2017.08.25 | ニュース

「最初からキイトルーダ」、米学会が転移した肺がんの治療推奨を更新

ステージIV非小細胞肺癌に対する薬物療法のガイドライン

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology

「最初からキイトルーダ」、米学会が転移した肺がんの治療推奨を更新の写真

アメリカ臨床腫瘍学会が、ステージIVの非小細胞肺癌に対する薬物療法の推奨を更新し、条件に合えば免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ®)を最初から使うことなどを記載しました。

アメリカ臨床腫瘍細胞が増殖してできるこぶのようなもの。あまり悪さをしない良性腫瘍と、体に強い害を与えることの多い悪性腫瘍に分類される学会(ASCO)は、最近までの研究結果などをもとに、ステージがん等の進行の程度を示す言葉。がんの場合、大きさや広がり、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無などで決定され、治療方法に影響するIVの非小細胞肺癌に対する薬物療法について主治医や患者、家族などに勧める内容を更新しました。2015年以来の更新となりました。

 

非小細胞肺癌とは、肺がんの中でも小細胞がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあると呼ばれる種類のものを除く分類です。肺腺無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがある肺扁平上皮癌などが非小細胞肺癌に含まれます。

肺がんのステージIVは、がんが所属リンパ節体全体にある、免疫を担当する器官の1つ。感染や免疫異常、血液のがん、がんの転移などで腫れる以外の臓器に転移がん細胞がリンパ液や血流にのって、リンパ節や他の臓器にまで広がること。転移がある場合は進行がんに分類されることが多い遠隔転移がんが離れた他の臓器へ転移すること。転移の中でも、リンパ節転移と対比的に使われる用語)している状態です。遠隔転移があると、画像などで見えるがん以外にも見えない小さい転移が散らばっている可能性が高く、手術をしてもすべてのがんを取り去ることはできないと考えられています。

ステージIVの肺がんに対しては薬物療法が大きな役割を持ちます。薬は血液に乗って全身に行き渡るので、転移がある状態の治療としては理にかなっていると考えられます。

 

このガイドライン治療や検査の場面において、医療従事者や患者が、適切な判断や決断を下せるように支援する目的で体系的に作られた文章のことでは以下の薬の名前が挙げられています(一部をまとめます)。

  • 細胞傷害性抗がん薬

    • プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチンなど)

    • 第3世代抗がん剤悪性腫瘍(がん)に効果を発揮する薬剤。ただし、がん以外の良性疾患に用いられることもある(パクリタキセル、ペメトレキセドなど)

  • 分子標的薬

    • EGFR-TKI(アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ)

    • ALK-TKI(クリゾチニブなど)

    • 抗VEGF抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりする(ベバシズマブなど)

    • 免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)

上のほか、2017年8月時点で日本では未承認の薬も挙げられています。

薬ごとに違った特徴があり、適していると考えられる人も違います。

たとえばEGFR-TKIはがん細胞がEGFR感受性変異という遺伝子変異を持っている場合に有効です。そのほかALK再構成、ROS1再構成、PD-L1発現という遺伝子変異も薬の選びかたに関わります。

 

はじめて使う薬物療法(1次治療)として、PD-L1高発現(50%以上)があればペムブロリズマブ単剤、なければ細胞障害性抗がん剤を勧めるという点が今回の更新で加わりました。

ほかの推奨は2015年から引き継がれました。EGFR感受性変異、ALK再構成、ROS1再構成がある場合は対応する分子標的薬が推奨されました。

詳しくは「ステージIV非小細胞肺癌に対する薬物療法、ASCOガイドライン2017年版より」のページで紹介しています。

 

アメリカ臨床腫瘍学会のガイドラインの更新を紹介しました。

一般に、ガイドラインは医師や患者の判断を助けるために作られますが、どんな場合もガイドラインのとおりにしないといけないわけではありません。また、アメリカ臨床腫瘍学会は影響力の強い学会ですが、同じ状況に関わるガイドラインはほかの団体からも出されています。

そのため、今回の更新を参考にして医師が判断を変える場面はあるかもしれませんが、そうしなければ間違っているとは言えません。特に「例外的合意」とされた点について違う意見を持つ医師もいるでしょう。

ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ®)の肺がんに対する効能・効果は、日本では2016年12月に承認されました。これが今回の変更点にも関わることになりました。

今も新薬が開発され、効果や副作用が続々と報告される中で、集まった証拠がガイドラインに反映されていくことで、わかっている範囲の情報をバランスよく参照し、患者と医師の価値観や状況に合わせた治療を選んでいく助けとすることができます。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Systemic Therapy for Stage IV Non-Small-Cell Lung Cancer: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Update.

J Clin Oncol. 2017 Aug 14. [Epub ahead of print]

[PMID: 28806116]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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