[医師監修・作成]尿路感染症の検査:尿検査・細菌学的検査など | MEDLEY(メドレー)
にょうろかんせんしょう
尿路感染症(総論)
尿の通り道(腎臓、尿管、膀胱、尿道など)に炎症が生じる感染症の総称。腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎といった病気がこれに含まれる
10人の医師がチェック 106回の改訂 最終更新: 2022.03.05

尿路感染症の検査:尿検査・細菌学的検査など

尿路感染症が疑われた時の検査の目的は、尿路感染症と診断することや他の病気が隠れていないかを調べることなどです。また尿路のどこに感染が起きているかを診断することは治療につながるので重要です。

1. 診察や検査の目的

尿路感染症を疑ったときには診察や検査を行いますが、どんな目的があるのでしょうか。診察や検査の目的は主に4つです。

  • 尿路感染症を診断する
  • 感染を起こしている場所を調べる
  • 感染を起こしている細菌の種類を調べる
  • 感染が起こる背景の有無を調べる

以下ではそれぞれについて解説します。

尿路感染症を診断する

尿路感染症は尿の通り道である尿路に細菌などが感染して起こる病気です。尿路という言葉は広い意味をもち腎臓-尿管-膀胱(ぼうこう)-尿道のことを指します。

図:尿路にあたる臓器。

尿路感染症を診断するには以下のようなポイントに注目します。

  • 尿路感染症が原因と考えられる症状(発熱、排尿時痛など)がある
  • 尿の中に細菌がいる
  • 尿の中に白血球がある
  • 他に症状の原因になる病気がない

これらのポイントを診察をしたり検査を用いたりすることで調べていきます。

症状は問診や診察を用いて調べます。症状や診察で発熱や尿路感染症でよくみられる身体兆候があれば尿路感染症の疑いを強めることができます。ただし、尿路感染症の一つである腎盂腎炎(じんうじんえん)の症状は発熱や腰背部痛などですが、これは腎盂腎炎だけの症状ではありません。発熱は風邪でも現れますし、腰背部痛は筋肉や骨の病気でも現れます。つまり症状は尿路感染症が起こっている疑いを強める材料にはなりますが、症状だけでは診断することはできません。

検査で細菌が見つかれば、その細菌が症状の原因かもしれないと考える理由になります。また白血球は細菌を攻撃する役割があるので、白血球が出てくる時はそこに細菌がいる疑いがあります。尿路感染症では細菌や白血球が現れる場所を尿が流れるので、尿を調べることで情報が得られます。尿中に細菌や白血球が確認されれば腎盂腎炎膀胱炎が起きている可能性は高いと考えることができます。尿中の細菌や白血球は尿検査や細菌学的検査を用いて調べます。

ただし、尿路感染症の症状があって尿から細菌や白血球が確認できれば診断に十分かと言うと、そうとは限りません。人数が多くはないですが尿中の白血球や細菌は尿路感染症以外の病気でも見られることがあります。このために診察や検査を追加して他の病気が隠れていないかを確認します。尿路感染症が強く疑われると言われたけれどもまだいろんな場所を調べられるなと感じたら、それは医師が他の病気が隠れていないかを慎重に調べているのかもしれません。

尿路感染症だと思っていたら実は違う病気だったとしたら、適切な治療が遅れていることを意味します。診断は治療を進める上で大きな方向性を決めることになるのでとても重要です。どんな病気にも共通しますが、診断を正確に行うことが適切な治療につながります。

感染を起こしている場所を調べる

尿路感染症は、腎盂腎炎膀胱炎尿道炎前立腺炎の総称です。尿の流れ道ということで尿路感染症とひとくくりにすることもありますがそれぞれの場所で特徴があります。例えば腎盂腎炎膀胱炎は原因となる細菌は共通するものがありますが、重症度は大きく違います。

尿路のどの場所に感染が起きているかを調べることは治療をする上でとても重要です。感染が起きている場所をつきとめるには、診察に加えて必要に応じて画像検査を用います。

感染を起こしている細菌を調べる

尿路感染症は細菌が原因になることがほとんどです。細菌感染に対しては抗菌薬抗生物質)の投与が治療の鍵を握ります。しかし細菌の種類は一つではありません。このために細菌に合わせて抗菌薬も選択していく必要があります。原因となっている細菌に適していない抗菌薬は効果が不十分になることがあるからです。したがって尿路感染症の診断とともに原因となっている細菌の種類を調べることはとても大切です。

感染を起こしている細菌を調べるために後述する細菌学的検査を用います。

感染が起こる背景を調べる

尿路感染症は「どんな背景を持つ人に起こったか」によって単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症の2つに分けることができます。ややこしい話なのですがここでの尿路感染症には尿道炎は含まないことにします。ここでの尿路感染症は、膀胱炎腎盂腎炎のことを指します。

