にょうろかんせんしょう
尿路感染症(総論)
腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎といった、尿の通り道に炎症が生じる感染症の総称
10人の医師がチェック 93回の改訂 最終更新: 2021.02.10

尿路感染症の治療:抗菌薬治療・尿のドレナージ・入院の必要性について

尿路感染症は主に細菌感染が原因です。細菌感染に対しては抗菌薬を用いた治療が有効です。尿路感染症は尿路が閉塞することでも起こるので、抗菌薬治療とともに尿路の閉塞に対する治療も必要なことがあります。

1. 尿路感染症の治療はどのようにして行うのか?

尿路感染症の治療にはどのようなものがあるのでしょうか。尿路感染症は主に細菌による感染症です。細菌による感染に対しては抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使った治療が効果的です。

抗菌薬以外にも治療が必要なことがあります。尿路感染症の原因の一つに尿の流れの停滞があります。停滞した尿は感染源になりえます。このため尿の停滞が尿路感染症の原因になっている場合には尿を身体の外に出す治療を行います。この治療を尿のドレナージといいます。ドレナージは体内に貯留した液体を身体の外に出す治療のことです。尿路感染症が進行するとのたまりをつくることもあります。膿を出すことにもドレナージという言葉を用います。

2. 尿路感染症に対する抗菌薬治療

尿路感染症は、尿の通り道に起こる感染症の総称で、腎盂腎炎(じんうじんえん)や膀胱炎(ぼうこうえん)、尿道炎前立腺炎が尿路感染症に含まれます。いずれも主な原因は細菌感染です。

尿の通り道に起こる感染症ということで一つのグループに分類されますが、それぞれで特徴は異なります。臓器によって感染を起こしやすい細菌が違うために治療で使う抗菌薬も病気ごとに異なります。ここでは腎盂腎炎膀胱炎尿道炎前立腺炎に分けて説明します。

抗菌薬治療の解説を読む前に知っておきたいこと

尿路感染症に対して抗菌薬による治療が行われるとその効果とともに症状は良くなっていきます。ただし注意してほしいことが一つあります。症状が良くなったからといって、尿路感染症が治ったとは限らないということです。

症状が良くなると「もう病気は治った」と自己判断して薬を飲むのをやめてしまう人がいます。これはよくありません。治療期間に満たない前に薬をやめてしまうと細菌が再び増殖をして症状がぶり返してしまうこともありますし、中途半端な治療のために細菌が抗菌薬に対して耐性を獲得して薬が効かなくなることもあります。耐性を獲得した耐性菌に対する治療は難しくなります。

抗菌薬の投与期間は、完治の確率が高くなるように考慮された治療に必要な期間です。症状がよくなっていても抗菌薬はしっかりと定められた治療期間飲みきることが大切です。

耐性菌などについて更に詳しく知りたい人は「抗菌薬と耐性菌との関係の解説コラム」も合わせてお読みください。

腎盂腎炎

腎盂腎炎は病気の深刻度によって用いる抗菌薬の種類が少し異なります。腎盂腎炎は血管の中に細菌が入り込んで全身に広がる菌血症という状態にもなることがあるので、かなり深刻な状態では抗菌薬を2つ用いることがあります。

以下の抗菌薬は感染を起こしている細菌が確定していない状態で用いる抗菌薬です。患者さんの背景や短時間で結果がわかる塗抹検査などをもとにして定めます。検査を提出してから数日後に判明する培養検査で原因となっている細菌の種類がわかります。培養検査の結果をもとにして最も効果のある抗菌薬に変更することがあります。

腎盂腎炎の治療に用いる抗菌薬の例】

  • 重症ではない場合
    • レボフロキサシン(クラビット®など)
    • シプロフロキサシン(シプロキサン®など)
    • ST合剤(バクタ®など)
  • 重症の場合
    • セフトリアキソン(ロセフィン®など)
    • レボフロキサシン(クラビット®など)
    • シプロフロキサシン(シプロキサン®など)
    • タゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン®など)
    • メロペネム(メロペン®など)
  • 特に重症の場合
    • 重症で用いる薬にゲンタマイシンもしくはアミカシンを追加して計2剤で治療

腎盂腎炎の治療に用いる抗菌薬の例について紹介しました。

抗菌薬を選ぶときには細菌検査の結果や患者さんの状態、背景(抱えている持病など)などから総合的に判断することになります。

腎盂腎炎の抗菌薬治療については「腎盂腎炎(腎盂炎)の治療」や「感染症治療薬ガイド」で詳しく紹介しているので合わせて参考にしてください。

膀胱炎

膀胱炎大腸菌など腸にいる細菌が原因になることが多く、それに合わせた抗菌薬を選びます。膀胱炎の場合は、腎盂腎炎と異なり培養検査の結果が出る前に治っていることも多いので以下の抗菌薬で治療を完遂するこもあります。なかなか治らない膀胱炎に関しては培養検査を基にして最適な抗菌薬を選び直します。

