2017.04.04 | ニュース

女性は10年で13ミリシーベルト、CTの放射線被曝

5千人の研究データの解析から

from BMJ (Clinical research ed.)

女性は10年で13ミリシーベルト、CTの放射線被曝の写真

CTは体に放射線を当てます。放射線の量としてもレントゲン写真の数倍以上になります。肺がん検診の研究データから、CTは108人の肺がんを見つけるごとに1人のがんを発生させているという推計が報告されました。

イタリアの研究班が、肺がんの検診の研究で得られたデータを解析し、検診を受けた人の放射線被曝の量などを計算して、医学誌『BMJ』に報告しました。

この研究の対象者は、50歳以上の男女で喫煙歴があり、最近5年以内にがん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるを指摘されたことがなく、症状もない人が選ばれました。5,203人が参加しました。

対象者は10年間毎年1回の低線量CTX線(放射線)を用いて、体の内部を画像化して調べる検査を撮影され、一定基準で病気が疑われた場合に追加のPET-CT放射線を発する物質(放射性物質)を体内に入れて、特定の臓器や腫瘍にそれが集まる性質を利用して病気の有無や位置を調べる検査を撮影されました。

研究班は、参加者が低線量CTとPET-CTから被曝した放射線の量を推計し、また検査による被曝が発がんに関与した程度も推計しました。

 

集計の結果、参加者は10年間に合計で42,228回の低線量CT635回のPET-CTを撮影していました。
被曝した実効線量を10年分合計すると、男性の半数が9.3ミリシーベルト以上女性の半数が13.0ミリシーベルト以上でした。

259人の肺がんが診断されていました。被曝の量から推計すると、検査によって引き起こされた主ながんの数は2.4人に相当すると見積もられました。つまり、毎年の検査で108人の肺がんを発見するごとに、放射線を浴びせることによって1人のがんを発生させていると推計されました。

発がんの割合について、研究班は検診で肺がんを早期治療すれば生存率が高くなることを推計したうえで、「受け入れられる範囲」と評価しています。

低線量CTを使った肺がん検診ががんを増やしている可能性についての研究を紹介しました。

全体を平均して考えると、検診で肺がんを早期発見して治療する利益のほうが発がんのリスクよりも大きければ、検診は有益と言えることになります。

しかし、たとえ全体として有益でも、「がんに対策したい」と思って検査を受けたせいでがんができてしまった人から見れば、結果として有害だったということになります。そのリスクを受け入れてでも早期治療のチャンスが欲しいと思うかどうかは個人の価値観も関わることです。

さらに、肺がんを見つけるためのCTによる検診の効果は、まだ広く認められるには至っていません。

たとえば日本肺癌学会による『肺癌取扱い規約』(第8版)には、「低線量CT肺がん検診はいまだ有効性が十分に確立しているとは言えず,今後有効性を否定される可能性もある」「特に40歳未満の者には行ってはいけない」「低線量CTではない通常診断用CT検査は,被曝による不利益が大きく(低線量CTの約10倍,胸部X線検査 X線(放射線)によって撮影する画像検査の一種で、心臓や肺、骨などの状態を調べるために行われるの約100倍),健常人に対するスクリーニング病気の原因や程度ではなく、病気が有るか無いかをまず調べるための検査としての「検診」に用いるべきではないことを強調したい」と記載されています。そのため、多くの肺がん検診では胸部X線検査を行った結果疑わしい人にのみCT検査を追加するとしています。大腸がんを見つける便潜血検査などの確立された方法に比べると、肺がんを探すCT検査はまだ不明な部分が残っています。

 

検査はすればするほどいいものではありません。必要な人が必要な検査だけを利用できるのが望ましいことです。上に紹介した研究はあくまで推計ですが、検査による害が生まれる可能性もあることを十分考えに入れて、実際のデータを活かして利益を見積もらなければ、検査の目的に反する結果が出てしまう恐れもあります。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Exposure to low dose computed tomography for lung cancer screening and risk of cancer: secondary analysis of trial data and risk-benefit analysis.

BMJ. 2017 Feb 8.

[PMID: 28179230]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]