ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。日本でも高齢化とともに患者数が急増している。
12人の医師がチェック 207回の改訂 最終更新: 2020.06.14

前立腺がんの検査:PSA検査・前立腺生検・MRI検査などの解説

前立腺がんを調べる方法としてでは血液検査のPSAや前立腺生検、病理検査が重要です。前立腺がんと診断された人にはがんの広がりを調べる目的で画像検査が行われます。

1. 問診

お医者さんと患者さんが主に対話形式で行う診察を問診と言います。問診には患者さんの身体の状況や背景を確認する目的があります。具体的には、症状の有無や様子、今までにかかった病気や飲んでいる薬などについて質問が行われます。

2. 身体診察:直腸診など

身体診察とはお医者さんが患者さんの身体を直接くまなく調べる診察のことを指します。診察方法にはさまざまなものがありますが、前立腺がんが疑われる人には直腸診という方法が重要です。

■直腸診とは

前立腺は身体の外からは触れませんが、直腸と接しているので、肛門から指を入れて直腸越しに触れることができます。直腸診によって前立腺の形や大きさを調べることができます。直腸診の主な目的は次の2つです。

  • 前立腺がんと前立腺肥大症を見分ける(鑑別
  • 前立腺がんが疑われた場合、どの程度進展しているかの目安をつける

がんの有無を判断するには前立腺の表面の状態がポイントになります。表面が硬くゴツゴツしている場合は進行した前立腺がんが疑われます。

直腸診の結果を参考にして、画像検査や前立腺生検が行われます。

3. 血液検査:PSAなど

血液検査では血液に含まれている成分を調べることができます。前立腺がんが疑われる人ではPSAという血液検査項目が重要になります。PSAは前立腺にしかない物質で、前立腺特異抗原(Prostate specific antigen)の略語です。前立腺がんではない男性の血液中にもPSAは存在しますが、前立腺がんの人ではPSA値が上昇していることが多いです。

PSAは前立腺がんの早期発見にも利用されており、PSA検査(基準値:0.0ng/ml - 4.0ng/ml)をきっかけにして発見されることが多いです。誤解されやすいのが、PSA値が基準値を超えていても、必ずしも前立腺がんが存在するとは限らないということです。他の原因でもPSAが上昇することがあり、前立腺がん以外には次の原因があります。

また、年齢を重ねるほどPSAが上昇しやすくなることも知られているので、年齢を考慮してPSAの基準値を定めることをもあります。

  • 50歳から64歳:0.0ng/ml - 3.0ng/ml
  • 65歳から69歳:0.0ng/ml - 3.5ng/ml
  • 70歳以上:0.0ng/ml - 4.0ng/ml

PSA値が基準値を上回った人には前立腺生検や画像検査が行われます。

4. 画像検査

画像検査は身体の中の状態を画像化する検査です。前立腺がんが疑われた人や、前立腺がんの診断を受けた人はいくつか画像検査が行われます。

エコー検査(経腹的エコー、経直腸的エコー)

エコー検査(超音波検査)は超音波の跳ね返りを利用して、臓器を画像化する方法です。プローブ(超音波を発生させる装置)を身体に当てると、プローブの下の様子が写ります。前立腺のエコー検査には、超音波をお腹から当てる方法(経腹的エコー)と直腸から当てる方法(経直腸エコー)があって、両者で使うプローブの形が違います。経腹エコーでは小さなプローブがお腹にあてられ、経直腸エコーでは棒状のプローブを直腸に挿入されます。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用して身体の中を画像化する検査です。前立腺の観察にはCT検査よりMRI検査のほうが向いていると考えられるので、前立腺生検の前にMRI検査を行うことが多いです。MRI検査は放射線を使わないので、被曝の心配はありません。一方で、強力な磁気を利用するため、金属製品(ペースメーカーなど)が身体の中に入っている人には行えないことがあります。

