ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。日本でも高齢化とともに患者数が急増している。
12人の医師がチェック 207回の改訂 最終更新: 2020.06.14

前立腺がんの薬物療法:薬の種類、副作用についての解説

前立腺がんの薬物治療には、ホルモン療法と抗がん剤治療があり、主に高齢者や転移がある人などに行われます。このページでは実際に使われる薬の効果や副作用などを説明します。

1. 前立腺がんの薬物療法について

前立腺がんの薬物療法にはホルモン療法と抗がん剤治療があります。

  • ホルモン療法
  • 抗がん剤治療

薬物治療の主な目的は「がんの進行抑制」と「再発予防」です。 前立腺がんにはホルモン療法がよく効くことが分かっているので、ホルモン療法がまず行われます。ホルモン療法の効果がなくなった人には、抗がん剤治療が検討されます。

2. ホルモン療法とは?

前立腺がんは男性ホルモンの影響で進行します。 ホルモン療法では男性ホルモンが前立腺がんに取り込まれるのを抑えることができます。ホルモン療法を別名でアンドロゲン遮断療法と呼ばれることもあります。

ホルモン療法はどのような人に行われるのか

ホルモン療法は次のような人に行われます。

  • 転移がある人
  • 高齢者
  • 手術や放射線治療後に再発する可能性が高い人

それぞれについて説明します。

■転移がある人
前立腺がんが転移している人は身体の広い範囲にがんが広がっていると考えられます。このため、前立腺を中心に治療する手術や放射線治療よりも、全身を治療できるホルモン療法が向いていると考えらています。

■高齢者
がんが前立腺にとどまっている人には手術や放射線治療が有効です。しかし、手術や放射線治療はどちらも身体に負担があるので、高齢者には手術や放射線治療の代わりとしてより負担が少ないホルモン療法が行われることがあります。

■手術や放射線治療後に再発する可能性が高い人
がんが前立腺にとどまっている人には手術や放射線治療がまず検討されることが多いです。しかしながら手術や放射線治療を行っても一定数の人は再発をしてしまいます。再発する可能性が高い人はリスク分類という方法に当てはめるとある程度予測することができます。再発の可能性が高い人には治療の前後で、再発の危険性を下げる目的でホルモン療法が行われます。

ホルモン療法のメカニズム

前立腺がんが男性ホルモンを取り込むのを防ぐ方法として次の2つがあります。

  1. 男性ホルモンが出るのを抑える
  2. 男性ホルモンが前立腺がんに取り込まれないようにする

1と2は単独で行われることもあれば、併せて行われる(CAB療法(Combined Androgen Blockade:複合アンドロゲン遮断))こともあります。

1. 男性ホルモンが出るのを抑える
LH-RHアゴニスト(リュープリン®やゾラデックス®)もしくはLH-RHアンタゴニスト(ゴナックス®)を用いて行われます。 男性ホルモンとして代表的な物質がテストステロンです。テストステロンの多くは精巣から分泌されます。前立腺がんはテストステロンがない状況(テストステロン非存在下)では、多くの場合、増殖が抑えられて小さくなります。 薬物療法に使われるLH-RHアゴニストやLH-RHアンタゴニストは脳の下垂体(かすいたい)という部分に作用します。下垂体からはゴナドトロピンというホルモンが放出されています。ゴナドトロピンが精巣に届くと精巣が男性ホルモンを分泌します。薬が下垂体に作用することにより、下垂体から精巣への調節システムの働きを変え、男性ホルモンが分泌されにくいようにします。
行われることは多くはありませんが、精巣を手術で取り除いても薬物療法と同じような効果を得ることができます。男性ホルモンが出るのを抑える治療は去勢治療と呼ばれることがあり、手術によって精巣を取り除くことを外科的去勢と呼ぶのに対して、薬物療法によって去勢と同じ効果を得ることを内科的去勢と呼ばれることがあります。

2.男性ホルモンが前立腺がんに取り込まれないようにする
男性ホルモンが前立腺がんに取り込まれないようにするために抗アンドロゲン剤という薬が使われます。男性ホルモンは前立腺がん細胞の中に取り込まれる時に、がん細胞が持っているアンドロゲンレセプターという物質と結合します。男性ホルモンがアンドロゲンレセプターと結合しなければ取り込まれることはありません。そこで、男性ホルモンの代わりとして、抗アンドロゲン剤をアンドロゲンレセプターと結合させれば、男性ホルモンが取り込まれなくなります。

