2017.02.20 | ニュース

喫煙で息が吐けなくなる「COPD」では肺炎球菌ワクチンを打つべき?

文献の調査から
from The Cochrane database of systematic reviews
喫煙で息が吐けなくなる「COPD」では肺炎球菌ワクチンを打つべき?の写真
(C) Ljupco Smokovski - Fotolia.com

肺炎球菌は肺炎や髄膜炎を起こす代表的な細菌です。ワクチンである程度予防できます。特に予防接種が勧められている慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者を対象としてこれまで報告されている予防効果のデータがまとめられました。

オーストラリアとニュージーランドの研究班が、COPD患者が肺炎球菌ワクチンを打ったときの予防効果として過去の研究から報告されている結果の調査を行いました。

COPDとは、喫煙などが原因で肺の組織が障害される病気です。COPDは長年のうちに進行し、呼吸機能をしだいに低下させます。特に息を吐き出す機能が弱くなり、二酸化炭素が体の中にたまっていきます。

COPD患者が肺炎にかかると重症化しやすいだけでなく、COPDも悪化しやすくなります。このためCOPD患者には肺炎球菌ワクチンなどの予防接種が特に勧められています。

肺炎球菌は市中肺炎の代表的な原因です。市中肺炎とは入院患者ではなく病院とかかわりのない生活を送っている人に起こった肺炎を指します。市中肺炎の原因として、肺炎球菌のほかにインフルエンザ桿菌マイコプラズマがあります(インフルエンザ桿菌はインフルエンザウイルスとは別の細菌です)。

 

調査の結果、採用基準を満たす12件の研究が見つかりました。合計2,171人分のデータが得られました。統計解析により次の結果が得られました。

対照群と比べて、ワクチン接種群は市中肺炎発症する尤度が低かった(オッズ比0.62、95%信頼区間0.43-0.89、6件の研究、1,372人、GRADE:中等度)。しかし、肺炎球菌肺炎に特定すると結果に差はなかった(Peto法オッズ比0.26、95%信頼区間0.05-1.31、3件の研究、1,158人、GRADE:低い)。

ワクチン接種はCOPD増悪の尤度を有意に減らした(オッズ比0.60、95%信頼区間0.39-0.93、4件の研究、446人、GRADE:中等度)。

肺炎球菌ワクチンを打った人では市中肺炎が少なくなっていました。また、ワクチンを打った人ではCOPDが悪化することが少なくなっていました。

 

COPD患者が肺炎球菌ワクチンを打つことで市中肺炎などを予防できたというデータを紹介しました。

COPD患者は肺炎に弱くなっています。一方で、COPDの状態が落ち着いているときは症状を自覚しにくいことがあります。COPDで傷付いた肺は、現代の医学ではもとに戻せません。一度でもCOPDと診断された人には以下の肺炎対策がおすすめできます。

  • 手洗い・うがいを徹底する
  • 肺炎球菌ワクチンを打つ(5年毎)
  • インフルエンザワクチンを打つ(毎年)
  • COPDの治療を続ける
  • 禁煙する

COPDは長年付き合うことになる人も多い病気です。COPDそのものの治療はもちろん、ともなって起こるいろいろな問題を知って対策していくことも大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

 

Pneumococcal vaccines for preventing pneumonia in chronic obstructive pulmonary disease.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 24.

[PMID: 28116747]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。