CT検査

前立腺の様子はMRI検査のほうがよくわかりますが、がんの転移の有無を調べる目的にはCT検査の方が向いています。CT検査はMRI検査とは異なり放射線を用いて撮影するので被曝します。施設によっては被曝による影響を少なくするため前立腺がんと診断された人にだけCT検査が行われることもあります。

骨シンチグラフィー

前立腺がんは骨に転移しやすいので、骨転移の可能性がある人には骨シンチグラフィー(骨シンチ)が行われます。CT検査やMRI検査で骨転移を指摘することもできますが、骨シンチグラフィーの方が転移を見つけやすいと考えられています。

骨シンチグラフィーは骨転移に集まりやすい放射性物質を体内に入れて行う検査です。放射性物質を使うので放射線被曝があります。骨転移があれば、放射性物質が集まっている様子を黒い点々として画面で確認できます。

前立腺がんでも特に転移のリスクが高いと考えられる人には骨シンチグラフィーが必須です。逆にリスクの低い前立腺がんの人では骨シンチグラフィーを省略することもあります。

5. 前立腺生検

生検とは身体の組織の一部を切り取って調べる検査です。生検はさまざまな病気の確定診断のために行われます。前立腺生検では前立腺に針を刺して組織を取り出します。針を刺す方法には直腸から針を刺す方法(経直腸式前立腺生検)と肛門の近くの皮膚から針を刺す方法(経会陰式前立腺生検)の2つがあります。

© Cancer Research UK uploader – Diagram showing a transperineal prostate biopsy (2016 CC BY-SA 4.0) / Adapted by MEDLEY Inc.

経直腸式前立腺生検

経直腸式はお産のような格好(砕石位)で行う場合と、横向きに寝た姿勢(側臥位)で場合があります。痛みを感じないように麻酔をかけて、肛門からエコーのプローブと一緒に針を直腸の中に入れます。エコーで前立腺の位置を確かめながら直腸越しに針を刺します。一回の検査で10箇所以上に針を刺して組織を取ることが一般的です。

■麻酔方法について
ゼリーを塗って麻酔する方法や、お尻に針を刺して軽い麻酔をかける方法(仙骨ブロック)、または半身麻酔(腰椎麻酔)があります。一般的には全身麻酔では行われません。患者さんの意識がある状態で検査が行われます。

合併症について
経直腸式前立腺生検の合併症として急性細菌前立腺炎があります。
基本的に前立腺の中に細菌はいませんが、直腸には多くの細菌がいます。直腸越しに針を刺すと、直腸の細菌が前立腺に入り込んでしまう場合があり、そのまま前立腺に定着して増殖すると急性前立腺炎が起こります。急性前立腺炎が起きた場合は、治療のため入院期間が延びます。また、直腸越しに針を刺した影響で、直腸の血管から出血し、内視鏡での止血が必要になる場合があります。

その他合併症として次のものあります。

これらの症状は生検直後から1週間程度続くことがありますが、そのほとんどが時間の経過とともに回復します。

経会陰式前立腺生検

経会陰式前立腺生検はお産をするような格好(砕石位)で検査を受けます。経直腸式生検と同様に肛門からエコーのプローブを入れ、前立腺の位置を見ながら針を刺して前立腺組織を採取します。10箇所以上を刺して組織を取ることが一般的です。会陰(えいん)というのは陰嚢と肛門の間の部分で、経会陰式前立腺生検は会陰の皮膚に針を刺します。
次のような合併症があります。

これらの症状は生検直後から1週間程度続くことがありますが、そのほとんどが時間の経過とともに回復します。

6. 病理検査

身体から取り出した細胞や組織に特殊な薬品で色をつけて観察する検査を病理検査といいます。前立腺生検で取り出した前立腺組織には病理検査が行われます。

病理検査でわかることとは?

病理検査でがんが見つかった場合、前立腺がんであることが確定します。また、病理検査では前立腺がんかどうかだけではなく、性質についても知ることができます。一口に前立腺がんと言ってもその性質は多種多様です。前立腺がんの中には治療を必要としない悪性度が低いものもある一方、転移をしやすい悪性度が高いものもあり、病理検査の結果が参考になります。

前立腺生検でがんが検出されたときに説明されるグリソンスコア(グリーソンスコア)とは?