ホルモン療法の効果の見方について

PSA値(前立腺がんの腫瘍マーカー)や症状、画像検査の結果などを参考にしながら治療が進められます。基本的にはPSA値が上昇しない限りホルモン療法を継続するので、PSA値を見ながら薬が調節されます。

3. ホルモン療法に使われる薬の詳細情報

ホルモン療法で使われる薬は次の3つに分類されます。

  • 男性ホルモンが出るのを抑える薬
    • LH-RHアゴニスト
    • LH-RHアンタゴニスト
  • 男性ホルモンが前立腺がんに取り込まれないようにする薬:抗アンドロゲン薬
    • ビカルタミド(商品名:カソデックス®など)
    • フルタミド(商品名:オダイン®など)
    • クロルマジノン(商品名:プロスタール®など)
  • ホルモン療法に効果がなくなったときに使う薬:新規ホルモン薬
    • エンザルタミド
    • アビラテロン
    • アパルタミド
    • ダロルタミド

それぞれについて説明します。

男性ホルモンが出るのを抑える薬

男性ホルモンが出るのを抑える薬にはLH-RHアゴニストとLH-RHアンタゴニストの2つがあります。

■LH-RH アゴニスト
「アゴニスト」とは、「受容体と結合し、生体内物質と同様の細胞内情報伝達系を作動させる薬」という意味です。LH-RHアゴニスト(GnRHアゴニスト)はGnRHと同様にGnRH受容体と結合することで作用を現します。

前の章を覚えている人は「GnRHと同じように作用するとテストステロンが分泌されて前立腺がんが悪化してしまうのでは?」と思うかもしれません。実際に初回投与の直後はLHやFSH分泌亢進(増加)による一過性のテストステロン増加がおこります。しかしその後も持続的にGnRHアゴニストが作用していると、GnRH受容体のダウンレギュレーションと呼ばれるGnRH受容体の脱感作(反応性の低下)や受容体数の減少を引き起こし、結果として精巣からのテストステロン産生を抑制します

LH-RHアゴニスト製剤は持続時間の違いから3つのタイプに分かれます。

  • 1ヶ月製剤(商品名:ゾラデックス®3.6mgデポ、リュープリン®注射用3.75mgなど)
  • 3ヶ月製剤(商品名:ゾラデックス®LA10.8mgデポ、リュープリン®SR注射用キット11.25mg)
  • 6ヶ月製剤(商品名:リュープリン®PRO注射用キット22.5mg)

治療開始後は症状が出やすいことや、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの推移を確認する必要があることから、最初は1ヶ月製剤を使用することが多いです。
病状が落ち着いてくると受診間隔も長くなるので、それに合わせて製剤を選択します
LH-RHアゴニストの副作用に関して注意すべき症状の一つに、テストステロンの一過性の増加(テストステロンサージ)に伴う症状があります。
LH-RHアゴニストの投与初期にはLHやFSHの分泌が亢進し、テストステロン分泌が一時的に増加します。これによりフレアアップという現象がおこり、特に進行性や転移性の前立腺がんにおいて骨痛や排尿困難などの悪化、まれに脊髄圧迫などの症状を引き起こすことがあります。これらの症状を予防するため、また治療効果を高めるために、抗アンドロゲン薬という種類の薬を併用する場合もあります。

このほか以下の副作用にも注意が必要です。

  • 注射部位反応
    • 疼痛(注射した場所の痛み)
    • 硬結(注射した場所が硬くなる)
    • 発赤(注射した場所が赤くなる)
  • ほてり・熱感
  • 間質性肺炎
  • 肝機能障害
  • 心血管障害
  • 骨粗しょう症

これらの副作用やテストステロンサージに伴う症状に注意は必要ですが、LH-RHアゴニスト製剤自体は安全性が高い薬とされています。有害事象によって中止となるケースは少なく、後述するLH-RHアンタゴニストに比べて以前から前立腺がんのホルモン療法で使われてきたため、臨床実績なども豊富です。また1ヶ月製剤だけでなく、必要に応じて3ヶ月製剤や6ヶ月製剤も選択できる製剤的なメリットもあります。

