2016.10.28 | ニュース

新薬キイトルーダが肺がんにも効いた!非小細胞癌に既存薬より勝る効果

305人の試験で検証

from The New England journal of medicine

新薬キイトルーダが肺がんにも効いた!非小細胞癌に既存薬より勝る効果の写真

ノーベル賞候補とも言われる「PD-1」の解明は、最近のがん治療の中で大きな話題を呼んでいます。日本でもPD-1を標的にする薬が使われています。新たに肺非小細胞癌に対する効果の研究が行われました。

PD-1を標的とすることでがん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるを治療する、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の効果を調べた研究を紹介します。

 

体の中に異物が入ってきたとき、免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患のしくみが異物を攻撃することで、感染症何らかの病原体が引き起こす病気。細菌、ウイルス、真菌などが原因となることが多い。人から人へ直接うつらないものも含めた総称などが防がれます。免疫が間違って自分自身の体を攻撃してしまわないように、PD-1という物質が免疫をコントロールしています。

免疫にはがん細胞を攻撃する力もあるのですが、ある種のがん細胞は、PD-1に働きかけることで、免疫の攻撃をかわす能力を持っています。がん細胞が持っているPD-L1という物質が、PD-1を利用して免疫から逃れるために働いています。

ペムブロリズマブやニボルマブ(商品名オプジーボ)といった薬は、PD-1の作用を抑えることで、免疫ががん細胞を見逃すことなく攻撃するようにします。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)は日本では「根治切除不能な悪性黒色腫」(皮膚がんの一種)に対してすでに承認されています。

 

ここで紹介する研究は、次の条件を満たす人に対してペムブロリズマブの効果を調べています。

  • 肺がんの中でも非小細胞無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるという種類で、進行したがんがある
  • がん細胞の50%以上がPD-L1を持っている
  • 効果に影響する可能性のある特定の遺伝子変異を持っていない
  • 以前に治療を受けていない

305人が対象となり、ランダムに2グループに分けられました。

  • ペムブロリズマブを使って治療するグループ
  • プラチナ製剤と呼ばれる種類の、既存の抗がん剤悪性腫瘍(がん)に効果を発揮する薬剤。ただし、がん以外の良性疾患に用いられることもあるで治療するグループ

 

治療から次の結果が得られました。

無増悪生存期間の中央値はペムブロリズマブ群で10.3か月(95%信頼区間6.7から上限未達)、対して化学療法がんの治療の一種で、抗がん剤を使った治療の総称群で6.0か月(95%信頼区間4.2-6.2)だった(疾患進行または死亡のハザード比0.50、95%信頼区間0.37-0.68、P<0.001)。

ペムブロリズマブを使ったグループでは、半数の人が10.3か月以上の間、がんが進行することなく生存しました。プラチナ製剤を使ったグループでは、同様の期間が6.0か月でした。つまりペムブロリズマブを使うほうが、プラチナ製剤を使うよりも、がんの進行または死亡までが長くなりました。

副作用については次の結果でした。

[...]治療関連有害事象は全体としてペムブロリズマブ群のほうが頻度が少なく(発生した患者数で73.4% vs 90.0%)、グレード3、4、5の治療関連有害事象についても同様だった(26.6% vs 53.3%)。

プラチナ製剤のグループよりも、ペムブロリズマブのグループのほうが副作用が出た人が少なくなりました。

 

ペムブロリズマブによって、既存の薬に勝る結果が示されました。今後、非小細胞癌の治療にペムブロリズマブが加わるかもしれません。

10月24日には、米食品医薬品局(FDA)が非小細胞癌の一部に対してペムブロリズマブを承認しました。さらに10月25日、日本肺癌学会と日本肺がん患者連絡会が連名で塩崎恭久厚生労働大臣に宛てて、「ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)の一次治療適応の一刻も早い承認を要望いたします」と記した要望書を提出しました。

一方、ペムブロリズマブは別の面でも話題になっています。薬価と特許の問題は、ペムブロリズマブが今後使われるあり方に影響する可能性があります。

 

PD-1は多くの種類のがんに関係するため、PD-1を標的とする薬は画期的な治療になるのではないかと期待されています。そのひとつのニボルマブは、日本でも悪性黒色腫の一部、非小細胞癌の一部に対して使われているほか、腎細胞がん卵巣がんなどに対して有効とした報告があります。

一方、ニボルマブはきわめて高価な薬価でも話題になっています。もし現在の薬価のまま使われる場面が広がれば、日本の保険制度が危うくなるのではないかと懸念する声があります。10月14日に開かれた政府の経済財政諮問会議では、塩崎厚生労働大臣が例外的な薬価の引き下げに言及しています。

ペムブロリズマブがニボルマブのように高価な薬になれば、ペムブロリズマブもまた制度を圧迫する要因とみなされる可能性があります。

新しい治療を必要とする人に適切に届けるために、費用と効果の議論は避けて通れません。

 

10月24日に、ニボルマブ(商品名オプジーボ)の製造販売元である小野薬品工業が、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が特許を侵害しているとして、キイトルーダの製造販売元であるMSDを提訴しました。

キイトルーダもオプジーボと同じ抗PD-1抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするである点に対して、小野薬品工業と京都大学客員教授の本庶佑氏が共有している特許を侵害しているとの主張がなされています。

 

ペムブロリズマブが今後どのように使われるようになるかは、まさに動きつつある状況にかかっています。

肺がん治療中の人だけでなく、いつか肺がん患者になるかもしれないすべての人にとって、また保険制度の恩恵を受けているすべての日本人にとって、ペムブロリズマブをめぐる諸問題の動向は重大な可能性を含んでいます。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Pembrolizumab versus Chemotherapy for PD-L1-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer.

N Engl J Med. 2016 Oct 8. [Epub ahead of print]

[PMID: 27718847]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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