【日焼け止め④】日焼けは肌に何を起こすのか?
日光は私たちの身体にとって重要なものです。たとえば、ビタミンDの生成や、体内時計の調整に関わっています。一方で、日光に含まれる紫外線を過剰に浴びると、「日焼け」が起こり、皮膚に良くない影響が現れます。
1. 日焼けは2種類ある:赤くなるタイプと黒くなるタイプ
日本語では皮膚が赤くなることも、黒くなることもまとめて「日焼け」と呼ばれています。一方で、紫外線による皮膚の反応をサンバーン(sunburn)とサンタン(suntan)に分けることもあります。
サンバーン(sunburn)
紫外線を浴びた数時間後から皮膚が赤くなり、痛みを伴う状態をサンバーンと呼びます。「肌が焼けてヒリヒリする」状態で、軽い火傷(やけど)に近い反応が起こっています。これは、紫外線によって皮膚の細胞が傷つき、その刺激に対して強い
サンバーンは軽い火傷と考えて初期対応するのが望ましいです。まずは日焼けした部位をしっかりと冷やしてください。保冷剤をタオルなどの布に包んで患部に当てる方法が試しやすいかもしれません。サンバーンが広範囲に生じた際には、少し冷たいシャワーを浴びるのも効果的です。
筆者には過去に全く紫外線対策をしていない状態で、日光を大量に浴びてしまい、全身にサンバーンを起こした経験があります。しかも、初期対応が十分ではなかったため、数日間に渡り全身の痛みに苦しみました。このコラムを読んでいる方はそのようなことがないよう、日光を浴びる際には万全な紫外線対策と適切な初期対応をお勧めいたします。
サンタン(suntan)
紫外線を浴びた数日後から皮膚が黒くなる現象をサンタンと呼びます。この現象は身体が紫外線によるダメージから皮膚を守るために、メラニン色素を増やすことによって起こるものです。メラニン色素は紫外線を吸収するので、次に紫外線を浴びることへの防御機構と言えます。
サンバーンを避けてサンタンの状態になると上手に日焼けしたと思うかもしれませんが、皮膚に負担がないというわけではありません。サンバーンが起こらなかったとしても紫外線によるダメージが発生しており、長期的に見ると次に説明する「光老化」につながります。
2. 日焼けと光老化
光老化は、紫外線を浴び続けることで、皮膚の自然な老化に上乗せされた変化です。シミや、シワ、たるみ、皮膚のごわつきなどの原因になります。顔や、首、手の甲など、日常生活で日光を受けやすい部分での影響が大きいです。
光老化の有名な例として、顔の片側に強い光老化が出たトラック運転手の写真を紹介します[1]。この写真は医学雑誌New England Journal of Medicineに掲載されたものです。紹介された運転手は、長年運転中に顔の片側に太陽光を浴び続けたことで、しわや皮膚の厚みの変化が左側に強く現れています。
そのほか、白人女性や一卵性双生児を対象にした研究でも、紫外線をよく浴びている人ほど、シミやしわなどの皮膚の変化が目立ちやすいことが報告されています[2][3][4]。
3. 日焼けと皮膚がんは関係あるのか?
紫外線は細胞の中にある
4. 日本人に皮膚がんは多い? 少ない?
日焼けと皮膚がんには関係がありますが、皮膚がんの発生頻度には人種や地域による差があります。環境省が作成した「紫外線環境保健マニュアル」では、日本は韓国やモンゴルと並んで、世界で最も皮膚がんの少ない国の一つとされています。皮膚がんが多いオーストラリアやニュージーランドと比べると、日本の皮膚がんの
この違いの一因として、皮膚に含まれるメラニン色素の量が関係していると考えられています。メラニン色素には紫外線を吸収し、細胞のDNAに届く紫外線の量を減らす働きがあります。そのため、メラニン色素が少ない白人では、紫外線によるDNAダメージを受けやすく、皮膚がんのリスクが高くなります。
なお、国ごとの皮膚がんの多さは、皮膚の色だけで決まるわけではありません。緯度や標高による紫外線量の違いや、屋外で過ごす時間、生活習慣なども影響すると考えられています。 日本人では白人に比べて皮膚がんが少ない傾向がありますが、皮膚がんがまったく起こらないわけではありませんし、紫外線はシミ・シワ・たるみなどの光老化にも関わるため、紫外線対策は日本人にも意味があります。
5. 皮膚に負担をかけない日焼けはあるのか? 日焼けマシーンなら安全か?
