ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。日本でも高齢化とともに患者数が急増している。
12人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2018.02.12

前立腺がんの基礎知識

POINT 前立腺がんとは

前立腺がんは中高年の男性に発生し、おもにPSAという血液検査をきっかけとして発見されます。PSAの値が高いときには前立腺生検を行い、がんが検出されれば診断が確定します。CT検査やMRI検査を用いてがんの広がりなどを確認し、治療法は手術、放射線療法、ホルモン療法などを行います。前立腺がんは経過が良好なことが多く、早期で治療を行った場合の5年生存率は90%を超えます。前立腺がんが心配な人は泌尿器科を受診して検査を受けてみることをお勧めします。

前立腺がんについて

  • 前立腺にできるがん
  • 主な原因として以下の要因などが関わっていると考えられている
    • 遺伝
    • 肉中心の食生活
    • 男性ホルモンアンドロゲン
  • 中高年の男性に起こり、65歳以上になると発生する人が増える
    • 国内では年間に約9万人が新たに罹患しているとされる
    • 男性のがんの中で罹患者数は第1位
  • 前立腺肥大症が前立腺がんに変化することはないが、前立腺肥大症と前立腺がんを合併する患者も少なくない
    • 前立腺肥大症の検査をしているときに前立腺がんが見つかることもある
  • 前立腺がんの悪性度は様々で手術が必要なものから経過観察が可能なものまである
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前立腺がんの症状

  • 主な症状
    • がんが早期の段階では症状を自覚しないことが多い
    • がんが進行すると現れる症状がある
      ・尿が出にくい
      ・排尿時に痛みを伴う
      ・尿や精液に血が混じる
  • がん自体はゆっくり成長し、症状が出るまで時間がかかる
    • 症状が出て発見された場合はすでに転移がある進行がんであることが多い
    • 尿が出にくい症状の多くは前立腺肥大症を原因とする
      ・尿が出にくいことは前立腺がんの存在を必ずしも意味しない
  • 骨に転移することが多く、腰の骨に転移し腰痛を起こすこともある
  • 転移しやすい部位は骨、肺、リンパ節など
症状の詳細

前立腺がんの検査・診断

  • 血液検査
    • 腫瘍マーカー(PSA)や全身状態などを調べる
  • 直腸診
    • 肛門から指を入れて、直腸越しに前立腺を触って硬さや凹凸を調べる
    • 腫瘍がある場合は、前立腺が固くなったりする
  • 超音波検査
    • 腹部超音波検査
      ・お腹から前立腺を観察する方法
      ・膀胱に尿がたまった状態の方が観察しやすい
    • 経直腸的超音波検査
      ・直腸からプローブとよばれる機械を挿入し、前立腺の画像を画面に表示する
      ・外来で行うこともできる
  • 前立腺生検
    • PSAが高値を示すなど前立腺がんが疑わしいときに行う
    • 前立腺がんの確定診断を目的とする
    • 前立腺に細い針を刺して、前立腺の組織を採ってくる
    • 前立腺生検の方法
      ・経直腸式前立腺生検(直腸から針を刺す)
      ・経会陰式前立腺生検(会陰から針を刺す)
    • がんの検出率は約30-50%とされている
    • 採取した組織を顕微鏡で調べる
      ・がん細胞の有無
      ・がん細胞がある場合はその悪性度
  • 画像検査
    • 前立腺がんの広がりや大きさ、転移の有無などを調べる
    • 経直腸的超音波検査
      ・前立腺がんの有無、広がりの評価に向いている
    • CT検査(胸部〜腹部)
      ・他の臓器やリンパ節への転移の有無の評価に向いている
    • MRI検査(骨盤部)
      ・前立腺がんの有無、広がりの評価に向いている
    • 骨シンチグラフィ
      ・骨転移の有無
  • 「がんの広がり」「リンパ節転移の有無」「他の臓器への転移の有無」でステージを決定する
  • ステージの他にリスク分類も治療方針を決めるのに重要
    • リスク分類はがんの前立腺での広がり、病理検査の結果(グリソンスコア)、PSAの3つの項目で決定する
    • リスク分類は前立腺がんの悪性度の目安になる
検査・診断の詳細