前立腺がんの悪性度を表す方法にはグリソンスコアというものがあります。グリソンスコアは2-10の間で判定されます。数字が大きいほど悪性度が高いという意味です。

前立腺がんのほとんどはグリソンスコアが6-9の間で判定されます。グリソンスコアが6である場合は悪性度は低いです。一方で、グリソンスコアが9の場合は悪性度が高いと考えられます。

グリソンスコアは前立腺がんの性格を捉えた優れた評価方法であるため、半世紀に渡って使用されてきました。しかしながら、現代の治療と合わない部分も見られるようになったので、2014年の国際会議で前立腺がんの悪性度を5段階に分けて表記するような取り決めが行われました。病理検査の結果を主治医から聞く際には、グリソンスコアなのか新しい評価方法によるものなのかについて確認しておくと、自分の前立腺がんの悪性度を正確に理解しやすくなります。

グリソンスコアについてさらに詳しく

グリソンスコアは、1966年にアメリカの医師のドナルド・グリソン(Donald Gleason)により提唱されました。以来、前立腺がんの悪性度を評価するために半世紀に渡り用いられてきました。 スコアは顕微鏡で前立腺がんの形状を見て決められます。正常の前立腺組織と比較的似通っていれば低い点数がつけられ、前立腺組織と大きく違う形状の場合は高い点数がつきます。

前立腺がんは一様ではありません。切り取った組織の中の一部に悪性度が高い部分があったとしても、ほかの部分はそれほどでもないこともあります。さまざまな悪性度が入り混じっている様子を表現するために、観察した組織を占める面積が大きい上位2つの状態を点数化して合計値を出します。状態は1から5の5段階で評価され、2つの状態を合計した点数をグリソンスコアと呼びます。グリソンスコアは○+△=□という形で表記され、最も面積の多いものを○に、次に面積の多いものを△にいれて、足し算をした値を□にいれます。

例を示すと、中間程度の形の崩れで3と評価したものが一番多く、次にそれよりも形が崩れた4が多いと診断した場合は、3+4=7と表記されます。逆に4程度と診断したものが一番多く次に3が多いと判断された場合は、4+3=7と表現されます。例外がいくつかありますが、煩雑になりすぎますので割愛します。

新しい病理診断についてさらに詳しく

グリソンスコアは前立腺がんの悪性度評価に対して長年用いられてきた優れた方法ですが、近年の研究により問題点が指摘されるようになりました。そこで新しい病理診断の方法が提唱され、新分類では1から5の5段階で表記されます。

グリソンスコア 新分類
2-6 1
3+4=7 2
4+3=7 3
8 4
9-10 5

新分類はより感覚的にわかりやすくなっています。もっとも大きな違いはグリソンスコアの合計点が7になる3+4と4+3を分離できた点だと考えられています。3+4は同じ合計点の4+3より悪性度が低いことは以前からわかっていましたので、治療にも大きく関わってくると考えられます。

7. 検査にともなう疑問や質問について

前立腺がんの検査にともなう疑問や質問についてまとめます。検査の前後で目を通してみてください。

PSA検査を受けるときの注意点は?

前立腺がんのPSA検査は年齢を考慮せずにやりすぎると利益が少なくなります。
前立腺がんはゆっくりと進行するので、命に関わらないことも少なくありません。実際に、前立腺がん以外の原因で亡くなった人を解剖した結果、約20%の人に前立腺がんが発見されたという報告もあります。死後の解剖により初めて発見されたがんをラテント(潜伏癌)と言い、一生治療しなくても症状を現すことがなかったがんという見方ができます。
高齢者の前立腺がんには治療をしなくても命に影響を及ぼさないものがあると考えられるので、治療を検討するときには、前立腺がんを治療したほうが余命が伸びるのかどうかを十分考えなければなりません。
治療しなくてよい人が多く存在する事実を考えに入れると、ある年齢以上は検査をして探さなくてもよいという判断もありえます。PSA検査を受ける際には、その後の検査や治療について十分に理解したうえで受けることが重要です。

