前立腺肥大症の基礎知識
POINT 前立腺肥大症とは
高齢の男性によく見られる前立腺の良性腫瘍です。トイレの回数が多い、尿が出にくい、などが主な初期症状であり、未治療のまま放置していると膀胱から尿が出なくなったり、腎臓の機能が低下することがあります。前立腺肥大症を治療する目的は尿を出しやすくすることです。具体的には、飲み薬や内視鏡手術が行われます。男性で尿が出にくい、夜間のトイレに行く回数が多いなどの症状がある場合は、泌尿器科で前立腺肥大症を調べてみてください。
前立腺肥大症について
前立腺 が大きくなり、排尿障害 が出現した状態- 前立腺が尿道を取り囲むように位置しているため、前立腺が大きくなると、排尿が難しくなるなどの排尿障害が出現しやすい
- 前立腺が大きくなっても、排尿障害が出現するとは限らない
- 前立腺肥大を原因とした排尿障害がある状態を前立腺肥大症という
- 原因
- 加齢
男性ホルモン - 遺伝の関与もあるとされている
- 頻度
- 50歳代くらいの男性で増え始め、55歳以上の人では2割、80歳には8割くらいの男性が前立腺肥大症と言われている
- 前立腺肥大が前立腺がんとは違う病気である
前立腺肥大症の症状
- 主な
症状 残尿感 - 排尿後まだ尿が残っているような感覚
頻尿 - トイレが近い
- 夜間頻尿
- 就寝から起床までにトイレに一度以上いくこと
- 尿線途絶
- 尿が途切れる
- 尿意切迫感
- いきなりトイレに行きたくなる、漏れそうになってしまう
- 尿勢低下
- 尿が勢い良く出ない
- 腹圧排尿
- お腹に力を入れないと尿が出ない
- 症状をスコア(IPSSや
QOL スコア)にして重症度を計る- IPSS
- 以下の質問の合計点で重症度が推定できる
- 過去1か月間、排尿後に尿がまだ残っている感じがありますか
- なし:0点
- 5回に1回未満:1点
- 2回に1回未満:2点
- 2回に1回位:3点
- 2回に1回以上:4点
- ほとんどいつも:5点
- 過去1か月間、排尿後2時間以内にもう一度行かねばならないことがありましたか
- なし:0点
- 5回に1回未満:1点
- 2回に1回未満:2点
- 2回に1回位:3点
- 2回に1回以上:4点
- ほとんどいつも:5点
- 過去1か月間、排尿途中に尿が途切れることがありましたか
- なし:0点
- 5回に1回未満:1点
- 2回に1回未満:2点
- 2回に1回位:3点
- 2回に1回以上:4点
- ほとんどいつも:5点
- 過去1か月間、排尿をがまんすすのがつらいことがありましたか
- なし:0点
- 5回に1回未満:1点
- 2回に1回未満:2点
- 2回に1回位:3点
- 2回に1回以上:4点
- ほとんどいつも:5点
- 過去1か月間、排尿開始時にいきむ必要がありましたか
- なし:0点
- 5回に1回未満:1点
- 2回に1回未満:2点
- 2回に1回位:3点
- 2回に1回以上:4点
- ほとんどいつも:5点
- 過去1か月間、床についてから朝おきるまで普通何回排尿にいきましたか
- なし:0点
- 1回:1点
- 2回:2点
- 3回:3点
- 4回:4点
- 5回以上:5点
- 合計点による重症度の推測
- 0-7点:軽症
- 8-19点:中等症
- 20-35点:重症
- QOLスコア
- IPSSとは独立したスコア
- 現在の排尿の状態が今後一生続くとしたらどう感じますか
- とても満足
- 満足:0点
- ほぼ満足:2点
- なんとも言えない:3点
- やや不満:4点
- いやだ:5点
- とてもいやだ:6点
- QOLスコア
- 0-1点:軽症
- 2-4点:中等症
- 5-6点:重症
- IPSS
- その他の症状
前立腺肥大症の検査・診断
前立腺肥大症の治療法
- 前立腺肥大症の程度により治療法を選ぶ
- 主な治療
- 薬物療法:以下の薬は併用されることがあり、過活動膀胱の治療薬とも併用される
- α1遮断薬(ユリーフ®・ハルナール®・フリバス®など)
- 尿道を拡張させて排尿しやすくする
- デュタステリド(アボルブ®)
男性ホルモン を低下させ前立腺 を小さくする
- PDE5阻害薬(ザルティア®)
平滑筋 を弛緩させることにより膀胱や尿道の血流を改善する
- 抗男性ホルモン薬(プロスタール®)
