急性虫垂炎の基礎知識
POINT 急性虫垂炎とは
急性虫垂炎は盲腸の隣りにある虫垂で感染が起こった病気です。一般的には盲腸(もうちょう)と呼ばれています。感染によって虫垂の壁に穴が空くことがあり、穴が空いた場合は腹膜炎を起こして重症になります。主な症状は腹痛・発熱・嘔吐などですが、病状が進行して腹膜炎を起こすとお腹全体に激しい痛みを生じます。 症状や身体診察に加えて、血液検査画像検査・超音波検査などを用いて診断します。治療は手術を行うことが基本になりますが、炎症が軽度である場合や手術を受ける体力がない場合は抗菌薬を用いて治療します。虫垂炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。
急性虫垂炎について
- 一般的に盲腸と言われている病気
- 右の下腹部にある虫垂(ちゅうすい)に、
細菌 が感染した状態 - 「盲腸」という呼び名で広く知れ渡っている
- 本来の盲腸は、虫垂の隣に位置する構造であり虫垂とは別のもの
- 右の下腹部にある虫垂(ちゅうすい)に、
- 腸の粘膜の
むくみ やリンパ節 が腫れることで腸の中の圧が上がり、感染を起こしやすくなる- 年長者や成人では糞石(ふんせき:老廃物が腸内で石状になったもの)が原因になっていることが多い
- 子供から成人まで、さまざまな年齢で起こる
- 5-20歳に多い(1歳未満ではまれ)
発症 から48-72時間経っても無治療でいると穿孔 (腸にあながあく)を起こす確率が上がる
急性虫垂炎の症状
急性虫垂炎の検査・診断
- 血液検査
- 血液中の
白血球 数などの項目を見ることで、炎症 の程度を調べる
- 血液中の
- 画像検査:虫垂炎の診断や炎症が広がっている範囲を調べるために行う
腹部超音波検査 腹部X線 (レントゲン )写真- 腹部(
造影 )CT 検査
超音波検査 で虫垂の腫大 (はれていること)や糞石の存在が確認できた場合、腹部CT検査 は必ずしも必要ない- 特に年少児では、他の病気を否定するために詳しい検査が必要になることがある
急性虫垂炎の治療法
抗菌薬 による治療- 程度が軽いものであれば、抗菌薬と絶食で様子をみることもある(俗に「散らす」という表現をされる治療)
- 抗菌薬の効果が不十分だと、進行して
穿孔 する危険性がある
- 手術
- 開腹手術と
腹腔鏡 下手術の2種類がある - 標準的な所要時間は1-2時間
- 診断後すぐに手術をする場合と、抗菌薬を使って
症状 が落ち着いた段階で手術をする場合がある
- 開腹手術と
炎症 の進行の程度や再発の危険性などを踏まえて治療法を選択する
急性虫垂炎の経過と病院探しのポイント
急性虫垂炎が心配な方
急性虫垂炎ではみぞおちから右下腹部の痛み、吐き気や発熱といったような症状がみられます。
急性虫垂炎を主に診療する診療科は、一般外科、消化器外科、大腸外科などです。急性虫垂炎は手術が必要となることが多いですが、手術ではなく抗生物質の点滴で治療を行う場合などは、消化器内科で診療を行うこともあります。急性虫垂炎は、生涯で7人に1人が発症するとも言われており、外科疾患の中で最も一般的な病気の一つです。
急性虫垂炎の診断は腹部エコーまたはCTで行います。国内の総合病院であればほとんどのところにエコーやCTの設備がありますので、診断のために特別な病院を選択しなければならない、ということはありません。
急性虫垂炎でお困りの方
急性虫垂炎の根本治療としては、手術が必要となることが多いです。そのため、外科のある病院が適しています。大学病院など、特殊な大病院でなければ治療が受けられないということはありません。症状が弱い、血液検査や腹部CTで炎症の及んでいる範囲が小さい、元々病気がなく健康な方である、などさまざまな条件が重なった場合には手術ではなく抗生物質の点滴で治療を行うこともありますが、その場合も経過が思わしくなければすぐに手術に切り替えられる準備をしておく必要があります。
手術を行う場合には、大きく分けて二通りの手段があります。開腹手術(お腹に傷を開けて行う手術)と腹腔鏡下手術(お腹に小さな傷を複数開けて内視鏡で行う手術)です。
腹腔鏡下手術の方が傷口が小さくて済むために術後の回復が早い、傷口が目立ちにくいというメリットがある一方で、外科医にとっては開腹手術の方が病気の部位に直接手を触れられるので手術が正確に行いやすいというメリットがあります。病院によってどちらの手術を主体で行っているかが異なるため、受けられる治療が変わってきます。
虫垂炎の手術は、診断がつけばその場で緊急で行われることが多いです。平日の日中であれば良いのですが、土日祝日や夜間は院内に残っているスタッフが少ないため、緊急で手術を行える病院と、そうでない病院があります。ある程度の規模の病院や、外科手術の手術件数が多い病院の方が、時間外の緊急手術により迅速に対応できるところが多い傾向にあります。