【尿路感染症の分類】

単純性尿路感染症 複雑性尿路感染症
閉経前の女性
妊娠していない
尿路に解剖学的な異常がない
単純性尿路感染症以外

尿路感染症(膀胱炎腎盂腎炎)を2つに分類する理由は治療の方針が異なることがあるからです。

  • 複雑性尿路感染症では抗菌薬の選択に工夫が必要なことがある
  • 複雑性尿路感染症では尿の流れを改善するために特殊な処置をすることがある

単純性尿路感染症に比べて複雑性尿路感染症は治療に注意が必要です。単純性尿路感染症は原因となった菌を予想しやすいです。これに対して複雑性尿路感染症の原因となる細菌は様々なので抗菌薬の選択に工夫が必要なことがあります。つまり複雑性尿路感染症は単純性尿路感染症に比べて治療が難しいことが多いのです。

単純性か複雑性かの区別には診察や必要に応じて画像検査を用います。

2. 診察

尿路感染症が疑われるときには問診と身体診察を組み合わた診察が行われます。診察によってどの部位に感染が起きているかや他の病気がないかなどについて絞りこむことができます。

問診

問診は自分が感じている症状を伝えたり、医師からの質問に対して答えることです。問診で症状などをチェックすることで症状の原因が尿路感染症かどうかの見当をつける役に立ちます。尿路感染症でも腎盂腎炎膀胱炎では病気の重症度が異なるので診断を行う方向付けという意味で問診は大切です。

【尿路感染症が疑われる場合に用いられる問診の例】

  • どんな症状か
    • 身体のどこに症状が出ているか
    • 痛みはあるか
  • いつ症状に気づいたか
  • 今までに治療した病気はあるか
  • 治療中の持病はあるか
  • 内服している薬はあるか
  • 性行為について

症状は具体的なほど医師に多くの情報を伝えることができます。余裕があれば診察を受ける前に症状を書き留めたりしてまとめておくとよいでしょう。

持病や過去に治療した病気、内服している薬などの情報は検査を進める上で大切です。持病の種類によっては避けた方が良い検査もあるからです。

内服中の薬は「お薬手帳」を利用するとスムーズにかつ正確に伝えることができます。医療機関を受診する際にはお薬手帳を携帯しておくのがおすすめです。

尿路感染症の中でも尿道炎前立腺炎は、淋菌やクラミジアなど性行為で感染する病原体が主な原因になります。最後に性行為を行った時期や不特定多数との性行為などの有無について答えてください。性行為についての質問は答えにくいこともあると思いますが、ありのままに正確に伝えることが診断・治療において大切です。

身体診察

身体診察では、医師が身体に触れたり聴診器を使ってお腹の音を聞いたりします。身体診察では問診から考えられる病気をさらに絞りこむことができます。身体診察では身体の隅々まで調べます。

尿路感染症の中でも腎盂腎炎前立腺炎では特徴的な診察の方法があるので解説します。

腎盂腎炎が起こっている側の背中を叩くと痛みが強くなることがあり、診察でも調べます。これは、側腹部の叩打痛(こうだつう)として医師の間ではよく知られています。叩打痛がない腎盂腎炎もあるので叩打痛の有無だけで診断はできないのですが、叩打痛があると腎盂腎炎の可能性が高くなったと考えることはできます。

前立腺炎を調べるときには、直腸に指を入れて前立腺を触ります。前立腺炎が起きている場合、直腸越しに前立腺を触ると患者さんは痛みを感じます。

尿路感染症は、尿路の感染症とひとくくりにされることもありますが、感染が起きている場所によって特徴があり、そのため治療法も異なります。身体診察は、尿路の中で感染が起きている場所を特定するのに役に立ちます。

3. 尿検査

尿検査は尿の内容を調べることができます。尿路感染症では、感染が起こっている場所を尿が通るので尿の中に異常が現れます。尿検査には尿定性検査と尿沈渣(にょうちんさ)の二つの種類があるのでそれぞれの特徴について説明します。

尿定性検査

尿定性検査は、10-30分程度で結果が出るので尿の中身を早く知りたい時には便利な検査です。尿定性検査は健康診断などでも用いられるので結果を目にしたことがあるかもしれません。尿定性検査で調べることができるのは以下のような項目です。

  • pH:酸性/アルカリ性の程度
  • 比重:重さと体積の比
  • 蛋白
  • ブドウ糖
  • 潜血反応:尿中に含まれる赤血球の程度
  • 白血球
  • ケトン体
  • ビリルビン
  • 亜硝酸塩

