たはつせいこつずいしゅ
多発性骨髄腫
血液がんの一種。免疫細胞の一種が異常ながん細胞となり、骨髄の中で増殖する状態。骨や免疫が弱くなったりする。
9人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2020.01.15

多発性骨髄腫の症状について

多発性骨髄腫は「形質細胞」という血液細胞が、がん化し増殖する病気です。病気の初期は症状がないことが多く、進行すると全身にさまざまな症状が見られます。骨の痛みや貧血によるめまい、息切れなどの症状をきっかけに見つかることが多いですが、症状がなくても血液検査などで見つかることもあります。このページでは多発性骨髄腫の症状について詳しく説明します。

1.多発性骨髄腫の症状について

骨髄は骨の中にあって血液が作られている場所です。多発性骨髄腫では、がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)が骨髄で増殖しています。この増え続ける骨髄腫細胞の影響で、骨が溶けたり、正常に血液が作れなくなったりしてさまざまな症状が出ます。また、形質細胞には本来ウイルス細菌を攻撃する抗体を作り出す機能がありますが、骨髄腫細胞は正常な抗体を作ることができず、代わりに機能のない抗体(M蛋白)を作り出します。M蛋白が大量に作られると、腎臓に負担がかかったり血液がドロドロになったりして全身に症状が現れます。

【多発性骨髄腫で起こる主な症状】

  • 骨がもろくなって起こる症状
  • 貧血による症状
  • 腎臓の機能低下による症状
  • 高カルシウム血症による症状
  • 易感染性(感染症にかかりやすい)
  • 出血傾向(出血が止まりにくい)
  • 血液の流れが悪くなる: 過粘稠度症候群(かねんちょうどしょうこうぐん)

これらの症状について詳しく説明します。

2. 骨がもろくなって起こる症状

多発性骨髄腫の人では骨髄腫細胞の影響で骨が溶けてもろくなっています。そのため次のような症状が現れます。

  • 骨の痛み
  • 骨折
  • しびれや麻痺

多発性骨髄腫の人は骨が溶けてしまって骨の痛みを自覚することが多いです。病状が進行すると全身の骨がもろくなり、ちょっとしたことで骨が折れてしまいます。例えば、軽く「しりもち」をついたり転んだだけで脊椎骨(背骨)が押しつぶれてしまうことは少なくありません。(これを圧迫骨折といいます。)

また、背骨が変形して神経が圧迫されると、手足のしびれや麻痺(手足の動かしにくさ)などの症状が現れます。これらの症状は脳卒中など生命に関わる病気でも起こることがあるので、自覚した人はすぐに医療機関を受診してください。

3. 貧血による症状

貧血とは、全身に酸素を運ぶ機能のあるヘモグロビンが少なくなる状態をいいます。貧血になると、「立ちくらみ」、「息切れ」、「動悸」などの症状があらわれます。健康な人でも疲れているときなどに立ちくらみを感じることは多いので、そのままやり過ごしがちですが、立ちくらみ症状のうらには貧血が隠れていることがあるので注意が必要です。

4. 高カルシウム血症による症状

骨が溶けることで血液中のカルシウムが増加し、高カルシウム血症が起こることがあります。軽度の高カルシウム血症では症状がないこともありますが、病状が進行すると以下のような症状がみられます。

高カルシウム血症の主な症状】

  • 倦怠感
  • 吐き気
  • 便秘
  • 口の渇き
  • 筋力低下
  • 意識障害

高カルシウム血症の人は以上のようにさまざまな症状がみられます。これらの症状のうち、筋力の低下や、頭がぼーっとするなどの症状を感じた時は、高カルシウム血症が進行している可能性があるので早めに医療機関で調べてもらってください。

5. 腎臓の機能が低下して起こる症状

骨髄腫細胞が作る異常なタンパク質(M蛋白)により腎臓が傷つけられたり、高カルシウム血症が原因で腎臓の機能が低下することがあります。軽度の腎機能低下では症状がないことが多いですが、病状が進行すると以下のような症状が見られます。

【腎機能の低下で現れる主な症状】

  • 倦怠感(だるさ)
  • 尿量の減少
  • 足のむくみ

腎臓には血液の中の老廃物を濾し取って尿を作る役割があります。腎機能が低下すると、体内に老廃物がたまり、身体のだるさなどを自覚することがあります。また、腎臓は身体の水分を尿として体外に捨てることで、体内の水分量を調節する役割もあります。腎機能が低下すると尿量が減少して体内の水分量が多くなり、足のむくみなどが見られるようになります。

6. 感染症による症状

血液の成分には免疫機能を担う白血球があります。骨髄腫細胞が増殖すると、白血球が少なくなったり、抗体(外敵を認識し排除する物質)が少なくなることで、細菌やウイルスに感染しやすくなります。感染は呼吸器(気管支や肺などの呼吸に関わる場所)や尿路(膀胱や腎臓などの尿の通り道)に起こることが多いです。

症状は感染症が起きた場所によって異なります。例えば、呼吸器感染症では咳や痰などの症状がみられ、尿路感染症では頻尿や排尿時痛などがみられることが多いです。

発熱は、感染が起きた場所に関わらず起こりやすい症状です。

7. 出血が止まりにくくなることによる症状

血液が骨髄でうまく作られなくなって血小板(出血を止める機能のある血液の成分)が減少すると、出血が止まりにくくなります。出血が止まりにくくなると、下記のような症状が現れます。

【出血が止まりにくくなることによる症状】

  • 皮膚のあざ(紫斑)ができる
  • 鼻血が出やすい
  • 歯茎から出血しやすい
  • 血便や黒色便がでる
  • 血尿が出る

あざ(紫斑)は健康な人でも身体を強くぶつけた時にできやすいです。しかし、血小板の数がとても少ない人では、ぶつけた自覚がないにも関わらず紫斑ができることがあります。紫斑は数センチ大の大きいものもあれば、数ミリ大の赤い点状の小さいもの(点状出血といいます。)までさまざまです。できてしまった紫斑はしばらく残ってしまいますが、時間が経てば自然に吸収されてなくなります。紫斑以外には鼻血が出やすくなったり、歯茎から出血しやすくなるという症状がみられることもあります。頻度は低いですが、食べたものが通る消化管で出血が起こると、便の色が赤くなったり(血便)、黒くなったり(黒色便)することがあり、尿路で出血が起これば血尿が出ることもあります。

8. 血液の流れが悪くなることによる症状(過粘稠度症候群)

骨髄腫細胞はM蛋白という異常なタンパク質を産生します。M蛋白が大量に作られると、血液がドロドロになって流れが悪くなります。これを過粘稠度症候群(かねんちょうどしょうこうぐん)といいます。

血流が悪くなることで、次のような症状を自覚することが多いです。

【過粘稠度症候群の主な症状】

  • 頭痛
  • めまい
  • 目の見えにくさ

頭部への血液の流れが悪くなると頭痛やめまいを自覚することがあります。ひとえに「めまい」といってもいろいろな症状があります。過粘稠度症候群では、周囲が回転しているように感じる回転性めまいと、身体がふわふわするように感じる浮動性めまいの両方がみられます。また、目への血液の流れが悪くなると、目が見えにくくなる、全く見えなくなるなどの症状が出ます。