まんせいへいそくせいはいしっかん
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
気管支や肺胞が炎症で変化し、正常な呼吸ができなくなっている状態。喫煙が原因で起こることがほとんどである
21人の医師がチェック 143回の改訂 最終更新: 2018.08.01

肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)とはどんな病気?原因はあるのか?

COPDは主にタバコの煙により呼吸がうまくできなくなる病気です。肺のほか全身に多大な影響を及ぼします。近年は日本人の死亡原因トップ10に毎年ランクインしています。500万人以上の日本人がCOPDと推定されます。

COPDは、主にタバコの煙などの有害物質を長期にわたって吸い込んでしまうことで肺に炎症が起こり、うまく呼吸ができなくなる病気です。
うまく呼吸できないことを換気障害と言いますが、換気障害の中にはいくつかのタイプがあります。COPDでは閉塞性障害といってうまく息を吐き出せないタイプの換気障害が特徴的です。COPDによる閉塞性障害は一度進んでしまうと基本的には回復しません。
なお、COPDとは慢性閉塞性肺疾患にあたる英語のChronic Obstructive Pulmonary Disease の頭文字をとったもので、世界中で広く使われている病名です。

肺気腫とCOPDはほぼ同じ状態を指していますが、厳密には使い分けられるべき別の言葉です。
正常な肺は、木の枝のように細かく分かれる気管支と、気管支の先にあたる位置にある袋状の肺胞(はいほう)からできています。1個1個の肺胞は目に見えない大きさです。微小な肺胞が集まって、下の図のようなブドウの房状の構造物を作っています。

図:肺の構造のイラスト。気管支は木の枝のように分かれていく。

図:肺胞の構造のイラスト。

タバコの煙などの有害物質を長期にわたって吸い込むことで、肺の正常な構造が破壊されます。すると構造が粗くなって目に見える大きさの空間がたくさんでき、肺がスカスカになります。これを気腫化といいます。肺の気腫化が進んだ状態が肺気腫です。

COPDでは空気の通り道である気道が破壊されて痰が溜まりやすい状態になっています。そして、息を吐き出そうとすると、本来肺は気管支を周りから引っ張られることで気管支が開通した状態を維持していますが、スカスカの肺は気管支が開いている状態を維持できず潰れてしまい、うまく息を吐き出せなくなります(閉塞性換気障害)。COPDはうまく息を吐き出せない状態を指した病名なのです。
簡単に違いをまとめると次のとおりです。

  • 肺気腫
    • 肺がスカスカであること。
  • COPD
    • 息をうまく吐き出せないこと。

つまり、肺気腫はあっても息を吐き出す力がそれなりに残っていれば「肺気腫だがCOPDではない」ということになります。反対に肺気腫は目立たないけれども息を吐き出す力が弱ければ「肺気腫ではないがCOPDである」とされます。肺気腫とCOPDは同じような病態を指した用語ですが、状況に即して呼吸器科の医者は使い分けています。ただ患者さんに説明するとき、実際にはCOPDを指していても、日本語で親しみやすい「肺気腫」と説明する医師もいます。

「肺気腫」という用語と同様に、「慢性気管支炎」という用語もCOPDと似たような病態を指しています。タバコの煙などの有害物質を長期にわたって吸い込むことで、吸い込む空気の通り道である気管や気管支は破壊されてなかなか治らない炎症を起こした状態になります。これを慢性気管支炎といいます。

慢性気管支炎では炎症の影響を受けて空気の通り道が狭くなります。息を吐き出そうとすると細い空気の通り道は簡単に潰れてしまい、うまく息を吐き出せなくなります(閉塞性換気障害)。COPDはうまく息を吐き出せない状態を指します。簡単に違いをまとめると次のとおりです。