尿定性検査で白血球(細菌を攻撃する細胞)や亜硝酸塩(ある種の細菌が産生する物質)が見られると尿路感染症の疑いが強くなります。簡便で便利な尿定性検査ですが、検査の精度はあまり高くないため、病気であっても尿定性検査で異常がでなかったり、逆に病気がないのに尿定性検査で異常が出たりすることもあります。詳しく尿の内容を知るために尿沈渣を合わせて行うことが多いです。

尿沈渣

尿沈渣は、尿を機械で遠心分離して沈殿したものを顕微鏡やフローサイトメトリーという機械で観察する検査です。尿中の赤血球や白血球の量を知ることができ、細菌などを観察することもできます。尿を直接観察するので尿定性よりも信頼度が高い検査といえます。尿定性検査よりは結果がでるのに時間がかかります。

4. 血液検査

尿路感染症で血液検査を行う目的は、炎症の程度や全身状態を把握することです。血液検査は、尿路感染症でも発熱などがあり全身状態の把握が必要と判断されるときに用いられます。

尿路感染症で血液検査を行うときには以下のポイントに注目します。

  • 炎症の程度 
  • 臓器(腎臓・肝臓など)の機能 
  • 脱水の有無

血液検査をすることで全身の状態や病気の重症度を推測することができ治療方針を決めることに役立ったりします。病気の重症度などは炎症反応を判断材料にすることもできますし、

他では、脱水が著しいことがわかったときには点滴による水分補給をすることができます。また他の臓器の機能を把握することは、治療に用いる薬を選択するのに役立ちます。

5. 細菌学的検査

細菌学的検査は、細菌の種類を特定することができます。

尿路感染症は、主に細菌感染が原因で起こる病気です。細菌感染に対しては抗菌薬(抗生物質・抗生剤)が有効です。しかし抗菌薬は多くの種類があり、効果のある細菌がそれぞれ異なります。細菌の種類を調べるための細菌学的検査は、効果のある抗菌薬を選ぶために大切です。

塗抹検査(とまつけんさ)

塗抹検査は、細菌がいると考えられる検体(尿や分泌物など)をスライドガラスに薄く塗って顕微鏡で観察する検査です。尿路感染症では尿または尿道分泌物を検査に用いることが多いです。塗抹検査は10-30分程度で結果がわかるので治療のはじめから検査の結果を反映させることができます。

塗抹検査で細菌の名前やどの抗菌薬が適しているかまでは知ることはできません。しかし、グラム染色という方法を使えば、色の染まり具合(陽性か陰性か)と細菌の形(丸いか細長いか)から大きく4つに分類したもののうちどれに該当するかを知ることができます。4つの分類は以下のようになります。

  • グラム陽性球菌
  • グラム陽性桿菌
  • グラム陰性球菌
  • グラム陰性桿菌

球菌は丸い菌、桿菌(かんきん)は細長い菌という意味です。

尿路感染症を起こしている細菌がどのグループに属しているかを知ることは大切です。どのグループに属しているかがわかると効果が期待できる抗菌薬を選びやすくなります。

培養検査(ばいようけんさ)

培養検査は検体(尿や血液など)を細菌が育ちやすい環境下に置いて、検体に含まれている細菌を発育させて調べる検査です。尿路感染症では、尿を検体にすることが多いですが、細菌が血液の中に侵入する菌血症を起こしていると考えられる場合には血液の培養検査も行います。

培養検査は、塗抹検査に比べて細菌の数が増えるので細菌の名前や抗菌薬の効果まで知ることができます。つまり培養検査の結果を利用すると感染を起こしている細菌に対して最も効果が高いと考えられる抗菌薬を選ぶことも可能になるわけです。ただし培養検査の結果が出るまでには時間がかかります。培養検査の結果が出るまで治療しないで待っていることはできないので、効果がありそうな抗菌薬で治療を始めます。培養検査の結果が出たら、それまで治療に使っていた抗菌薬よりもよいものがあれば最適な薬に変更します。

6. 画像検査

画像検査では、感染を起こしている場所を特定したり他の臓器の病気が起こっていないかなどを調べることができます。画像検査にはいくつかありますが、患者さんの状況に合わせて必要な情報を得やすい検査を選びます。

超音波検査

超音波検査は、超音波という人間の耳には聞こえない音波を利用した検査です。超音波検査はエコー検査と呼ばれることもあります。

超音波を体に当てると、超音波の跳ね返りから体の中の様子を画像化して観察できます。超音波検査では膀胱や腎臓、前立腺の観察が可能で、尿路以外の臓器も観察することができます。身体への負担も小さいので診断時のみならず治療を開始してからも状況を把握するために用いられることがあります。

CT検査

CT検査は放射線を使った検査です。CT検査では超音波検査と同じように身体の様々な場所を観察することができ、超音波検査より多くの情報を得られます。

CT検査は放射線を使った検査なので、放射線の影響が出る恐れと、知ることができる情報の重みを鑑みて行うかどうかを判断します。