるかどうかで治療の目標が変わる
がんと診断されたとき、どのくらい進行しているか、いわゆる
根治を目指せる場合は、がんを消すことが目標となり、治療をやりきれば一区切りがつきます。一方、根治が難しい場合は、がんとうまく付き合いながら「元気に過ごせる時間をできるだけ長くすること」が目標になり、体力が続く限り治療を続けていくことになります。なぜこの違いが大事かというと、「治療をしているのにがんが消えないのはなぜか」「治療が終わると思っていたのに、ずっと続いているのはなぜか」といった戸惑いにつながりやすいからです。自分が受けている治療がどちらを目指したものなのか、ぜひ一度、主治医に確認してみてください。
同じ治療であっても目標が違えば続け方も変わる
たとえば、同じ放射線治療であっても、がんを消すことを目指して行う場合と、症状をやわらげるために行う場合があります。骨に
がん治療をはじめると、長く通院することになりがちです。医療者と二人三脚でよりよく治療を進めていくためにも、自分のがんがどの立ち位置にいるのか、これから受ける治療の目標が何なのか、治療開始時にも変更時にも理解しておきたいところです。遠慮なく主治医に質問してみてください。
3. どんな治療にも副作用などのリスクはつきものと知る
治療を受ける際には、起こりうる副作用について医師から説明があります。
治療中には多かれ少なかれ体調の変化が訪れますので、どんな症状が出たときに受診すればよいか、わからない点は担当医師や看護師に聞いてみてください。今までできていたことができなくなることもありえるので、家族や周りの人、あるいは病院の相談窓口やソーシャルワーカーなども頼りながら、一人で抱え込まないようにしてほしいと思います。
4. 緩和治療はがんと診断された時からはじまると認識する
「緩和治療」と聞くと、がん末期の患者さんが受けるもの、というイメージがあるかもしれませんが、決してそうではありません。がんの患者さんはさまざまな症状を経験します。痛み、息苦しさなどの身体症状や、気持ちの落ち込みなど心の症状もあります。それはがん末期だけではなく、がんと診断されたときから起こりうる症状であり、それらを和らげる緩和治療もがんと診断されたときから行うケアなのです。
痛みがあれば痛み止めを使う、呼吸が苦しいときには酸素を使う、眠れないときには環境を整えたり、睡眠薬を使ったりすることも緩和治療のひとつです。前述の緩和的な放射線治療も、症状を和らげるために行うものです。苦痛は耐えるべきものではなく、和らげられるものは和らげていきたいものです。気になる症状があれば我慢せずに主治医に話してみてください。
5. 元気な時こそ最期の過ごし方について考える
「最期をどんなふうに過ごしたいか」。がん診療を受けていく中でそのように医師から聞かれることがあります。聞かれるタイミングはそれぞれ違いますが、必ずしも最期が近いと判断しているから聞いているわけではありません。元気に過ごしている間にしか考えられないこと、行動できないことがあるからこそ、早めのタイミングで聞くことも多いのです。
たとえば「最期を過ごす場所は自宅がよいか、自宅以外の施設や病院が良いか」。自宅で過ごすならば自宅の環境を事前に整える必要がありますし、施設や緩和ケア病棟で過ごすならば、候補を探して見学に行く必要があります。周りの人に任せるよりも自分でじっくり考えて準備しておくほうが理想の形に近づけるはずです。病状が安定しているときだからこそ、医師が聞いているケースも多いですので、「最期が近いからだ」と落胆せずにゆっくり考えてみてください。
がんと診断されると誰もが最初は戸惑うものです。まずはこの5つについて、焦らず、自分のペースで考えていくことが大切です。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。