かんこうへん
肝硬変
肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで、肝臓が線維化(肝細胞に炎症が繰り返される影響で組織が硬くなって機能を失うこと)した状態
12人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2022.06.20

肝硬変の基礎知識

POINT 肝硬変とは

肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで、肝臓が硬くなって機能を失ってしまっている状態です。C型肝炎・B型肝炎・アルコール性肝障害・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などが肝硬変の原因になります。主な症状はだるさ・食欲低下・黄疸(皮膚や目が黄色くなる変化)・むくみなどになります。 症状や身体診察に加えて、血液検査・画像検査を用いて診断します。診断が難しい場合には肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べる検査(肝生検)を行うこともあります。肝硬変を根治する治療はありませんので、症状を和らげる治療(対症療法)が中心になります。また、肝細胞がんや食道静脈瘤といった重篤な病気を引き起こすことが多いため、これらが出現しないかを定期的に検査で見ていくことも重要になります。肝硬変が心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。

肝硬変について

  • 肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで、肝臓が線維化(肝細胞に炎症が繰り返される影響で組織が硬くなって機能を失うこと)している状態
    • 肝臓全体が硬くなることで表面がでこぼこになる
    • 肝臓の機能が著しく低下する
  • 肝臓に長期的にダメージが加わる病気が原因となる
  • C型肝炎が原因の肝硬変が最多(50%)
  • 患者数は全国で40-50万人前後と推定されている
    • そのうち60%が男性である
    • 肝硬変による死者数は年間1-2万人
  • 肝硬変になると肝細胞がん食道静脈瘤を起こしやすいので注意が必要である
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肝硬変の症状

  • 初期には症状が出ないことが多いが、進行した場合には以下の様な症状が生じる
    • 食欲不振
    • だるさ、疲れやすさ
    • 息切れ
    • 体重の変動(腹水による体重増加や、全体的な痩せなど)
    • 全身のむくみ
    • 手の震え
    • 黄疸(皮膚や目が黄色くなる)
    • 腹水が溜まって下腹部が大きくなる
    • 皮膚表面の毛細血管が目立つようになる
    • 手のひらが赤くなる
    • 男性でも乳房が大きくなる
    • 睾丸が小さくなる
    • 肝性脳症(睡眠リズムが崩れる、受け答えがおかしくなる、意識がもうろうとする)
症状の詳細

肝硬変の検査・診断

  • 画像検査:肝臓の形、大きさや、腫瘍の有無を調べる
    • 腹部超音波検査
    • 腹部CT検査
    • 腹部MRI検査
  • 血液検査
    • 肝炎ウイルス感染の有無を調べる
    • 酵素(AST、ALT、γ-GTPなど)の異常やその程度を調べる
  • 腹腔鏡
    • カメラを通して直接肝臓の状態を観察する
  • 生検
    • 慢性肝炎と肝硬変の区別のために行われることがある
検査・診断の詳細

肝硬変の治療法

  • 主な治療
    • 肝硬変そのものに対する根本的な治療薬はない
    • それ以上進行させないよう、生活習慣や食生活の工夫をすることと、急激な全身状態悪化への対症療法(症状を和らげる治療)が中心となる
    • 合併症の確認とその治療
      • 肝臓がん:肝機能に応じて手術、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、化学療法など
      • 食道静脈瘤:食道の静脈が蛇行して破れやすくなる状態、出血の危険がある場合には内視鏡治療を行うこともある
      • 腹水:塩分制限、利尿薬内服、アルブミン製剤静注、腹水穿刺など
      • 肝性脳症:原因となる脱水や感染の治療、分岐鎖アミノ酸製剤、ラクツロースなどによる便秘の解消
      • 低栄養状態:適切な栄養バランスの食事、分岐鎖アミノ酸製剤など
    • 腹水や黄疸が一般的な治療によって改善しない場合には、肝移植手術が行われることもある
    • お腹にたまった腹水を抜き出して、治療に使うことがある(CARTと呼ばれる)
  • 悪化の予防
    • 塩分を控えたバランスのよい食生活を送る
    • 禁酒する
  • 感染の予防
    • 感染にかかりやすくなるので、特に手洗いやうがいを徹底する
  • 高度の肝硬変であっても、日常生活を送りながら数年以上生きる人もいる
    • 合併症(肝臓がん食道静脈瘤)は命に関わるため、できるかぎりの予防や早期発見などの注意が必要
治療法の詳細

肝硬変に関連する治療薬

肝不全用アミノ酸製剤

  • 体内にBCAAなどのアミノ酸を補充しアミノ酸バランスを整えることで、肝性脳症の症状や肝障害における低栄養状態などを改善する薬
    • 肝障害による肝機能低下に伴い体内のアンモニアの蓄積、栄養分であるアルブミンの不足などがおこり、血液中のアミノ酸バランスも崩れる
    • 肝機能が低下した状態では分岐鎖アミノ酸(BCAA)というものが不足しがちになる
    • BCAA(ロイシン、イソロイシン、バリン)にはアンモニアを解毒する作用などがある
  • 本剤の中にはアミノ酸の他に、ビタミンやエネルギーなどを補うことができる製剤もある
肝不全用アミノ酸製剤についてもっと詳しく

高アンモニア血症治療薬(ラクツロース製剤、ラクチトール製剤)

  • 腸内で酸性度を高め腸管でのアンモニア産生や吸収などを低下させ血液中のアンモニアを低下させる薬
    • 肝機能の低下により血液中のアンモニアが増加し脳などへ移行することで意識障害や運動障害などがおこる場合がある
    • 腸内の酸性度が高い(pHが低い)とアンモニアの腸管からの吸収が低下する
    • 本剤は薬剤成分(ラクツロースやラクチトール)が腸内細菌により分解され酸を生成し酸性度を高める作用をあらわす
  • 本剤の中でラクツロースは薬剤のもつ緩下作用(排便を緩やかに促す作用)などにより排便改善などで使用する場合もある
高アンモニア血症治療薬(ラクツロース製剤、ラクチトール製剤)についてもっと詳しく

リファキシミン(高アンモニア血症治療薬)

  • アンモニアを産生する腸内細菌に作用し血液中のアンモニアを減らすことで、肝性脳症の症状を改善する薬
    • 肝硬変などの肝障害による合併症のひとつに、意識障害などがあらわれる肝性脳症がある
    • 肝性脳症の要因のひとつに血液中のアンモニア濃度の過剰な上昇がある
    • 本剤はアンモニアを産生する腸内細菌に対して抗菌作用をあらわす
  • 本剤は薬剤成分が腸管から吸収されにくい性質(難吸収性)を持つ(この性質により、成分が腸管内に留まり腸内細菌に対して作用しやすくなっている)
リファキシミン(高アンモニア血症治療薬)についてもっと詳しく

肝硬変が含まれる病気

肝硬変のタグ

肝硬変に関わるからだの部位