2021.03.16 | コラム

酒で赤くなる人は喫煙による肺がんリスクが高い

日本人の4割が当てはまる「アルコールに弱い体質」と発がんリスクの関係

酒で赤くなる人は喫煙による肺がんリスクが高いの写真

「酒はあまり飲めないけれども、タバコは毎日吸っている」

身近に、あるいは自身に思い当たる節はありませんか?

タバコを吸うと肺がんになりやすいことはよく聞くと思います。関係なさそうに思えますが、実はアルコールで赤くなる人は、喫煙によって特に肺がんになりやすいことが報告されています。
2019年のがん統計では、全がん死亡数のうち肺がんは男性で断トツの1位(約53,000人)、女性でも2位(約22,000人)となっており、肺がんのリスクは決して他人事ではありません。喫煙者ではなおさらです。

このコラムでは、意外と知られていない「飲酒と喫煙の肺がんに対する関係」を紹介します。

 

1. 日本人はアルコールに弱い

お酒を飲むとアセトアルデヒドという物質が体内で作られます。アルコールそのものの臭いとは違う「酒臭い」正体はこのアセトアルデヒドです。アセトアルデヒドは人体に有害な物質で、発がん性があることが知られています

この有害物質アセトアルデヒドを、体内で分解してくれる主役がALDH2という酵素です。白人や黒人はほぼ全員でALDH2が完全に機能しているのですが、日本人では4割ほどの人でALDH2の働きが弱いことが知られています。また、日本人のうち数%はALDH2が全く機能しません。アルコールを本当に全く飲めない人はこのタイプです。ALDH2の働きが弱いと、飲酒で顔が赤くなりやすいことが分かっています

 

2. タバコからもアセトアルデヒドが出る

一方、タバコの有害物質というと、ニコチンやタール、一酸化炭素などを思い浮かべる人が多いと思います。実際にそれらが主な有害物質なのですが、実はタバコを吸うとアセトアルデヒドも吸い込むことになります

紙巻きタバコよりは加熱式タバコのほうが、加熱式タバコよりは電子タバコのほうが少ないですが、これらの「次世代タバコ」にもアセトアルデヒドが含まれます。

(注)
紙巻きタバコ:タバコの葉を紙で巻き燃やして使用するもの。いわゆる従来のタバコ
加熱式タバコ:タバコの葉を、燃やさずに熱して使用するもの
電子タバコ:タバコの葉は含まれておらず、リキッドと呼ばれる液体を加熱して使用するもの

 

3. タバコからのアセトアルデヒドで肺がんリスクが上がる

このようにALDH2が働きにくい、あるいは働かない日本人では、喫煙によってアセトアルデヒドが肺にも害を与えることが予想されます。

実際に2010年に愛知県がんセンターから報告された研究では、日本人に数%いると先ほど述べた「ALDH2が全く働かない人」が喫煙すると、ALDH2が働く人が喫煙するよりもかなり高い頻度で肺がんになってしまうことが示されています。

 

4. さいごに

お酒に弱い人が飲酒をすると喉や食道などのがんにかかりやすくなることは有名で、聞いたことがある人も多いかもしれません(参考記事:喉頭がんになりやすい年齢・性別・特徴はある?飲酒は食道がんの原因になる?)。喉や食道はアルコールに直接触れるところなので、イメージがつきやすいと思います。しかし、お酒に弱い人が喫煙をすると肺がんにかかりやすいというのは初耳だった人も多いのではないでしょうか。

タバコが身体に悪いとは分かっていても、禁煙はなかなか難しいものです。しかし、お酒に弱い人は「自分はタバコによる危険性が特に高い」と認識して、禁煙にトライしてみてはいかがでしょうか。

多くの人がタバコをやめられない原因はニコチン依存症です。ニコチン依存症という病気と一人で向き合うのが難しいときには、禁煙外来などでお医者さんもサポートしてくれます。また、禁煙補助薬の力を借りることもできます。思い立ったら、禁煙外来を受診することも検討してみてください。(禁煙外来のある病院・クリニックはこちらからも検索できます。)

このコラムがタバコの危険性を正しく理解して、禁煙にチャレンジするきっかけになれば幸いです。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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