膀胱炎の治療に用いる抗菌薬の例】

  • 女性である、高齢者ではない、尿路に異常がない
    • ST合剤(バクタ®など)
    • セファレキシン(ケフレックス®など)
    • セファクロル(ケフラール®など)
    • セフォチアム(パンスポリン®など)
  • 上記に該当しない女性
    • ST合剤(バクタ®など)
    • アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®など)
    • セファレキシン(ケフレックス®など)
    • セファクロル(ケフラール®など)
    • セフォチアム(パンスポリン®など)
    • レボフロキサシン(クラビット®など)
    • シプロフロキサシン(シプロキサン®など)
  • 妊娠中の場合(シプロフロキサシンやレボフロキサシンは使わない)
    • アモキシシリン(サワシリン®など)
    • アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®など)
    • セファレキシン(ケフレックス®など)
    • セフォチアム(パンスポリン®など)
    • セファクロル(ケフラール®など)
  • 男性の場合
    • ST合剤(バクタ®など)
    • シプロフロキサシン(シプロキサン®など)
    • レボフロキサシン(クラビット®など)

膀胱炎は女性に多く、妊娠中にも注意が必要な病気です。妊娠中は赤ちゃんへの影響を考えて使えない抗菌薬もあるので注意が必要です。

膀胱炎に用いる抗菌薬は抗菌薬治療薬ガイドの膀胱炎でも解説しているので参考にしてください。

尿道炎

尿道炎の治療に用いる抗菌薬について解説します。尿道炎のほとんどは、淋菌やクラミジアなどが原因であり、性行為でうつるいわゆる性病です。尿道炎の抗菌薬治療の例は以下のようなものがあります。

尿道炎に対する抗菌薬治療の例】

  • 淋菌性尿道炎に対する抗菌薬の処方例
    • セフトリアキソン(ロセフィン®など)
  • クラミジア尿道炎に対する抗菌薬の処方例
    • アジスロマイシン(ジスロマック®など)
    • ドキシサイクリン(ビブラマイシン®など)
    • ミノサイクリン(ミノマイシン®など)
    • レボフロキサシン(クラビット®など)
  • 淋菌とクラミジアの両方の感染が疑われるときの処方例
    • セフトリアキソン(ロセフィン®など)とアジスロマイシン(ジスロマック®など)

尿道炎に用いる抗菌薬は抗菌薬治療ガイドの淋菌性尿道炎クラミジア尿道炎でも解説しているので参考にしてください。

これらの抗菌薬による治療は治療期間を守ることやパートナーも治療することなどを守ることでその効果を十分に得ることができます。しかし注意点を守らないといつまでも治らなかったりします。治療開始前に医師からの説明を十分に理解して適切な使い方を心がけてください。治療において守ってほしい注意点は、「尿道炎の治療」でも解説しているので活用してみてください。

前立腺炎

前立腺は男性にしかない臓器です。前立腺は尿が流れる臓器ではないのですが、射精管を介して尿道につながっています。尿中に細菌がいると射精管から前立腺に入り込んで前立腺炎を起こします。前立腺炎に対する抗菌薬治療の例は以下のようなものです。

前立腺炎に対する抗菌薬治療の例】

  • 大腸菌などが原因の場合
    • シプロフロキサシン(シプロキサン®など)
    • レボフロキサシン(クラビット®など)
    • ST合剤(バクタ®など)
  • クラミジアや淋菌が原因の場合
    • セフトリアキソン(ロセフィン®など)+ドキシサイクリン(ビブラマイシン®など)

前立腺炎は、大腸菌などが原因になることが多いのですが、若年男性を中心に淋菌やクラミジアが原因になることもあり、淋菌やクラミジアが原因の場合にはセフトリアキソンとドキシサイクリンを用いて治療します。

前立腺炎に用いる抗菌薬は抗菌薬治療薬ガイドの前立腺炎でも解説しているので参考にしてください。

3. 尿の流れを改善する治療:尿のドレナージ

尿の流れの停滞は尿路感染症の原因になります。尿の停滞が尿路感染症の原因になっている場合には抗菌薬の投与とともに感染が起きている尿を体の外に出す治療が必要です。たまった尿を身体の外に出す治療を尿のドレナージと言います。ドレナージは体内に貯留した液体を体の外に出す治療のことです。尿のドレナージには主に以下の4つの方法があります。

  • 尿のドレナージの方法と使い分け
    • (じんろう)
      • 腎盂と膀胱の間(尿管)で尿が停滞していて尿管ステントによる治療が困難なまたは不成功に終わった時
    • 尿管ステント
      • 腎盂と膀胱の間(尿管)で尿が停滞しているときに用いる
    • 膀胱瘻(ぼうこうろう)
      • 膀胱から尿道の間で尿が停滞してるときに用いる。尿道カテーテルの挿入が不成功に終わった時に行う
    • 尿道カテーテル
      • 膀胱から尿道の間で尿が停滞しているときに用いる

