2016.10.17 | ニュース

前立腺がんは経過観察で十分?検査で見つかった人を10年追跡した結果

イギリスで1,643人の研究
from The New England journal of medicine
前立腺がんは経過観察で十分?検査で見つかった人を10年追跡した結果の写真
(C) SENTELLO - Fotolia.com

早期前立腺がんは進行が遅く、場合によっては治療せず様子を見たほうがよいとされます。実際に検査のあと10年前後の経過を追跡した研究の結果が報告されました。

イギリスで行われた研究の結果が、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告されました。

この研究は、がんを指摘されたことのない50歳から69歳の男性を集め、最初に血液検査でPSA(前立腺がんのマーカー)を調べ、転移のない前立腺がんが見つかった人を対象としました。

 

PSAは血液中にある物質です。前立腺がん前立腺肥大症で多くなります。血中のPSAを調べることで、非常に敏感に前立腺がんを発見できます。

一方、早期前立腺がんは進行が遅く、死因になりにくいことも知られています。PSAであまりに早期から前立腺がんを発見して治療すると、がんによる死亡を防ぐよりも検査や手術で体を傷付けることの害が多くなるという意見があります。

 

1,643人の参加者が、前立腺がんが見つかり、ランダムに3グループに分けられました。

  • すぐ手術するグループ
  • すぐ放射線治療をするグループ
  • まず治療せず観察し、あとで必要と判断されたときに治療するグループ

すべてのグループで経過を追跡されました。

対象者の半数で追跡期間が10年に達した時点で、前立腺がんによる死亡率に差があるかが計算されました。

 

次の結果が得られました。

前立腺がん特異的死亡は全体で17人だった。8人がアクティブモニタリング群(1000人年あたり1.5人の死亡、95%信頼区間0.7-3.0)、5人が手術群(1000人年あたり0.9人、95%信頼区間0.4-2.2)、4人が放射線治療群(1000人年あたり0.7人、95%信頼区間0.3-2.0)だった。群間の差は有意でなかった(全体の比較でP=0.48)。

転移は、アクティブモニタリング群(33人、1000人年あたり6.3回、95%信頼区間4.5-8.8)のほうが手術群(13人、1000人年あたり2.4回、95%信頼区間1.4-4.2)、放射線治療群(16人、1000人年あたり3.0回、95%信頼区間1.9-4.9)よりも多かった(全体の比較でP=0.004)。

前立腺がんによる死亡率は、3グループの間で差がありませんでした

最初に治療をしなかったグループでは、治療した2グループよりも転移が多く発生していました。最初に治療しなかったグループで、平均10年ほどの期間に転移があった人は545人中33人でした。

 

ここで紹介した研究では、血液検査で前立腺がんが見つかってから手術も放射線治療もしない場合、死亡率には差がなく転移は多いという結果でした。全体として、10年前後の追跡のうちに前立腺がんで死亡した人は1%ほどでした。ほかの臓器のがんでは、すべて合わせると5年後に生存している人が5割前後になります。

早期前立腺がんで、検査から悪化の恐れが少ないと予想される場合には、まず治療せず様子を見るべきという選択肢があります。特に高齢者で余命が短いと思われるような場合には様子を見ることが勧められます。

この研究の結果からは、死亡については差がないものの、転移を防ぐために手術や放射線治療をするという考えが成り立ちます。ただし、大まかには治療を受けた100人のうち3人ほどで10年以内の転移が防げる、という程度の効果です。手術や放射線で体を傷付ける可能性とバランスを見て考える必要があります。

個々人の状態に合った治療方針を考えるためにも、全体としての傾向を見たこのようなデータは基本的な情報として役に立ちます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

10-Year Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Localized Prostate Cancer.

N Engl J Med. 2016 Sep 14. [Epub ahead of print]

[PMID: 27626136]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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