■LH-RH アンタゴニスト
「アンタゴニスト」とは、「受容体と結合し、生体内物質とは異なりそのもの自体は生体反応を起こさず、本来結合すべき生体内物質と受容体の結合を阻害し、生体応答反応を起こさないようにする薬」という意味です。
LH-RHアンタゴニスト(GnRHアンタゴニスト)は下垂体前葉のGnRH受容体と結合することで、GnRHとGnRH受容体の結合を阻害し、下垂体からのLHやFSHの分泌を抑えることで、精巣からのテストステロン分泌を抑えます。
LH-RHアンタゴニストは投与初期のテストステロンサージがない点がLH-RHアゴニストと違います。
LH-RHアゴニストはGnRH受容体への持続的刺激による受容体のダウンレギュレーション(反応性低下など)を引き起こすことで、結果としてテストステロン産生を抑えます。副作用としては投与初期にテストステロンの一過性の上昇(テストステロンサージ)による骨痛の悪化、排尿困難、脊髄圧迫などの症状があらわれる場合があります。
LH-RHアンタゴニストはGnRH受容体を直接的に阻害することで、LHの分泌を直ちに抑制し、投与初期のテストステロンサージを起こすことなく投与開始後速やかにテストステロン産生を抑えることが期待できます。

LH-RH(GnRH)アンタゴニストにはゴナックス®という製剤があります。

ゴナックスは皮下注射後に薬が体液と触れることでゲル化し、成分を持続的に放出する状態になります。1回の注射で4週間効果が持続するため、通常「4週毎に1回皮下注射」を行い継続していきます。テストステロンサージに懸念がない一方で注射部位反応に関してはLH-RHアゴニストの製剤に比べると一般的にあらわれやすい傾向にあります。個々の体質などにもよりますが、疼痛や紅斑といった症状は注射部位反応の中でもあらわれやすく注意が必要です。注射後は注射部位(通常、腹部)を掻いたり揉んだりしないよう注意することも大切です。

副作用の例として、以下に注意が必要です。

  • 注射部位反応
  • 疼痛
  • 硬結
  • 紅斑
  • 腫脹
  • かゆみ
  • ほてり・発汗
  • 高血圧
  • 血糖上昇
  • 血液中コレステロールの増加
  • 間質性肺炎
  • 肝機能障害
  • 骨粗しょう症

上記の副作用が起こっていないかどうかを診察や検査で調べられますが、上記以外にも副作用があるので、治療中に不安な症状が現れた際はお医者さんに相談してみてください。

抗アンドロゲン薬

抗アンドロゲン薬はアンドロゲンレセプターと結合することで男性ホルモンの取り込みを防ぐ薬です。

抗アンドロゲン薬は3種類が使われており、いずれも飲み薬です。

  • ビカルタミド(商品名:カソデックス®など)
  • フルタミド(商品名:オダイン®など)
  • クロルマジノン(商品名:プロスタール®など)

一般的にはビカルタミドという薬が最初に使われることが多いです。その後、PSA値が上昇した場合は抗アンドロゲン薬交替療法といって、フルタミドやクロルマジノンに変更されることがあります。

■抗アンドロゲン薬交替療法について
抗アンドロゲン薬を使うと、がん細胞も対応して形を変えることで抗アンドロゲン薬の取り込みを無効にしていきます。がん細胞の変化に対しては、違う薬を投与することでまた前立腺がんに男性ホルモンが取り込まれるのを防ぐことができます。このように抗アンドロゲン薬の種類を替えることで治療効果を保つ方法が抗アンドロゲン薬交替療法です。

■抗アンドロゲン除去症候群(AWS)について
抗アンドロゲン薬の効果はいつかは低下して、腫瘍マーカーが増加し始めます。一部の人では前立腺がん細胞が変化し、本来は治療薬として投与している抗アンドロゲン薬を逆に利用してがんが増殖している場合があります。
抗アンドロゲン薬を中止することで、病状が改善する(PSAが低下する)ことがあります。この現象を抗アンドロゲン除去症候群(Antiandrogen Withdrawal Syndrome; AWS)と言います。「症候群」という名前がついていますが、AWSは悪いことではなく、むしろ治療の助けになる現象です。主治医から一度お薬をやめてみましょうと言われた場合はAWSが起きるかの確認をしているかもしれません。

