たはつせいこつずいしゅ
多発性骨髄腫
血液がんの一種。免疫細胞の一種が異常ながん細胞となり、骨髄の中で増殖する状態。骨や免疫が弱くなったりする。
9人の医師がチェック 102回の改訂 最終更新: 2017.12.12

多発性骨髄腫の基礎知識

POINT 多発性骨髄腫とは

多発性骨髄腫は、血液細胞の一つである形質(けいしつ)細胞のがんです。形質細胞は白血球の一種であるリンパ球のうち、Bリンパ球と呼ばれる細胞からできるもので、本来は体内に侵入した病原体を倒すための抗体をつくる働きを持っています。形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になると、病原体を攻撃する力がなく、役に立たない抗体(Mタンパクと呼びます)が無秩序に作られていきます。これらの骨髄腫細胞やMタンパクが様々な問題を起こします。多発性骨髄腫の症状としては、動悸、息切れ、発熱、骨折、頭痛、意識障害、麻痺などがあります。診断は採血・尿検査、骨髄検査、全身の画像検査などで行います。治療は病状により大きく異なりますが、造血幹細胞移植や抗がん剤が主体となります。多発性骨髄腫が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。

多発性骨髄腫について

  • 血液細胞の一つである形質(けいしつ)細胞のがん
    • 形質細胞は白血球の一種であるリンパ球からできる細胞で、体内に侵入した病原体を倒すための抗体をつくる
    • 形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になると、役に立たない抗体(Mタンパク)が無秩序に作られる
    • 骨髄腫細胞やMタンパクの影響で以下のような問題が起きる
      ・異常な細胞が大量に体に回ることで、正常な血球がうまく作られなくなる
      ・異常な抗体が腎臓に溜まることで、腎臓が悪くなる
      ・異常な細胞の影響で、全身の骨がもろくなってしまう(骨折しやすい)
  • 悪性リンパ腫と同様に、血液悪性腫瘍の中でも比較的多く見られる病気
    • 生存期間の平均は5-6年前後とされているが、半年以内に亡くなる方から10年以上生存する方まで様々である
    • 5年生存率は60-70%程度と報告されている

多発性骨髄腫の症状

  • 貧血による症状
    • 動悸
    • 息切れ
    • めまい、ふらつき
    • 疲れやすい など
  • Mタンパクによる病態、症状
    • 各種感染症にかかりやすい(正常な抗体が減るため)
      肺炎
      ・尿路感染 など
    • 腎障害(Mタンパクが腎臓にダメージを与える)
      むくみやすい など
    • 過粘稠度症候群(Mタンパクが多すぎて血液がドロドロになる)
      ・血が止まりにくい
      ・視力低下、失明
      ・めまい
      ・頭痛
      ・けいれん
      ・だるさ、食欲不振 など
    • アミロイドーシス(全身の臓器にアミロイドという異常なタンパクが沈着する)
      ・出血しやすくなる(検査や手術時は要注意) など
  • 骨が破壊されることによる病態、症状
    • 高カルシウム血症
      意識障害
      ・喉が乾く
      ・頭痛 など
    • 病的骨折
      ・胸や背中、腰などが痛む 
      ・足が麻痺する など

多発性骨髄腫の検査・診断

  • 血液検査
    • 貧血の程度、カルシウム値、腎機能、血中のタンパクや抗体を調べる
  • 尿検査
    • 尿中の異常なタンパク(ベンス・ジョーンズ蛋白)などを検出する
  • レントゲンX線)検査
    • 全身の骨に骨折がないか確認する
  • 画像検査(CT検査、MRI検査、PET検査など)
    • 全身の骨や臓器の状態を詳しく調べる
    • 造影剤という薬を注射してから画像検査をするとより詳細な情報が得られるが、骨髄腫の方では腎臓にダメージが及ぶことが危惧されるので、基本的には造影剤を使用しない
  • 心臓超音波心エコー)検査
  • 骨髄検査
    • 腰骨や胸の骨から骨髄を採取して顕微鏡で確認する
    • 染色体検査を行い、予後や治療への反応性を推測する

多発性骨髄腫の治療法

  • 目立った症状がない場合
  • 症状があるが、65歳未満の元気な方の場合
    • 自家造血幹細胞移植が最も効果の期待できる治療
      ・ボルテゾミブ(ベルケイド®)を軸とした抗がん剤治療などでまずは骨髄腫細胞を減らす
      ・ボルテゾミブ治療を3-4回ほど行った後に、自身の末梢血幹細胞を採取する
      ・メルファラン(アルケラン®)大量療法で骨髄腫細胞をさらに攻撃した後に、採取してあった末梢血幹細胞を移植する
  • 65歳以上または臓器機能に問題があり移植ができない場合、再発した場合
    • メルファラン、ステロイド、サリドマイド(サレド®)、レナリドミド(レブラミド®)、ポマリドミド(ポマリスト®)などを用いた抗がん剤治療を行う
    • 抗がん剤だけでなく、合併症予防のために種々の薬剤を使用する
      ・骨折予防:ゾレドロン酸(ゾメタ®)、デノスマブ(ランマーク®)など
      帯状疱疹予防:アシクロビルなど(ボルテゾミブ使用中は必須)
      血栓症予防:アスピリンなど(サリドマイドやレナリドミドを含む併用療法では血栓が出来やすい)

多発性骨髄腫に関連する治療薬

抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)

  • 細胞の増殖に必要なDNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAやRNAの合成が必要となる
    • 本剤は細胞内のDNAに結合するなどしてDNAやRNAの合成を阻害するなどして抗腫瘍効果をあらわす

  • 本剤は土壌などに含まれるカビなどの微生物由来の薬剤であり抗がん性抗生物質などと呼ばれる
抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)についてもっと詳しく

デノスマブ製剤(多発性骨髄腫、骨巨細胞腫治療薬)

  • 多発性骨髄腫や骨巨細胞腫などの骨病変を進行させるRANKLという物質を阻害する薬
    • 体内物質のRANKLは骨を壊す過程(骨吸収)を亢進させる作用をあらわす
    • 多発性骨髄腫や固形がんの骨転移における骨病変ではRANKLによって腫瘍細胞の増殖因子の放出亢進がおこり、がん細胞の増殖が進行する
    • 骨巨細胞腫の病変部位ではRANKLが巨細胞という細胞に作用し骨を溶かす作用が亢進し腫瘍が大きくなる
    • 本剤はRANKLに結合しRANKLの働きを阻害する作用をあらわす

  • 本剤の成分(デノスマブ)は多発性骨髄腫や骨巨細胞腫以外に、骨粗しょう症で使用する場合がある
デノスマブ製剤(多発性骨髄腫、骨巨細胞腫治療薬)についてもっと詳しく

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)

  • ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)という酵素の異常な活性化を阻害し抗腫瘍効果をあらわす薬
    • 多発性骨髄腫は白血球の一つである形質細胞のがん化により、貧血、骨折、腎障害などがあらわれる
    • 多発性骨髄腫などではHDACという酵素の異常な活性化がみられ造血器の腫瘍化が促進する
    • 本剤はHDACを阻害し細胞周期停止及び細胞の自滅を誘導する作用をあらわす

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)についてもっと詳しく


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