ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。日本でも高齢化とともに患者数が急増している。
12人の医師がチェック 207回の改訂 最終更新: 2020.06.14

前立腺がんの放射線療法:治療効果、後遺症や再発などの解説

放射線治療は前立腺がんの根治的治療として行われ、手術と同等の効果があると考えられています。前立腺がんの放射線治療の方法には外照射と組織内照射の2つの方法があります。

1. 放射線治療とは?

前立腺がんを治す治療(根治的治療)には手術とともに放射線治療があります。手術療法と放射線治療の効果はほとんど同等だと考えられているので、状況によってはどちらでも選ぶことができます。

また、前立腺がんの放射線治療は、骨などに転移して痛みやしびれなどを起こしている場合に、症状を緩和する目的でも行われます。

前立腺がんの放射線治療にはいくつか種類があります。

  • 外照射
  • 内照射:小線源療法(組織内照射)
  • 陽子線治療
  • 重粒子線治療

それぞれは異なる治療なので、個別に説明します。

2. 外照射

外照射は放射線を身体の外から当てる治療です。

入院する必要はないので、外来で行われることが多く、1回あたりの治療時間は、20分程度です。

放射線治療で用いる放射線の量をGy(グレイ)という単位で表します。前立腺がんに対する根治的治療での放射線治療は72〜80Gyの照射線量が必要とされます。一度に照射すると正常組織への影響が強くなってしまうので、1回の照射線量は2Gy程度に分散させることが多いので、36回から40回通院をします。休日を考慮すると治療を完了するまでに2ヶ月程度を要します。

■副作用について

多くの放射線を当てれば当てるほど効果が高くなりますが、周囲への影響も同時に強くなります。副作用を考えると治療に使える放射線の量には制限があります。

放射線の量を守ったとしても一定の確率で副作用が現れます。

  • 治療後3ヶ月以内に現れやすい副作用
    • 頻尿
    • 排尿時痛
    • 下痢
  • 治療後3ヶ月以降に現れやすい副作用
    • 血便
    • 勃起不全

副作用による症状は徐々に改善していきますが、直腸出血は危険な状態に陥ることがあるので注意が必要です。血便があった人はすみやかに医療機関を受診してください。

■強度変調放射線治療(IMRT)について

近年IMRTという方法の放射線治療が普及してきています。IMRTは外照射による放射線治療の種類の一つですが、正常組織に当たる放射線を極力少なくすることができ、副作用が少なくできる効果が期待されています。

少しだけIMRTについて詳しく説明します。

放射線は直進する性質があります。このため、がんを狙って放射線照射をすると、放射線が通る前後の正常組織にも放射線が当たってしまいます。正常組織への影響をできるだけ少なくするために、複数の方向から少しずつに分けて照射するると、照射範囲が重なった部分の照射線量を多くしながら、周りに当たってしまう線量は少なくすることができます。

、複数方向からの照射に加えて、照射方向ごとに線量の強弱をつけることによって、照射範囲をデコボコした前立腺の形とうまく一致させることができます。線量の強弱をつけた方法がが強度変調放射線治療(IMRT)です。

照治療効果を上げつつも、副作用を抑える効果が期待されています

3. 内照射

内照射は小線源療法とも呼ばれ、正式には密封小線源療法といいます。前立腺の中から放射線を照射する治療法です。小線源療法でも外照射と同じく、放射線によってがん細胞を死滅させます。

© Cancer Research UK uploader – Diagram showing how you have high dose brachytherapy for prostate cancer (2015 CC BY-SA 4.0) / Adapted by MEDLEY Inc.

内照射では前立腺にヨード125という放射性物質を埋め込みます。ヨード125は前立腺の中で少しずつ放射線を出し続けます。

内照射を行う条件は施設により異なっていますが、低リスクの前立腺がんの人に対して行う施設が多いです。内照射の治療効果は前立腺を摘除した場合と同等とされます。また、低リスクであったとしても前立腺が極端に大きい場合は治療ができません。

前立腺がんの悪性度は一般的にリスク分類を使って評価されます。リスク分類は3種類の検査結果をまとめたものです。

  • 前立腺でのがんの状態
  • 血液検査のPSA値
  • 前立腺生検時のグリソンスコア

リスク分類について詳しくは「前立腺がんのステージとは?」で説明しているので参考にしてください。内照射の治療効果は前立腺を摘除した場合と同等とされます。

合併症には次のものがあります。

  • 直腸出血
  • 勃起機能の低下
  • 頻尿
  • 排尿時痛
  • 尿意切迫感
  • 排尿困難

直腸出血と勃起機能の低下以外は一時的なもののことが多く、時間の経過と共に改善していきます。一方で、直腸出血はすみやかに治療をしないと、命に危険が及ぶことがあるので、便に血が混じるなどの疑わしい症状が現れた人はすぐに医療機関を受診してください。また、内照射は手術や外照射に比べて勃起機能への影響が少ないと考えられてはいますが、勃時間が経っても治らないことは少なくありません。勃起機能改善薬などが必要となることも少なくないので、担当のお医者さんと相談してください。