  • 慢性気管支炎
    • 空気の通り道である気管支がしつこい炎症を起こしている状態。
  • COPD
    • 息をうまく吐き出せないこと。

50年ほど前はこれらの用語の使い分けが問題になったものですが、近年はそもそも慢性気管支炎という用語自体があまり使われなくなってきています。

日本国内での大規模調査により、40歳以上の日本人のうち8.6%がCOPDであったという報告が出ています。日本の人口に当てはめるとCOPDの患者さんは国内に500万人以上いるという計算になります。
COPDは主に喫煙によってかかる病気です。男性のほうが喫煙者が多いので、COPDの患者数は男性のほうが女性よりも2-3倍以上多いと言われています。

死亡者数としてもCOPDは非常に多く、厚生労働省の調べで長らく日本人の死因トップ10にランクインし続けています。2015年のデータでは、日本における1年間のCOPDそのものによる死亡数は15,756人でした。近年は喫煙者が減ってきているものの、多く喫煙してきた世代が高齢者になっていく時期なので、今後もしばらくCOPDに悩む人が多い状況は変わらないでしょう。

参照:Respirology 2004; 9: 458-65, J Epidemiol 2007; 17: 54-60.

COPD患者の約90%に喫煙歴があり、タバコの煙はCOPD発症の最大の危険因子であると考えられています。呼吸器内科医の感覚としても、タバコを吸ったことが無いのにCOPDと言われると「珍しいな、本当にCOPDなの?」と感じてしまいます。

ただし、患者さんご自身の喫煙歴が無くても受動喫煙(副流煙)、大気汚染(近年問題となっているPM2.5なども含まれます)、有機燃料の燃焼したガス、肺炎の後遺症などでもCOPDになることはあると言われています。

その他、これら外的要因(環境の影響)以外にも遺伝子異常でCOPDを発症してしまうことがあります。α1アンチトリプシン欠損症という病気が最も有名です。α1アンチトリプシン欠損症は欧米では時々みかける病気ですが、日本人では極めてまれな病気です。そのため、親がCOPDだったから自分もなるのではないかとか、自分がCOPDだから子供にも遺伝するのではないかといった心配よりも、喫煙しないことのほうが大切と言えるでしょう。

α1アンチトリプシン欠損症のような特殊な背景がなければ、血が繋がった人がCOPDだと自分もCOPDになりやすいというようなことはあまり心配しなくて良いです。しかし、タバコの影響を受けて肺がダメージを受けやすい体質というものはあります。1日5本しか吸っていないのに20年で重症のCOPDになってしまう人もいれば、1日100本を50年以上吸っていてもCOPDにならない人もいます。血縁者がCOPDにかかった人が喫煙している場合には、息切れの有無などに注意が必要です。また、COPDによる息切れを感じるときにはだいぶ病状が進行しています。症状が出る前に禁煙することが大切です。

参照:Thorax 2010; 65: 14-20, Annu Rev Med 1989; 40: 411-29, Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 891-7.

肺はいくつかの構造が集まってできています。

  • 気管支:空気の通り道
  • 肺胞:血液と空気の間で酸素や二酸化炭素を交換する場所
  • 血管:血液の通り道

図:肺胞の構造のイラスト。

COPDでは肺の主な構造全てに変化が起きています。
気管支では軟骨や気管支の壁が萎縮(いしゅく)してきたり、痰を作る細胞が増加したりしています。また、気管支の細い部分では気管支そのものが破壊されたり痰が溜まったりしてうまく空気が通れない状態になっていきます。
肺胞は破壊されてスカスカになっていきます(肺気腫)。健康な肺をきめ細かいスポンジとすれば、肺気腫の肺は穴ぼこでスカスカになった弾力の無いスポンジと言えるでしょう。肺胞はガスの交換以外にも細い気管支を広がっている状態に支えてあげる役割も担っているので、肺気腫によって肺胞が壊れると、細い気管支はますます狭くなり、空気がうまく通れない状態になります。
肺の中を走る血管も壁が分厚くなったり、壁が硬くなるような変化を起こしています。すると、肺胞が必要とする栄養や酸素が届きにくくなるため、肺胞は壊れやすくなってしまいます。