抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)
細胞の増殖に必要なDNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬

抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)の解説

抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)の効果と作用機序

  • 細胞の増殖に必要なDNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAやRNAの合成が必要となる
    • 本剤は細胞内のDNAに結合するなどしてDNAやRNAの合成を阻害するなどして抗腫瘍効果をあらわす
  • 本剤は土壌などに含まれるカビなどの微生物由来の薬剤であり抗がん抗生物質などと呼ばれる

抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)の薬理作用

がん細胞は無秩序に増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し組織を壊したり、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖を行う。

細胞の増殖には遺伝情報が刻まれたDNAやRNAの合成が必要となる。

本剤は細胞内のDNAに結合するなどしてDNAやRNAの合成を阻害することなどによって抗腫瘍効果をあらわす殺細胞性抗がん薬となる。本剤はDNAやRNAの合成を阻害するが、その作用はDNA鎖を延長させる酵素(DNAポリメラーゼ)を阻害したり、DNA鎖の切断作用などによるものとなる。

本剤は土壌などに含まれるカビなどの微生物由来の製剤であり、抗がん性抗生物質(又は抗腫瘍性抗生物質)などと呼ばれる。

抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 食欲不振、吐き気・嘔吐、口内炎、下痢などがあらわれる場合がある
  • 皮膚症状
    • 脱毛、色素沈着発疹などがあらわれる場合がある
  • 精神神経系症状
    • 倦怠感、頭痛などがあらわれる場合がある
  • 投与時の注意
    • 静脈内投与により、血管炎、静脈炎などがあらわれる場合がある
    • 投与に際し薬液が血管外へ漏れた場合、注射部位に硬結、炎症などがあらわれる場合がある
  • 心機能障害
    • 薬剤の投与量などにもよるが心筋障害、心不全などがあらわれる場合がある
    • 動くと息が苦しい、疲れやすい、足がむくむ、急に体重が増えたなどがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 骨髄抑制
    • 白血球減少、好中球減少、血小板減少などがあらわれる場合がある
    • 突然の高熱、寒気、喉の痛み、手足に点状出血、あおあざができやすい、出血しやすいなどがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する

抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)の一般的な商品とその特徴

アドリアシン

  • ドキソルビシン(略号:DXR、ADR、ADM)製剤
  • 乳がんへのAC療法、非ホジキンリンパ腫へのCHOP療法など多くのがん化学療法で使用する
  • 制吐管理に関して
    • 本剤自体は中等度催吐性リスクに分類されるが、AC療法やCHOP療法のようにシクロホスファミドとの併用時には高度催吐性リスクとなる
      ・上記のように高度となる場合は通常、5HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、副腎皮質ホルモンの前投与を行う

ドキシル

  • ドキソルビシン(アドリアシンの成分)をリポソームという物質で包み、標的組織へ薬剤が届きやすいように造られた製剤
  • がん化学療法後に増悪した卵巣がんなどに使用する

ファルモルビシン

  • エピルビシン(略号:EPI)製剤
    • ドキソルビシンに比べ、心毒性(うっ血性心不全など)の軽減などを目指して開発された製剤
  • 悪性リンパ腫乳がん肝がんなどに使用する
    • 本剤自体は中等度催吐性リスクに分類され、吐き気止め(5HT3受容体拮抗薬)及び副腎皮質ホルモンなどの併用が推奨される
      ・多剤併用療法の場合、高度催吐性リスクに分類される場合もある

カルセド

  • アムルビシン(略号:AMR)製剤
  • 主に非小細胞肺がん、小細胞肺がんの治療で使われる
    • 通常、抗がん剤としては単剤で投与される
    • 本剤は中等度催吐性リスクに分類され、吐き気止め(5HT3受容体拮抗薬)及び副腎皮質ホルモンなどの併用が推奨される