新規ホルモン薬(新規抗アンドロゲン剤)

前立腺がんの中にはホルモン療法が効きやすい細胞もいれば効きにくい細胞も存在します。ホルモン療法を行うと、ホルモン療法に弱い細胞は少なくなります。一方でホルモン療法が効きにくい細胞は増殖を続けて、大部分がホルモン療法の効きにくい細胞になると、がん全体としてはホルモン療法の効果がほとんどなくなります。このようにホルモン療法が効きにくくなった状態の前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんと言います。去勢抵抗性前立腺がんにはより強力に男性ホルモンの取り込みを防ぐ薬(エンザルタミド)か、わずかに出ているホルモンをさらに減らす薬(アビラテロン)が治療に用いられます。その他ではアパルタミドやダロルタミドがあります。

■エンザルタミド
エンザルタミドは、男性ホルモンが前立腺がん細胞に取り込まれることを、従来の薬(抗アンドロゲン薬)より多く(複数)の部位で阻害する新規の抗アンドロゲン薬です。
従来の抗アンドロゲン薬が主にアンドロゲン受容体への阻害作用をあらわしていたのに対して、本剤はその作用に加え前立腺がん細胞の内部におけるシグナル伝達を阻害する作用などもあらわします。このようにエンザルタミドは男性ホルモンに関わる複数のシグナル伝達を阻害することで、従来の抗アンドロゲン薬に対して抵抗性を示すような前立腺がんの腫瘍細胞に対しても抗腫瘍効果が確認されています。また本剤は抗がん剤の使用の有無を問わず、余命を延長することが確認されています。
エンザルタミド製剤であるイクスタンジ®カプセル40mgは通常「1日1回、160mg(4カプセル分)」の服用を行います。
やや懸念となるのはカプセルが内服薬の中でも大きい(長径が約21mm、短径が約10mm)部類に入るため、嚥下機能の低下がある場合などには、飲みづらさを感じるかもしれません。誤嚥などを防ぎ適切な服用につなげるため、飲み込みに不安がある場合には一つ一つ確実に(4カプセル分)服用していくことも大切です。
エンザルタミドで注意すべき副作用は疲労感、吐き気、食欲減退、便秘などの消化器症状、ほてり、高血圧、血小板減少などです。また非常にまれですが、痙攣(けいれん)があらわれるという報告もあります。基礎疾患てんかんなどの痙攣性の病気がある場合にはより注意が必要です。

■アビラテロン

男性ホルモンはホルモン療法で体から少なくなっていますが、微量には存在します。去勢抵抗性前立腺がんでは微量にある男性ホルモンを利用して、がんが増殖していくと推測されています。
アビラテロンは男性ホルモンの生成を抑えることで、さらに男性ホルモンを減少させることができます。
もう少し詳しくみていくと、精巣や副腎、前立腺がんの腫瘍組織にはCYP17という酵素が存在します。この酵素は男性ホルモンなどの産生に関わる酵素の一つです。アビラテロンはこのCYP17に対して阻害し精巣・副腎・前立腺がんの腫瘍組織における男性ホルモンの合成を阻害することで去勢抵抗性前立腺がんに対しても抗腫瘍効果を現します。アビラテロンも、エンザルタミド同様に抗がん剤の使用の有無を問わず、余命を延長することが確認されています。
アビラテロン製剤のザイティガ®錠250mgは通常「1日1回、1000mg(4錠分)」の服用を行います。錠剤の大きさは「長径が15.88mm、短径が9.52mm、厚さ6.2mm」ですので、先ほどのエンザルタミド製剤(イクスタンジ®)に比べればやや小ぶりとなっています。
注意したいのは服用時点(服用するタイミング)です。ザイティガ®錠は食事の影響を受け、食事した時間からあまり間隔をあけずに服用すると薬剤成分の血中濃度が過度に増加してしまう可能性があります。そのため本剤は通常「食事の1時間前から食後2時間までの間は避けて服用」します。
アビラテロンで注意すべき副作用は、肝機能障害、低カリウム血症、高血圧、浮腫などです。中でも低カリウム血症には注意が必要とされ、なんらかの治療で利尿薬などの低カリウム血症を引き起こす可能性がある薬剤を併用している場合にはより注意が必要となります。
アビラテロンはその作用の仕組みによって、男性ホルモン以外のホルモン産生も抑えてしまうため一部のホルモン(主にコルチゾール)が不足してしまいます。そのためアビラテロンの服用中は不足するホルモンをプレドニゾロン(プレドニン®など)という薬で補充する必要があります。一般的にはプレドニゾロン10mgを1日2回(「朝・昼食後」など)に分けて補充します。(プレドニゾロンの量を個々の状態などに合わせて増減する場合もあります)
プレドニゾロンを継続していく中で注意したいのが血糖、骨密度などへの影響です。特に持病で糖尿病を持つ場合には糖尿病の主治医にプレドニゾロンを飲んでいることを伝え、血糖値の変動などにより気を配ることも重要です。
ただし、これらの懸念から自己判断でプレドニゾロンを中止するのは避けて下さい。先ほども説明しましたが、プレドニゾロンはアビラテロンの服用によって不足する体内の重要なホルモンを補う目的で主治医が個々の状態を考えた上で処方されます。自己判断で中止してしまうと本来の治療などに影響が出る可能性もあります。

