かんこうへん
肝硬変
肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで、肝臓が線維化(肝細胞に炎症が繰り返される影響で組織が硬くなって機能を失うこと)した状態
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最終更新: 2022.06.20
肝硬変の基礎知識
POINT 肝硬変とは
肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで、肝臓が硬くなって機能を失ってしまっている状態です。C型肝炎・B型肝炎・アルコール性肝障害・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などが肝硬変の原因になります。主な症状はだるさ・食欲低下・黄疸(皮膚や目が黄色くなる変化)・むくみなどになります。 症状や身体診察に加えて、血液検査・画像検査を用いて診断します。診断が難しい場合には肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べる検査(肝生検)を行うこともあります。肝硬変を根治する治療はありませんので、症状を和らげる治療(対症療法)が中心になります。また、肝細胞がんや食道静脈瘤といった重篤な病気を引き起こすことが多いため、これらが出現しないかを定期的に検査で見ていくことも重要になります。肝硬変が心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。
肝硬変について
肝硬変の症状
- 初期には症状が出ないことが多いが、進行した場合には以下の様な症状が生じる
- 食欲不振
- だるさ、疲れやすさ
- 息切れ
- 体重の変動(
腹水 による体重増加や、全体的な痩せなど) - 全身の
むくみ - 手の震え
黄疸 (皮膚や目が黄色くなる)- 腹水が溜まって下腹部が大きくなる
- 皮膚表面の
毛細血管 が目立つようになる - 手のひらが赤くなる
- 男性でも乳房が大きくなる
- 睾丸が小さくなる
- 肝性脳症(睡眠リズムが崩れる、受け答えがおかしくなる、意識がもうろうとする)
肝硬変の検査・診断
- 画像検査:肝臓の形、大きさや、
腫瘍 の有無を調べる腹部超音波検査 腹部CT検査 腹部MRI 検査
- 血液検査
- 肝炎
ウイルス 感染の有無を調べる - 肝
酵素 (AST、ALT、γ-GTPなど)の異常やその程度を調べる
- 肝炎
腹腔鏡 カメラ を通して直接肝臓の状態を観察する
- 肝
生検 - 慢性肝炎と肝硬変の区別のために行われることがある
肝硬変の治療法
- 主な治療
- 肝硬変そのものに対する根本的な治療薬はない
- それ以上進行させないよう、生活習慣や食生活の工夫をすることと、急激な全身状態悪化への
対症療法 (症状を和らげる治療)が中心となる 合併症 の確認とその治療- 腹水や
黄疸 が一般的な治療によって改善しない場合には、肝移植手術が行われることもある - お腹にたまった腹水を抜き出して、治療に使うことがある(CARTと呼ばれる)
- 悪化の予防
- 塩分を控えたバランスのよい食生活を送る
- 禁酒する
- 感染の予防
- 感染にかかりやすくなるので、特に手洗いやうがいを徹底する
- 高度の肝硬変であっても、日常生活を送りながら数年以上生きる人もいる
肝硬変に関連する治療薬
肝不全用アミノ酸製剤
- 体内にBCAAなどのアミノ酸を補充しアミノ酸バランスを整えることで、肝性脳症の症状や肝障害における低栄養状態などを改善する薬
- 肝障害による肝機能低下に伴い体内のアンモニアの蓄積、栄養分であるアルブミンの不足などがおこり、血液中のアミノ酸バランスも崩れる
- 肝機能が低下した状態では分岐鎖アミノ酸(BCAA)というものが不足しがちになる
- BCAA(ロイシン、イソロイシン、バリン)にはアンモニアを解毒する作用などがある
- 本剤の中にはアミノ酸の他に、ビタミンやエネルギーなどを補うことができる製剤もある
高アンモニア血症治療薬(ラクツロース製剤、ラクチトール製剤)
- 腸内で酸性度を高め腸管でのアンモニア産生や吸収などを低下させ血液中のアンモニアを低下させる薬
- 肝機能の低下により血液中のアンモニアが増加し脳などへ移行することで意識障害や運動障害などがおこる場合がある
- 腸内の酸性度が高い(pHが低い)とアンモニアの腸管からの吸収が低下する
- 本剤は薬剤成分(ラクツロースやラクチトール)が腸内細菌により分解され酸を生成し酸性度を高める作用をあらわす
- 本剤の中でラクツロースは薬剤のもつ緩下作用(排便を緩やかに促す作用)などにより排便改善などで使用する場合もある
リファキシミン(高アンモニア血症治療薬)
- アンモニアを産生する腸内細菌に作用し血液中のアンモニアを減らすことで、肝性脳症の症状を改善する薬
- 肝硬変などの肝障害による合併症のひとつに、意識障害などがあらわれる肝性脳症がある
- 肝性脳症の要因のひとつに血液中のアンモニア濃度の過剰な上昇がある
- 本剤はアンモニアを産生する腸内細菌に対して抗菌作用をあらわす
- 本剤は薬剤成分が腸管から吸収されにくい性質(難吸収性)を持つ(この性質により、成分が腸管内に留まり腸内細菌に対して作用しやすくなっている)