尿路感染症(総論)の基礎知識
POINT 尿路感染症(総論)とは
身体の中での尿の通り道を尿路といいます。尿路には腎盂・尿管・膀胱・尿道があり、尿路で起こった感染症を尿路感染症といいます。原因の多くは細菌で、具体的には大腸菌・クレブシエラ桿菌などの腸内にいるような菌や、クラミジア・淋菌のような性病を起こす菌などがあります。主な症状は、発熱や、排尿時の痛み・排尿時の違和感・頻尿・血尿などです。検査では尿の中に白血球がいるかどうかを見たり、細菌の培養を行います。また、子どもが尿路感染症を繰り返す場合は、尿路造影検査を行い尿路の異常がないかを調べます。治療は抗菌薬を用いますが、程度の軽い膀胱炎では抗菌薬を使わない場合もあります。尿路感染症が心配な人は、内科・小児科・感染症内科・泌尿器科を受診してください。
尿路感染症(総論)について
尿路感染症(総論)の症状
尿路感染症(総論)の検査・診断
問診 で自覚症状の有無を確認する- 排尿時の痛みや違和感の有無
- 尿の色調
- 尿のにおい
- (特に若い男性や尿路感染症を繰り返す女性は)性生活について
- 尿検査
- 尿の中に
白血球 や赤血球 がいるかどうかを簡易的に調べる検査
- 尿の中に
細菌 学的検査- 血液検査
- 全身状態を、また血液の培養で菌血症の有無を調べる
腹部超音波 - 腎臓の形や大きさ
- 膀胱に尿が溜まってないかなどを調べる
CT 検査
尿路感染症(総論)の治療法
尿路感染症(総論)に関連する治療薬
アミノグリコシド系抗菌薬
- 細菌のタンパク質合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
- 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
- タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
- 本剤は細菌のリボソームにおけるタンパク質合成を阻害して抗菌作用をあらわす
- 薬剤によって抗菌作用の範囲に違いがあり、淋菌(淋菌感染症の原因菌)やMRSA(MRSA感染症の原因菌)などに抗菌作用をあらわす薬剤もある
ST合剤
- 細菌などが行う葉酸合成と葉酸の活性化を阻害し増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
- 細菌などの増殖には遺伝情報を含むDNAの複製が必要でDNAの複製には葉酸が必要となる
- 細菌などは自ら葉酸を作り、活性化させることでDNAの複製に使用する
- 本剤は葉酸合成阻害作用をもつ薬剤と葉酸の活性化を阻害する薬剤の配合剤
- 真菌が原因でおこるニューモシスチス肺炎に使用する場合もある
セフェム系抗菌薬
- 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌を殺すことで抗菌作用をあらわす薬
- 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
- 細菌の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
- 本剤は細菌のPBPに作用し細胞壁合成を阻害することで細菌を殺す作用をあらわす
- 妊婦にも比較的安全に投与できるとされる
- 開発された世代によって第一世代〜第四世代に分けられる
- 各世代で、各種細菌へ対して、それぞれ得手・不得手がある
- 世代が同じであっても薬剤によって各種細菌に対して得手・不得手の違いが生じる場合がある
尿路感染症(総論)の経過と病院探しのポイント
尿路感染症(総論)が心配な方
尿路感染症では、頻尿、排尿時の痛み、腹痛、腰痛、発熱など様々な症状が出ます。ただし、尿路感染症の大半(膀胱炎など)は軽症であり、一般的な内科や小児科のクリニックで十分に対応が可能です。一方で、腎盂腎炎のような重症化しやすいものについては、入院が必要になることが多いのでクリニックではなく病院での治療が適していると考えられるます。その場合には、感染症内科や腎臓内科、泌尿器科などが入院先の診療科として考えられます。
38度以上の高熱がある場合には腎盂腎炎の可能性がありますので、病院の受診も選択肢の一つです。ただし、その場合も先にクリニックを受診した時点で、腎盂腎炎か否かの診断をつけてもらい、腎盂腎炎であれば病院を紹介受診するという手もあります。
尿路感染症の大半を占める膀胱炎については、問診、診察と尿検査で診断します。尿検査は試験紙を用いた簡単なものですから、内科のクリニックでも対応可能なところは多いです。尿路感染症の中でも腎盂腎炎の場合、上記検査に加えて血液検査、また超音波検査や腹部CT検査といった画像検査を行います。腎盂腎炎の原因として尿管結石が見つかることがあるため、その検査の意味で画像検査が行われます。
尿路感染症(総論)でお困りの方
膀胱炎の治療は、抗生物質の内服で行います。診断がついた後の治療は、すでにある程度決まったものがありますので、特殊な専門病院でなければならないなどということはなく、病院を探す上で気にするべき大きな差はありません。一般的な膀胱炎であれば、初回に薬をもらうだけで、その後の通院は不要です。
腎盂腎炎の治療は、抗生物質の点滴で行います。尿管結石などが原因で尿の通り道が詰まってしまうと腎盂腎炎を起こしやすいのですが、そのような詰まりがある場合には、尿管ステントや腎ろうといった処置が必要になります。詳しくは腎盂腎炎や尿管結石のページもご参考になさってください。
年に何回も尿路感染症を繰り返す場合や、抗生物質が効かない場合には感染症内科や泌尿器科の専門医に相談の上で診療を受けることをお勧めします。
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