4. 抗がん剤治療について

前立腺がんの抗がん剤治療はホルモン療法の後で行われることが多く、抗がん剤には2つがあります。

  • ドセタキセル
  • カバジタキセル

2つともタキサン系という抗がん剤のグループに分類されます。どちら薬も余命が延びることが臨床試験で証明されています。まずドセタキセルを使った治療を行い、その後カバジタキセルによる治療が行われます。どちらもに3週間に1回の投与を繰り返し行います。副作用が出た場合は投与間隔を伸ばしたり、投与量の減量を行います。

ドセタキセル(商品名:タキソテール®、ワンタキソテール®など)

ドセタキセルはホルモン療法が効かなくなった前立腺がんに対して、余命の延長効果を示した初めての抗がん剤です。
微小管といって細胞分裂に重要な役割を果たす物質を阻害する微小管阻害薬という種類の抗がん剤で、その中でもイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯によりタキサン系というグループに属します。
前立腺がん治療では通常「3週間に1回点滴静注で投与」を1サイクルとしてこれを繰り返していきます。また効果や副作用を見ながら投与間隔を伸ばしたり、投与する薬の量を減量したりします。入院して投与する場合もありますが外来での投与を行うことも可能です。
主な副作用に骨髄抑制(好中球減少症など)、過敏症、脱毛、間質性肺炎、手足の痺れ(末梢神経障害)、むくみなどがあります。脱毛は他の抗がん剤と比べても高い頻度であらわれる薬の一つで、頭髪だけでなく眉毛などが抜ける場合もあります。必要に応じて帽子などをあらかじめ用意するなど、準備も大切です。

ドセタキセルの製剤には添加物や添付溶解液にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質がある場合には注意が必要です。

カバジタキセル(商品名:ジェブタナ®)

カバジタキセルはドセタキセルと同じタキサン系(微小管阻害薬)という抗がん剤のグループに属します。カバジタキセルはドセタキセルに効果を示さなくなった前立腺がんに対して、余命の延長効果を示しました。海外では「ドセタキセルを含む前治療歴のあるホルモン不応性転移性前立腺がん」の効能・効果が承認されています。
カバジタキセルも通常「3週間に1回点滴静注で投与」を1サイクルとしてこれを繰り返していきます。注意すべき副作用は骨髄抑制(特に好中球減少症)、間質性肺炎、下痢や吐き気などの消化器症状、脱毛、末梢神経障害などです。
またドセタキセル製剤と同様、カバジタキセル製剤(商品名:ジェブタナ®)も添付溶解液にエタノールを含むためアルコール過敏の体質がある場合には注意が必要です。

参考:

前立腺がん診療ガイドライン
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
N Eng J Med.2012;367:1187-97
N Eng J Med.2014;371:424-33
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N Eng J Med.2013;368:133-48
Lancet.2010;376:1147-54
N Eng J Med.2004;351:1502-12
N Eng J med.2004;351:1513-20