図:尿路の閉塞部位ごとに使われるドレナージの方法。

尿のドレナージの方法は閉塞が起こっている場所によって使い分けます。以下ではそれぞれの方法について解説します。

参考:標準泌尿器科

腎ろう

腎ろうは腎臓に針を刺して管を挿入して腎臓の一部の腎盂という場所にたまった尿を身体の外に出します。腎ろうは腎盂から膀胱の間に閉塞がある場合に用いられます。腎盂から膀胱の間の閉塞には尿管ステントも有効ですが、完全に尿管が閉塞している場合などでは尿管ステントによる治療が難しいので主に腎ろうが用いられます。

図:腎瘻を入れた様子。

腎ろうは、尿管を閉塞していた原因を治療した後に抜きます。腎ろうを入れていた場所は自然と閉じ、小さな傷が残ります。傷は時間の経過とともに目立たなくなります。腎ろうを入れる手順や様子などは「腎盂腎炎(腎盂炎)の治療」で解説しているので参考にしてください。

尿管ステント

ステントは管を内側から広げる道具です。尿管ステントは結石などによって尿管が狭くなっている場合に用いられます。狭くなった尿管にステントを入れると、尿管は広がり尿はステントの中を流れることができるので尿の流れを良くすることができます。

ステントは、膀胱鏡という内視鏡を使って挿入します。尿道から内視鏡を入れて尿管が膀胱に開口している部分(尿管口)まで内視鏡を進めます。内視鏡は道具を送り込めるようになっているので、ステントを内視鏡越しに尿管の中に入れます。尿管ステントを挿入すると尿の流れが再開して汚れた尿を身体の外に出すことができます。汚れた尿を身体の外に出すことは治療において大切です。

膀胱ろう

膀胱から先に尿が流れなくなることがあります。この状態を尿閉といいます。尿閉は前立腺が大きくなって尿道を塞いでしまう前立腺肥大症などが原因で起こります。

尿閉の治療は膀胱の中の尿を身体の外に出すことです。方法の一つに下腹部から膀胱に針を刺して管を挿入する膀胱ろうがあります。

膀胱ろうで尿閉を治療すると膀胱にたまった尿は下腹部から挿入した管を介して身体の外に出ます。膀胱ろうは、尿道を閉塞していた原因を治療して排尿が自然にできるようになると抜くことができます。膀胱ろうで管を挿入した傷はわずかに残ることがありますが、時間の経過とともに目立たなくなります。

尿道カテーテル

尿道カテーテルは尿の出口である外尿道口から膀胱まで通す管です。尿道カテーテルは、神経因性膀胱前立腺肥大症などが原因で膀胱から尿道の間で尿が流れなくなっている状況で有効です。

4. 尿路感染症は入院治療が必要?

尿路感染症は多くの場合、外来で治療が可能です。しかし、中には病状が重くて入院での治療が必要なこともあります。尿路感染症で入院治療することがあるのは、主に腎盂腎炎前立腺炎です。

腎盂腎炎や前立腺炎は入院を勧められることが多い

腎盂腎炎前立腺炎は入院して治療をすることが望ましいことがあります。なぜでしょうか。

腎盂腎炎前立腺炎は血管の中に細菌が侵入する菌血症になりやすいことが知られています。菌血症は重症で生命に危険を及ぼすこともあるので入院治療が必要です。菌血症に陥っているかどうかは、検査や全身状態などから判断します。

外来で治療が可能といわれた場合の注意点

病気の程度が軽い場合には、外来での治療が可能です。外来で治療するメリットは慣れた環境で過ごすことができて治療中のストレスも少なくて済むなどです。ただし外来治療中には以下の点に注意してください。

  • 治療を開始して数日たっても症状が悪化していると思った場合は再受診する
  • 吐き気などがあって水分や食事がとれない場合には無理をせずに入院を検討する

治療をしているにも関わらず症状が悪化している場合には、病気が進行したことなどを考えます。病気の状態が進行したかどうかを評価するには医療機関を受診しなければなりません。

水分や食事がとれない場合には基本的には入院して点滴で水分を補いながら治療することが勧められます。外来での治療を選んで帰った後に思った以上に水分や食事がとれないことはあり得る話です。水分や食事がとれない状況では脱水に陥ることもあり症状の悪化の原因にもなりえます。一度は外来治療を選択したものの思ったより状態がよくないと思ったときには入院治療に切り替えるのは妥当な選択です。

【参考】

標準泌尿器科

レジデントのための感染症診療マニュアル第3版

がん患者の感染症診療マニュアル第2版

Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition