[医師監修・作成]多発性骨髄腫の人に知っておいてほしいこと | MEDLEY(メドレー)
たはつせいこつずいしゅ
多発性骨髄腫
血液がんの一種。免疫細胞の一種が異常ながん細胞となり、骨髄の中で増殖する状態。骨や免疫が弱くなったりする。
9人の医師がチェック 115回の改訂 最終更新: 2022.05.30

多発性骨髄腫の人に知っておいてほしいこと

多発性骨髄腫だといわれたら、さまざまな不安や疑問がわいてくると思います。ここでは、治療に際して注意して欲しいことや、再発の可能性、生存率などの気になることについてまとめています。

1. 多発性骨髄腫について知ってほしいこと

多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げていて、さまざまな種類の薬を組み合わせることで、長期にわたって病気を抑え込むことが可能になりました。それに伴って、多発性骨髄腫の人は病気と長く付き合っていく必要があります。ここでは、多発性骨髄腫について知っておきたいことを説明します。

多発性骨髄腫が完治することはあるのか

多発性骨髄腫は血液細胞のがんです。がんが1箇所でかたまっているわけではないので、手術でがん細胞すべてを取り除くことができません。そのため、治療では全身に効果がおよぶ化学療法を行って骨髄腫細胞の増殖を抑えますが、ある一定数の骨髄腫細胞は身体に残ってしまいます。このような理由で多発性骨髄腫は完治が難しく、病気の勢いがいったんおさまっても再発する人がいます。しかし、多発性骨髄腫に対してはさまざまな種類の薬が登場しており、これらを上手く使いながら病気をコントロールすることが可能です。

多発性骨髄腫の治療に入院は必要か

多発性骨髄腫の治療ではさまざまな薬剤を組み合わせて行います。薬には点滴が必要なものもあれば、内服薬や注射薬も多くあります。点滴の薬を使うことになった人の多くは入院が必要になりますが、長期の入院になることはあまりありません。内服薬や注射薬を使う人は入院はせず、定期的な外来通院で治療を受けることができます。

ただし、自家移植をする人では、点滴で強めの抗がん剤を使うため、2週間程度の無菌室の入院を含む合計1ヶ月程度の入院治療が必要です。

2. 多発性骨髄腫の治療中に気を付けてほしいこと

多発性骨髄腫の治療薬には、骨髄腫細胞に対する治療効果がある一方で副作用もあります。ここでは副作用とその対応について説明します。多発性骨髄腫の抗がん剤治療では以下のような副作用が現れます。

  • 感染症による発熱
  • 吐き気、食欲不振
  • 下痢
  • 口内炎

この他にも使用する薬剤によって特有の副作用がみられることがあります。治療前にお医者さんの説明をよく聞いて、体調の変化が出てきた時はすぐに相談するようにしてください。

感染症による発熱

多発性骨髄腫の治療を受けている人は、白血球というウイルス細菌などの外敵から身を守る血液の成分が少なくなります。その結果、健康な人より感染にかかりやすくなって、症状として発熱が現れることがあります。白血球の中でも「好中球」が減少した状態では、「発熱性好中球減少症」というすぐに治療を開始しなければいけない状態になってしまうことがあります。そのため、もし多発性骨髄腫の治療中に発熱した時には、速やかにお医者さんに相談してください。

吐き気、食欲不振

多発性骨髄腫の治療薬によって吐き気や食欲不振が起こることがあります。ひどい吐き気が現れた時は吐き気止めを使うことで軽減できることがあります。また、吐き気を起こしやすい薬を使う時は事前に吐き気止めを使うこともあります。例えば、自家移植のときに使うメルファラン(アルケラン®)という薬は吐き気を起こしやすいので、使い始める前に吐き気止めを服用します。

吐き気が強いと食事を摂れなくなってしまうことがあります。水分摂取ができていれば、食事が数回摂れなくても大きな問題になることはまずありません。しかし、水分摂取もできない状態になってしまった時は点滴が必要なので、お医者さんに相談してください。

下痢

化学療法の影響で腸の粘膜が傷つき下痢が出ることがあります。軽い下痢であれば、しばらくすれば自然に回復することが多いです。しかし、量や回数が多い下痢の時は脱水になることがあるので注意が必要です。また、多発性骨髄腫の治療をしている人は健康な人より免疫が弱くなっていることがあるので、ウイルスや細菌感染が原因で下痢になることもあります。もし、ひどい下痢が続くときは詳しい検査が必要かもしれないので、お医者さんに相談してください。

口内炎

口の中の粘膜が傷つくと口内炎ができやすくなります。口内炎の痛みは麻酔薬の入ったうがい薬や内服の鎮痛薬で和らげることができます。また、予防として歯磨きやうがいを丁寧に行うことが大事です。

