ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。日本でも高齢化とともに患者数が急増している。
12人の医師がチェック 207回の改訂 最終更新: 2020.06.14

前立腺がんの原因:年齢や遺伝、生活習慣との関連と、予防について

前立腺がんは50歳以降の人に多くみられ、高齢になるほどかかりやすくなります。また、家族に前立腺がんにかかった人がいると発生しやすいことがよく知られています。

1. 前立腺がんと加齢は関係があるのか

前立腺がんは50歳以降の人に多く見つかります。 年齢を重ねるにつれて発見される頻度が上がっていき、65歳ごろから急激に前立腺がんが発見される人が多くなります。一方で20歳代や30歳代で前立腺がんになることはまれです。

2. 前立腺がんは遺伝するのか

前立腺がんの発病には遺伝が関係していると考えられています。親兄弟が前立腺がんにかかった人は、そうではない人と比べて前立腺がんが発生するリスクが2.4倍から5.6倍とされています。

近年の研究で前立腺がんの発生に関係する遺伝子の異常(変異)が発見されてきています。今後のさらなる研究により前立腺がんの予防や、一人ひとりに合わせた治療に応用されることが期待されています。 しかしながら、現在のところ前立腺がんの有効な予防法は確立されてはいません。前立腺がんに命を脅かされないためには早期発見・治療が重要です。前立腺がんを発症した父親や兄弟がいる人は定期的な検査などを検討してみてください。

3. 前立腺がんとの関係が気になるもの:タバコ(喫煙)・飲酒・性行為・乳製品

前立腺がんとの関連が調べられている身近な生活習慣や食品などについて説明します。

タバコ(喫煙)

最近の研究のまとめでは喫煙本数と年数が多いほど前立腺がんにかかるリスクが高くなるという報告が行われています。一方で前立腺がんの発生と喫煙の関連性は薄いという報告もあり、喫煙と前立腺がんの発生に関するはっきりとした関係性は不明です。
前立腺がんによる死亡に注目した欧米からの報告では、1日に25本吸う、喫煙歴が40年以上のようないわゆるヘビースモーカーは、前立腺がんによる死亡の危険性が上昇したとされます。

喫煙は肺がんに代表されるように多くのがんの発生リスクを上昇させ、がんだけでなく心臓や血管への悪影響も明らかになっています。喫煙はさまざまな健康被害を引き起こすものなので、一度禁煙に向き合ってみてください。とはいえ、一人で禁煙を達成するのは難しいことかもしれません。なかなか禁煙できないという人は「こちらのコラム」や「こちらのコラム」も参考にしてみてください。

アルコール(飲酒)

現時点では飲酒と前立腺がんに明らかな原因とは考えられていません。

アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドや、アルコールが性ホルモンに与える影響が前立腺がんのリスクになるという仮説が考えられています。しかしながら、大規模な調査においては前立腺がんと飲酒の関係については示されていません。

前立腺への刺激

排尿障害(尿が出にくくなること)、前立腺炎前立腺に起こる炎症)は前立腺を刺激し、前立腺がん発病リスクを上昇させる可能性があると考えられています。尿の出しづらさや、排尿時の痛みなどの症状ががある人は医療機関で相談してください。

射精(性行為)

射精と前立腺がんとの関係は明らかではありません。

射精というデリケートな生活スタイルについての調査は簡単にはできないので、検証が不十分な可能性があります。一方で、射精の回数が少ないと前立腺がんになりやすいとする報告もないわけではありません。
少なくとも前立腺がんを恐れて射精を控えることはなさそうです。

乳製品の摂取

前立腺がんの発生には男性ホルモンが強く関係しています。動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は血液中の男性ホルモンを増加させるので、前立腺がん発生のリスクを高めると考えられています。一方で、動物性脂肪食品の一つである乳製品の摂取が前立腺がんのリスクを上昇させるかは明確ではありません。

4. 前立腺がんは予防できるか?

前立腺がんには風邪のように人から人へうつる性質がありません。また、ウイルスが関連したがんでもありませんので、予防のためのワクチンなどは存在しません。一方で、前立腺がんの予防として食事療法や薬を飲む方法が試されています。

飲み薬による予防は可能なのか

薬を飲むことにより前立腺がんの予防ができるかという試みが行われており、次の薬に予防効果が期待されています

しかしながら、上記の薬で現在のところ前立腺がんを予防できたという確たる証拠を出せたものはありません。前立腺がんの予防目的で有効と言える薬はないのが現状です。 

食事療法による予防は可能なのか

前立腺がんの発生には人種や地域により大きな差があります。特に欧米人の前立腺がんの発生頻度はアジア人に比べて約10倍とされています。

また、人種だけではなく食事を含む環境も前立腺がんの発生に大きく関わると考えられています。過去に行われた研究によると、米国に移住した日本人の前立腺がんの発症率は日本に住む日本人と欧米人との中間程度だと報告されています。食事などを含む環境的な要因が前立腺がんの発生に大きく関わっていることを示している一つの例と考えられます。

次に食事と前立腺がんの発生について調べた研究を中心に説明していきます。

■大豆・イソフラボン

豆類及び大豆に含まれる大豆イソフラボンの摂取により、前立腺がんにかかる危険性を下げるという報告がありますが、どの程度摂取をすれば効果があるかという見解は定まっていません。

■緑茶

緑茶に含まれるカテキンは物資が含まれており、抗腫瘍効果があると考えられています。緑茶を1日1杯未満飲む人と5杯以上飲む人の比較を行ったところ、5杯以上飲んでいる人の方が前立腺がんの発症リスクが低かったとの結果が報告されています。今後、さらに研究が進むと効果がより明らかになるかもしれません。

■コーヒー

コーヒーは前立腺がんの予防効果があるという報告とないという報告があり、関連については不明確です。

■トマト:リコペン

リコペンはトマトに多く含まれる赤い色素で、抗酸化作用が強いとされています。リコペンの摂取量が多いほど前立腺がんの発生リスクが低下するという報告がいくつかりますが、明確な予防効果についてはまだはっきりとはしていません。

■避けるべき食事

極端な肉食などによる動物性脂肪の過量摂取は避けるべきと考えられます。動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は血液中の男性ホルモンを増加させるので、前立腺がん発生のリスクを高めると考えられています。ただし、常識的な範囲なら肉を食べても影響がないと考えられるので、極端に肉の摂取を減らす必要はないと考えられます。

前立腺がんになったときの食事の考え方について

前立腺がんの進行予防に効果のある食事は、現在のところ明らかにはなっていません。前立腺がんが見つかってからの食事は全身状態を整えるものであることが大事です。

前立腺がんと診断されてからは治療を考えることになります。前立腺がんの治療では手術、放射線治療やホルモン療法など、どの治療を行うにしても身体に負担がかかります。ベストな治療が受けられるよう、良いコンディションを整えることが大事になってきます。

例えば、もともと糖尿病がある人に前立腺がんが見つかったとします。手術療法を考えるときには、良好な血糖値を維持した状態でなければなりません。血糖値が高い状態で治療に望むと合併症が増えることは明らかになっています。また、ホルモン療法を行う際には糖尿病の悪化は避けられません。前立腺がんになったから、がんの進行を遅らせるというよりも、バランスの良い食事をとって体力をつけ、しっかりと治療を行えるようにすることが大事です。

参考:

前立腺がん診療ガイドライン
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
Br J Cancer. 2013;108:708-14
Cancer Res. 1998;58:442-447
Nutr Cancer. 2008;60:421-441
Br J Cancer. 1991;63:963-969