敗血症の基礎知識
POINT 敗血症とは
敗血症は感染症によって起こる非常に重篤な状態です。感染の炎症が全身に影響をおよぼすことで全身のバランスが乱れています。主な症状は発熱・悪寒・体温の異常・頻呼吸・頻脈・血圧低下・意識もうろうなどになります。 血液検査や細菌検査、画像検査から総合的に診断します。治療は感染に対する抗菌薬治療を行いつつ、身体のバランスを整えるような治療を行います。敗血症が心配な人や治療したい人は、感染症内科・救急科を受診して下さい。
敗血症について
敗血症の症状
敗血症の検査・診断
- 血液検査
炎症 の程度、感染の有無を調べる- 病原体が何であるかを調べる
敗血症の治療法
感染症 の原因となっている病原体によって治療薬は異なる細菌 :抗菌薬 ウイルス :抗ウイルス薬- 有効な抗ウイルス薬がないウイルスも多い
真菌 :抗真菌薬- 寄生虫:抗寄生虫薬
- 全身の
炎症 を抑えるためにトシリズマブという薬が使われることがある - 特に
免疫 機能が落ちている際は、病原体へ感染しないようにすることが大切 - 発見が遅れるほど
予後 は悪い
敗血症に関連する治療薬
アミノグリコシド系抗菌薬
- 細菌のタンパク質合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
- 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
- タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
- 本剤は細菌のリボソームにおけるタンパク質合成を阻害して抗菌作用をあらわす
- 薬剤によって抗菌作用の範囲に違いがあり、淋菌(淋菌感染症の原因菌)やMRSA(MRSA感染症の原因菌)などに抗菌作用をあらわす薬剤もある
ペニシリン系抗菌薬
- 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌に殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
- 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
- 細菌の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
- 本剤は細菌のPBPに作用し細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をあらわす
- 同じペニシリン系でも薬剤によって抗菌作用の範囲が大きく異なる場合がある
- 天然型ペニシリン、アミノペニシリン、緑膿菌に対して抗菌作用を有するペニシリンなどがある
グリコペプチド系抗菌薬
- 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌を殺すことで抗菌作用をあらわす薬
- 細胞壁という防御壁をもつ種類の細菌は、細胞壁が作れないと生きることができない
- 細胞壁を構成するタンパク質にペプチドグリカンというものがある
- 本剤はペプチドグリカンが生成される前段階の物質に作用し細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をあらわす
- 本剤は特にMRSA感染症などに対して有用とされる抗菌薬
敗血症の経過と病院探しのポイント
敗血症が心配な方
敗血症とは、難しそうな病名です。しかし、敗血症は一言でいえば「重症化した感染症のこと」というシンプルな概念です。
通常の感染症は、肺炎なら肺に菌が、膀胱炎なら膀胱に菌がいるという状態です。そのまま治ってしまえば良いのですが、放置すると血管を介して菌が全身に広がることになります。こうして血液の中にも菌が広がって炎症を起こしていることを敗血症と呼ぶのです。
敗血症では重篤な状態になり、緊急入院による治療が必要です。敗血症を起こす感染症として、尿路感染症、肺炎、胆管炎などが多いのですが、発熱、全身のふるえ、悪寒だけでなく、血圧低下や意識障害を起こすこともあり、緊急の受診が必要です。
敗血症の治療が行われるのは、救急科、内科、感染症科、または事前に診断されていた敗血症の原因となった感染症に則した科になります(例えば肺炎ならば呼吸器内科など)。しかし、敗血症は緊急性が高い疾患であるため、救急車を呼びすぐに受診する必要があります。その際には救急科に搬送となるため、最初に救急医の診察を受ける方が多いのではないかと思います。このような重篤な疾患であるため、基本的には総合病院の受診が望ましいです。最初にかかりつけのクリニックを受診された方は、診療情報提供書(紹介状)を作成してもらい、速やかに総合病院を受診しましょう。一般的な救急科があれば、大学病院や救命救急センターなど、特殊な大病院でなければ治療できないわけではありません。実際には救急車で搬送される場合が大半で、救急隊は、近さや病院の専門性を考慮した上で、適切な病院を判断し案内してくれます。希望にあった、希望の先生がいる病院を選ぶというよりも、対応可能な病院を速やかに受診することが大切です。
敗血症の診断は、問診、診察、血液検査、血液中の細菌検査、画像検査を使用して行います。感染源がどこにあるか調べるときは造影CTを使用することもあり、基本的には総合病院での対応になります。診断がつき次第、または診断を進めながらすぐに治療を開始します。
敗血症でお困りの方
敗血症治療の基本は抗菌薬です。一刻も早く抗菌薬を開始することが大切であり、診断をつける前から敗血症を疑った段階で抗菌薬を開始します。原因の細菌が判明すれば、それにあった抗菌薬に適宜変更していきます。また、感染源を除去するために、外科的な処置が必要になることもあります。
敗血症の入院期間は、点滴による抗菌薬の必要な期間、本人の状態が改善しているかなどを合わせて判断します。適宜主治医に相談して確認しましょう。点滴による抗菌薬の終了後は、内服による抗菌薬の継続を行うこともあり、その場合退院後も何度か定期受診が必要です。
ご自身では軽い風邪や膀胱炎だと思っていても、敗血症に進行することがあります。辛いと感じた時には、早めの受診を心がけると良いでしょう。