皮膚に全く負担をかけずに日焼けする方法は基本的にありません。日焼けマシーン(日焼け用の紫外線照射機器)による人工的な日焼けなら安全だと思う人がいるかもしれませんが、皮膚には負担がかかっています。
日焼けサロンなどで使われる機械は、肌が黒くなるサンタンを目的に紫外線を当てます。紫外線の中でもUVAという光線を主に用いることで、赤くヒリヒリするサンバーンが起こりにくいことはありますが、紫外線を使っていることに変わりありません。そのため、皮膚の早期老化や皮膚がんにつながるダメージを起こす可能性があります[8][9] 。WHOの国際
日焼けマシーンは安全な日焼けを約束してくれるものではありません。屋外での日焼けと同様に、過度な日焼けは皮膚への負担につながるので、利用する場合は皮膚への負担や健康リスクも理解しておく必要があります。
6. 日光を過度に避けるのではなく、上手に付き合う
ここまで、日焼けによる皮膚への影響をみてきました。紫外線が光老化や皮膚がんに関わることは事実ですが、だからといって日光を完全に遮断しようとすることが正解とは限りません。冒頭で述べたように、日光には皮膚での
大切なのは「日光に当たらない」ことではなく、「直射日光にさらされる時間をコントロールする」ことです。つまり、「過剰な紫外線を避ける」ことになります。日焼け止めの活用や帽子・衣服による物理的な遮光など、無理のない範囲での対策を日常に取り入れながら、日光と上手に付き合っていくことが重要です。
筆者自身、紫外線対策が不十分だった過去への反省はありますが、これからも日光を過度に恐れず、適切な紫外線対策をしながら屋外活動を楽しみたいと思っています。 この記事が、それぞれの方にとっての適切な判断の参考になれば幸いです。
執筆者
- Gordon JRS, Brieva JC. Unilateral dermatoheliosis. N Engl J Med. 2012;366(16):e25. doi:10.1056/NEJMicm1104059
- Flament F, Bazin R, Laquieze S, Rubert V, Simonpietri E, Piot B. Effect of the sun on visible clinical signs of aging in Caucasian skin. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013;6:221-232. doi:10.2147/CCID.S44686
- Guyuron B, Rowe DJ, Weinfeld AB, Eshraghi Y, Fathi A, Iamphongsai S. Factors contributing to the facial aging of identical twins. Plast Reconstr Surg. 2009;123(4):1321-1331. doi:10.1097/PRS.0b013e31819c4d42
- Ichibori R, Fujiwara T, Tanigawa T, Kanazawa S, Shingaki K, Torii K, et al. Objective assessment of facial skin aging and the associated environmental factors in Japanese monozygotic twins. J Cosmet Dermatol. 2014;13(2):158-163. doi:10.1111/jocd.12081
- Pfeifer GP. Mechanisms of UV-induced mutations and skin cancer. Genome Instab Dis. 2020;1(3):99-113. doi:10.1007/s42764-020-00009-8
- Cancer Research UK. How does the sun and UV cause cancer? Reviewed November 30, 2023.
- 環境省. 紫外線環境保健マニュアル2020.
- National Cancer Institute. Sunlight. National Cancer Institute. Reviewed April 26, 2023.
- American Academy of Dermatology Association. Indoor tanning. Last updated February 11, 2025.
- International Agency for Research on Cancer. Sunbeds and UV Radiation. 2009.
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。