前立腺がんの検査で見分けられる病気について

前立腺にはがん以外の病気もできます。このため、前立腺がんが疑われても他の病気と見分ける必要があります。ここでは前立腺の代表的な病気である「前立腺肥大症」と「前立腺炎」について説明します。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は、前立腺が大きくなり、排尿障害などの症状が現れる病気です。
前立腺肥大症は前立腺を尿道が貫く部分(内側)である移行領域に発生し、一方で前立腺がんは前立腺の外側の辺縁領域に発生します。

前立腺肥大症が前立腺がんに変わることはありませんが、前立腺肥大症と前立腺がんの両方にかかることがあります。前立腺肥大症でもPSAの上昇があるので、前立腺がんと前立腺肥大症の区別にはPSAがあてにならないことが多いです。このため、前立腺がんと前立腺肥大症と区別するにはMRI検査や前立腺生検が役立ちます。

■急性前立腺炎

急性前立腺炎は、主に細菌が前立腺に入り込むことによって炎症が起こる病気です。
急性前立腺炎になると、炎症によって前立腺の組織が壊れるため、PSAが上昇することがあり、PSAが高いことが多い前立腺がんとの区別が必要になります。急性前立腺炎でのPSA値の異常は持続することは多くはありません。このため、時間をおいてPSAを調べなおすことが前立腺がんとの区別に役立つことがあります。

前立腺がんの検査は入院して行う?

前立腺がんの検査で入院することがあるのは前立腺生検です。他の検査には入院は基本的には必要ではありません。多くの病院では1泊2日の入院で前立腺生検を行なっています。

前立腺がんの検査でわかるステージとは?

前立腺がんの経過を予想したり、治療方針を決めたりするために、がんの進行の度をステージという基準で表現します。ステージは検査結果を当てはめることで調べることができます。前立腺がんのステージの分け方として、主にTNM分類という方法が使われています。TNM分類とは、前立腺局所の進行具合(T分類)、リンパ節転移の有無(N分類)、遠隔転移の有無(M分類)により評価する方法です。
以前はABCD分類という方法も用いられていましたが、分類に曖昧な点があるので現在は用いられることが少なくなってきています。詳しくは「前立腺がんのステージとは?」で説明しています。

前立腺がんの検査をする施設の選び方

前立腺がんが見つかる状況で多いのが、腫瘍マーカーであるPSAが基準値を上回ったときです。病院選びは「PSAが高い」と言われたときから始まります。

PSAが基準値を超えたときは前立腺がんの可能性があります。しかし、PSAだけでは前立腺がんと確定できません。そこで泌尿器科医を見つけて診察を受けることになります。最初にどこの泌尿器科に行くかで治療までの進み方が変わります。最初に診察を受ける病院を選ぶには、以下に注目するのがお勧めです。

  • 仮にがんが見つかった場合、その施設ではどのような治療が可能なのか
  • どのような施設と提携しているのか

それぞれの施設でできる治療と提携先の施設について問い合わせたうえで診察を受けに行くことが望ましいでしょう。

この2点が大切な理由を説明します。

前立腺がんには手術、放射線治療ホルモン療法、抗がん剤とさまざまな治療法があります。治療法によって予後(余命)が大きく異なる可能性もあります。

しかし、ひとつの施設ですべての治療法が可能とは限らず、手術療法が得意な施設もあれば放射線治療が得意な施設もあります。それは当然のこととはいえ、手術しか勧めない施設や放射線治療ばかり勧める施設は少しバランスを欠いています。

一人ひとりに合った治療法がその施設で行えない時は、ほかの施設に紹介してもらえるとスムーズです。提携先の施設と合わせて主な治療法をすべてカバーできている施設なら、治療する場所が決まらず困ることは少ないと期待できます。

参考:

前立腺がん診療ガイドライン
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
日本泌尿器会誌 1992;83:315-320