合併症以外にも注意点があります。埋め込まれた放射線が与える周囲への影響です。内照射で使われるヨード125は前立腺の中に埋め込まれてはいえ、周りにも少量の放射線が漏れ出ています。排尿時や子供との接触などに注意点があるので担当医からの説明をよく聞いてください。放射線と聞くと不安になると思いますが、放出される放射線量は時間とともに減少していき、影響が心配ないレベルに落ち着くので安心してください。

4. 陽子線治療と重粒子線治療

放射線治療の中でも特殊なものとして、して陽子線治療と重粒子線治療があります。

陽子線治療

陽子線は放射線の一種です。専門的には水素原子から電子を取り除いたものを高速に加速したものが陽子線です。陽子線は体内に入っても表面近くではエネルギーをあまり放出せずに、停止する直前にエネルギーを放出します。陽子線の性質を利用して照射することで、周囲の臓器への影響(副作用)を抑えることができるとされています。

重粒子線治療

重粒子線も放射線の一種です。重粒子線とは、炭素イオンを加速器により光速の70%程度まで加速させたものです。陽子線と同様に重粒子線も体内に入っても表面近くではあまりエネルギーを放出せずに、停止する直前にエネルギーを放出します。重粒子線の性質を利用して照射することで、周囲の臓器への影響(副作用)を抑えることができるとされています。

5. 放射線治療にともなう疑問について

放射線治療を受ける人からよく受ける質問をもとにして、いくつかの疑問点をまとめます。

ホルモン療法を同時に行うのはどんな場合か

前立腺がんは男性ホルモンがある環境下で増殖しやすくなるので、男性ホルモンの分泌を抑えるホルモン治療が効果的です。悪性度が高いと考えられる人には放射線とホルモン治療を組み合わせて治療が行われます。

効果が高くなるとはいえ、放射線治療を行う全ての人にホルモン療法が必要ではありません。ホルモン療法には副作用もあるので、必要のない人には行わない方が良いです。低リスクの前立腺がんに放射線治療を行う場合はホルモン治療が必要ではありません。放射線治療に合わせて行われるホルモン治療は、放射線治療が始まる6ヶ月前から開始され、放射線治療が終わった後もしばらく継続されます。

放射線治療の影響で他のがんになるのか

放射線と聞くと発がんが心配になる人は多いかもしれません。確かに大量の放射線を浴びると発がんにつながることがあります。放射線治療前立腺がんに放射線治療を行ったとき、他の臓器にがんが発生するかどうかは気になる問題点です。

前立腺がんの放射線治療後発がんの可能性があるのは主に直腸と膀胱です。がんを発症する危険性が高まると報告した研究が過去にあります。一方で、放射線の照射技術が向上した現在では、前立腺がんの放射線治療で明らかに発がんの危険性が高まる可能性は少ないという意見も意見が多く見られます。

どの場合でも、膀胱がん直腸がん発生しない人が大多数です。すでに見つかっている前立腺がんを治療する効果と比較すれば、ほかのがんが発生する危険性を理由に放射線治療をためらうほどではないとも考えられます。どうしても発がん懸念がある人は手術やホルモン療法など他の治療法に目を向けてもよいかもしれません。

放射線治療後の再発とは?

前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAを上手に使うと、再発を早期に発見することができます。他のがんでは、CT検査などの画像検査で転移を確認した時を再発とすることが多いのですが、前立腺がんでは画像検査で見つかる前にPSAの上昇をもって再発を発見できます。

■前立腺がんの再発には2つのパターンがある PSAの上昇によって定義される再発を生化学的再発と呼びます。具体的には、放射線治療で根治的治療を行なった場合、PSAが治療後一番低かった数値から2.0ng/ml上昇した時点で再発とします。再発の定義は手術を行なった場合やホルモン療法とは異なります。この点には注意が必要です

ごく初期の再発である生化学的再発に対して、CT検査やMRI検査などの画像診断を指摘された場合を臨床再発と呼びます。生化学的再発後に治療をせずに経過をみた場合、平均で5年後に臨床再発に発展したという報告があります。放射線治療後、PSAが上昇して、主治医から再発と告げられた場合、急いで治療にとりかかりたい気持ちに駆られるかもしれません。しかし、前立腺がんは多くの場合、再発しても進行は緩やかです。慌てず、対応をお医者さんとよく相談することが重要です。

■放射線治療後の再発に対する治療

放射線治療後の再発に対する治療法は下記になります。

  • 手術
  • 放射線治療を追加
  • ホルモン療法

根治治療後の再発に対して再び根治を目的として行う治療を救済療法と呼びます。放射線治療後の再発に対して根治(がんを治すこと)を狙えるのは手術と放射線治療です。

放射線治療を行うと前立腺の周囲の臓器が放射線の影響で互いに癒着するため、救済療法としての手術は通常の手術に比べて、合併症のリスクが高くなります。

一方で、放射線治療を追加する方法は手術と同様に周囲の臓器への影響が大きいと考えられますがまとまった報告がないためはっきりとした効果や副作用についてはわかっていません。

救済療法では根治を再び狙えますが、合併症などの危険性が高いため、一般的にはホルモン療法で治療を行うことが多いです。男性ホルモンを減らすホルモン療法には高い効果が期待できますが、がんの増殖を抑えることはできても根治は期待できません。がんが大きくならないように様子を見ながらがんと上手に付き合っていくことになります。

参考:

前立腺がん診療ガイドライン
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014