前立腺がんの治療法

  • 治療を選択する上での目安
    • 治療の選択を決める上で参考になるものは以下である
      がんステージ
      ・リスク分類(悪性度の目安)
      ・年齢
    • 全身の状態を総合的に考慮して治療方法を決める
      転移のない前立腺がんでかつ高齢ではない場合は根治的治療を行う
      ・根治治療は手術・放射線治療のこと
      ホルモン療法は根治的治療ではないので転移がない場合には基本的には用いない
    • 患者さん自身の意向と治療効果のバランスを考えて決める
      ・治療後の予測される状態と自分の生活スタイルがどの程度マッチするか
      ・主治医に予測される合併症をあらかじめ尋ねておくことが大切
  • 主な治療
    • 手術
      前立腺と精のうと骨盤内のリンパ節を取り除く
      ・開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術(ダビンチ手術)がある
      ・近年はロボット支援下手術が多く行われるようになっている
      ・手術後に尿失禁(尿漏れ)や勃起障害が起こる確率は高い
      ・尿漏れは1年以内に改善する人が多い
      ・手術には勃起神経を残す(温存)方法と同時に切除する方法がある
      ・勃起神経を温存したとしても40%の人に勃起障害が発生する
    • 放射線治療
      ・方法は主に2つある
      ・体の外から前立腺に放射線を当てる(外照射)
      ・前立腺に放射線がでる金属を埋め込む(組織内照射)
      ・放射線治療は手術と同じでがんを体からなくす根治的治療
      ・手術と放射線治療はがんを治す効果としてはほとんど同じ程度
      ・副作用は排尿障害、尿失禁、直腸や膀胱からの出血など
    • ホルモン療法(内分泌療法)
      アンドロゲン男性ホルモン)を抑える治療
      ・注射薬と内服薬を併用することがある
      ・アンドロゲンを体からできるだけ少なくすることで前立腺がんの増殖を抑える
      ・手術や放射線治療が向かない高齢者に対して行う
      ・診断時にすでに転移がある人の最初の治療として行う
      ・悪性度の高い前立腺がんに対して手術や放射線療法の前後で行うことがある
      ・初期のホルモン療法で効果がなくなった状態を去勢抵抗性前立腺がんという
      ・去勢抵抗性前立腺がんに対しては新規ホルモン剤が効果がある
      ・新規ホルモン剤にはエンザルタミドとアビラテロンがある
    • 化学療法 
      抗がん剤を用いた治療
      ・ホルモン療法の効果がなくなった前立腺がんに対して行う
      ・使用する抗がん剤はドセタキセル、カバジタキセルの2種類がある
      ・副作用としては、発熱性好中球減少症(重い感染症につながる)、末梢神経障害、脱毛
    • 骨転移の治療
      ・前立腺がんは骨転移が多い
      ・放射線治療とゾレドロン酸、デノスマブ、ラジウム223などを組み合わせる
治療法の詳細

前立腺がんに関連する治療薬

微小管阻害薬(タキサン系)

  • 細胞分裂で重要な役割を果たす微小管に作用し細胞分裂を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞増殖は細胞が分裂することでおこるが、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管という物質がある
    • 細胞分裂の後半では、束になっている微小管がばらばらになる(脱重合する)必要がある
    • 本剤は微小管の脱重合を阻害し細胞分裂を阻害する作用をあらわす

微小管阻害薬(タキサン系)についてもっと詳しく

抗アンドロゲン薬(前立腺がん治療薬)

  • 前立腺細胞においてアンドロゲン(男性ホルモン)のアンドロゲン受容体への結合を阻害し、抗腫瘍作用をあらわす薬
    • 前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)が前立腺のアンドロゲン受容体(AR)に作用することで発症リスクが高まり、がんが進行する
    • がん細胞が前立腺に存在する場合では男性ホルモンがARに作用することで、がんの悪化につながる
    • 本剤は男性ホルモンのARへの結合を阻害し抗アンドロゲン作用をあらわす

  • 本剤の中には抗アンドロゲン作用の他、前立腺がん細胞増殖の経路を複数阻害する作用をもつ薬剤もある
抗アンドロゲン薬(前立腺がん治療薬)についてもっと詳しく

前立腺がんの経過と病院探しのポイント

前立腺がんが心配な方

前立腺がんは、高齢男性に多くみられる病気でPSAという前立腺がんの腫瘍マーカーを測定することで見つけることができます。前立腺がんは症状が出にくい病気なので自分で気づくことは少ないです。尿の出にくさを調べていて見つかることもありますが、その症状はほとんどが同時にある前立腺肥大症が原因です。前立腺肥大症前立腺がんと合併することはありますが変化してがんにはならないと考えられています。
PSA検査は、自治体によっては補助が効く検診として行うこともできますし、それ以外でもクリニックなどで実施することができます。前立腺がんが心配な人はお近くの泌尿器科で相談してみることをお勧めします。

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