2015.06.25 | ニュース

前立腺がんの検診は過剰医療なのか?アメリカでのPSAスクリーニング検査非推奨の効果

2013年のアメリカの実態

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology

前立腺がんの検診は過剰医療なのか?アメリカでのPSAスクリーニング検査非推奨の効果の写真

前立腺がんが過剰に診断されているという意見があります。前立腺がんには進行が遅く死因になりにくいものが多いのに対して、血液のPSAという検査値は敏感すぎ、治療しても生存期間を延ばすなどの効果が期待できない場合まで発見してしまう結果、リスクを伴う詳しい検査や治療を過剰に促すという説です。アメリカの公的機関がこの立場を示して以来、50歳以上の男性で前立腺がんの検査が減ったという調査結果が示されました。

◆アメリカの全国調査から

研究班は、2012年に米国予防医学作業部会(USPSTF)がPSAに基づく前立腺がんのスクリーニング(リスクが比較的高くないと考えられる人に行われる検査)を推奨しないという勧告を出した前後で、前立腺がんのスクリーニングが行われる頻度に変化があったかを調べました。

アメリカの全国的な健康調査であるNational Health Interview Surveyのデータから、2013年に40歳以上の男性に対して医師のもとで行われた前立腺がんのスクリーニングの情報を取り出し、2010年と比較しました。

 

◆50歳以上で検査減少

得られた情報の解析から次の結果が得られました。

スクリーニング率は50歳から59歳の男性(33.2%から24.8%に、P<0.01)、60歳から74歳の男性(51.2%から43.6%に、P<0.01)、75歳以上の男性(43.9%から37.1%に、P=0.03)では有意に減少した。

50歳以上の男性に対して行われたスクリーニングは、2010年に対して2013年では少なくなっていました

研究班はこの変化について「前立腺がんスクリーニングは、2012年のUSPSTFガイドラインがPSAに基づいたスクリーニングを非推奨としたのち、50歳を超える男性で有意に減少した」とまとめています。

 

USPSTFの見解には反対意見もあり、日本泌尿器科学会は2012年の勧告が案として公表された段階で「USPSTFの勧告(案)を今のわが国に適用することは適切でない」としています。

https://www.urol.or.jp/public/pca/america-prophylactic.html

検査を受けるかどうか、結果を見てどう対応するかは個人の価値観による部分もあります。検討されている方は、ご自身の健康上の背景と予想される結果について、医師とよく相談されることをお勧めします。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

National Prostate Cancer Screening Rates After the 2012 US Preventive Services Task Force Recommendation Discouraging Prostate-Specific Antigen-Based Screening.

J Clin Oncol. 2015 Jun 8 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26056181]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る