2015.08.17 | ニュース

子どもの肺炎球菌ワクチンで13種類の細菌が減ったが、気になる変化も

アメリカ2千人の観察研究
from The Pediatric infectious disease journal
子どもの肺炎球菌ワクチンで13種類の細菌が減ったが、気になる変化もの写真
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健康な人に肺炎を起こす病原体の代表的なものに肺炎球菌があります。アメリカで2010年以降使われるようになったワクチンの影響を調べたところ、ワクチンの標的とされた型の細菌が見つかる割合は減っていましたが、違う型の細菌は増えていました。

◆2010年から2013年の比較

肺炎球菌は細かい数十の種類に分かれ、そのうち病気の原因になりやすい13種の感染を防ぐワクチンが、2010年3月から使われるようになりました。

研究班は、2010年7月から2013年6月にかけて、研究施設の救急部を受診した子どもののどから取ったサンプルで肺炎球菌の検査を行い、肺炎球菌の種類ごとに、見つかる割合を調べました。

 

◆ワクチン型は減ったが、それ以外は増えた

次の結果が得られました。

計2,048人の子どもが登録され、うち656人(32%)が肺炎球菌保菌者だった。

肺炎球菌保菌のある子どもの割合は一定していたが、血清型の分布は研究期間のうちに変化した。保菌者のうちで、PCV13に含まれる血清型は29%(124人中36人)から3%(99人中3人)に減少した(P<0.0001)。PCV13に含まれない血清型(6Cは除く)は68.4%(114人中78人)から97%(98人中95人)に増加した(P<0.0001)。血清型35Bは8.9%(124人中11人)から25.3%(99人中25人)に有意に増加した(P<0.05)。

調べた子どものうち、肺炎球菌が全体として見つかる割合は変わっていませんでした。ワクチンの標的とされた型の割合は少なくなっていましたが、そうでない型の肺炎球菌が見つかる割合は増えていました

研究班は「ワクチン型以外の型の肺炎球菌が上咽頭に定着することにより、従来の病原体に代わって疾患を引き起こすことが有意に見られるかどうかを確かめるため、さらに進んだ研究を行う妥当性がある」と述べています。

 

子どもののどに細菌が見つかることは珍しくなく、細菌がいても病気を起こさない場合も多いと考えられています。肺炎球菌が全体としては減っていなかったとしても、その種類が変わったことにより病気の頻度が変わっている可能性はあります。

全体として肺炎が予防されたかどうかがわかれば、新しいワクチンの価値が適切に評価できるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Decline in Pneumococcal Nasopharyngeal Carriage of Vaccine Serotypes After the Introduction of the 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine in Children in Atlanta, Georgia.

Pediatr Infect Dis J. 2015 Jul 29 [Epub ahead of print]

[PMID: 26226445]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。