2017.08.07 | ニュース

がん治療薬キイトルーダ、頭頸部がんに効果向上示せず

適応変更なく試験は続行

がん治療薬キイトルーダ、頭頸部がんに効果向上示せずの写真

ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ®)はがん治療薬です。体の免疫を利用してがんを攻撃します。頭頸部がんに対する効果を調べていた試験で、ほかの治療と比べて生存率の差が示されなかったことが報告されました。

アメリカでペムブロリズマブを製造しているメルク社の7月24日の発表によると、頭頸部がんの治療効果を試していた臨床試験が、ペムブロリズマブと比較した治療の間で差が確かめられないという結果となりました。

この試験の対象者は、プラチナ製剤に分類される抗がん剤で治療されたあと、再発または転移がある頭頸部扁平上皮癌の患者で、以前にほかの治療を受けたことがある人です。

この研究は2種類の治療を比較しています。

  • ペムブロリズマブを使う
  • メトトレキサート、ドセタキセル、セツキシマブの3剤を使う

評価の基準として全生存率を見ることと決められました。全生存率とは、死亡した人が頭頸部がんによる死亡かほかの原因による死亡かを区別せず、全体として評価時点まで生存していた人の割合を指します。

試験の結果、全生存率は2種類の治療の間で統計的に差が確かめられませんでした。未知の重大な副作用は発見されませんでした。

 

この試験はペムブロリズマブをほかの治療法と比較したものです。差がないという結果は、どちらかを「使っても利益がない」という意味ではありません。一方の薬を使えない理由がある場合などで、もう一方の薬を使うことが否定されるものではありません。

ペムブロリズマブは、アメリカで発表時点では、プラチナ製剤で治療後に再発または転移のある頭頸部扁平上皮癌の治療としてすでに承認されています。ただしこの承認は迅速承認制度に基づいているため、市販後調査で治療として十分な利益が示されなかった場合は承認が取り消されるか、適応が変更となる可能性があります。

発表によれば、適応の変更はなく、ペムブロリズマブについて進行中の研究は続行されます。その中には、再発・転移頭頸部扁平上皮癌の患者であって以前に薬物治療を受けていない人に対する研究も含まれています。

 

ペムブロリズマブは免疫チェックポイント阻害薬に分類されます。ほかの免疫チェックポイント阻害薬としてはニボルマブ(商品名オプジーボ®)などがあります。

ペムブロリズマブは、アメリカで現在(2017年7月時点)ただひとつ、がんが発生した場所によらず、つまり定義上はあらゆる臓器のがんに対して、がん細胞が持っている遺伝子の状態などの条件をすべて満たせば使用可能な治療薬として認められています。

日本では「根治切除不能な悪性黒色腫」と「PD-L1陽性の切除不能な進行非小細胞肺癌・PD-L1陽性の切除不能な再発非小細胞肺癌」の2種類がペムブロリズマブの効能・効果として認められています。

頭頸部がんに対しては、日本ではペムブロリズマブの効能・効果は認められていません。ニボルマブには「再発頭頚部癌又は遠隔転移を有する頭頚部癌」の効能・効果が認められています。

 

頭頸部がんの治療として使える抗がん剤はほかにもあります。使用可能な薬剤が効果を失った状態になっても、できることはあります。

再発や転移がありほかの薬剤も使用後といった状況では、「がんを残さず体からなくすこと」ではなく「がんと共存して自分らしい生活を送ること」に重点が置かれます。症状をやわらげる緩和ケアがいっそう重みを増す場面です。

ひとつの臨床試験で差が示されなかったとしても、あるいは新しい臨床試験に期待をかけなかったとしても、がん治療に絶望はありません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Merck Provides Update on Phase 3 Study of KEYTRUDA® (pembrolizumab) Monotherapy in Patients with Previously Treated Recurrent or Metastatic Head and Neck Squamous Cell Carcinoma (HNSCC).

News Release. 2017 July 24.

http://www.mrknewsroom.com/news-release/prescription-medicine-news/merck-provides-update-phase-3-study-keytruda-pembrolizumab-m

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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