◆アメリカの長期データを解析
この研究は、アメリカの医療従事者を対象とした長期追跡データを解析することによって、射精の頻度が多い人と少ない人で、前立腺がんの発生しやすさに違いがあるかを検討しています。
研究期間の18年間に、対象者31,925人からの聞き取りにより、20歳から29歳のときと、40歳から49歳のときの射精頻度が調べられ、追跡によって前立腺がんが発生した数が集計されました。
◆射精が少ない人で前立腺がんが多い
データの解析から次の結果が得られました。
多変量解析において、前立腺がん発生率は、射精頻度が月間4回から7回のときと21回以上のときを20歳から29歳の射精頻度で比べるとハザード比0.81(95%信頼区間0.72-0.92、Ptrend<0.0001)であり、40歳から49歳の射精頻度で比べるとハザード比0.78(95%信頼区間0.69-0.89、Ptrend<0.0001)だった。関連は低リスクの前立腺がんによって主に生み出され、PSAのスクリーニングを受けているコホートに限っても同様であり、競合する死因によっては説明しにくいと思われた。
20歳から29歳のときで見ても、40歳から49歳のときで見ても、射精頻度が少ない人ほど、その後前立腺がんが発生する率は高くなっていました。主に危険度の低い種類(低リスク)の前立腺がんにこの違いが見られました。
前立腺がんの中でも、低リスクとされるものは死亡につながりにくく、治療をするべきではないと判断されることもしばしばあります。このため、前立腺がんを早期発見しようとする検査がどの程度必要かについては意見が分かれています。
しかし、低リスクの前立腺がんを減らす方法があれば前提が変わるかもしれません。
射精頻度は生活スタイルと深く関わっているので、この研究の結果だけを見て射精頻度を変えるべきと結論することはできませんが、男性ホルモンや生活習慣とがんの関係について何かのヒントを与え、効果的に前立腺がんを予防する方法の研究につながっていくかもしれません。
執筆者
Ejaculation Frequency and Risk of Prostate Cancer: Updated Results with an Additional Decade of Follow-up.
Eur Urol. 2016 Mar 28. [Epub ahead of print]
[PMID: 27033442]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。