3. 多発性骨髄腫の治療後に気を付けてほしいこと

多発性骨髄腫の治療をした後は、薬剤の影響で免疫機能が低下しています。そのため日常生活の中で「感染症の予防」と「感染症の早期発見」に気を配ることが大事です。

感染症の予防

多発性骨髄腫の治療後には身体の免疫が弱くなっていることが多いので、感染症の予防を心がけてください。具体的には外出時はマスクをし、帰宅したら手洗いを丁寧にするようにしてください。また、感染症の予防のため食事は火が通ったものを食べるのが無難です。食べてよいものか迷う時は、主治医の先生にその都度確認してみてください。

その他にできることとして予防接種があります。骨髄腫の人は感染症の予防のために肺炎球菌インフルエンザウイルスの予防接種を受けることがすすめられています。

注意すべき症状

多発性骨髄腫の治療後には身体の免疫が弱くなっていることが多いので、感染症(肺炎、胃腸炎など)の兆候を見逃さないようにしてください。症状には発熱、咳や痰、下痢などがあります。

また、化学療法で免疫が弱まることで、身体の中に潜伏している水痘帯状疱疹ウイルスが活性化し、帯状疱疹になることがあります。帯状疱疹は皮膚の発疹と、ピリピリした痛みが特徴です。(詳しい症状はこちらを参考にしてください。)もしこのような症状がでたときは、お医者さんに相談してください。

飲酒について

化学療法を行っているときや、骨髄移植後数ヶ月は飲酒を控えるほうが良いと考えられています。これは、アルコールの作用で、薬が効きすぎてしまったり、逆に効きにくくなってしまうことがあるからです。また、アルコールは骨髄の機能を抑えてしまうので、化学療法中や骨髄移植後は骨髄に負担をかけないように、お酒はやめるよう言われます。これらの場合以外でも、使用中の薬の種類によっては飲酒を控えたほうが良い場合があるので、飲酒をして良いかどうかはお医者さんに確認をしてください。

4. 多発性骨髄腫の余命、再発について

多発性骨髄腫と診断を受けた人は、「生存率」や「再発」について気にかかると思います。下記で「生存率」や「再発」について説明しますが、一人ひとりにそのまま当てはまるものではないことや、医療の進歩により現在の数字は下記と異なる可能性が高いことに留意しながら読み進めてもらえたらと思います。

多発性骨髄腫の人の生存率はどれくらいか

多発性骨髄腫の人の生存率は、病気の進行度を表すステージによって異なります。2019年4月現在使われているステージの分類には下記の2つがあります。

  • International Staging System(ISS)
  • Revised International Staging System(R-ISS)

次に、少し古いデータになりますが、それぞれの分類に沿って詳しく説明します。

■International Staging System(ISS)

これは血液検査でわかるβ2ミクログロブリンとアルブミンの値を元にステージを決める分類です。ステージによって、生存期間が以下のように異なります。

ステージ 基準 50%生存期間※
I 血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L
血清アルブミン≧3.5g/dL
62ヶ月
II I、III以外 44ヶ月
III 血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L 29ヶ月

※50%生存期間:それぞれのステージの患者のうち50%の人が生存できる期間のこと

ISS分類で計算されている50%生存期間は新しい薬(プロテアソーム阻害薬など)が使われる前のデータなので、現在では生存期間はより長いと予想されます。

■Revised International Staging System(R-ISS)

ISS分類を改良した分類がR-ISS分類です。これは、ISS分類の基準に、染色体検査でわかる染色体異常の有無と、血液検査でわかるLDHの値の2項目を加えたものです。

ステージ 基準 5年生存率
I ISS分類でステージ I かつ  
染色体異常なし かつ LDH値が正常
82 %
II I、III以外 62 %
III ISS分類でステージIII かつ
染色体異常ありまたは
LDH値が高値
40 %

※5年生存率:診断から5年後に生存している人の割合

ISS分類よりも新しい分類ではありますが、R-ISS分類でも数字を読むときに注意が必要です。多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げています。この数値は2015年に報告されたもので、ダラツムマブなどの新しい薬剤の効果などは含まれていません。現在ではこの数値よりも高い生存率になる可能性があります。

多発性骨髄腫の再発について

多発性骨髄腫では治療が完了した後に再発することが少なくありません。そのため、治療が終わった人は、定期的に血液検査や尿検査を受けて病気の状態を確認します。これらの検査でM蛋白などを計測することで、再発の兆候を早めに見つけられます。再発の時期は人それぞれで、半年くらいで再発する人もいれば、数年間再発しない人もいます。

再発が確認された人は再度化学療法を行います。年齢や患者さんの状態によっては、もう一度自家移植を行う人もいます。近年多くの治療薬が使われるようになり、これらの薬を使って長期的に病気をコントロールすることができるようになっています。

参考文献
日本血液学会/編, 造血器腫瘍診療ガイドライン2013, 金原出版, 2013
Palumbo A, et al. Revised International Staging System for Multiple Myeloma: A Report From International Myeloma Working GroupJ Clin Oncol. 2015; 33(26): 2863-9