- 男性ホルモンを低下させて前立腺を小さくする
- α1遮断薬(ユリーフ®・ハルナール®・フリバス®など)
- 手術
内視鏡 手術- TURP:経尿道的前立腺切除術
- 電気メスで前立腺を切除する治療
- HoLEP:経尿道的前立腺レーザー核出術
- ホルミニウムレーザーで前立腺をくりぬく治療
- PVP:光選択的前立腺レーザー蒸散術
- グリーンライトレーザーで前立腺を蒸散させる治療
- WAVE:経尿道的水蒸気治療
- 水蒸気を用いて前立腺を
壊死 させる治療 - 2022年9月に
保険適用
- 水蒸気を用いて前立腺を
- アクアブレーション
- 高速の水噴射を利用して前立腺を切除する治療
- 2023年に手術で使用するAquaBeamロボットシステムが保険収載
- PUL(経尿道的前立腺吊上術)
- 前立腺肥大による尿道の圧迫を和らげるインプラントを内視鏡を使って挿入する
- TURP:経尿道的前立腺切除術
- 開腹手術
- 前立腺がかなり大きい場合に行うが現在はほとんど行われない
- その他
- 前立腺部尿道に
ステント を入れて尿の通り道を確保したりすることもある
- 前立腺部尿道に
前立腺肥大症に関連する治療薬
α1遮断薬(前立腺肥大症治療薬)
- 前立腺や尿道のα1受容体を遮断し、前立腺の縮小、尿道の拡張などにより前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する薬
- 前立腺肥大症は前立腺が大きくなって尿道が狭くなり、残尿感や頻尿などの症状があらわれる
- 交感神経に関わるα1受容体は前立腺や尿道などにもあり、α1受容体を阻害すると前立腺が縮小し尿道が広がる
- 本剤はα1遮断作用により、α1受容体を阻害する作用をあらわす
- 本剤の中には、血管を拡張させ血圧を下げることで高血圧治療薬として使用するものもある
抗男性ホルモン薬(抗アンドロゲン薬)
- 男性ホルモンの前立腺への作用を抑え前立腺を小さくし排尿障害を改善する薬
- 前立腺肥大では前立腺が大きくなって尿道が狭くなり、残尿感や頻尿などの症状があらわれる
- 男性ホルモン(アンドロゲン)は前立腺を肥大させる作用をもつ
- 本剤は男性ホルモンを抑える(抗男性ホルモン)作用をあらわす
- 前立腺肥大の他、前立腺がんに使用する薬剤もある
5α-還元酵素阻害薬
- 前立腺を強く肥大させるジヒドロテストステロンの生成を抑制し、肥大した前立腺を縮小させ排尿障害を改善する薬
- 前立腺肥大は前立腺が大きくなって尿道が狭くなり、残尿感や頻尿などの症状があらわれる
- 男性ホルモンが前立腺に作用することにより前立腺は肥大し、特にジヒドロテストステロンという男性ホルモンはその作用が強い
- 本剤は男性ホルモンの一つであるテストステロンからジヒドロテストステロンへ変換させる5α‐還元酵素を阻害する
前立腺肥大症の経過と病院探しのポイント
前立腺肥大症が心配な方
前立腺肥大症は、残尿感や夜間頻尿、尿の勢いが弱いなどの症状の原因になる高齢男性に多い病気です。前立腺は膀胱の出口に位置して尿道を取り囲んでいます。このため前立腺が肥大すると、取り囲まれている尿道が圧迫を受けて狭くなり残尿感などの症状が現れます。
前立腺の病気を担当する診療科は泌尿器科です。検査から治療まで受けることができます。前立腺肥大症はクリニックでも検査や治療を受けることができます。残尿感や夜間頻尿、尿の勢いが弱いなどの症状が気になり前立腺肥大症かどうかを調べたい人はお近くの泌尿器科を受診するとよいです。
前立腺肥大症でお困りの方
前立腺肥大症では治療が必要になることが多いです。主な治療法には薬物治療、内視鏡手術があります。前立腺肥大症にはガイドラインがあり、医師はその内容に沿った治療を行います。薬物療法であれば、クリニックでも大きな病院でも同じような治療が受けられます。泌尿器科が前立腺肥大症の専門家になりますが、薬物治療であれば内科で行えることがあります。
内視鏡手術に関しては、TURP、HoLEP、PVP、経尿道的水蒸気治療という方法があります。どの方法にもメリットとデメリットがあるので、自分の考えを整理して医師と相談してください(詳しい内容については当ページの治療の章を参考にしてください)。
前立腺肥大症のタグ
前立腺肥大症に関わるからだの部位
